はちみつ太郎 作
| ６９ その日、笙子は体調不良で保育園を休んだ。このことを想像していたのは、安と佐々木と東山だった。 丸一日、ベッドで過ごした笙子。夜勤明けの昇は気遣うようにソファで眠りについている。夕方過ぎ、昇は一人で食事をし、出かける旨を笙子に伝えた。 力なく返事をすると、昇は食事の準備はしてあると告げ家を出た。鍵の締まる音は笙子にも聞こえる。 されたことを記憶していないだけましだが、されたことを動画で見させられるほうが恐怖心は笙子の弱い部分にとどめを刺したようだった。 鍵のかかる扉に向かい、チェーンロックをかける。お腹は空いている。昨日の晩も食べていなければ、３６時間近く、大男のたんぱく質以外、食道を通していない。 昇の作ったおかゆは、まだ、熱を帯びたままＩＨのコンロの上に置いてある。笙子は、お腹のなる音に気がついた。 コンロにかけたまま、レンゲでおかゆを口に運ぶ。生きている感触を味わえた。忘れることを心に声かける。 「うん、忘れよ。・・・忘れる。」 笙子は、感じていた。人格の形成が変わっているのか、もう一人の自分と話しかけている錯覚。鏡に写った時、そこに二人居る自分に対し違和感を感じなくなっていた。 もう一人の自分が慰め、もう一人の自分が返事をし、明日に向かうこと、すべきことを復唱していた。 木曜日、笙子はもう一人の自分に慰められ、保育園に向かっていた。夕方のことは伝えられていない。 一日の過ぎ行く時間は、子供の成長と同じく早かった。もう一人の自分の存在が、心強い笙子は、Ｃ更衣室に足を向け、１７時の時点で、機械室のドアを開け、コスチュームに身を包んでいる。 そこに佐々木だけが居た。 「慰安保育園は今日はお休みよ。・・・火曜の夜、園外活動があったみたいね。」 「・・・。」 「いいのよ、今日は・・・帰っても。」 「は、はい、・・・いつまで、続けるんですか？」 「さぁ、・・・笙子先生に課せられてるハードル。・・・ご存知よね。」 「・・・はい。」 「それ、クリアするのは当然のことよ・・・その後は・・・笙子先生次第ね。」 「次第って・・・。」 「残るも、退職するも。」 「・・・。」 「あ、そうそう・・・プリント見たよね・・・あれは、ひかり保育園の研修よ。準備できてる？」 「じゅ、準備・・・え、えぇ・・・。」 「安徳寺・・・有名な宿坊よ。みんな、行ってるし。」 「安徳寺ですか・・・ＴＶにも出てる、コメンテーターの？」 「えぇ・・・虐待について、学んでらっしゃい。・・・だから、土曜の慰安保育園もお休みよ。」 「・・・。はい、わかりました。」 「うれしくないの？」 「・・・。」 「いいわ・・・心からここが楽しいって思えるように研修してらっしゃい。」 佐々木は、笙子を置いたまま電気を落とし、地上に抜ける扉の鍵を掛けた。笙子は、下着姿でエプロンをしたまま少し暗がりを歩き、更衣室でもう一度プリントに目を通した。 寺のイメージは、きらびやかな装飾が施されているが、厳かにするべきところは古めかしさを残したままの佇まいである。 １５人ほどの研修は、和尚の軽やかな説法で和やかに進んでいる。笙子の同僚は、美香という女性保育士で年齢も笙子より多少上だった。 ふくよかというべきか、丸いからだの美香は慰安保育園の所属ではない。そういうことからいくらかの安心感は持てていた。 「では、本日の説法はここまでであります。・・・ただ、わしから一点。」 皆が席を立とうとすると和尚は、皆を制し、自分の方を向かせた。いや、皆が率先して促されることなく追随し和尚の口元を注目する。 「児童虐待・・・言葉で言っても軽く感じますなぁ。そこで、先生方にその虐待された児童を見抜く術を養ってもらいたい。」 「え、・・・どうやって？」 口々に、皆がざわつくが和尚は柔和な顔で皆をたしなめる。 「まぁ、そんな、あわてなさんな。煮て食うわけじゃなし。皆さんには個室の宿坊をご用意しております。少し歩きますが、・・・そこで、擬似的に虐待された児童の気持ちを味わっていただきたい。」 「えぇ・・・怖いことですか？」 「いやいや、・・・まぁ１５人の中の３人のかたに・・・軽い、お仕置き、をね・・・軽いものです。」 