はちみつ太郎 作
| １９ １０月の３連休の二日目の日曜日。朝の８時、笙子の家のチャイムは、不意ではあるが想像の範囲内の訪問者を迎え入れる。 「おはよっ。」 「おはよ、え、まずいって。」 江藤は、日曜の朝、笙子の家を訪ねた。電話もいれず、メールもなしにだ。あからさまな動揺ではないが、江藤は笙子の次の言葉は判っていた。 「旦那くん、帰ってくる・・・んだよね。」 「そうだよぉ、お昼には、帰ってくるからぁ。・・・今日は、駄目だって。」 「まだ、８時過ぎだよ。・・・出る前には、連絡するでしょ。」 「うん、さっき、メールがあったから、・・・１２時ごろには・・・。だから、駄目だって。」 時計をのぞく江藤は、まだ４時間あるよと言わんばかりの表情だった。玄関で押し問答するわけにもいかず、駐車場に江藤の車がないのを確認すると、中に引き入れた。 「もぉ、昨日、駄目っていったんじゃなかったぁ？」 「うん、でも、・・・寂しくてさっ。・・・だって、旦那くんと今日明日、二人きりだろ。」 「え、・・・そうだけど、しょうがないじゃん、夫婦なんだから。」 「そこだよ、笙子。・・・俺が寂しいのは。」 「わかるけどぉ。・・・駄目だよ、エッチは、なし！・・・わかってるでしょ。」 江藤の目が笙子を狙ういつもの目に変わると、表情をすこしきつくした。保育士が園児にいつも使う、躾の時の顔だった。 「しょうこせんせ、・・・だって、だってぇ。」 「甘えないっ。・・・しないよ。・・・ぜったい、しないっ。」 「一回だけ、一回したら、帰る。絶対、約束する。」 「えー・・・だめだよぉ。」 「じゃ、・・・口で・・・ね、ねっ。」 笙子は、腕組みをして江藤を睨み付ける。睨み付け、承諾を得ぬまま江藤は、履いてきたジャージを膝までブリーフと共にずり下げる。 「え、今日、野球の日？」 「うん、なんで、知ってるの？」 「だって、ブリーフだもん・・・野球の日は、ブリーフだよね。」 「そうだよ。」 「え、朝から？これから？」 「河川敷で、１０時プレイボール。・・・これから、笙子とプレイボール。」 「馬鹿じゃないのぉ。・・・はぁ・・・。」 ため息をついた笙子は、玄関の鍵を閉める。チェーンロックまで施した玄関は、昇すら排除する。カチャンの音で江藤は、ジャージを脱ぎ降ろす。廊下に履き捨てたブリーフとジャージは、無造作に存在している。 振り向きざまの笙子は、江藤の背を押し、２階の寝室へと連れて行く。始めて入った夫婦の寝室は、江藤の部屋より狭かった。 「今日・・・旦那くんとここで、するよなぁ。」 「知らないっ。」 「シーツが、洗濯してあるし、絶対、するんだよなぁ。」 「知らないってっ。」 「あぁ、いいなぁ・・・今日、安全日だろぉ。・・・生なんだろなぁ。」 「しない。・・・しません。今日は！」 「明日はするのかぁ・・・あぁぁ。」 「っもぉぉ・・・。」 江藤の口を黙らすように、笙子は江藤を壁際にたたせると、太股に手をあて、半勃起の陰茎を根元まで咥え込んだ。 「ジュルジュルッ・・・・ジュジュ。」 舌を使って江藤の気持ちいところを入念にしゃぶる笙子。ぶつぶつ言っている江藤の顔は見ないまま、事務的な処理をしているように見えた。 「ほんとに、だめぇ？」 「らぁぁめっ・・・きまっれるれしょ。」 「しゅんっ。」 いつもより早い舌捌きは、江藤の射精管を熱くさせていく。ベルトコンベアのように送り込まれてくる精子たちは、笙子の喉元めがけて我先にと管の先へと急ぐ。 出口の門番である江藤の射精管制はエリートらしく、簡単には通してくれない。尻をすぼめ、射精管を絞っている。 江藤は、笙子の下の洞門に入れたくて仕方がない。今まで、拒まれることのなかった江藤は、テリトリーの違いを思い知らされていたのだった。 夫婦のテリトリーに侵入した間男には、それ以上許されていなかった。夫婦の片割れが、許可しても、もう一つの片割れは、到底許すはずのないテリトリーへの侵入。 笙子の心の主人は、いまだ昇にあるということを痛烈に思い知らされている。 「あぁ、あぁ、・・・っと、ストップ。」 「飲んで・・あげるからぁ、いいよ。」 