はちみつ太郎 作
| ６４ 「火、木、土なんだけど、明日の６月の頭から遅番になってね。」 「あぁ、それで、何時帰りなの？」 「朝が遅くなってね・・・２１時くらいかも。」 「かなり遅くなるんだな・・・朝は？」 「うん、そんなに変わらないけど、１０時出勤くらい。」 「そうか、でも、３時間くらい朝の時間が一緒にできるな。」 「そうだねぇ、でも、ごめんね。」 「ううん、いいよ。・・・じゃ、行って来る。」 「うん、いってらっしゃい。・・・・気をつけてね。」 月曜の午後１８時半。昇は作業服のまま、車に乗り込む。笙子は昇のエンジン音が遠ざかると、戸の施錠を急ぐ。いつもはしないチェーン錠も施した。 暗くするのが不安だった。電気とテレビはつけているが心はそこに浮いている感じがしている。食事は、作り置きのハンバーグをもう一度火入れしている。 洗濯が終わり、ブザーが鳴り響く。蓋を開けると、『慰安保育士５』と刺繍されたエプロンだけが絞られた状態で笙子を覗いているようだった。 脱水終わりのエプロンはそのまま乾燥に回す。ボタンを押した時、明日の夕方のことを想像してしまう。 誰が来るのか、恐らく東山だろうと笙子は予測し、目を閉じると５時間近く咥え続けた今朝の状況が思い浮かび、絶望と違う感覚を思い出させてしまう。 笙子は顎の付け根を指でマッサージする。披露している顎は、付け根だけでなく下あごの薄い筋肉にまで疲労痛を感じさせていた。 休みを言い出したい。が、その時点で自分への仕打ちは酷くなることは明らかで、立ち上げたパソコン画面は、昨日の履歴を表示している。 『新着動画』この欄にそれらしき動画はＵＰされていない。他の動画をサンプルで再生させると、３０秒ほどの動画は、始まり、見どころ、フィニッシュとダイジェストで生々しさを伝えている。 一つだけサンプル以外のＰＰＶの動画をゲストとしてダウンロードできる物があった。初期の動画で、夫婦生活や妻の不貞を克明に記録しているふしが記載されている。 高画質ではない、通常画質で、５分ほどでダウンロードすると、動画は立ち上がり笙子は食い入るように画面を見つめる。 動画の時間表示は３０分程度。始まりは、夫婦の寝室だった。昼間なのかカーテンは閉められているが、薄手のカーテンから日差しは漏れている。 固定されたカメラは、全裸の男性が入ってきたところを写し取り、ちょうどいい高さに目がいくベッドに寝転がる。 ２０代前半の男はカメラを気にしていない。肉棒を握り、硬直具合を確かめているようだった。２分後、下着姿の３０代前半の女が現れる。声も拾われていた。 女の部屋であることと、旦那の帰り時間、ゴムの残数、寝転がる男の名前につけた「くん」つけに女の不倫を認識させた。 飛び乗るように女はベッドで間男の肉棒を握る。扱きながら、キスを繰り返していく。亀頭へしゃぶりつくと、率先してブラホックを自分で外し、ショーツもそそくさと脱ぎ去った。 見せる動画ではないことを伺わせるのは、見切れた男の顔だった。 くわえ込むと女は男の顔を何度も繰り返しのぞきこんでいる。会話の中に男への問いかけが多い。 昨日はどうしてたとか、彼女とは別れるのかとか、自分の次ぎ合える都合を口にする。都合の合う日にちを男が発すると、女はうれしそうな顔で答え、喉の奥深くまでくわえ込み、髪の毛を揺らしながら、施しを続けていく。 ６９になり、女は声を絞るようにして喘ぎを漏らす。その時だった、ピンポーンとチャイムが鳴り、あわてた二人は、動きが止まる。 鍵の開く音ではなく、宅配業者のようなトラックのエンジン音に、それが消えるまで気配を消している。 その後、６９を解き、女は男の滾りにゴムを被せ、正上位で繋がった。あっさりとした性交は見どころというものは特にない。 ３分の２辺りまでいった時、女の携帯が鳴る。動きを止め、表示を見ているのだろうか、少しあわてるが旦那であることを間男に告げると携帯を閉じ、行為にふける。 スパートをかけた間男は、体位を変えることなく女の中でゴム発射をする。ゴムを取り、テッシュでくるむと、ゴミ箱ではないコンビニの袋にそれを入れ込んだ。 動画の最後残り２分のところ、女は携帯を発信する。男はベッドで女の乳房をまさぐり続け、女は会話の相手に真顔で応答していた。今日の夕ご飯の話と、帰宅時間、自動車保険の更新の話しだった。 動画は、会話の途中で終わる。一連して気がつくのは、演技でも、やらされた感もないことだった。旦那が浮気調査目的でしかけた盗撮だろう。 笙子は後頭部に突き抜ける寒気と、下半身にこもる熱気がぶつかっている事を知っている。 終わった動画の横には、『個人情報入手』と『＄３００』の文字があった。