「なんか・・・罰ゲームみたいねぇ。」 「そうそう、罰ゲームです。虐待する親の始まりは罰ゲームからが多いんですよ。まぁ今回は、・・・扉が、開かないとか・・・おっと、これ以上は言いませんよ。そこで、そういう仕打ちを受けた先生を・・・明日、当てるというのが趣向です。」 「えぇ・・・５分の１よ。」 「ははは、・・・では、また、明日・・・南無釈迦牟尼仏・・・。」 修行僧３人が部屋に入ると、部屋割りをし、個室の宿坊へと案内される。笙子は美香の隣の部屋だった。４畳半の畳の部屋は、格子の窓が手の届くか届かない位置に設置されているだけで、監獄のような感じがした。 布団、枕、小さなテーブルが置かれている程度で、横になると全てが手に届きそうだった。 午後８時になると、修行僧の若い僧侶が鐘を突く。消灯が言い渡されると、電気を消すように促される。 月明かりもない暗い部屋に笙子は眠りにつくほかすることを見つけられず、布団に入り目を閉じた。何度も寝返りをする。６月中旬のじめじめした空気は、寝苦しさを覚える。 虫の音、蛙の声がけたたましく目を閉じても数分で目を開けてしまう。３０分ほどした時、布団の下からカタカタと音が聞こえた。 気にするが、虫の声に負け、眠気にも負けてしまった。汗ばむ体を布団からはみださせ、畳の冷たさを求めるように敷布団からはみだした笙子。 反対側の半分の畳が、少し浮き、６つの目が獲物を捕らえるように暗闇の中きらめいた。 「・・・ばたっ。」 獲物は確実に浚い、忍びのように寝ている笙子を布団ごと絡め、簀巻きにし階段の下へと転がした。 笙子は布団に丸められ身動きできぬまま地下階段を転げられ、３０ｍほど続くくらい地下回廊を足蹴にされていく。 鉄の扉が開く、そこには安徳寺和尚が念仏を唱えている。簀巻きはほどなく、解かれ、笙子は息苦しさから解放される。 「はぁぁ・・・お、和尚さま・・・これが？・・・罰ゲームですか？他の方は？」 「南無釈迦・・・南無釈迦・・・・・。」 簀巻きを解いた僧らは、笙子ににじり寄る。屈強に鍛えた僧は、昔いた僧兵と同じで戦闘訓練を受けていた。両手を組み敷かれ、笙子の背中は頭領格の僧に足で床に押されてしまう。 「い、痛いっ。」 「おぉ・・・ご苦労でした。・・・では、はじめましょ。」 和尚は、三人の僧に手で合図だけする。組み敷いた二人はそのままで、２０畳ほどの念仏堂のような広間の真ん中にある６寸柱に近づいた僧は、手にしたたらいの中をかき混ぜる。 「海藻は・・・どこのものですか？」 「フコイダンは敦賀のものです。・・・混ぜ物の芋茎は・・・徳島産で。」 「肥後のものではないのですね。」 「はい、・・・なかなか、生産者が減っておりまして。」 「ま、時代でしょ。・・・じゃ、塗りなさい、秘仏さまに。」 一人の僧は、たらいから粘つく液体を、６寸柱の前に生えている仏様の形をあしらった像にかける。 念仏を唱えながら、丁寧に撫でさすり、ある程度の量が纏わりつくと、そこを離れ笙子の下に近づいた。 「な、なんですか・・・や、やめてください。」 笙子は体を動かすが、二人の僧は羽交い絞めにし、簡単に笙子を半裸にする。ショーツ、ブラはそのままで上下の寝巻き用のジャージはたたまれることなく放り投げられた。 「ちょ、ちょっと・・・なにを・・・人を・・・呼びます。・・・だ、だれかぁぁ。」 「ふふ、４人しか居ない・・・この寺。・・・ここに、何人の僧がおりますかな？」 「他の先生方・・・が、目を覚まします。・・・だ、れかぁ。」 「勘違いをなされてる。・・・ここは地下の念仏堂。しかも、裏山に掘られている。入り口？・・・さぁ、どこにあるのか？」 「・・・、これって・・・・副園長のっ・・・。」 「あぁ、・・・佐々木さん？副園長なのですか？・・・慰安保育園では。園長と聞き及んで居るが。」 「えっ・・・。」 笙子はある程度、和尚と佐々木の関係を確信した。大きな声も、出ることがなくなり、床に押し当てられた胸元も、僧らの力が緩んでも抵抗をなくしている。 「ほほ、聞き分けがよろしいようで、他の何人かの保育士は手こずりました。