はちみつ太郎 作
| ５１ ８時前の食事処には、勲と支配人と田沢だけがいすに腰掛けている。来るはずの二人は、最中なのか眠りの中なのか判るものはいない。 「ちーーっす。」 寝癖姿の野村は、頭を書きながら浴衣を着替え、来たときのジャージ姿でいた。皆がその後ろを見つめるが、笙子の姿はなかった。 「笙子さんは？」 にらみ顔で田沢は野村に所在を聞く。濁すことなく、誤魔化すことなく、笙子の声を代弁する。 「メシいらないって、まだ布団の中ですよ。・・・寝たのが、４時過ぎだからね・・・俺は、もう一回って言ったんだけど。」 「・・・、傷つけて。」 「ませんよ。・・・楽しんでくれたみたいです・・・よ。」 「・・・。」 「なに、怒ってるんですか？・・・先輩の女じゃないっしょ。・・・俺を選んだんですよ、奥さんが。」 「お前、選ばれたわけじゃないよ。・・・強引に、部屋に入っただけ・・・で。」 「でも、玄関で聞いたじゃん。開けないでって・・・ね。」 「・・・。」 「あぁ、腹減ったぁぁ。」 出された食事を田沢の目を気にすることなく喰らいついた。ご飯をなんどか、口に運んだとき、野村は落ち込む先輩に声を掛けた。 「奥さん、言ってましたよ。・・・貫一くんに悪いことした、謝っておいてって、・・・いい女ですよねぇ。」 二人の姿を見た勲は、末森と言う監督に見えぬところで電話した。 「あ、監督、・・・えぇ、勝利だけを追い求めるなら野村を据えたほうがいい。チームの和だけを求めるなら田沢だろうね。・・・だが、入れ替え戦のこともある、若く活きのいい野村にＱＢを任せるほうが次の２年も安泰では・・・。」 末森の返答のあと会話を遮断した。末森の答えは食事中にかかってきた野村の携帯が全てだった。支配人と勲は、廊下で声を合わせている。 「競争社会ですか。」 「あぁ、でも、その競争もさじ加減で変わる。まともな競争はないってことだろうな。」 「人のいい人間は・・・。」 「駄目だってこと。・・・誰かを蹴落として、この場がある。君も、私も・・・だよ。」 支配人の肩を叩き、遠ざかる勲。笙子の乗ってきた車の鍵を支配人から受け取ると、茶封筒を持って駐車場に向かった。支配人は、蹴落とされることを心配してか、通常のフロント業務に戻っていった。 ９時が過ぎ、観光バスのエンジン音が聞こえている外の喧騒が笙子の耳にも届いている。５時間前まで体を交えていた男は、この部屋にはいない。 備え付けの露天風呂を上がり、化粧を施すと、思い出したかのように携帯のマナーモードを解除した。メールの受信を知らせるアイコンには、何もない。昇からも悟からも。 悟にメールをしようとする。が、ある戸惑いを覚えた笙子は指先を止めた。前回のホテルの一件、これが尾を引いている。 新年会のあとで悟とのビジネスホテルの一件。河が張り付いていたときのことだ。交わりを望んでいたのは悟。笙子は幾分その気は薄かったその日。 拒絶したわけではないが、尻の穴をまさぐり始めた悟を一喝してしまっていた。生理前の女のいらいらが爆発して、跳ね除けるように悟を押し、そのまま部屋を出てしまっていた。 悟にも原因があった。なにかにつけて昇との行為を聞き、すねるような素振りを見せ、昇との違いを執拗にたずねるようになっていた。 笙子にはそれが一番つらかった。昇はＥＤを克服したわけでなく、克服の途中段階だろうと笙子は感じていた。 それを面白がる悟に、少し昇への配慮を気にするようになり、フラストレーションは生理前と重なり小爆発を起こしてしまっていたのだった。 それゆえ、今回の勲の誘いにもあてつけのように乗っていた。勲からは、電話番号を悟から教わり連絡をつけたと言われたが、内心、笙子の中では売られたと感じる面も大きかった。 