はちみつ太郎 作
| ４８ 向山研究室には、河が報告書を持参している。向山はＰＤＦで送れと指示したが、面倒くさがったのか文明の利器に追いつけないのか、河は茶封筒の中身を出し話しはじめる。 「先生、どうやら別れたようです。私の推測ですが。」 「いつ？」 「んー・・・１月１６日のホテルでの別れ以降・・・二人に接点は仕事以外ないようです。」 「それだけで、忙しいだけとか？」 「それもあるのでしょうが、・・・２月１１日の祝日。・・・江藤悟、間男の部屋から１０分ほどで出てきています。」 「忘れ物でも取りにきたんじゃない？」 「いえ、泣いておりましたよ・・・この写真・・・どうです。」 「んー、そうね・・・そんな感じね。じゃぁ・・・この前の・・・いつだったっけ。」 「一月末の温泉ですよね。・・・金河温泉郷『望観楼』」 「一人で行った温泉旅行・・・傷心旅行なの？」 「いえ、・・・あそこの温泉には、・・・ある噂が。」 「サスペンスみたいね。で、どんな？」 「オーナーが、スワップ趣味でして、・・・離れを開放して、趣味の世界の男女に貸していると噂でした。」 「でも、一人で行ってスワップは。」 「可笑しいですよね。・・・その日の客筋のなかに、浮いた感じのものもいたんです。」 「どんなの？」 「オーナーに連れられた、若い男二人。・・・体格のいい、ラグビーか、アメフトか、大学生の二人を招き入れていました。」 「その男二人と？」 「うーん・・・そうとは言い切れませんが、チェックアウト時、奥さんはオーナーと話をしていましたね。・・・その若い男二人とは、会釈程度で別れましたが、繋がりがあるように感じ取れましたよ。」 写真をみせられた向山は、笙子の顔と若い男の顔の表情を見比べている。少し照れ笑いの笙子に、自信満々な若い男と、不服そうにふて腐れている若い男。河の言うことの大筋は当たっているように思えた。 「じゃぁ、それが原因で・・・別れたのかしら。」 「んー、立川笙子、奥さんの転職も一因では。」 「４月から違う保育園にってのは、患者である旦那から聞いてるわ。」 「なので、そろそろ、別れを切り出した。」 「んー・・・惜しいはねぇ。・・・不倫妻とＥＤ夫。・・・他人棒でＥＤ克服っていう論文の途中なのに。」 「私のほうも、調査期間一月では・・・報酬も。」 「そうね、・・・でも、河さん。・・・一度、不倫した女よ。」 「一回で終わるとも思えないって事ですか？」 「そう、私だって何百と夫婦を見てきてる。夫の不倫より妻の不倫のほうがたちが悪いのは、まちがいないわね。」 「継続調査をご用命くだされば・・・ありがたいのですが。」 「河さんも好み？・・・立川笙子。」 「えぇ、身長の高さと体のラインが堪らなくいいんですよ。・・・あんな奥さんが他人のち○こ咥えてると思うと・・・、失礼しました。」 「ここにサインでいいの？・・・継続のところ、３ヶ月？。」 「はい、ありがとうございます。・・・では、今後は奥さんに張り付かせてもらいます。」 「よろしくね・・・いずれ、ご褒美・・・立川笙子の秘密、お見せするからね。安くしてくださいよ。」 「へぇ、喜んで。」 河の目は、一月末の望観楼を思い出しその風景を見つめている。笙子の跡を追い、高速を走るとここ『望観楼』にたどりついた。運転席から顔をのぞかせた笙子は、オーナーの勲に駐車位置を尋ねている。 支配人が誘導すると、旅行カバンを渡し、裏口から離れの部屋に通された。河ののぞき見た世界はここまでだった。 オーナーとの密会とは感じられない。一人で来ただけの温泉旅行と言われても可笑しくない。悟が後に来る事も予想してはいるが、どこから監視するかも定かではなかった。 裏口から入ったのは笙子と、オーナーに連れられた若い男二人。男二人は、オーナーに頭を下げながら、冷静な先輩と、好奇心旺盛な後輩と言う感じが見て取れる。 ２１時を過ぎたころ、河はコンビニに腹ごしらえのために移動したが、再び持ち場に訪れたときも悟のハイブリッドカーは見当たらなかった。