はちみつ太郎 作
| ３４ 部屋備え付けの露天風呂は、たる風呂で一人で入るには大きすぎ、二人で入るには少し手狭だった。悟が先に入り、笙子のバスタオル姿を待ちわびている。 「えぇ・・・。」 「ん？・・・どうしたん？」 恥ずかしがるようにバスタオル姿で入ってくることを想像していた悟は、ハンドタオルで繁茂だけを隠した笙子の姿に、二人の関係性が深まり過ぎていると感じていた。 「もっと、恥じらいながら入ってくるかと・・・。」 「あ、そうだよねぇ・・・こんな感じ？」 「そうそう、ＣＳな感じだね。・・・温泉めぐりの紹介番組的な。」 「寒いから、いい？」 「どうぞどうぞ。」 湯船を跨ぐ際に、悟は笙子の開け広げた股間を覗き込む。手で押さえ、目の部分に手をあてがい悟の目線を外させる。 「あったかーい。」 「景色は、見えないけど・・・しょうがないよね。そういう目的じゃないだろうし。」 「あぁ、そうだよね。・・・ね、ねぇ・・・ホントにするの？」 「したいんだろ・・・多分、食事処にいた若い男だよなぁ・・・体つきのいい。」 「だろうね。・・・悟さんも・・・いるところでするん？」 「そういう事だよね。」 「じゃぁ・・・あの女の子は？」 「わかんない・・・彼女って感じじゃなかったけど・・・俺、させてくれるんかなぁ。」 「・・・。」 「して欲しくない？」 「んー・・・わかんない。・・・ゆり子さんくらいだったら・・・いいかもだけど・・・自分より若い子って・・・少し微妙な感じがする。」 「取られちゃわないかって・・・こと？」 「そんな感じ。」 嫉妬感を悟に伝えると、笙子は抱き寄せられる。湯船の中の悟に乗っかり舌を絡ませられ始めた。悟の抱きつき具合は、子供が母に甘えるようにきつく抱きしめている。 笙子の肩に顎を乗せると、悟は耳元で本音を吐露する。 「おれも、同じ。・・・旦那くんから奪っといてなんだけど、取られちゃわないかって・・・。」 笙子はそういう悟の首筋を舐めながら同じように言った。 「大丈夫だよぉ。・・・でも、それで興奮するんでしょ、悟さん。」 笙子は、湯船の中の悟の分身が血流を増していくのを太股に感じている。供される身分の笙子も、湯船の中で膣道の火照り具合を感じ取っていた。 「そうだよ、・・・旦那くんが帰ってるとき、すごく興奮して寝れないんだよなぁ、最近。」 「してないよ・・・ぜんぜん。」 「そうだとしてもさぁ、・・・横で一緒に寝てるの想像すると、・・・だめなんだって。」 「そういう時って、どうしてるん？」 「聞くなって。」 「だよねぇ。・・・でも、なんか、うれしい。」 抱きついた笙子は、絡め取るように舌を差し入れ唾液を攪拌している。悟の分身は湯の中で膨張を遂げている。太股の裏に感じる硬さは湯の中とはいえ、悟の希望が満ちているのがわかった。 「入れる？」 「いや、・・・いい。」 「なんで？」 「入れたいん？・・・笙子は。」 「だって、悟さん・・・カチカチだよぉ。」 「カチカチをいれたいんか？」 「・・・うん。・・・入れたい。」 「だめ・・・あの大学生のカチカチを入れてもらうまで・・・おあづけ。」 「えぇぇ、カチカチじゃなかったら？」 「それは、ありえんよ。・・・そうだったら、入れてあげる。大学生くんに見せつけよぉ。」 「うん。」 勃起した悟の陰茎を指先で繊細に刺激している笙子。亀頭の裏側を爪の先端でこそばすようにすると、悟は陰茎に力を入れ湯の中で波立たせるようにした。 洗い場のない部屋つき露天風呂を出たのは、２０時５０分頃だった。汗は流せたものの各部を泡立たせて洗い流せてないのを気にした笙子は、離れ専用の浴場に移動する。悟は、部屋の露天を満喫すると言い、部屋に残っている。 離れ客用の浴場には、誰もいなかった。気兼ねなく足を伸ばし、いつものように体の細部を洗っていく。いつもと違うのは、脇、股間、尻肉の間、この辺りは入念に泡をこすり付けていく。赤くなるのではと感じるほどだった。 湯船につかると、脱衣に人影が見える。だが、入って来るようではなかった。笙子は、係りの人間が清掃に来たくらい考えていた。 １０分ほど湯船につかると２１時４０分を時計が回ろうとしている。笙子は、指折り数えるわけでもないが、女の芯は湯で温められる以上に見知らぬ男との交わりに対する興味で茹り気味だった。 湯の中で、陰唇を自ら指で割って二本の指を軽く差し入れてみた。湯の中である以上の感覚は、若い男の性を欲する本能だとは笙子は感じたくなかった。 抜き去った指先は、湯の中で反対の指と擦り合わせながら拭い去る。粘性は湯の中で感じないだろうが、恥ずかしさがそうさせたようだった。 髪をぬらさぬよう纏めたまま、湯船を出ると、脱衣場に向かう。そこには、誰もいない静かな空間だけがあった。 鏡に体を映し、腰をくねらせ裸体の立ち姿を確認している。「まだ、いけるよね。」と、小声で笙子は発する。スタイルの良さは自分でもある程度の自負はあったが、肌つやの衰えは、ある程度実感している。 それは、若い男と交わる覚悟を口に出したようだ。決意表明を独り言でした後に浮かんだ顔は、悟ではなく昇だった。 「・・・ごめんね。」 心中を口に出して戸籍上の夫に懺悔していた。昇の欲望でなく、悟の欲望を満たそうとしている笙子は、それが自らの欲望であることを否定したかった。そのための懺悔だった。やらされてるという感覚を持ちたいだけのために昇に懺悔をした。 「あれ？」 浴衣と新しいショーツとブラを入れたかごが見当たらない。浴衣とセットで置かれたかごが笙子の目に留まる。 「うそぉぉ。」 浴衣は同じだが、かごに入れられたショーツとブラは、隠す機能を満たしていない代物だった。女の魅力を隠すことなく全てを露わにしようとするそのランジェリーは、２２時以降の秘めた行為に即した切符のように見える。 若い男との交わりの迷いに別れを告げるように、笙子は湯で火照る体をくもの糸でまとった。 繁茂はまったく隠れていない。乳首もそうだった。装着して早々、鏡にその姿を映すと、隠し切れない乳首は勃起しており、牝へと昂ぶらせることを存在付けているようだ。 隠し切れないが、詰め込むように繁茂をショーツの中に押し込むが、仕方なく上の部分からは余した毛が顔をのぞかせたまま、浴衣を羽織った。脱衣所の時計は２１時５０分を過ぎていた。 寒空の中、悟のいる「奏の間」に足を向けた。紐状のランジェリーを覆っている薄い浴衣は、火照った体をクールダウンさせるには十分ではないようだった。 笙子は、歩きながら離れの他の部屋が気になる。他の三部屋の玄関には、ライトが消えている。全ての男女はそのために来ていることを理解させられた。 夜空を眺めると、雲に隠れようとしている月が、笙子の存在と重なって見えた。 奏の間の玄関を開ける。まだ来てないと想像する笙子は、布団に横たわる悟の姿をみて少し安堵の笑みを見せる。 「鍵・・・閉めようか？」 「・・・。」 首を振っただけの笙子を見て、悟は手招きをして笙子を抱きしめた。口付けを交わし二人に会話はない。悟は笙子の覚悟を知り、添え物を布団に横たわらせた。 ある違いだけが悟の目に入る。隆起は少ないものの、いつも以上に胸の頂が鮮明に主張している。目をつぶった笙子は、悟の指を乳首の先端に誘った。 「こんなん、持ってたっけ？」 「ううん、変えられてた。・・・ショーツとブラは、クリーニングしておきますって、置手紙があった。」 「支配人かなぁ・・・交換に来たのは、勲さんかもしれないな。・・・笙子の一日の匂い、嗅がれてるだろうなぁぁ。」 「いやぁ・・・恥ずかしっ。」 笙子は覆いかぶさるようにした悟の唇に吸い付き、とろりとした目で訴えた。悟は目の奥にある言葉を理解した。 「あぁ、・・・学生くんが帰ったら・・・一杯してやるからな。」 「うん。」 悟は、天井照明を落とし、床の間の行灯を一番暗い設定にしたまま、布団の中に潜り込んだ。笙子は、悟の布団に潜り込み、学生の訪れを目を瞑りまっている。 |
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| 2014.2.26掲載 |
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