「やっぱ、・・・やめとこ。」 「ブルブル」 着信を知らせるメールが手に振動で伝わる。昇だった。心臓の鼓動は早まった。 『おはよ。明日、本社に用事があるから、夕方、家に帰るよ。ご飯、食べに行こうか？』 端的なメールに安堵し、返信文を打ち込んだ。 『おはよ。いいねぇ、どこにする？何時ごろ？新しい店にしない。いいとこっぽいよ』 『じゃ、予約してて、４時には帰るから。なぁ笙子・・・今日って、エッチしたい日？』 『うん！』 その後の返信はなかった。本当は帰ったあとは熟睡したい気持ちだった。が、克服しようとする夫を無下にすることはできなかった。この場に仕向けた悟より昇への傾いた心の移りは、このとき顕著になった笙子だった。 帰宅を始めた笙子の車を河は追った。寄り道もせずに自宅へと向かう車を追いかける。自宅にもよりのインターを降りると手近なコンビニに寄っただけだ。 河は一度通り過ぎ、反対側の車線にから進入する。短時間だが、コンビニに入った形跡はない。どこかに電話をしているようだった。 笙子は、封筒を手にし、身振り手振りで相手と話しこんでいる。電話を置くと茶封筒の中身を広げていた。河は、手にしたものを見切ったわけではないが、数枚の札であることは認識した。 財布の中に押し込んだのかは、わからない。笙子が財布を片手にコンビニに入る。目指したのはトイレではなく、ＡＴＭだった。封筒の中身はこれで合点がいった。 何も買わず外に出ると、自宅への５ｋｍの道のりをいつも通りの速度で帰宅する。ここで曲がるはずの悟のマンションへはウィンカーを出すこともなかった。 自宅にたどり着いたのは、午後１時過ぎ。午後４時まで張り込む。悟が顔を出すかと河は考えるが、その答えではなく、昇の車が笙子の軽の横にバック止めされた。 二人が出かけるのを見届けると、河は疲れを感じ、調査を中断する。 午後７時、河の気配のない自宅に昇の車が止まる。笙子と昇は、夫婦そのものだった。はたからも、どこからみても夫婦。 巣に戻った二人は、当然のように風呂を共にし、当然のようにベッドを共にする。どちらからとなく手を絡め、舌を絡めた頃にはトランクスだけの男とブラを脱ぎ去ったショーツ姿の女が鼻息を荒くしている。 巣の中では、愛を確かめ合う儀式が続く。笙子は、１２時間ほど前にされていた野村との偽りの儀式を思い出していた。 それとは違う馴れ合った二人だが、思い出されるのは近事の行為のほうだった。昇に抱かれる笙子の心はどこかに歩いている。男の指先がショーツを潜り、包皮をつまみ揉み解すと、目を閉じフラッシュされたように野村の顔が目に浮かんでいる。 いつもの通りの動きだが、脳内で変換されたのは若くスナップの効いた指先の動き。いつしか声をあげた時、あやうく野村の下の名を呼びそうになるが、押し留めたとき現実に戻った。 目を開けた笙子は、眼前にある昇の頭を抱きかかえると、耳元で思い出したかのように夫の名を呼んだ。 「昇さんっ・・・クチュクチュ・・・して、指で。」 「あぁ、笙子、・・・気持ちいいか？」 「うん、・・・指で、クチュクチュしてほしぃぃ。」 「毎晩、指でしてる？」 「ううん。・・・毎晩はしてないけどぉ。・・・寝不足の時とかぁぁ。」 「こ、こうかい？」 「うん・・・そぉ、そこぉ。」 「クチュクチュクチュクチュチュチュ。」 笙子の中は湯をかけたように滑り、熱を帯びている。二本の指はかきむしるように笙子の内臓を揺らし続ける。 ２、３分続けると、潤滑が切れたのか笙子が昇の手首を握る。昇は指先を抜くと、ショーツを剥き、陰唇を露出させ、大きく股を開脚させた。 「あんっ、・・・。」 「笙子、・・・少し赤いなぁ・・・お○んこの周り。かぶれてるんか？」 「え・・え。・・・あ、うん、そうかも、・・・ちょっと、痛かったかな。