はちみつ太郎 作
| ３ リストラ話を境に笙子と昇の性生活は、これまでの週３回から前回の不完全燃焼を最後になくなっていた。 早めにベッドにもぐりこんだ昇にちょっかいを出すように、下半身をまさぐる笙子。いつもなら、この笙子の動きに呼応して、昇の下半身は反応するはずだった。 「笙子、そんな気分じゃ。」 「・・・。」 それにも負けず、布団の中でパンツの上から裏筋を摩る。反応を確かめるように布団の隙間から昇をのぞくが浮かない顔をしている。 「だめなんだ・・・立たないんだよ。」 「え、・・・。」 先端をトランクスの隙間から出し、陰茎をつまむと、笙子は口を開け亀頭をくわえ込む。なんども音を立てながら舌を這わすが５分経過しても、大きくなるどころか弱弱しさだけが口内に残る。 「ストレス・・・だと思う。・・・ごめん、笙子。」 「ごめん、昇さん。・・・ごめんね、ごめんね。そんな気分じゃないのに私・・・ごめん。」 「いい、いいよ。キスだけ・・・それなら・・・気が紛れる。」 「うん。」 二人は顔を近づけると、舌を絡ませお互いの顔をや顎を撫で、耳元に甘い吐息をかけ続けている。昇は、エレクトしない申し訳なさから、笙子の女の昂ぶりだけを奉仕作業のように始めていた。 ハーフパンツの中に手を入れ、ショーツの隙間から繁茂をまさぐる。首筋を舐め上げると、後頭部をのけぞらせた笙子は弓なりに仰け反った。 昇の指先は笙子の女の昂ぶりを感じ取る。普通の男であれば、このあたりでエレクトはＭＡＸになるのだが、笙子の腿に当たる股間は何の反応もなかった。 励ましのような笙子の陰茎への愛撫にたまらず昇は、口に出す。 「駄目なんだよ・・・もう、たたないんだ、止めてくれ。」 「ご、ご、めんなさい。・・・・」 夫婦の会話と夜の交わりはこの一言で終焉を迎える。笙子の心の中では、懺悔というより、心配の種が芽を出した焦りで埋められている。 夫婦生活に支障をきたし始めた夫のリストラ問題は、園児たちの笑顔で幾分か緩和されていく。もうひとつ緩和される要素は、保育園代表として選ばれた江藤とのパートナー関係だったと自覚する。 個別とはいえぬ、他の経験者を交えた園での練習では、汗をかくことで家庭の悩みも半減している。手取り足取りとまではいかないが、ジョークを交えながら説明をする江藤には好感が持てた。 保育士、保護者、園児に人気があるのは間違いないと思えるところだった。 「じゃぁ、笙子先生、連の顔合わせ行きましょうか。」 「あ、そうですね、こんな時間だ。」 ４月の終わり、ＧＷに入る直前のためか、集まりはよく出席率は９０パーセントを超えていた。連の代表の堅苦しい挨拶から、練習日程などが説明される。 会議テーブルの二つ後ろあたりから、聞き覚えのある声が聞こえた。 「一つ、お願いがあります。」 「どうぞ・・・えぇ。」 「山百合園の今田です。」 「はい、どういった？」 「出席に関してなんですが、・・・練習に出られない方には、なにかペナルティ的なものを課すのはどうでしょう。昨年は、率が悪くていい成績が収められなかった。」 「・・・うーん。」 「出たくて出ている人ですよねぇここにおられる方は。」 「そうですが、そこまで、強制は・・・。」 ざわつき始めた時、笙子は後ろを振り返り今田の顔を見た。鼻息荒い感じで、興奮をしている。 「ちょっといいですか？」 江藤は手をあげ、立ち上がり意見を述べる。高圧的ではないその姿は、その場にいた女性保育士の全てが味方した。 圧倒された今田は、なし崩し的に江藤に論破され居場所を失うのではという感じにやり込められている。 「確かに、ペナルティという物も必要なときもあるかもしれないが、それではいい物にはならないですよ。楽しくてここに来たくなるそういう雰囲気作りをしましょうよ。」 誰となく拍手がなり、皆の賛同を得た感じで顔合わせは終わった。この日は練習もなく、一時間ぐらいでお開きとなった。 発言者の今田は、同僚と二人で話し込んでいる。笙子は、江藤と前任地の保育士らと会談していて夕ご飯の場所きめをしているようだ。 「県の体育館の横のパスタやは？」 「いいですね、じゃぁそこまでいきましょう。」 「でも、あそこ駐車場少ないですよ。」 「じゃぁ、相乗りしましょう。私、江藤先生のハイブリッドカー乗りたい。」 「え、荷物一杯で臭いですよ。それに、一台で来てるんで二人乗りですよ、ねぇ笙子先生。」 「あ、はい、・・・でも、わたし、細田先生の車でも・・・。」 「じゃぁ決まり・・・私、江藤先生の助手席ぃぃぃ。」 江藤の前任地の同僚の女性保育士が手をあげ我先にと、ドアを開けた。仕方なさそうな江藤は、運転席に回りこむと申し訳なさそうに皆に移動を促した。 笙子は、細田という年配の保育士の車に乗り込み県立体育館の方向に移動する。 |
| あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。 |
| 2013.12.14掲載 |
はちみつ太郎さんの作品群→ |
無断転載禁止！