| ４３. 私は、高校生Ｓが撮影してきた映像の再生を繰り返しながら、母を抱く様子を再び撮影してきて欲しいとＳに頼もうか悩んでいた。そんな私の携帯に、母から久しぶりに電話がかかってきた。 何かいけないことをしているような気がした私は、電話に出ることを少しためらった。しかし、しばらく経っても電話が鳴りやむことはなく、部屋の中に着信音が鳴り響いた。私は唾を飲み込んでから電話に出た。 私が言葉を発することができずにいると、電話の向こうから「ゆう君？・・久しぶりね」という母の声が聞こえてきた。母と話をするのは、母がＳと関係を持つようになってから初めてであった。 色々と尋ねたいことがあるはずであったが、何から言えばよいのか分からなかった私は「うん・・・」とだけ応じた。母は「元気にやってるかな？」などと尋ねてきたが、私はやはり「うん」としか答えることができなかった。母の声や口調からして、電話の向こうの母も少し緊張しているようであった。 差し障りのない会話が一通り終わると、２人とも上手く言葉を続けることができず、沈黙が流れた。突然の電話に動転していた私であったが、少しずつ落ち着きを取り戻し、母がなぜ電話をかけてきたのか不思議に思い始めていた。 私の気持ちを察したのか、母は、「あのね、ゆう君・・・」と切り出した。私が黙っていると、母は、「あのぉ・・明後日の土曜日、うちに来れるかな・・？」と尋ねてきた。私は、なんと応じればよいのか分からなかったが、気がつくと「うん・・」と返事をしていた。 短い沈黙の後、私は思い切って「大丈夫だけど・・・その、どうしたの？」と尋ねた。母は、小さく息を飲み込んでから「うん、あのね・・土曜日に、Ｓ君とＴさん・・Ｓ君のお父さんね。２人がうちに来られるの・・」と言って言葉を区切った。その後、少し間をおいて「それで、ゆう君にも、来て欲しいの・・」と言った。 思いがけない展開に、私は何と返事をすればよいのか分からず黙っていた。母は、しばらくの間、私の返事を待っていたが、「じゃあ、お願いね。えっと・・・お昼の２時に来てくれるかな？」と言った。私が小さな声で頷くと、電話から「うん、じゃあ待ってるわね。」という声が聞こえてきた。私と母は、どちらからともなく電話を切った。 電話を終えた私は、状況が全く理解できずにいた。ＳとＴの親子がなぜ私の実家にやってくるのか、そしてなぜ私が呼ばれたのか、色々と想像してみたが、判断するための材料はほとんどなく、一体何が正しいのか私には全く分からなかった。 色々と想像をめぐらすうちに、Ｔと初めて出会った時のことが私の脳裏に蘇ってきた。自宅で母にＴを紹介された時、Ｔは、母に自分の子供を妊娠して欲しいと言い出して、当時まだ高校生であった私を驚かせたのであった。その時と同じように、ＳとＴの親子が、私の想像もつかないことを言い出すのではないかと気になった。 私は、指定された土曜日の午後まで、何も手につかない状態で過ごした。約束の時間が近づくにつれて、私は、強い緊張を感じるようになったが、それと同時に、２人と母が何を言い出すのだろうと期待し、興奮していることにも気づいていた。 約束の時間どおりに実家に着いた私は、インターフォンを押し、返事を待たずに家の中に入った。ＳとＴはすでに来ているようであり、玄関には男性の靴が２組あった。 廊下を進み、部屋の扉を開けると、食卓に座っていた３人が私のほうを振り向いた。母とＳは並んで台所に近い方に座っており、Ｓの正面に父親であるＴが座っていた。立ち上がった母は、少し緊張の隠せない笑みを浮かべながら「ゆう君、いきなり呼び出しちゃって、ごめんね・・」と言って、空いている席に座るように促した。 私がＳとＴへ向けて小さく会釈をして席に着くと、２人も私に向かって軽く頭を下げ、小さな声で挨拶をした。母がお茶を入れに台所へ向かったため、私は２人と食卓に残された。緊張していた私は、視線をテーブルの上に落したまま２人のほうを見ることができなかった。