はちみつ太郎 作
| ６８ 誰もいない朝はいつもと変わらなかった。 ソファーで目覚めた笙子は、偏頭痛のようであり、高血圧時の頭痛のようであり、若干の吐き気もあった。 ＡＭ６時、永い眠りだったかのように体を起こす。昨日、帰宅したままの服装は、乱れることなくそのままだった。 ただ、一つ、変えられたいる部分に気がついた。 「あれ？・・・ショーツ、穿いてる？」 シャワーを浴びた形跡はない。なぜだか、ノーパンだった筈のジャージの下は、お気に入りのショーツを穿いている。 ブラはそのままベージュのままだ。頭痛の中で、熱いシャワーを欲した。ＵＢに体を向ける。Ｔシャツ、ブラ、ジャージ、穿いたことを忘れていたショーツ。順に脱ぎ去ると、ショーツを反転し、昨日の汚れを気にしていた。 鼻を近づける。気になる臭いを感じる。東山には挿入されていないし、射精もされたわけではない。が、臭いはかすかだが生臭く、栗の花の臭いと同じものが鼻に掛かる。 昇が帰ったわけでもない。記憶は、ある程度まで手繰り寄せるが、肝心のところは欠落している。４１℃の湯を体に流す。冷水だった昨日のシャワーと変わり、体に力を与えるように感じる。 スポンジを取るのも億劫なくらい頭痛がしている。手に取ったボディソープを泡立たせ、腋、首筋、乳房の下、繁茂を通り越し、昨日の記憶に泡立てる。 指先は陰唇を何度も割り、そして菊門をも指で洗っていく。指先を入れるのは躊躇った。中指で皺の数を数える程度で止めると、熱い水流を肩から洗い流していく。 カランを閉め、バスタオルを羽織り、水滴を拭いていく。新しいショーツとブラは、パープルで、捨てるに捨てられない悟と購入した代物だった。 何枚かの色違いのＴシャツと、薄い生地のデニムに足を通し、出勤の準備は薄化粧を施すのみにする。 リビングの横のパソコンが起動しているのに気がついた笙子。つけた記憶も、シャワー前についていた記憶もない。 ＵＳＢポートに見知らぬ１６ＧＢのフラッシュメモリーが挿入されていた。笙子は椅子に座り、マイコンピュータから、（Ｆ）ドライブを選択すると、フォルダーの中のアイコンをクリックした。 覆いかぶさられた女の尻と、かぶさった男の尻が揺れている。挿入を開始した男は、一心不乱に腰を突きたて、遠いところを彷徨っている女は、力なく追随してるだけだった。 女の足を閉じさせ、締まりをあげるように男はした。男の太股に間に女の尻を挟んだ。大男は、女の腰をソファ深くに沈め、後背位がしやすいように、生殖器への挿入角度をかえた。 斜め下に押し入れるように突き下げる大男。体重をかけるように女の腰を折り、親の仇のように生殖器を犯している。 ３分ほど突きたて続けた後、男は耐え切れず発射にいたったのだろう、折り重なるように女の体にのしかかると、陰茎を抜き出した。ぶら下げた陰茎は大男にそぐわぬ、小ぶりなものだった。 皮は被り、短めの陰茎は照明に照らされても、芋虫のようで恐怖を感じない。置かれたカメラに向かって大男は、中指を立てている。 録画のままカメラを掴むと、放出した性器にカメラを近づけていく。指で陰唇を割り、中からフローリングにこぼれ落ちるさまを撮りつづけている。 二本の指を舐め、陰唇深く割り挿し、中の精液を流し落とすようにし続ける。女は、体を動かすことなく尻を向けたままだ。 大男は、取り除くようにした精液を女の尻に撫でつけ指から拭う。少し勃起を回復させると、再び尻を突き出した女に挿入を始める。 拾われている声は野太い声だけだった。同じように何度も突きたて、計ったかのように３分ほどで２回目の射精を繰り返した。 カメラを持った男は、抜き去った陰茎と陰唇の擦りあわせを上から撮っている。程なくして、寝返りを見せた女の顔が画面に現れた。 一時停止でなく、再生ソフトの×の部分をクリックする。笙子は、振り返る。キッチンの上にはカメラはない。 カバンの中は、昨日のままだ。二階の様子も見た。クロゼットの中も誰もいない。震えるようにリビングに立ちすくむ。 ゴミ箱を覗いた。ティッシュのかけらもない。玄関で鍵を確認すると、開いたままだった。 「警察に。」 そう脳裏をよぎる。証拠はある。動画だった。指紋も調べれば出るだろう。動きかけた脳は反射的に、その動作を遮った。 