はちみつ太郎 作
| １１４ 何のメッセージもないまま、交わる二人と同じ夜空を眺めている昇は、現状の行き着く先を想像している。笙子は今、だれのものなのか。答えはだれのものでもなく、笙子は笙子自身のものだった。 では、昇は、誰のものなのか。自分でもその答えは出ない。自身の感覚は、自らの生殖の治癒のために笙子を出汁に使う、情けない夫、位置付けはそんなところだった。 「次の時くらいには・・・見せ付けられるかもな。」 願望と絶望が入り混じるそのつぶやきは、ネットに乗ることはないが、松山、向山には風の便りに乗せられて届けられる恐れもあった。 スローセックスも終盤。時間にして１時間５０分が経過している。何度か体位を変えながら、ゆっくりとした腰使いながら、時間で萎えることはなかった。 「あぁぁ、あぁぁ、・・・・なんかぁあぁ、・・・下半身が重い。」 「乳酸溜まってるんだよ。・・・ケツ割れだよ。」 「陸上部みたいぃぃぃ。」 「おれも、ケツ筋が痛くなってる。・・・エッチして、肉離れって・・・シャレにならんよな。」 「そうだよぉぉぉぉぉ・・・あんっ、も、もぉぉ・・・・。」 「出して欲しい？」 「うんっ・・・・休憩したいぃぃぃぃ。」 「２回目もアリってことだなぁぁぁぁぁぁ。」 「いぃぃ、いぃぃぃぃぃぃ・・・・・あんっ、・・・・そこぉぉぉぉ・・・・うんっ、い、い、い、いっくっ。」 笙子が背を反り、腹を突き上げるのを松山は見下ろす。タイミングを計り、笙子と一緒に果てるチャンスだった。 「で、でるぅぅぅぅぅ。・・・・・ぁぁあぁぁぁぁっ。・・・・ドククククククドククククククッ。」 松山は笙子の奥に入れたまま往き果てる。ゴムいっぱいに擬似的な生殖行為に満足を見せている。果てしない精の放出。警察学校の寮生活で、禁欲を続けていた時よりもその量は多い。 「あぁ、・・・ちょろちょろ、まだ、でてる。」 「うそっっ・・・。」 少し抜き気味に肉身を引きずり出すと、溢れそうなくらい充満した精子をゴム内に見た。 「ほらぁぁ、零れるし。」 笙子は、少し腰を引く。ぬるっとでて来たゴムつきの肉身は、真っ白な衣を纏っている。 「えぇ、・・・まさか、中で・・・出てるの？」 「え、ありえんよ。・・・・これは、笙子のヌルヌル。」 「びっくり。・・・穴開いたのかと、時間かけるから。」 「それはないだろ、日本製だし。」 松山はゴムの縁に指をかけ、零さぬように身を抜いた。下向きにすると出た精液の量に驚いている。 「中学生みたいだな。・・・２泊３日のキャンプ帰りのオナニみたい。」 「そんなの、聞いてないし。・・・男子は、帰ったらするんだぁ。」 「するよ。・・・疲れてるときほど・・・したくなる。何でかなぁ。」 「向山先生に聞いてみよ。」 「そうだな、・・・治療のヒントにもなるかもだし。」 「うん。」 冗談の会話は、深刻なほうは真剣に捉え、冗談の延長のほうは聞き流しで終わる。松山の携帯は冗談のほうではない音で、事態の急を告げている。 「ごめん、・・・あ、はい、・・・・・そうか、今回は、確かか？」 松山から手渡されたフレッシュな絞りたての精液を手にしながら、処分の方法を考えている。電話は、手短に切られ、笙子の半裸を見つめている。 「おかわりはお預けだ。」 「事件ですか？」 「まぁ、・・・この前の取り逃がした奴が・・・目撃されて。」 「急ぎ？・・・車は？」 「ここに、部下を呼ぶわけにはいかないし、タクシーを拾うよ。」 「うん・・・気をつけてください。」 笙子は、両手を差し出し、手錠の鍵の解錠を求めている。同時に避妊具の処理もだった。松山は、鍵の解錠を先にし、避妊具は笙子に持たせたままだ。 すると、片手を手錠に嵌めたまま鍵を外すことをしない。木製ベッドにあしらわれている、格子の間にくぐらせた手錠をもう一つの手に施錠する。 「ちょ、ちょっとぉぉ。」 「旦那さんに、プレゼントしようよ。・・・笙子の好きなスタイル。」 「も、もぉぉ・・鍵、を・・・。」 松山は小さな鍵を笙子に見せ付ける。その顔で、簡単に渡すはずがないと笙子は感じている。ハードルの設定は高いものではないが、昇への屈辱具合は、相当なものだろうと笙子は感じている。 スマホの充電は１５パーセントを割っている。画面を消し、ため息をつくともう一度寝室を振り返る。カーテンから漏れていたスタンドライトの明かりは消えている。 玄関を見返すと、ドアの開く瞬間を目にしてしまった。急ぎ足の男が、時計と携帯に目をやりながら、こちらを見ることなく立ち去っている。