テーブルを挟んで私とは対角線上に座っていたＳも、きまりが悪そうであった。 お茶を持って戻ってきた母は、再び「ごめんね・・」と言いながら私にお茶を出すと、私の向かい側の席に座った。青を基調としたカーディガンを着た母は、落ち着いた雰囲気をまとっており、Ｓが撮影してきた映像に映る母とは同一人物と思えなかった。 緊張した様子の母は、私に向かって「ゆう君、久しぶりね・・。いきなり来てもらったけど、大丈夫だった？」と尋ねてきた。私は、母と視線を合わせることができないまま、小さな声で「うん・・・大丈夫・・・」と答えた。母は、Ｔのことが気にかかっているようであり、私に話しかけている間も時おり視線をＴのほうへ向けていた。 母が言葉を続けることができずにいると、Ｔが、小さく咳払いをしてから口を開いた。Ｔも、「ゆう君、悪かったね・・・。急に呼び立ててしまったみたいで」と私に詫びた。私は、「大丈夫です・・」とだけ答えた。 Ｔは、テーブルの反対側に視線を向けると、用件を切り出した。Ｔは、「いや、ゆう君は、知ってるらしいけど、Ｓと百合子がまだ会ってると聞いてね・・・それで今日は話をしようと思って」と言った。 少し間をおいてから、Ｔは、Ｓのほうを向くと、冷静な口調で「Ｓは、今、大事な時期だろう・・。百合子に夢中になってる場合じゃないと思うんだが・・」と話し始めた。私は、Ｓの初体験の後も２人が関係を続けていることを知ったＴが、２人と話をしにやって来たのだという状況を初めて理解した。 少し気まずい空気が流れる中、Ｓは、視線をテーブルの上に落したまま、Ｔの言葉を大人しく聞いていた。Ｔの言葉が途切れてしばらくすると、Ｓの隣で同じようにＴの言葉を聞いていた母が、口を開いた。母は、「Ｔさん、ごめんなさい。私が悪いんです・・・一度だけっていうお話だったのに、こうやってズルズルと・・・」と、か細い声でＴに謝罪した。 母の言葉を聞いていたＳは、視線を上げると、はっきりとした口調で「いや、百合子さんのせいじゃないです。僕が百合子さんを困らせちゃって・・」と母をかばい始めた。それを聞いた母は、Ｓのほうを向いて、諭すような口調で「ううん。私が悪いの・・」と言った。 テーブルを挟んで目の前で、母とＳが愛し合うカップルのように互いのことをかばい合っているいる様子を見ていると、私は、２人が体を交える映像を見ていた時とは違った嫉妬を感じた。 Ｔは、苦虫をつぶしたような表情を浮かべながら、「う〜ん・・・これじゃあ、なんだか、私が悪者みたいだな・・」と言った。小さく息を吐き出したＴは、「でも、Ｓは、これから勉強も頑張らないといけない時期だし・・・それに、Ｒちゃんだったな？あの子と付き合ってるんじゃないのか？」とＳに言葉をかけた。 母は、Ｔのほうを向きなおすと、Ｔの言葉を遮るようにして、「ごめんなさい・・・。Ｔさんの仰るとおりなんです・・・。Ｓ君が、いつまでも私なんかと・・・」と言って、頭を下げた。母は、頭を下げたまま、小さな声で「Ｔさんには、本当に良くしていただいておきながら、こんなことになっちゃって・・」と言った。 Ｔは、少しばつが悪そうに「いや、その・・別に百合子を責めてるわけじゃないんだ。ただ、百合子が、男性の相手はもう終わりにするって言っていたから私も・・」と言葉を続けた。 Ｓは、なんと言えばよいのか分からず、母と父親Ｔの様子を交互に窺っているようであった。しばらくの間、３人とも口を開かなかったため、私の耳には居間にある時計の秒針の音と自分の心臓の鼓動が大きく聞こえた。 沈黙が流れた後、母が意を決したように口を開いた。「本当にごめんなさい・・・。でも、あの・・お願いがあるんです・・・」とまで言って、母は言葉を区切った。Ｔは、目を開いて「何？」と言いたげな表情を浮かべた。 母は、「そのぉ・・最後にしますから・・Ｓ君と最後にもう一度だけ、会いたいんです・・」と言うと、再びＴに向かって頭を下げた。