はちみつ太郎 作
| ５６ 竜神のおでこの内出血は、目元まで下がり、看護士の言葉どおりに治りかけている。笙子の受けた傷はそれ以上でもなく以下でもない。 この二日間、佐々木は体調不良を原因に園に顔を見せていない。携帯の番号を聞いたが、それに出ることもない。 自宅の住所などを聞き、見舞いに行こうと決め込むが、風邪がうつるかもという同僚の言葉と、申し訳なさがあいまって、携帯でのＳＭＳでの連絡だけにした。 数時間過ぎた頃、佐々木からの返信があった。熱を帯びているし、園児にうつす訳にもいかないので、今週いっぱい休むとだけ告げられている。 東山の事務所での一件は、書かれていない。忘れよ、という佐々木の声なき言葉ととらえ触れるのを辞めた。 １７時が過ぎ、笙子は明日の保育参観の準備をし始めている。副担任の川下と園児がかぶる帽子に貼り絵をしたりと、一時間ほどで済みそうな作業を低いテーブルの上でやっていた。 行田真知子と春村花梨は、笙子の姿を見つけると、合った視線をそれとなく離した。Ｃ更衣室に二人は歩みを始めると、Ｃ更衣室の謎を思い出した。 Ｃ更衣室に春村花梨だけが出てきていない。１８時が過ぎ、作業を終えると、笙子は着替えをするわけでなく帰り支度のかばんを取りにいった。 人影が見えるＣ更衣室。行田真知子の帰宅は目で見ていた。春村の帰宅は覚えがない。人影がすっと消える。 「コンコン」 「入りますよぉ・・・春村先生？」 いたはずの春村はどこにもいない。ロッカーを見ても隠れれるスペースはなかった。 「ガタンッ。」 床下点検口の中から扉の閉まる音が聞こえている。誰かいる？工事の人？でも、そういう予定は聞いていない。春村が降りて怪我でも？と思った時、点検口のふたを開けた。 蓋を開けると、コンクリートの地中梁に埋め込みのタラップが床まで続いている。笙子は、足をのせ、慎重に降りていく。 ３ｍくらいの階高の室内には、高圧注意と貼られた高圧受電設備が据えられている。グラスウールに囲まれた防音性を高めた部屋だが、ブーンっと機械的な音が電気の流れを示しているように音はこもっている。 「グポグポッ。」 笙子はその中でも、電気的な振音ではない、液体をすすり粘膜同士が擦れ合う音を耳にした。誰かいる、一人じゃない。 「春村先生ですか？」 キュービクルの裏に人影があった。一人じゃない、きつつきのように止まり木に手を掛けている影が見えた。 「あ、！ふ、副園長。」 佐々木は、横目で笙子を睨んだ。その目はこっちを見るなと言わんばかりの目をしている。涙目は屈辱からなのか、喉奥に突き刺さる毒針の嗚咽なのかは時系列を知らぬ笙子には判断がつかない。 「お、お、お、・・・いいねぇ・・・俺さぁ・・・見られながらって、興奮するんだわぁ。なぁ、副園長、あんたもそうだよなぁ。」 「うぐぅぅぅぅ・・・うぐぅぅぅぅぅぅ。」 声にならない声を喉の奥で搾り取られている。笙子を見つめたまま口淫を繰り返している佐々木は、なんらかの言葉を笙子に託している。 「おぉ、通訳してやるよぉ・・・今日も女のプライド見せてやってるんだとさ、この俺に。」 「ど、どうして・・・やめてください、・・・園長を・・・呼びますよ、東山さん。」 「呼べよぉ・・・これはなぁ、竜神の内出血が収まるまでの担保なんだとさぁ。」 「え・・・どういうことなんですか。」 東山は、佐々木の髪の毛を掴むと口から陰茎を吐き出させ、目を見て笙子に説明するように促した。 「いいの、竜神くんも傷が消えるまで・・・辛抱してるんだから・・・私が辛抱すればいいだけのこと・・・うぐぅぅぅぅぅ・・ぐっぇぇぇぇぇ。」 言い終わらぬうちに再び喉奥を犯された佐々木は、えづきながらも陰茎を貪るように口淫を施していく。涎は床の土間に零れ、黄色がかった唾液は胃液を伴うほど餌付かされていることを表している。 「・・・。」 「感動だろ？