河探偵業務社の従業員に確認したが、悟の車はマンションの駐車場にあるとの報告を受ける。 ２２時をもって調査を一時中断しようと河は決めた。その２２時頃、笙子のいる離れの部屋の鍵を確かめるように若い男二人が現れていた。 「開いてます？貫一さん。」 「あぁ、・・・開いてる。」 「じゃ、ＯＫってことっすよね。」 「そうだな。・・・でも、がっつくなよ。」 「はいはいっ、餓鬼じゃないってことでしょ。」 「わかってれば良いけど。・・・すげぇ、いい人なんだわ、奥さん。」 「性格だけ？」 「いや、両方、だから、嫌われたくねぇし。」 「貫一さん、俺、その辺ぬかりないっすよ。」 「おまえ、新入生・・・喰っただろ、マネ希望の娘。・・新歓コンパでっ。」 「だからですよ。やりたいさかりの女の扱いに抜かりないってこと。」 「・・・。」 「呆れ顔っすね。・・・寝て待ってるんですか？それとも、お酒飲んで、なごやかに３Ｐ突入とか。」 「それはない。・・・俺の指示に従え。」 「それで、負けたんですよこの前の入れ替え戦。」 「・・・。」 「ね、ここは、次期主将の俺に任せて。」 引き戸を引いたのは後輩の野村だった。押しやるように背後にやられた田沢は、後輩を引き止めることも制することも出来てはいない。 やりたい盛りの野村、田沢も盛りではあるが、先輩風を吹かしたいのか自制している。それが尾を引いた。 「パシッ・・・カチャン。」 するりと体を入れた野村の姿は、扉の向こうに消える。続いた田沢は、引き手を引くが屋外灯の灯りが消えると、そのいきさつを受け入れた。 「糞ッ・・・野村っ・・・野村っ。」 大声にならぬ声で、締め出した後輩を呼ぶ。戸を叩くわけにもいかず、何度も戸を引くが鍵の頑丈さに歯は立たない。 うろうろと戸の周りを動物園のゴリラのように動き回るが埒があくはずもなかった。観念したわけではないが、笙子に対する愚弄だけを心配し、戸の前でしゃがみこんでいる。 野村は、行灯だけのあかりを頼りに笙子の布団に隠れた稜線を拝み見た。ショートヘアの首筋は細く、うなじまでは見えないが、スタイルのよさはそこだけでピンときている。 「まじ、興奮だわ。」 野村は小声で笙子のそばまで近づいた。笙子は、貫一の聞き覚えのある声でないことに気がついている。貫一でないことがわかるとすこしだけ硬直する。体を九の字に曲げると、冷えた両手を太股に挟み込み、温もりを感じるがこわばりは増す。 布団の端をつまみ背後から笙子ににじり寄る野村。笙子は、体を余計に曲げていく。背中に野村の腹筋が重なると、尻の回りに硬い尖りを感じ取れた。 ムスクの香りが首筋に纏わりつくと、加齢の臭いは感じられず、貫一と近い年齢の男と想像した。が、貫一ではない初対面の男に簡単に女を開くことはできなかった。 緊張感のない男の動きは野性味を感じさせられる。覆いかぶさるわけではないが、了承も得ずに浴衣の上からワイヤーカップの下をもみ込み始めている。 振りのけることなく笙子は、それを受け入れている。カップを少しずらされると、乳首の尖りをつままれていく。野村は笙子の声を、喘ぎで初聞した。 「あぁぁ・・・あんっ。」 自己紹介もないまま野村の指先は乳首を摘み続けている。弄りは笙子を硬直から解きほぐすのに効果的だった。 指先にまで筋肉があるかと錯覚するくらいの節くれだった指は、人差し指だけが繊細に乳首を摩擦し、他の指は乳房に圧力をかけていく。 指先を制御したく笙子は野村の節くれに手を添える。声になってしまっていた喘ぎは、効果を発揮しないままだった。 「うぅぅぅん・・・・あんっ。」 笙子は少しの不安が喘ぎを抑制させる。声を交わすことなく体を交わらせることは未体験で、勲ですら素性はわからなくとも会話はない訳ではなかった。 乳房を鷲づかみ、乳首を刺激し続ける若い男に不安を感じないわけはなかった。その不安は耳元に囁かれる言葉で闇に紛れてしまう。 「気持ちいいんでしょ？・・・乳首ビンビンじゃね？