１月前の更新日まで記載されている。追跡的に女性の情報が貼り付けられているのだろうと察知した。 キーボード横でおでこを抱え、頭をめぐらすが妙案は出てくるはずもなかった。冷たくなった指先を温めるように、閉じている太股に手先を挟み、温もりを感じる。 目を閉じると、悟との行為が思い出される。よいさ踊りの当日から、別れる前までの行為。全てが記録されているそれだけの恐怖だけではなかった。 さらされる個人情報の二次的被害の方が笙子には重大だった。それを食い止めるのは、自分しかいない。 恐らく、警察を相手にしても、色々な手続きから始めると、動画が広まる方が早いと連想する。 弁護士でもそうだろうし、自分のしてきた行為をそれらの堅物に話すのも、大きな障壁だった。壁にさえぎられると、回り道を探す。 笙子はその回り道に早くもたどり着いていた。温められた指先は、ジャージのゴムを通り抜け、履き替えたショーツのゴムを潜る。 元に戻っている繁茂を指先に感じ、陰唇に指先を訪問させると、そこの住人は洪水注意報を教えてくれる。濡れた指先は、立ち入り禁止ではなくなった洞門を潜らせる。 洞門に手をかけながら進むと、反響した声は頭の中で鳴り響く。あまった左手は、椅子の上で半浮かせた尻を曝け出すようにジャージとショーツを膝までずらし、マウスを握る。 ダウンロードした動画を再び再生する。再生箇所は、１０分過ぎの６９のところだった。笙子は指先を曲げ伸ばせ、それを繰り返す。 ６９をしているように笙子の口は半開き、舌は誰のものを想像したのか、裏筋を舐めまわすようにゆっくりと動いている。 「予行演習か？」と動画の男の声が聞こえる。笙子は重なった自分への言葉と錯覚し、辺りを見渡す。ピーピーと洗濯場で乾燥機の完了の音がした。 指先を拭い、動画を一時停止すると、ジャージを足から抜き取り、ショーツ姿のまま、乾燥機を開け忌まわしいエプロンの乾燥具合を手で確かめる。完全に乾燥した温かいエプロンを明日の着替えの中に忍ばせると、ショーツの脇から指を挿し入れる。 「なんで、こんなに・・・なるの。」 抜き去った指先を見つめ、ぬめりを確かめると、笙子は動画の再生を終了させスタンバイの状態にする。 リビングに残っているバナナの房を握り、皮を剥き始め、口に含むことなくショーツの脇からバナナの先端を陰唇に潜らせる。 少し柔らかくなったバナナは中折れし、皮の中に残った方は、剥かれないままテーブルに残された。 摘むところを失ったバナナは膣肉に押し込まれると、入り口を閉じ、果汁と果肉を確かめるように笙子の中で栄養を絞られているようだ。 ショーツはいつもの位置に戻り、陰唇は股布の厚い部分に隠される。ショーツの上から笙子の指は膣前庭を圧迫する。押し出されそうなバナナの半身を押し戻すように圧迫する。 膣肉の消費カロリーは、バナナのカロリーより多く感じる。実際のカロリーはバナナの熱量の方が上だろうが、女の体全体を熱し始めたカロリーはバナナ半身と同量かもしれない。 指で押し込む度合いが増す。入り口付近にあったバナナの存在感は薄れている。笙子のまだ受精していない遺伝子たちに甘い果肉を与えるように、奥への侵入を許している。 ソファーに腰を落とすと、Ｍ字のまま寝転がり、ショーツを汚すように上から指先を押入れ、果肉の汁と膣肉の汁は、ミックスされ、ショーツに染み込んでいる。 膣肉の圧倒的な筋力に負けた半身のバナナは、笙子の中でどろどろに溶け込んでいる。Ｍ字の開脚を少し緩め、腰を浮かし、ショーツを足首までずらす。 陰唇の周りに粘つくバナナの半身は、形を失わせながら、別の作用で笙子に貢献している。中の半身を解し取るべく、指先はかぎ状に膣肉の掃除を始める。 膣内の違和感は、バナナによるものと、自らが分泌し続ける淫汁によるものの合作だった。膣肉を削ぎ落とすように指先は肉の隅々まではりめぐされ、自らの責めを制御すべく声をあげた。 「あぁ、いぃ、いぃ、くぅぅぅぅ。」 尻に力が入る。昂ぶった後、尻肉に力が加わり、半身でどろどろに固形物ではなくなったバナナの大部分は膣門から吐き出された。 笙子のピンク色の膣前庭は、きれいになることなく果肉にまみれている。全部を拭い取る前に、笙子の手は皮にくるまれた残りの半身に手をだしていた。 笙子は、恐怖と反対にあるような色をしたバナナに安らぎを感じているのかもしれない。 |
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| 2014.5.26掲載 |
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