・・・園を守るため、園児を守るため、保育士を守るため。・・・これこそが、無償の愛だよなぁぁぁ。」 「うぐぅぅぅぅ、ぐへ、ぐへっ。」 喉奥を押しつかれた佐々木は、たまらず胃液を戻し、含んだ陰茎を胃の逆流物で汚してしまう。陰茎についた吐捨物を唾液で拭い、手についた汚れは床のコンクリートに擦り付けた。 「や、やめてください。・・・副園長は・・・関係ない。目を離した、私が・・・悪いんですから。」 「大きな声出すなよ・・・人が寄ってくるだろぉ。」 「立川先生、・・・いいの・・・私さえ・・・ね、だから、・・・うぐぐぐぐぐぅぅぅぅ、ぐへっ。」 「黙って咥えてろよ・・・おばさん。笙子先生・・・もっと間近で見ていいんだぜぇ。それとも、あんたが・・・換わりに咥えるかぁぁぁぁ。」 首を振りながら吐捨物で汚れた陰茎を舌と唇で拭っている。唾液は残るが米粒やらは消えてなくなった。片手で笙子を遠ざけようと、手を振り、必死に訴え掛けている。 「見ないで、ね、笙子先生・・・忘れて、このことは・・・。」 「だめです・・・やっぱり・・・副園長は、関係ないんですから・・・わ、私が、責任を。」 「どう、責任取るつもり？・・・宣言してくれないかなぁ・・・女のプライドで。」 笙子は、東山の陰茎をみて一度怯んだ。長さは、一般的なものだった。怯んだその原因は、太さとカリ首、そして、カリ首の下に入れられている七つの真珠だった。 「口で・・・すればいいんですか？・・・それだけで・・・。」 「どうするよ、副園長。」 声を掛けると、東山は反応できなくなるように喉奥の陰茎を突上げる。最大限、腰を振ったその後は、たまらず口を放し、床に嘔吐を繰り返した。 「あぁ、あ・・・こりゃぁ・・・無理だな。よし、笙子先生の意気に答えよ・・・な、副園長。」 背中をさするように笙子は佐々木に寄り添った。壁面に手をかけ、嘔吐を繰り返している佐々木は、笙子に声を掛けることすら出来ないでいる。 吐捨物を避けるように東山は、高圧キュービクルに背を当て、口径の太い陰茎を笙子の眼前にさらけ出し、口で慰めるよう目で合図した。 「おぉ・・・いいねぇ・・・旦那に教え込まれたか？それとも、元彼さんか？・・・それとも、不倫相手の・・・男前か？」 「クチュ・・・クチュ・・・クチュ・・・知りません。・・・出したら・・・帰ってください。」 「あぁ、いいだろう。・・・だせなかったら・・・朝まで、付き合えよ。」 「クチュ、クチュ、クチュ。」 笙子は、暗黙の了解と一回だけの頷きで答えた。亀頭を咥える勇気が笙子にはない。裏筋に舌を触れさせると、真珠の粒が邪魔をしている。それに触れれば東山はそれについて詰問し、それにたじろぐ笙子の姿をみて嘲笑するだけだとわかっていた。 「朝まで・・・それか、二人でするか？年増の副園長と、三十路前の新入り保育士とのコラボ。」 「し、しません・・・副園長は・・・もぉ・・・帰らせてあげて・・・。」 「見られるんが、耐えられん。そういうことか？」 「えぇ・・・お願いですから。」 「副園長・・・お許しが出たぞ・・・今日も明日も・・・竜神の内出血が消えるまで・・・笙子先生がおち○ちんの消毒してくださるとのことだ。」 「・・う、うぇぇ。」 「ゲロ吐き、ばばぁ・・・とっとと帰りな。」 佐々木は、笙子に促され、胸元を押さえながらタラップではない鉄製の扉を開け、足取り重くそこから消えた。 「さぁ、邪魔者は消えたよ。・・・とっとと、出してくれよ。」 「本当に約束してください。・・・竜神くんのおでこ・・・内出血が引くまで・・・って。」 「あぁ、・・・おれも、任侠をかじった男だ・・・二言はないよ。内出血、引くまでだ・・・ち○この消毒は。」 「ぷちゅっ、くちゅっ・・・じゅぼ、じゅじゅ。」 亀頭を咥えこみ、太股を手で押さえると、口淫の速度を早めていく。大きく開け拡げた口の中は、陰茎のアンモニア臭と、佐々木の胃液交じりの酸味が重なっている。 