「あぁ・・・出来ないっ。・・・したら、だめ、なんだ。」 東山の顔が浮かぶ。主導したのはあの男だろう。笙子は軽自動車を止めた時に横に止まった車を思い出す。 出てきた男は、動画の男だろう。確信はないが、考えられるのはそれだけだった。笙子は、ソファの床に手を突いた。愕然とする。ラグマットの掛かっていないフローリングに深く「正」の文字がナイフのようなもので刻まれていた。 笙子は感じた。 「７回も・・・。」 小さく呟くと涙より先に、もう一度シャワーを浴びに浴槽に向かう。パソコンの電源を落とすと、フラッシュメモリーはそのままにして、湯の温度を４３℃に設定し直した。 笙子が湯を浴びた頃は、東山が野河安にフラッシュメモリーを手渡して３０分後だった。地上のひかり保育園にはまだ誰の姿もなく、居るのは動画を再生している安だけだった。 再生場面は「正」の字が、３になるところだった。後背位で突きつづけた大男は、３回目の射精を膣内ではなく笙子の尻肉の隙間に放出する。 尻の隙間に小さな亀頭を擦りつけ、射精液を拭い去ると、ブラをしたままの笙子を抱えあげる。カメラも手にした大男は、２階の寝室に向かう。その前に、思い出したかのようにチェーンロックを玄関ですると、確かめるようにノブを引き、チェーンも短めに巻きつけた。 笙子は寝室のベッドに転がされる。カメラはベッドの高さのタンスを引き出し、そこに乗せる。その段にあるのは笙子の下着入れだった。転がしたままの笙子を放置すると、カメラを向け、１０数枚あるショーツを広げていく。 気に入ったショーツをアップで映し出し、笙子の顔も並べて撮影している。２０分あまりそれを繰り返し、満足がいったのか、笙子の足を拡げその間に潜り込む。 自らの射精液を舌で舐め取ると、舌に乗せたまま笙子の唇に塗りつけていく。半開いた笙子の口は、舌を絡められ無意識のまま唾液と共に食道に流し込んだ。 ４回目の性衝動は、正常位で交わっていく。この間も３、４分といったところだった。顔に出された笙子は無反応のまま半開きの口に垂れていく射精液を拭うこともない。 ５回、６回とするたびに大男は、回数を彫りにリビングのフローリングに向かう。７回目は、笙子を肩にかかえ、リビングに寝転がせた。大男が気に入ったショーツを穿かせている。 ショーツの脇から小さめの陰茎をビキニラインの生地を擦りながら腰を打ち付けている。笙子の太股を天に向け、自らの短さを補うように体を摺り寄せるように重ねたまま果てた。 抜き取った陰茎は、血流を失ったのか皮は被り、腹の肉に隠れるように縮んでいる。男はカメラを時計に向ける。「２２時４０分」口にしたのはそれだけだった。 操り人形のように笙子の肩を掴み、腋に手を差し入れると、ソファーに座らせる。力なく首を肩に傾けた笙子。陰唇を綺麗に大男は拭い、ティッシュはコンビニの袋に放り込む。 異様だったのは、そこからだった。歯ブラシを持ち笙子の口を開けさせると上向かせ、歯を磨いていた。磨き終えると、うがいできない笙子のためか、濡れティッシュで磨いた歯をふき取って行く。一本一本丁寧にしていく。 大男は、濡れティッシュを嗅ぎ、歯の汚れを吸いこんだ。それを終えると、寝室から取り出したショーツをファッションショーのようにし、１０数枚全ての撮影をこなしている。 動画を止めた野河安は、呟いた。 「若頭も、３年入れば、ただの変態か？それとも、こういう趣味か？」 ランジェリーファッションショーの部分は飛ばしていく。残り、３分ほどの動画を再生する。 笙子は、ファッションショーで選ばれたショーツを穿かされた。生理時に穿く、一番安いショーツだった。大男は穿かせたショーツを大写しにし、安は画面いっぱいの生理ショーツに笑いがこみ上げる。 グリーンのＴシャツを着せ、ジャージを穿かせると、カメラを手に笙子を映し続けている。カメラを止める寸前、ナイフを取り出すと、フローリングに７回した証の「正」の字の最後を掘り込む姿を映し終えると、動画を止めた。 |
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| 2014.6.4掲載 |
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