・・では、ある程度のことは理解されていることを前提に、始めなさい。」 三人の僧は、二人が笙子を胡坐に組み敷き、縄をかける。首は少し下を向かされ、手は背後に組まれていく。きつく苦しいわけではないが、動きはあまり自由でない。 されることの予想をつかせるように、頭領格は首を６寸柱の方を向かせる。 柱の前、畳の間から二本の仏像が重なるように上を向いている。大きさは、柱側が太さで４寸ほど、その前には一回り長い同じくらいの太さのものが天を向いている。 フコイダンを含まされた仏像は、赤い樫の色をメタリックのように際立たせている。何をするものか、笙子を辱めるものかの想像は痛いほどわかる。 「そんなものに・・・またがれませんっ・・・僧侶のあなた方は・・・女だけでなく、仏も・・・愚弄するのですか。」 「はは、・・・間違いですよ。・・・愚弄などいたしませんよ。・・・仏はあなたを守ってくれるんです。・・・意味は、後ほど判りますから。」 胡坐に縛られた笙子は、みこしのようにかかげられ、六寸柱に近づいていく。柱の周りの畳だけが変色しているのは明らかで、自分がこの行為の初めての生贄でないことを知らせている。 二本の仏像は、先端は丸く磨かれ、幾く筋の彫刻を施し、体や顔を刻んでいる。安らかな顔の物と怒りに満ちた顔は、両極にあり、近づくたびにこの先の行為を想像させていく。 ６寸柱に背を向けると、ヘリのホバリングのように上空を漂う。笙子は逃げるように腰を動かすが、絡められた縄は簡単には解けることがない。 「では、一体化なさい。・・・仏と一つに・・・南無っ。」 「い、いやぁぁぁぁぁぁぁ・・・・やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ。」 眠りについていた同僚の美香は、裏山から鳴き声が聞こえた。目を開け、山の方に聞き耳を立てるが、蛙の声にかき消され、そのまま目を閉じた。 狙いは定まり、怒りと安らぎ、そして嘆きの顔は一体となる。 胡坐縛りのままショーツは脇にずらされ、少量のサポニン配合のフコイダンを生殖器と排泄口に塗りたくられる。僧の指先は、膣穴の中まで食い込まされ、粘液は笙子の粘膜を保護していく。 指先で少しいたずらし、Ｇスポ辺りまで指を潜らせると、笙子の声が嘆きに変わっていた。 「や、やぁぁぁ・・・・離してぇぇぇぇ。・・・あんん。」 「この状況でも・・・喘ぐことを忘れぬとは・・・一体となれっ・・・。」 二つの穴に、仏の頭をあてがうと、抵抗なくするりと笙子は飲み込まされていった。 「ほぉぉぉ・・・どうじゃ、仏を感じるであろぅ。」 「あぁぁ・・・いぃぃ・・・離して・・・いやぁぁぁ。」 「はは、・・・恐怖で舌をかまんとも限らん・・・枷をしなさい。」 僧は、ばたつく笙子を肩で押さえ、体を反らせるように６寸柱に背を付けさせ、柱に縄を巻きつかせると、穴あきの仏顔の木玉を咥えさせ、仰け反るように柱に縛り付けた。 「ふぅぅ・・・はなりれぇぇぇぇぇぇぇ・・・あぁぁ・・・おしりぃぃがぁぁ。」 「２０分・・・さすれば、良くなる・・・その後は・・・ふふふっ。」 胡坐のままにされた笙子は、和尚の顔と三人の僧の顔を睨みつける。４人は、笙子に念仏を唱えだす。冒頭の少しだけを笙子に唱えると、仏坐の脇に消えていく。 尻に喰いこんだ仏像は、長さが４寸ほど。尻肉に挟まれた部分は外に出ているため、直腸壁にまみれているのは２寸５分ほどだった。 性器に喰い込む仏像は、長さが６寸ほどで、空間にあるのは２寸ほど見えているため、実際は４寸ほどの標準的なペニスの長さが含まれていることになっている。 口、性器、肛門と三点を押さえられ、身動きは取れない。動こうとすると、どこかの粘液が仏に当たり、痛点というより、悦点を刺激されていた。 前のめりになることも許されず、笙子はいつも以上の良き姿勢のまま昂ぶりを感じ始めている。涎は仏顔の木玉を伝い、胡坐をかいた太股の間の畳に垂れる。 フコイダンの粘性は重力に負け、仏像型のディルドに粘性を失わせていく。程なく、笙子はある感覚に冒される。かゆみと心拍数の上昇。 