昇は、事を終えた松山がただ、帰途についたと感じ取れた。 笙子からの合図なくして、動けるほどの余裕がない昇は、スマホをなんども見返すが充電の減りだけで何もない時間が過ぎていく。 「なんか、あったのか？そのまま・・・寝てるとか？」 通話の履歴から笙子の名をタップする。発信しているが、着信の応答は２分近くしてもなかった。 「まじ、で寝てるんか？」 昇はようやく腰を上げ、先ほどまでチェーンロックの掛けられた我が家へと乗り込んだ。小声ながら笙子と呼ぼうかとするが、やめ、リビングを見回した後、心臓の鼓動を落ち着かせながら、最初の言葉を寝室までの階段で考えていた。 「がちゃ。」 「・・・寝てる？」 普通の言葉を昇はかける。それが無難だろうと、考えなく口から出る。笙子は寝ていなかった。２時間近く前、昇から松山に身を委ねた格好と同じ服を着たままだった。 ただ、施されている装飾は、一つ増えていた。 「手錠？・・・あの人が？」 「うん。・・・怒らんでいいよ。・・・・だって・・・・。」 「笙子が・・・頼んだ？」 「うん、だから、怒らなくていい。」 「怒っちゃいないけど・・・そういうのが良くなってる？」 「うん。・・・そう、こういうのが・・・・したくって。」 「本物？」 「あ、うん、多分。。・・・向こうも趣味なんだって、こういうのが。」 「このまま、してたのか？」 「ううん、・・・これは、帰る前にされた。それまでは、・・・両手だけされてた。」 「なんか、急いで帰っちゃったけど、用事？」 「あ、なんか、呼び出しみたい。」 「消防士って、・・・いってたな。」 笙子は頷くだけで会話を終える。本題はここからだった。下半身、笙子の腰はくねくねと何かを告げている。昇は、手錠を解錠するつもりはなく、笙子のくねる体を見続けている。 昇への視線がそれ、昇の膨らみはまだ起きてはいなかった。穿かされたままのショーツは、閉じた足にほとんどの布地を隠し、購入した昇からの視線を恥ずかしそうにしている。隠れるはずの繁茂は、隙間からはみ出ていて、笙子はそれを隠すことすら出来ない。 「なんか、いつも以上に・・・。」 「恥ずかしいよぉ。」 「でも、彼には、そうして欲しかったんだろ？」 「怒ってるん？」 「いや、そうじゃないけど・・・少しだけ、・・・いや、結構、興奮する。」 「良かったのか、・・・なぁ。」 「良いよ、笙子のそういうところが見れて、・・・好きなこと、エッチなところ、隠さず見れて。」 笙子の閉じている、きつく閉じている太ももの隙間に昇は手を入れた。温かみより、エアコンで冷えた肌の感触を手に感じさせ、温かみを欲するように上へ上へと手を這わしていく。 ショーツの布地に手が当たり、昇は湿り気を感じさせられる。感じさせられたものは自分の手が施したものではなく、松山という男が施したものだと理解している。笙子は、手錠とベッドのスリットをガチャガチャさせている。 見られたくないものを隠したいのか、閉じた太ももの力は、蛇のように昇の手に圧力をかけていた。その知らせは昇にも伝わっていく。押し広げるように太ももを割ると、小さい面積の布地を指でたどる。声をあげることなく我慢している笙子は、顔を赤くし、手で押えることはままならない。 指は、なんども往復し、笙子は身悶えしながら、昇にもう一つの装飾の存在を告げた。 「あぁ、・・・昇さん。・・・ごめんだけど、・・・取って欲しいの。」 「何を？・・・まさか。」 「鍵っ・・・あそこの・・・中に入れられてる。」 昇はパンティを横にずらし、湿潤しすぎている割れ目に指を差し入れる。湿らせることもなく、容易くもごり込ませると入り口付近に異物の感触を捉えていた。 「これ？」 「うん・・・あんっ。・・・そう・・・ごめんね。」 くたくたにしなびた避妊具は、昇の指先にほじくられ笙子の中から掬い取られた。結び目をつまみ、中身を見つめると大量の精液に包まれた小さな鍵が目に入る。 「これか。・・・」 「悪趣味だよね。・・・ごめん。」 「悪趣味だな。」 摘まれた避妊具を笙子の顔に近付ける。開けることをしない昇には怒りの顔はない。悪趣味だと言い張った昇は、その悪趣味な男が汚していった笙子の陰唇に舌を這わせ、声を漏らす妻のよがりを性欲と血の滾りに変えたかった。 |
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| 2014.9.22掲載 |
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