母の男


母の男しろくま作
５５. 　ベッドの上の母は、優しい表情で私のほうを見つめていた。母は全裸のままで、白く艶めかしい肌、そして男であれば誰でも目が離せなくなる魅力的な乳房を露わにしたままであったが、その時の私は母を性的な対象としては見ていなかった。母が発する強い母性が私の雄としての部分を押さえ込んでいるのかもしれなかった。　母は「ゆう君ね・・」とまで言うと少し言葉を区切って、「いつも見てばっかりで辛かったよね・・」と私に声をかけた。私は頷いていいものか分からずにいると、母は「うん、だから今日はゆう君にもね、素敵な方をお願いしてるの・・すごく素敵な方よ」と言葉を続けた。　私が何と応じればいいのか分からずにいると、「ほんとに綺麗で優しい方だから」と母自身も優しい笑みを浮かべて言った。私は母の言っていることが十分に理解できないだけであって、母を否定するつもりはなかった。そのことを示すためだけに、私はただ頷いた。　母は安堵をするかのような表情を浮かべると「よかった、じゃあ、もうお部屋に来て下さってるはずだから、ゆう君もお部屋に行ってね」と言った。それは、この部屋での濃厚なセックスの披露が終わりであるという宣告でもあった。　その後、母はバスローブを身に着け、Ｓにも服を着るように促した。母は髪を手で簡単に整えると、Ｓが服を着たりしている間、ベッドのシーツの乱れを整えていた。　先ほどまで母性にあふれた表情をしていた母であったが、髪をかき上げるしぐさや白いうなじからは、多くの男性を夢中にしてきた色香が隠しきれずにあふれているように感じられた。　私は、母に立ち上がるように促され、さらに、そのまま部屋を出て同じ４０階にある別の部屋に行くように言われた。このまま部屋を出ていくことになぜか抵抗も感じたが、母はＳとＲの２人にもやはり別の部屋を用意しており、私だけが居座り続けることもできず、私は母の言うとおりに部屋のドアを開けて通路に出た。　４０階の大きな窓からは、日の落ちた夜の街が見えた。地上の騒がしく動いている車を見た私は、街の喧騒からは隔離された空間で、さっきまで母とＳが美しく官能的なセックスをしていたことが嘘でであったかのような気がしてきた。　私に続けて部屋を出てきたＳとＲは、指定された部屋の前に着き、母に渡されたカードキーをかざして部屋に入っていった。２人も、私も互いになんと声をかければいいのか分からず、会釈のようなものをして別れた。　４０階にある部屋数は多くなく、私が指定された部屋も高校生カップルが入っていった部屋の隣であった。部屋の前に着くと、私は少し緊張してドアをノックした。想定していたよりも長い間があった後、部屋の中から「はーい」という若い女性の声が聞こえた。声の持ち主はドアのほうに近づいてきているようであった。　鍵を開ける音がした後、ドアを開き、若く綺麗な女性が現れた。彼女はどこかで練習したのだろうかと思わせるくらい美しい笑みを浮かべ、「はーい、どうぞ・・」と私に声をかけた。私は、部屋の中から現れた美人に何と応じていいのか分からないまま、「あっ、はい、ありがとうございます」とだけ言って促されるまま部屋の中に入っていった。　部屋は、先ほどまでいた部屋とほとんど同じつくりであったが、家具が異なったトーンでまとめられており、全く別の部屋であるかのような印象を受けた。女性のほうを見ることができずに部屋の様子を窺っていると、彼女が優しい声で「どうぞ」と言ってソファに座るように促してくれた。　私がどこに視線を向ければいいのか分からずに部屋の様子を見ていると、彼女も同じソファに腰を下ろした。近すぎず、かといって余所余所しくない距離感のところに座った彼女は笑顔を浮かべながら、「こんにちは、○○です」とあいさつをした。私がすぐに返事をすることができずにいると、それを察知したのか、「ゆう君、ってお呼びしていいですか」と聞いてきた。　その時に、私は、初めて彼女の顔を正面から見ることができた。