はちみつ太郎 作
| １１８ 「降りてきてるだろ？」 「あ、うん。・・・子宮口？」 「違うよ、・・・窓の外。」 「え、あ、見える？」 「あぁ、腰を引いてる。・・・オナり始めかな。」 「うそ、・・・気がつかない振り、してあげてね。」 「もちろんだよ。・・・見せ付けてたら、殴りこまれるかもしれんし。」 「そんな、ことはないと思うけど。」 松山は、笙子との会話を耳元で終わらせる。笙子は背中越しに透けるほど強い視線を感じ始めていく。振り向くことすら出来ない状況は、いつも以上に女の奥を熱くし、熱せられた脂身が溶け出すように汁を多く分泌させている。 「ぐちゅぐちゅぐちゅちゅちゅちゅゅゅゅぃぃぃぃ。」 松山の指先はいやらしい音だけを昇に伝えている。伝播する音は耳に送られ昇の口はあっけにとられ大きく開いた。前戯はそこまでだった。おそらく、昇が外に出るまでに今以上の前戯を施されていたのだろう。 重なり合う舌の音を遮るように、笙子の声が聞こえる。 「け、啓輔さんっ・・・ゴムは・・・絶対だよ。」 「あぁ、そうだね。生のほうが良いって言ってくれたけどな、この前は。」 「も、もぉ・・・そんなこといってないしっ。」 「判った・・・嵌めてくれよ、笙子。」 夫婦のような会話を耳に刷り込まれていく昇。笙子の夫は完全に松山だと誤認されるほどの密な関係に成り下がっていたことに怯えを隠せない。 仰向けに寝転がり、その屹立を拝むように正座し、ゴムの被せを施していく笙子。屹立は４ｍほど離れた場所から見る昇にも敗北を感じさせている。病が治り、屹立が日常となっても松山の具合にまではいかないと脱力する。 根元まで届かぬゴム。それを下までずり下ろそうと必死に引っ張る笙子の姿は、妊娠に怯えを感じている姿なのかと昇は思う。そこからして今日の妻の女の状態を計り知ることが出来る。 「笙子寝転がれ・・・向こう向いてさぁ。」 顎で松山が示したのは二つある掃きだし窓の、カーテンが少し揺らめくほうだった。笙子は仕方なくそちらを向き、背後から抱きつく松山の指先を受け入れる。 乳房への責めを見せ付けるように下乳を揉み上げ、ボリューム感を見せ付けられる。「どうだ、お前の嫁さんの乳、ここまで膨らませてやったぞ。」と言われているように、いつもの乳房より一回り大きく感じている。 乳首への責めも同時に行い、二つの尖がりは、二人の隠語で称されていた。 「笙子のアポロ。・・・あんまり触ったら、溶けちゃうかなぁ？」 「あぃぃ、・・・も、もぉぉ、そんなんで呼ばないっ。チョコじゃないからぁぁ。」 笑いながら本題に進んでいく。松山の右足は笙子の右太ももを跳ね上げていく。上がった足は膝裏をつかまれ保持されると開脚の具合は９０度に近い。 松山の左手が肉身の根元にかかり、先端を笙子の蜜壺に照準を合わせていた。体勢がアンバランスなためか焦らすように膣前庭を擦りあげることもなく、先端を埋没させると、腰位置を変えながらズブズブと挿入を完了させた。 昇にもはっきりとその部分が目に入る。挿入を終えきった肉身はピクリとも動じない。嵌めこまれたまま、奥深くの蜜を吸い取っているように見える。 松山の意図は笙子に伝わっている。 「あぁ、はずかしいぃぃ。・・・動いてっ・・・ね、ね、啓輔さん。・・・もぉ、だめなの、・・・お、おねがいっ。」 「誰のために？」 「の、のぼるさんのぉぉ・・・。」 「嘘を言うなよ・・・な、笙子、正直になれって。」 「あぁ、・・・うん、うん、・・言いますっ。・・・しょ、笙子を・・・気持ちよくさせてぇぇぇ・・・啓輔さんのお○んちんでぇぇ、いつもみたいにぃぃ。