膣肉に食い込まされている仏像は、息をしているかのように笙子の内臓を蝕むように冒す。拘束された手は、もどかしさを感じ、かゆみに対応すべく、腰をくねらせている。 すると、二つの仏像は笙子の二つの穴に悦楽を感じさせ、下から上の口に叫びをもたらした。 「うきぃぃぃぃぃ・・か、ゆひぃぃぃぃぃ・・・あぁぁ、ひぃぃ、ひぃ、ひぃぃぃぃぃ。」 熱量は性器と肛門に多大なる消費カロリーを与えていく。汗、淫汁、特有のかゆみ。むずかゆさは、腹のそこを食い破り、背筋を伝い、首筋にまで到達しているように感じている。 時間の概念は失われている。が、２０分、和尚が言った時間は覚えていた。彼らのすることは、当たらないまでも笙子を牝のように扱う、それだけは確実だった。２０分、それがそのタイミングだった。 「グゥゥゥ・・・グゥゥゥゥゥゥ・・・・グワンッ・・・・グゥゥゥゥゥゥ。」 扉の向こうでは、大型犬の唸り声が聞こえている。笙子は身構えたいが、防御するものは黒のブラと、性器を隠すことないショーツだけだった。 声のするほうを笙子は覗く。明らかに人為的に扉が開放された。首輪はあるものの、チェーン、リードその類は見られない。 大型犬は唸ることなく、舌を出し、周囲を見回している。６寸柱の周り５ｍあたりをくるくると笙子の姿を気にしながら回っている。 声を潜め、犬を刺激しないように心かけるが、そうもいっていられないくらい笙子の置かれている立場もやばかった。 「あぁ、・・・だぁぁめぇぇ・・・あん。」 体を少しくねらすと動かぬはずの仏像は笙子の牝肉と腸壁を擦るような感触をもった。その都度、犬への刺激を考慮した喘ぎは木玉を越え、犬の耳をピンと立たせてしまう。 「ウゥゥゥ・・・ワンッ・・・グゥゥゥゥゥゥ、グワンッ。」 むき出しにした犬歯は、唾液を纏い今にも笙子の喉笛を噛み切りそうにしていた。笙子は、言いえぬ恐怖がこの間合いを支配していることに気がつく。 １ｍ犬は近づいた。笙子を見つめている。仲間なのか、敵なのか、判断しているようにしか見えない。 ３ｍまで近寄ると歩を止め、またも背後に回るように柱を中心に回り始めた。グルグルという喉を鳴らし笙子を威嚇している。 友達にはなれない声だった。笙子は涙を零すと同時に、仏像の根元を汚すように小便を垂れ流してしまう。 犬は、その放物線を見つめるように止まる。笙子は少し体を仰け反らせ、乾いている畳の上まで小便の勢いを飛ばし、湿らせる。犬はその臭いを嗅ぎ始めた。熱心にその臭いを嗅いでいる。 何度も笙子に視線を飛ばす。笙子は泣き顔を犬に見せるが、しゃくるように泣く笙子を犬は、唸りで返答する。 「グゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・ゥゥゥゥゥゥゥゥゥ。」 「あ、あ、・・・た、たるけれぇぇぇぇぇぇぇ、えぇ、えぇ、えっ。」 残りの小便を弱まった放物線で描き、犬に少しのたじろぎを与える。動きのつかない笙子は、体を強張らせ仏と同化するように、息を飲み続けていく。放尿も終わり、犬も、再びうろつきを始めると、あることに気がついた。 フコイダンと、笙子の小便は、特有の臭いなのだろうか。少し鼻で嗅いで見ると、仏像に使われている木の臭いも混ざったような臭いがし始める。 木酢液。この臭いだった。笙子の小便のアンモニアと仏像の木酢液が犬を遠ざけている臭いだった。気がついた笙子は、昔、家の犬よけに木酢液がいいと祖父に聞いていたためだった。 犬が近づかない理由。それがはっきりすると、笙子は穴に潜り込んだ仏像との格闘だ。仏像は動じない。が、動きを伴う笙子はそれに対応しきれない。 かゆみ、違和感、悦に昂ぶる女の性。ましてや排泄口まで塞がれるやり方は、尋常な女性では発狂して肛門裂傷となっても仕方がない責めだった。 児童虐待、それを言い訳とした拷問だった。笙子は、悔しさを噛み締めながら、昂ぶる悦楽の享受から逃れる術だけを考えている。 |
| あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。 |
| 2014.6.7掲載 |
はちみつ太郎さんの作品群→ |
無断転載禁止！