２０代前半の彼女の印象は、まるで朝の情報番組に出てきそうな爽やかな美人で、誰からも好かれるであろう優しい顔立ちをしていた。　アナウンサーや女優だと言われれば納得する美形であったが、安らぎも男性に感じさせる顔立ちで、女性の華やかさを損なわない清潔感のあるメイクと、優しく内側に巻いたミディアムロングの髪が素晴らしく似合っていた。服装もいわゆるコンサバと呼ばれるスタイルであったが、ブルーを基調とした甘くなり過ぎない色使いで、男性だけでなく女性にも好かれる格好をしていた。　私は、これまでの人生で全く縁がなかったような小奇麗な女性が手を伸ばせば届く距離にいるため、一人の男性としてどぎまぎしてしまい、質問を投げかけられているという事実を忘れていた。彼女は私を急かすようなことはなく、美しさと安らぎを同居させた笑顔を浮かべたまま私を見つめていた。　彼女を見つめ返すことができなかった私は「あっ、はい・・」とたどたどしく返事をした。彼女も「はい」と爽やかな声で応じると、「ゆう君さん・・じゃないよね、ゆう君」と自分の言い間違いを少しおちゃめな笑みを浮かべて直し、「よろしくお願いします」と言った。私も反射的に「お願いします」とだけ返事をした。　彼女は、自然に私との距離を少しだけ詰めると、「今日は、百合子さんに呼んでいただいたんです」とはにかんだような口調で言った。私が何と応じればいいのか分からずにいると、「百合子さん、本当に綺麗ですよね・・大人の美しさと色気って感じで、ほんとに憧れの人です。スタイルもすごくいいし、お肌のメンテとか教えてもらったり・・」と時おり言葉を区切りながら話し続けた。　彼女は、自分と母がどういう関係なのか直接に説明したわけではなかったが、２人はともに、裕福な男性に女性を紹介する会員制の倶楽部に所属しているようだった。　母が長い間にわたって男性たちに抱かれ、その対価として多額の金銭を受け取ってきたことは私も知っていたが、第三者からその事実を聞かされるのはやはり複雑な気持ちがした。　彼女の話しによると、そのお店は風俗店のように時間を決めて指名された女性を送り届けるというものではなく、会員である男性の希望を受けたお店が、一定の期間にわたって交際し、体の関係を続けることができる女性を紹介するというもののようであった。　目の前にいる女性の美しい容貌や彼女の話しの内容、そして何より、これまで私が目にしてきた母と母を抱く男たちの様子からして、そのお店が普通の男性には全く縁遠いもので、私には想像もできないほどの資産をもった男たちが、その財力と精力を活かして、選りすぐりの美女たちを心ゆくまで堪能するためのものであることが想像できた。　私の目の前にいる彼女は、裕福な男性たちが多額の金銭を払って、選りすぐりの美女を買う倶楽部で働いているという話をしているにもかかわらず、その顔立ちと穏やかな口調のためか、どこか垢抜けなさを感じさせた。　街を歩けば誰もが振り返るであろう美しさと、男性が守ってやりたくなるような素朴さを兼ね備えた彼女が、そのような倶楽部で働いているとは多くの人にとって信じがたいに違いなかった。　しかし、彼女のような若くて容姿端麗な女性に群がり、様々な力を用いてその瑞々しい身体を絡め取っていく世の男たちの欲望が存在し、多くの者にはそれに抗う術がないことも事実であった。母がその身体で男たちの欲望を受け止める様子を高校生の時からみてきた私は、そのことをよく分かっていた。　私は、そのようなことに思いをめぐらせながら目の前の彼女の美しい瞳をみていた。彼女に不信がられないように時おり相槌をついていると、彼女は可愛らしい笑みを浮かべ、楽しげな様子で母がどれほど美しく、倶楽部の中でもあこがれの存在であるかを語り続けた。　彼女の話によると、母の美貌ととりわけその肉体は倶楽部の会員たちにも有名で、母を愛人にしたいという男性たちが法外な金額をお店に払い、順をなして母を抱く機会を待っていたようである。そんな母がＴの子供を身ごもり、出産したことはお店と会員たちの間でも話題になったとのことであった。　