奥さん？」 やりたいだけの男の声だった。もう一つ感じさせられたのは、自分もやりたいだけの女なのではないの？という疑問だった。 「あぁぁ・・・そ、そんなんじゃぁぁ。」 「ないよねぇ・・・揉んだだけで、こんなびんびんって・・・いないっすよ。」 「うぅぅ、うぅぅ、あっ。」 笙子の喘ぎと連動し腰骨あたりにある肉棒の硬直は増長しているのを感じた。乳首を転がされながら首筋に舌を這わされ、耳元で笙子の体の変化を評され続けていると、内なる女が芽生え始めるのがわかる。 「旦那さん公認なんでしょ・・・俺、実は奥さんで百人斬りなんだよねぇ。旦那さんに報告したいくらいっすよ。」 「そんなことっ・・・あぁぁ、あぁぁ。」 「僕の中では通過点。・・・なんせ大学生活で・・・３００が目標なんでね。でも、奥さんは５本の指に入るくらいタイプかなぁ。・・・あ、まだ顔を見てないんだけどね。」 「・・・。」 「顔見なくてもわかるんだぁ・・俺。不細工なんて顔見ずにしちゃうんだよね。・・・目隠しさせたりして・・・ハハハハッ。」 「あぁぁ・・・あんっ。」 羽交い絞めに近いくらいに体を交わらせていく野村。笙子はニシキヘビに締め殺される感覚を味わっていく。足は太股に絡まり、両乳房をもまれながら、わき腹周りはロックされている感じがした。 質量のある野村の体は細身だが重く堅い。振りほどこうと考えたときにはもう飲み込まれる寸前だった。 乳房を揉んでいた片方の手は浴衣を払い、下腹部を撫で回す。笙子には３０秒ほど羽交い絞めを逃れるタイミングがあったが、その時間を逸した。と、言うより甘んじて受け入れたというほうが正しいのかもしれない。 耳元を舐め、わき腹から廻した手指は右の乳首を転がし、フリーに遊撃する左手は、ショーツのゴムを通り抜ける。窮屈に閉じられた股関節は、野村の足を緩めることで笙子の自主性に任せた。 振りほどくことなく力を緩めた太股は、その強張りを失わせたことを野村の左手に感じさせる。すると、野村の足は笙子の内股を払い上げ、支えるように軽い角度で開脚させていく。 「期待してたんだぁ。・・・うれしいっすよ。」 「あぁぁ、・・・だ、だめっ・・ああぁぁ。」 「ぬるぬるぅ。・・・興奮しすぎだし。」 「そ、そんなことぉぉぉ。」 「いやいや、奥さん。濡れてるって、十二分にっ。」 野村はショーツから手を除き、ショーツの上から股布を押し、指先で筋を作ると笙子の蜜を染み込ませるようにする。前回支配人から送られたショーツは、風呂場に置き回収されている。 新たに送られた支配人のプレゼントは、新たなる男によって牝の烙印を押す朱印状と化した。 「下着が、汚れちゃうってぇぇぇ。」 「いいじゃん、・・・まっぱで過ごすんだから朝までさぁ。・・・うん筋はまずいけど、マン汁筋くらいどうってことねぇし。」 「あぁぁ・・・だ、だめぇ・・・はひぃぃぃ。・・・あ、あ、あぁぁ。汚れるからぁぁ。」 「じゃ、抑えたら良いじゃん性欲をさぁ。」 「あぁ、無理だってぇ、あんっ。」 「ハハハ、エロぉ。・・・無理なんだぁ抑えるの。年上なのに俺より劣ってるね。俺でもオナ禁７日目だよ。」 「あんっ、あんっ・・・いやぁぁんっ。」 指先をこすりつけるショーツは、湿潤を越えていた。絞れば汁が何滴か零れるだろうとかんじるぐらいだった。 これまで自称ながら９９人の女を締めてきて頃合を知っている野村は行動を起こさない。女を操る術を心得ているようだった。ニシキヘビがするめん鳥への締め付けは幾分か半殺しに近いくらいの強さを見せ始めた。 飲み込まれるように喘ぎ始めた笙子は、いつしか生殺しの良さを熱くした下半身に教え込んでいるようにくぐもった喘ぎを腹に響かせている。 |
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| 2014.4.19掲載 |
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