「・・・顔に、出しちゃ・・・？」 「だぁめっ。・・・また、お化粧し直さなきゃいけないじゃん。」 「んーー、じゃ、これはいい？」 「んぐぐぐぐぐぐっ・・・ぐぼっぐぼっ。」 「笙子の、口マ○コ。」 江藤は、笙子のこめかみを押さえると、オナホールでも使うようにしゃくりながら前後に揺らす。 「んぐぐぐ、んぐぐぐ、んぐぐぐ、・・・グポグポグポポ。」 笙子は、江藤の太股をこらえきれずにタップする。そのタップが、きつくなるにつれ、江藤の陰茎の根元が固く、太く、射精管制の許可が下りたようだった。 「あぁぁ、でたっ・・・。」 「ぐへぇ、げほっげほっ・・・げほっ。・・・も、おぉ、最悪だよぉぉ。」 「だって、させてくれないんだもん。・・・涙目の笙子って、いい女だね。」 「ゲホッ・・・知らないっ。・・・もぉ、野球いきなさい。」 「まだ、一時間あるし、シャワー使っていい？」 「いいよ・・・バスタオル出してあげるから。」 少し口から垂れた江藤の精液を指で拭うと、ぶら下げた陰茎のまま江藤は、部屋を出て階段を下りる。 「ちょっと、零さないでよ・・・あぁ、落ちてるしぃ。」 「マーキング、マーキング。」 階段を下りた江藤は、長袖Ｔシャツを脱ぎ捨てると、シャワールームを指指し、笙子に確認する。 「うん、そこ、お湯、３９℃だけどいい？」 「うん、適温！」 江藤は、夫婦の歯ブラシが並びおかれるバスルームに乗り込んだ。すぐさま、シャワーを浴びる音は、笙子の耳にも届く。キッチンに入った笙子は、汚された喉元を水うがいで流しさる。 鼻の奥に江藤のザーメン臭はかすかに残るが、嫌いな臭いではなかった。水流を止めると、リビングで充電中のスマホが音を立てる。 「ん？・・・はい、もしもし？」 「あ、おれだけど、さすが連休だな・・・渋滞がすごいんだわ、２０ｋｍだって。」 「え、そうなんだ、気をつけてよ。追突とか。」 「あぁ、だから、昼は過ぎるし、メシ食ってくれててもいいから。」 笙子は、ＵＢのシャワー音を聞かれやしないか不安だったので、少しＴＶのボリュームをあげた。案の定、江藤は扉を開ける。 大きな声を出そうとしたところ、電話中の笙子にシーっと指で制された。会話の中身をそば耳立てたいが聞こえないとあきらめた江藤は、大きめな音でドアを閉めた。 「誰かいるの？」 「ん、いないよ。・・・風呂、掃除してたから。」 「そうなんだ、・・・ところで、さぁ、」 「なぁに？」 「今晩、・・・エッチ、できそ？」 「え、・・・なんで、急に。」 「昨日さぁ、・・・ちょっと、夜、エッチな番組見ちゃってさぁ。」 「うん、それで？」 「ちゃんと、勃起したんだわ。」 「え、・・・よ、よかった。」 「だからさぁ、・・・今晩、・・・生理とかじゃ、ないよね。」 「う、うん。・・・大丈夫だよ。」 「じゃ、・・・気をつけて帰るわ。・・・また、高速降りたら電話する。」 「うん、バイバイ。」 フル充電まであと１５％を残しながら充電にコネクターを抜く。江藤のシャワー音は、まだ続いている。先程の言いかけたことを聞きにバスルームのドアを開けた。 「もぉ、聞こえるじゃない。」 「あ、旦那くん？もしかして、もう着くとか？」 「う、うん。・・・１１時までに着くって。」 「そっか、・・・うん、すぐ行くわ、準備もしないとだめだし、今、９時前？」 「うん、８時４５分。」 そう聞くと、シャワーの湯を絞り止めた。笙子は、江藤にバスタオルを渡す。足元を最後に残し、ほとんどの水滴を拭うと、脱衣所の着替えを手に取った。 笙子は、何気なく江藤を見ている。江藤は、黙々と脱いでいた服から、草野球用のアンダーシャツなどを着込んでいく。 あまり会話なく準備が済むと、キスをせがむことなく、笙子の家を江藤は後にした。笙子は、江藤の無音の責めが気になった。昇の帰宅を早めに伝えたことを悟られたのかと、疑心に駆られている。 |
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| 2014.1.22掲載 |
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