会員の男性が交際していた女性を気に入った場合、妾として囲って１人、２人の子供を産ませる例もあるようだが、母のような引手あまたの女性が、特定の男性に妊娠まで許すのは前代未聞であり、羨望と嫉妬の声が会員たちからあがり、どれくらいの金銭がとびかったのか話題になったそうである。しばらくすると、彼女は、話を止めて最初に入口で私を迎えてくれた時と同じような綺麗な笑みを浮かべると、私のほうに近寄ってきて、私の太腿のすぐ横に右手を置き「あんなに綺麗なお母さんだと、大変だったりしない・・？」と思わせぶりな口調で言った。私は彼女がごく自然な程度に香水をつけていることに、この時、初めて気がついた。　彼女は、「ゆう君さん・・え、ゆう君も、肌がすごく綺麗・・」と言って、自然な様子で私の右手の甲を撫でた。彼女がさらに距離を詰め、私の身体はいつの間にか彼女の色香につつまれていた。彼女はしばらくの間、絶妙な距離を保ちながら私の顔を覗き込むようにし、その後、ゆっくりと唇を重ねてきた。彼女が無言でタイミングを教えてくれたおかげで、私も自然にキスに応じることできた。　唇で感じる彼女の唇は想像以上に分厚く、非常に柔らかかった。何度かついばむようなキスをした後、どちらからともなく濃密なキスを始めた。しばらくすると、彼女の舌が私の口の中に優しく入ってきたが、その様子もとても上品であった。　私が甘美なキスに浸っていると、彼女はゆっくりと唇を離した。恐る恐る目を開けると、純粋さを感じさせる表情をした彼女が「ごめんね・・キスしちゃって・・」と言った。私が慌てて首を振ると、「ゆう君の唇、柔らかいね・・」と言って彼女は上目づかいで私のほうを見た。　女性経験の乏しい私にも、その視線が、私を誘うものであることはよく分かった。私は、その見かけとは裏腹に経験の豊富な彼女に誘われるまま、彼女に再びキスをした。私が徐々に夢中になってキスをしていると、彼女は私を引き寄せるようにして、彼女を押し倒すよう、私に伝えてくれた。　彼女がソファに仰向けになると、私は彼女に覆いかぶさるようにしてキスをし、彼女のブラウスの上から胸を触った。彼女の胸は想像以上に豊かで、心地よい弾力が私の手に伝わってきた。私の興奮はさらに掻き立てられ、夢中で彼女の口唇を舐めまわした。　ふと我にかえった私がキスを止めると、彼女の美しい瞳が私を見上げていた。雄としての衝動に突き動かされていた私であったが、彼女の美貌に男としての自信のなさを感じずにはいられなかった。私の気持ちを察したのか、彼女は優しい表情を浮かべて「脱がせてくれる・・・？」と囁いた。私が小さく頷くと、彼女は上半身を起こした。　彼女に促されるまま、ブラウスを脱がすと、ピンクを基調としたブラジャーが露わになった。その綺麗なデザインと生地から非常に高級な下着であることが私にもよく分かった。胸元を隠していた彼女が両手を下ろすと、若々しい張りのある乳房の谷間が目の前に現れた。私は、女性的な艶めかしい曲線美に目を奪われた。「とってくれる・・？」という声に慌てて視線を上げると、彼女が反対の方を振り返り、ブラジャーを外すように促していた。私は性経験の差を悟られてはいけないと、なんとかスムーズにホックを外そうとしたが、そのような私の気持ちも、彼女には見透かされているように思えた。　私のほうを振り返った彼女が、ゆっくりと、少し照れた様子でブラジャーを外すと、若くて瑞々しい肌に包まれた、Ｆカップ以上あると思われる見事な乳房が露わになった。その先端にある乳首は母のものよりも小さく、色素が全く沈着しておらず、桜色という表現がぴったりであった。その性的な魅力抗う術などなく、私は彼女の許可を取ることもなくその乳房に吸いついた。
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2018年2月8日掲載
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