はちみつ太郎 作
| ３０ ＡＭ３時、あと三回と言った勲は、よる年波に勝てず睡魔に襲われていた。ゆり子と共に、Ｓルームと呼ばれる仮眠室にガウン姿で横たわる。 ガウン姿の笙子と全裸の悟が、少しの気まずさをごまかすように冗談を言っている。本編である勲との行為の部分には触れず、「ＲＹＯの部屋」の居心地について話していた。 ＲＹＯがノックし、着替えなどを手渡すと、笙子はＲＹＯが出るのを待ってガウンを脱いだ。下着に手を伸ばし、装着を始めると、笙子の着ていたガウンで体の汗を拭う悟。 ガウンのポケットを少し気にした笙子は、ブラとショーツをつけ終わると、悟の着替えを渡し、もう一度ガウンを受け取る。 視線を気にしながら、悟がシャツを頭からかぶった隙に、ポケットからメモ用紙を抜き取り、バッグの隙間に押し込んだ。 「電話鳴ってた？」 「ううん・・・メールあったかなと思って。」 「旦那くん？」 「着信なし。」 「このあと、どうする？」 「家まで、帰れる？・・・寝たほうがいいよ、運転手さん。」 「ラブホは、一泊料金の時間か・・・もったいないね。」 「車でいいよ・・・仮眠するだけだし。」 「そうしよっか。・・・朝になったら、どっか、観光して、・・・夕方帰ろうか。」 「うん。」 笙子は着替えを終えると、化粧を直した。準備が出来た二人は、ＲＹＯを呼び清算を願い出る。 「え？」 「御代は結構です・・・お二人に頂いてるわ。」 ＲＹＯは仮眠室Ｓルームを指差した。勲が会計を済ませていることを告げる。悟は、声を掛け挨拶をと考えるがＲＹＯはそれを制している。 「じゃぁ、これ、僕の電話番号です。・・・なにかあったらお伝えください。」 「了解・・・向こうさんのご希望にってことね。」 「ま、まぁ、そういう感じで。」 「ありがとうございました、奥さま。・・・緊張されたでしょ。」 「あ、はい。・・・すごく。」 「懲りずに、いらしてね。・・・旦那さまも。」 「ありがとう・・・じゃ、失礼します。」 笙子と悟は、暗闇の中ルームを出る。広間には、４組のカップルが居た。笙子と悟は、肩を寄せ合い腕を組み顔を背けるようにして広間から遠ざかろうとする。 ４組の男女は、最中の者も、前戯状態の者も全ての視線が笙子に向かっている。それに気がついた笙子は、視線を落とすように出口に向かう。 狙われた獲物のように一目散とはいかないが、悟より先に出口を目指していた。笙子の姿が扉で見送るＲＹＯの陰に隠れると、口々に笙子への蔑みとも受け取られる言葉が広間を覆う。 「ふふ、みんなに見られてるとも知らずにねぇ・・・えっちな奥さま。」 「旦那も男前じゃないかぁ、これから、帰ってハメハメかぁ。」 「当たり前よ。明日は祝日だもの・・・盛りのついた牝よ、あの奥さん。」 「だが、あの他人棒の男より激しいのか？」 「そうね、旦那に失望する夜・・・になるかも？」 「そうかもな、他人棒の男は、奥さんに電話番号らしきメモを渡していたよ。・・・楽しみだねぇ、他人の嫁ながら行く末が。」 「これからの旦那との営みに辟易したら、すぐよねぇ・・・違うパートナーで表れる方に賭けるわ。」 「どうかなぁ、意外と旦那にぞっこんな感じもあるぞ、・・・ネチネチのエッチは好き嫌いがわかれるぞ。」 「ま、どうあれ、次回のご来店をお待ち申し上げますって感じだよね・・・ＲＹＯママ。」 「そうですね・・・私の勘だけなら・・・パートナー交換・・・成立って感じがするのよね。」 「ママが言うなら・・・間違いないね。あの二人・・・予約が入ったら教えてくれよ、ＲＹＯママ。」 「個人情報は、お伝えできませんよ。・・・割り増し料金なら考えますけど。」 ＲＹＯは、そう伝えると、笙子らをビルの下まで見送りに出た。 バレットサービスにより、ビルの下の入り口に悟のハイブリッドカーが横付けされている。ＲＹＯのパートナーの男性が、助手席のドアを開け、笙子が潜り込むと同時に柔らかくドアを閉じる。 悟は、アクセルを踏み、軽くクラクションを鳴らすと、手を振るＲＹＯに軽く会釈だけして立ち去った。 行き場のない二人は、悟の考えだけでハンドルが切られている。 「笙子・・・旦那くんの家って・・・すぐだよねぇ。」 「うん、・・・駄目だよぉ。」 「まだ何も言ってないよ。」 「家まで行くんでしょぉ・・・だぁめっ。」 「ピンポンはしないよ。・・・駐車場まで・・・ね、ね。」 「えー。」 