して、してぇぇぇ。」 跳ね上げていた足を再び膝裏でバランスを保持し、ベットについている左足の横に自分の左足を重ねるように近付ける。陰茎の挿入は不安定ながら、昇に対するアピールは申し分ない。 「あぁ、・・・あんっ、あぁぁんっ。」 「目はあった？」 「ううんっ・・・知らない振りしててぇぇぇ。」 「判ってる。・・・でもこの体位じゃぁ・・・見せ付けてるん、もろ判りだよな。」 「知らないっ。・・・あんっ。」 昇の視線を探すようにカーテンの隙間に二つの目を探す笙子。いつしか、視線すらおぼつかなくなると、背後で首筋を舐める松山に昇の視線の捜索願を出していた。 「あぁ、見てるよ。・・・怖い目じゃない。・・・たまに下を向く、・・・大きくなってるんかも。」 「あん、あん、あんっ。・・・だといい・・・けど。」 「けど？」 「あぁぁあぁぁ。」 「俺との時間が？」 「あぁ、あぁぁぁあ。」 「どうなんだ、笙子。答えてくれよ。」 「でも、だって・・・いつかは、・・・そういう日がぁぁぁぁ。」 「俺は嫌だ。・・・このままの時間が・・・。」 松山は怒りをこめるように昇に自分の滾りを披露する。笙子が喘ぐその姿を見せつけ、圧倒的な力量差を誇示していく。笙子は、その力量差に、抑えきれるはずのない喘ぎをもらし続けている。 飛び出しそうになる昇は、自制する。網戸から少し離れると、血流を少し帯びた陰茎を扱き外的な熱量を足している。海綿体は膨張力を少し高め、挿入には不適格ではあるが、一定量の固さを保持している。 笙子の喘ぎは、堪える時と、発散する時で高さが変わる。堪えながら泣き出しそうな声を聞き続けると、憎悪ではない昂ぶりを感じれた。 「これって、・・・彼は、俺に気がついてるな。」 後背側位での時間が長く続くのは、見せ付けのためだろうと昇は気がついた。リズミカルに突かれるたび、ぴょこぴょこと笙子の首筋から顔を上げ、窓の外の存在を探すように視線を送っている松山。 「ふぅぅ、・・・情けないな。」 トランクスに手を突っ込み、指で陰茎を摩り続けていると侘びを感じるが、どうしようもない事実に現実を受け止める。網戸から少しはなれ犬走りに腰をつけ、笙子らに背を向ける。 松山は、視線の先に昇が消えたのに気がついた。笙子にそれを伝えると、目にうっすら涙のようなものを浮かべているように見えた。汗なのか、涙なのか、言葉で問いただしたいが、答えを聞きたくない松山は、グラインドを止め、肉身を抜き去ると、見えぬ昇の視線から笙子の顔を遠ざけた。 ソファーベッドの短編方向に体を横たえ、笙子は頭をはみ出すくらいまで端に寄った。松山は、正上位で挑みかかる。笙子の太ももを抱きかかえるように大きく割り、その間に入った体の突起物を凹みの部分に差し入れる。短編方向は、重なる腰から上だけを載せ、二人の揺れに耐えている。 笙子の顔が松山にもよく見える格好で交わり始めると、笙子の心境が手に取るように理解できた。揺れている。女心も、性的な欲求の満たし方も。 ピストンは深く浅くを４拍子でなんども繰り返している。二人の視界には入らない昇の視線は再び正直な男と女の交わり所を見つめていた。 陰唇の周りは白く泡立ち、突き続けている松山の肉身もそれを引きずるように同じ色を纏っている。繋がっている、体も色も、心もだろうと昇のなかはそう答えを出しそうだった。 隙間なく埋められている膣穴は、肉身の往来を妨げることなく続けさせる。大名行列のように、長く、一定のリズムで行軍は続けられる。 周りの下々である昇らは、土下座をし頭を地面に擦りつけながらそれが行き過ぎるのを待った。