・・・昇さんのせいじゃないからね・・・うん、大丈夫。」 「そうか、・・・舐めてもいいか？」 「え、・・・うん、いいよ。・・・６９するん？。」 膝立ちになった昇は、笙子の手が届くところに移動し、トランクスのゴムに手を近づけさせた。笙子は、寝転んだままゴムをずらすと、半剥けの亀頭を手でさする。昇は笙子の顔に跨るようにし、腰を下ろすと笙子はあまった皮を引ん剥いて亀頭を口に含む。 昇のカリ首には、少しカスが流し損ねていた。舌先で舐め取ると、指先でそれを排除し、丸めるようにするとシーツの上に擦り付ける。 舌を這わされている陰唇の周りは、野村との四度の交わりのせいか、赤く擦り切れているのがわかる。舌先を受けいれるだけなら、我慢も出来ようものだが、ゴム性交となると笙子には少しためらいが残る。 「昇さん・・・ねぇ・・・ごめん。・・・ちょっと、あそこ、痛いかも。」 「え、あ、そうか・・・じゃ、・・・やめる？・・・エッチ。」 「うん・・・ごめん。・・・お口でしてあげるから・・・うん。・・・他にして欲しいことって・・・あるん？」 昇は笙子の陰唇から顔を離し、舌を引っ込めると、自らの欲望をあからさまに露呈させる。 「ごめん・・・お尻に・・・。」 「え？」 「お尻に・・・指、入れながら・・・フェラしてくれん？」 「え、え？・・・私が・・・こう？」 笙子は正座をしたまま、自分のお尻に指を近づけジェスチャーをして見せている。昇は焦ったように手を振り、笙子に正解を告げた。 「違うよ・・・俺の尻に・・・無理だよな。」 「え、なんで？・・・うん、いいけど・・・うん。」 「ＥＤの先生に・・・前立腺の刺激が・・・いいと聞いてね。ごめん、きたねぇよな・・・いい、無理なこといった。」 「・・・。ゴム、していい？・・・指に、・・・それだったら出来る。」 「え？・・・いいんか？」 「うん、・・・だって、治る近道なら。」 「・・・ありがと、・・・。」 笙子は、置いてあるコンドームを中指にはめる。保育士という職業柄、爪をのばすことがないためか、破れる心配をする必要がなかった。 「昇さん・・・ウンチした？」 「園児に聞くみたいだな・・・したよ。」 「じゃぁ、ついちゃうかなぁ？」 「かもな。」 「入れるのが先？口が先？」 「うん、・・・口のほうがいいな。あとで入れる感じ。」 笙子は、半身の体勢で昇のいちもつをくわえ込む。顔を上下させ、ゴムをしていない左指は睾丸をまさぐっている。くわえ込みはやや抑えながらも、亀頭を口内に覆い、あふれ出る涎は膝の上に何滴も零れ落ち続けている。 やがて頃合を見計らう。笙子が上目使いになったとき、昇は肛門の力を緩めた。笙子は指をまわし、尻の肉を割ると、指先を肛門に突き刺した。ずぶずぶと入り込むその感触に男女の差はなかった。 イチジクのような果肉の感触は、自らのアナルオナニで経験したものと同じだった。しなやかな指先は直腸内の睾丸よりの部分に力を加える。 「うぅぅぅ・・・しょ、しょうこぉぉ。」 「グポグポッ・・・・うぐうぐうぐぅぅぅ。」 「あぁぁぁぁ・・・うぅぅ、いぃぃ、・・・しょうこぉぉ、そこぉぉだぁぁぁぁぁ。」 「うぐぅぅぅぅぅぅ・・・うぐぁぁぁあ。・・・ドビュビュビュビュ。」 指先を何度か押し曲げた後、口内に熱い射精液を充満させられた笙子。指先を抜くことなく、何度も刺激を加えると、むせび泣くように昇の尿道は、白い涙を零し続けてしまう。 |
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| 2014.4.26掲載 |
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