母は、頼み込むような口調で、「お願いします・・必ず終わりにしますから」と言った。 私の目の前には、息子である私が見つめる中、もう一度だけでよいから高校生とセックスをさせて欲しいとその父親に懇願する母の姿があった。強い嫉妬や屈辱感を覚えるはずの状況であるにもかかわらず、私は、どこか冷静に、母がどのような気持ちで頭を下げているのかその心中を想像していた。 Ｔは、「う〜ん・・・」と言って、息を吐き出した。そして、少し間をおいてから「分かったよ・・・。最後だな」と言った。母が「はい」と答えると、Ｔは、「分かったよ」と繰り返した。母は、一度は頭を上げたものの、「ありがとうございます」と言いながら再び頭を下げた。 Ｔは、Ｓのほうを向くと、「Ｓも、分かったな？」と言った。話しかけられたＳは、戸惑った様子で「えっ・・？」という声を発した。Ｔは、確かめるように「だから、これで百合子とは終わりにできるな？」と言った。Ｓは、弱々しい声で「あっ・・はい・・」と答えた。 話がまとまったはずであったが、母の顔には緊張した表情が浮かんだままであった。そして、母は、少し間をおいてから、背筋を伸ばした状態で「それで、あの・・・ゆう君も、その時に来て欲しいの・・」と言った。 話しかけられるとは全く予想していなかった私は、母が何を言っているのか、瞬時には理解できなかった。少し間を置いて、母がＳとの最後のセックスを私に見て欲しいと言っているのだと分かると、私は、思わず、「えっ？！」と声をあげてしまった。場違いに大きな声を出した私は、とても気まずく感じ、「うん。いいけど・・」とだけ応じた。 さらに、母は、Ｓのほうを向くと、「Ｓ君、その時ね・・・Ｒちゃんにも、来て欲しいって言ってもらえるかな？」と言った。Ｓも、母の言っていることがすぐには理解できなかったようで、「えっ・・？」という驚きの声をあげた。 短い間があった後、Ｓは、少し焦った様子で、「えっ？・・あっ、はい。Ｒに言ってみますけど・・」と言った。母は、Ｓを遮って「Ｒちゃんにもね、最後に、Ｓ君と私のことを見て欲しいの・・。最後だからって、お願いしてくれる？」と言った。突拍子もないことを頼んでいるにもかかわらず、母の口調は落ち着いていた。 Ｓは、母の強い意志を感じ取ったのか、はっきりとした口調で「はい。分かりました」と答えた。Ｓの返事を聞いた母は、綺麗な笑みを作って「よかった」と言って頷いた。 私だけでなく、ＳとＴも、母が突然に言い出したこと驚いている中、母は「じゃあ、ゆう君には、また時間とか連絡するね」とだけ言うと、わざと話題を差し障りのないものに変えた。その後、しばらくの間、世間話をして自宅での会合は終わったが、私とＳは最後までほとんどまともな受け答えができなかった。 それからというもの、私は、母が何を考えて、Ｓとの最後のセックスを私やＲに見せたいと思ったのか考える毎日を過ごした。考えたところで母の気持ちが分かるはずなどなかったが、私は、私とＲの見つめる前で、Ｓに抱かれる母の姿を想像することが止められなかった。 私は、母からいつ連絡があるのか、毎日、気が気でなかったが、２週間が経過しても母からの連絡はなかった。どうなっているのか母に確認したいという気持ちも強かったが、自分から電話をかける勇気もないまま、さらに１週間ほどが経過したある日、待ち望んでいた電話が母からかかってきた。 電話から聞こえてきた母の声は、私の予想に反して落ち着いていた。簡単な挨拶の後、母は、覚悟を決めたような口調で２週間後の週末に○○ホテルに来て欲しいという用件を伝えると、手短に電話を切った。母が最後のセックスの舞台として指定した○○ホテルは、Ｓの父親であるＴが、昨年、私の見つめる目の前で母を妊娠させたホテルであった。 |
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| 2013.6.22掲載 |