「もしかしたら、浮気してるかもって？」 「それは、ないと思うけどぉ・・・ばったり鉢合わせってことも。」 「ないよ、今、朝の４時だよ。」 「・・・。」 「決定っ。」 悟は笙子に住所を聞きだし、カーナビにすぐさま登録する。 「およそ、１５分で、目的地に到着します。」 カーナビの無機質な声が、昇の仮住まいへの道順を案内する。笙子は、悟をにらみ、半ばあきらめ顔で助手席で体育すわりで膝を抱え込んだ。 口を尖らせながら笙子は、悟に何もせずに帰るよと何度も鸚鵡返しに言っているが、悟の返事はただ笑顔だけでいたずら心があからさまに見えた。 「目的地付近に到着しました、音声案内を終了します。」 と、ナビが伝えると、笙子は指を指し昇が寝ているであろうワンルームマンションを悟に教えた。駐車場には、昇の車が駐車されている。在宅で、部屋の明かりもついていないとこから、就寝中であることは確かだった。 裏は雑木林に覆われ、道路から奥に入った駐車場からは、通る車も見えない。昇の車の横は、来客用と記され、車は止まっていない。 悟は、そこにバック止めすると、エンジンを止め、車内の鍵をロックした。笙子に何号室か尋ねると、指先を追いながら昇の部屋を眺めている。 「まだ、寝てるね。」 「今何時？」 「４時３０分。日の出まで・・・あと、２時間くらいかなぁ。」 「え？・・・だめだって・・・エロい顔になってるよぉぉ。」 「おれ、頑張ったんだよ。」 「何を？」 「ゆり子さんに、して、してって・・・言われたのに・・・口でしかしなかったんだからぁ。」 「そんなこと、知らないよぉ・・・もぉ・・・帰ろうよ。」 「ここで、・・・なぁ、笙子。」 「だめ、・・・もうすぐ、朝だよ・・・見られるって。」 「後ろ、フルスモークだから・・・な、な。」 悟は、後部座席に移動する。笙子は、助手席で体育すわりのまま昇の部屋のカーテンを見ている。悟は、笙子の顔を覗き込んでいく。 「・・・。」 「来いよ・・・勲さんのち○ぽを忘れさせたいんだよ。」 「・・・。」 笙子は、悟に視線を送ると、口を尖らせたまま後部座席に体を移した。いつも以上に片付けられている後部座席には何もなかった。 この事を見越して片付けたのかは定かではないが、笙子が座席に横たわっても、体に触れるものは何もなかった。 「ほんとに・・・するん？」 「あぁ、・・・だってさ、このまま、帰ってしまったら・・・俺のことより・・・勲さんのち○ぽのことの印象のほうが深く刻まれそうじゃない。時間を置きたくないんだよなぁ。」 「そんなこと、考えてたんだ、だったら、あそこに行かなきゃよかったんじゃない。」 「ま、ま・・・な、なぁ、笙子ぉぉ。」 抱きついた悟は、笙子を上にすると密着させた体をまさぐっていく。服の上から尻や胸元をまさぐるが、笙子から喘ぐ声はまだない。 服のしたからもぐりこませた指は、笙子の突起をつまみ摩ったあたりから、笙子の声は甘い吐息に変化する。 「なぁ、笙子・・・正直に言えよ。・・・どうだった？」 「うん・・・すごかったよ。」 「どういうふうに？」 「隙間ない感じ・・・埋め尽くされてた。」 「ち○ぽが、か？」 「それもだし・・・なんか、悟さんのことを忘れるように、仕組まれて・・・遠ざけられて・・・その隙間も埋められてる感じが・・・した。」 「俺を忘れる感じ？」 「うん・・・忘れるんじゃなくて、・・・遠ざけられる感じ。・・・その隙間に入り込むっていうか、埋められる感じ。」 「恐ろしいな・・・あれぐらいのオジンは。」 「うん、・・・もう、３回したいって、言われたけど・・・。」 「言われたけど？」 「やってたら・・・自分の気持ちがバラバラにされてたかもしれないって・・・思ってて。」 「勲さんに・・・落とされてたかも？」 「かもしれないね。・・・だから、怖かった。エッチだけで、大事な人を忘れさせられるなんて。」 「俺もそうなんだけどね。」 「ん？・・・そうだね・・・そうだった。」 そういうと悟は、笙子のパンツのホックとファスナーを下ろし、膝までずらすとショーツの上から熱い割目をなぞり始めた。 |
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| 2014.2.17掲載 |
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