「したにぃ、したにっ。」の声は、現代風なのか「往くっ、また往くっ。」と行列の言葉を変えていた。 ソファーベッドから垂れ下がる頭を松山は上げさせるため、体をテーブル側に動かした。引きずられるように笙子は連れられると、伸ばした手の先に二人のスパイスがあった。 ケースに押し込められた二つの輪っか。本職がそれを手にし、犯罪者でもない笙子は、自首する容疑者のように手首を重ねている。 「立川笙子、０時１１分・・・刑法第174条、公然わいせつ罪 の現行犯で逮捕します。」 「刑事さんも・・・同罪です。」 「あなたには、刑事訴訟において、終始沈黙し、又は個々の質問に対し陳述を拒むことができる権利があります。」 「もぉ・・。」 手錠を嵌められた両手を松山の首にまわす。一時的に座位の形で交わると、喉の渇きを感じた二人は唾液で補うように口内を舐めまわす。 シーソーのように再び松山が笙子を押し倒す。繋がりはそのままで、首に巻きついた両手も同じだった。密着力を高めた二人は、体と心を一体化するべく、松山は笙子の意を確かめる。 「もっと、近くで見せ付けたい。・・・いいよな。」 「え、・・・呼ぶの？」 「違う、こうだよ。」 松山は首筋に纏わりつく手をそのままにし、笙子の体を待ち上げると、抱え込み駅弁スタイルでソファーベットに腰掛ける。立ち上がるのに力を使い、笙子は大きく股を開いたまま抱き上げられる。首と両手、肉身に支えられながら自由落下を加えられ、耐え難い声を昇に聞かせてしまう。 「あぁ、あぁ、だめ、だめ、だめぇ。・・・あひぃ、あひぃ、あひぃぃぃっ。」 リズムは少し変わる。松山のステップごとに笙子は喘ぐ声をリズミカルにあげた。最初こそ、ソファーベットの周りをなんども周回するだけだが、カーテンの隙間、そこを目がけてステップを刻んだ。 昇は少し半身で体を隠す。網戸に近づく駅弁スタイルの松山と笙子はは、調子を合わせながら、肉身での貫きを確かめる。 「はっ、はっはっ・・・・どう？」 網戸に近づき過ぎる松山は、誰に問いかけたのか言わない。が、実の夫婦に問いかけていることは紛れもない。夫婦のうち近くで責められている嫁のほうが答えを吐いた。 「あんっ・・・だめ、だめぇえぇ・・・いっ、いっくぅぅぅ・・・あんっ、またぁ、またっ。」 「あ、雨だ。・・・小降りだけど・・窓、閉めるか？」 「あぁ、だ、だめ・・・風が入るからぁぁぁ・・・そのままでね、そのままにぃぃぃ。」 「いっぱい冷汗かいてるもんなあ、笙子は。・・・この汗の臭い、堪らんなぁ。」 松山は見せ付けるように笙子を窓際に寄せ、両手を少し挙げさせ、腋の汗を舐めあげる。少しざらつく舌先に松山は、笙子の恥ずかしさを煽る。 「今度、エステに行こう。・・・チクチクも悪くないけど・・・これじゃ、約束した海にいけない。」 「あぁ、え？そんなぁぁあぁ、やくそくぅぅぅ？」 松山の嘘に笙子はそれを否定することさえままならない。振り出した小雨が風の強さを変え、カーテンが大きくたなびくと、はっきりと松山の目に昇の姿が映りこむ。 軽量網戸の遮りすら大きな壁に見える昇と、ただ薄い壁に遮られただけの松山。昇の乗り越える壁は大きいが、簡単にはじけ飛びそうな壁の存在は松山にしては同じだった。 |
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| 2014.10.4掲載 |
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