胃液の方が臭気としては勝り、貰いそうになるほど、食道を駆け巡りそうになってしまう。留めるように陰茎を口から離すと、咽び、咳き込む。 ２０分が過ぎたころには、東山の口から吐き捨てられるように言葉を浴びせられた。 「おい、笙子先生・・・おまえんとこの旦那・・・インポだろ。」 「・・。」 「図星か？」 「答えませんっ。」 「こんな、フェラで満足なんだろ・・・インポ亭主としか思えんな。」 「・・。」 「２０分・・・こりゃぁ、いくら時間掛けても・・・無理かなぁ。」 「します・・・早く、出してください。」 「そりゃぁ・・・手で扱けば、すぐにでも出してやるしなぁ。・・・でも、それじゃ、女のプライド、丸つぶれだよなぁ。」 口に含んだ陰茎を離し、手で扱き始める笙子。唾液を手のひらに乗せ、両手でゆるゆると上下させると東山は少し背伸びをしあくびをした。 「旦那もこんなフェラじゃ、イケネェし、・・・餓鬼も出来んよ。少子化を憂う政治家さんに言ってやんなよ。・・・世の奥様方のエッチがお粗末なおかげで、少子化が歯止め効かないんだって、なぁぁ。」 東山は笙子を蔑むように言葉を浴びせかける。世の妻を代表して受け入れたその言葉は、涙に変換され鼻筋に一筋流れている。 電気室の横にある増設用の機械室。ＬＧＳの間仕切りだけが露出し、それぞれの部屋を形成し損ねている地下。笙子が口淫中の電気室からは、グラスウールに阻まれ涎の零れる音も、嗚咽する声も聞こえない。 地下機械室は２年前に増設され、打ち放しのコンクリート壁は、仕上がりが悪く、セパレーターの処理の悪いところからは、グラスウールの防音効果を減衰させるような漏水が見られている。 ボードの張られていない間仕切りは、５箇所に区切られ、そこには個人の私物といいがたいものがぶら下げられている。 ＬＧＳのゲージごとに掛けられた人名札には、こう記載されている。 『慰安保育士１ 木島 翠 育休中 不定期 ５３０日目』 『慰安保育士２ 行田真知子 らいおん組 月水金 ＡＭ６時から ３３８日目』 『慰安保育士３ 春村花梨 きりん組 月水金 ＰＭ１９時以降 ２６５日目』 『慰安保育士４ 谷山里子 ぱんだ組 火木土 ＡＭ６時から １８５日目』 『慰安保育士５ 火木土 ＰＭ１９時以降 ０日目』 空欄の部分が一つある。荷物がぶら下げられているのは３箇所だった。もう一つの仕切りの中には、ベッドが置かれ、敷かれたままの布団はかび臭そうにへタレこんでいる。 春村花梨は、そのかび臭い布団の上に腰掛けていた。隣の電気室から、笙子ではなく副園長の佐々木が唾液を拭いながら現れた。 「花梨先生・・・今日は、誰を慰めるの？」 「田山ゆいちゃんのお父様です。」 「あ、そう。診察かしら？花梨のかわいいお○んこ、指でグリグリされるのよねぇ。」 「は、はい。・・・園長先生。もしかして・・・隣に・・・立川先生が、居られますか？」 「えぇ、・・・そうね、田山さんが来るまでに、花梨先生には、人名札、作っておいてもらおうかしら、・・・名前は知ってるわよね。」 「はい・・・。」 春村は園長と呼んだ佐々木に札を渡された。丁寧に文字シールをかき集め春村は、佐々木に手渡した。 『慰安保育士５ 立川笙子 こじか組 火木土 ＰＭ１９時以降 １日目』 「しっかり教えるのよ。」 佐々木は春村のＴバックショーツのゴムを引っ張り、尻に跡がつくほど弾くと、着替えをして地下楼を後にした。春村は、反対の扉の鍵を静かに締めた時、笙子が嗚咽し嘔吐する声を扉越しに聞いていた。 |
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| 2014.5.7掲載 |
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