はちみつ太郎 作
| ７４ 悟と小山蘭の関係を決定付けた日から数日後。地元ケーブルテレビのネットワークには、ローカルアナウンサーがよいさ踊りの連を説明していた。 市役所連、青年会議所連、地元の企業、保育連。いつもと変わりない集団が変わらない踊りを繰り広げている。思い入れのあった連の紹介される画像に思い入れを消したい人物が写りこむ。 あるタイミングで救護室に移るはずの悟は、昨年とは違い最後まで連で踊り続けている。横には昨晩も体を交わらせていた小山蘭の姿がある。 笙子は、ケーブルテレビのチャンネルを変えた。 「え、見ないの？」 「え・・・うん。」 「知ってる人いるんじゃない？」 「まぁ、いると思うよ。」 「じゃぁ見ようよ。・・・浦ちゃん出てるかも。」 昇は笙子からリモコンを奪い取ると、チャンネルを変え、ケーブルテレビの画像を見つめている。 「保育連じゃない？・・・これ。」 「あ、ほんとだね。」 「誰かいる？知っている人って。」 「ん、誰もいないかなぁ・・・名前忘れてるし・・・他の番組にしようよ。」 「笙子の保育園、野河会は出ないんだね。」 「そうだねぇ、・・・あんまり興味がないのかなぁ。」 「でもさぁ・・・若い先生とか、こういう場じゃないと出会い・・・ないよね。」 「そうかなぁ・・・そんなこともないと思うけど。」 「よく聞くよ、よいさの後はラブホ満室って・・・隣町まで行っても空きがないとか・・・。」 「・・・。」 「俺は踊り知らないから、そういうこともないけど。若い子は、盛り上がるんだろうねぇ。」 「・・・かもね。」 笙子は昇の顔も見ないまま入力を変え、地上波のスポーツ番組に変えた。興味のない野球も、蘇るような画面よりは、ましだった。 昨年のこの日。ここからだった。 笙子はカレンダーの年号の部分を睨んでいる。一年過ぎた今、この後の一年は何が変わるのかさえ、ため息の深さで推し量られた。 昇はシャワーで済ますと笙子に告げる。一緒に入ろうという言葉はない。自信量を少し失ってしまった夫は再びカウンセリングに通う日付を笙子に告げている。 前日に交わりを試すために軽い禁欲に数日前から入っている。交わりを試す日は、明後日の月曜日だった。大学病院の向山医師とは昇の平日の休みである火曜日にのみカウンセリングを行っている。 夫婦での診断もそろそろ言われかねないと、笙子はまだ呼ばれていないが、いつ呼ばれるのかと少し不安はあった。が、保育園での不安よりはパーセンテージが桁違いに低いのだが。 昇が、シャワーだけを浴び、ぶら下がった陰茎をふき取りながら下着をはいて、笙子にタオルを手渡した。 「・・・明日・・・晩、いいよなぁ笙子。」 「・・・？」 「エッチだよぉ・・・火曜、カウンセリング行くのに報告しなきゃ。」 「きょ、今日じゃ・・・だめなん？」 「したいん？」 「んー・・・明日よりは・・・今日？かなぁ。」 笙子は本音を言うわけにはいかない。東山に夕方、散々肛門を舐め上げられ泣かされて帰ったことなど言えるはずもない。そして、ある程度のところまで女であることを認めさせられたまま帰らされた笙子は、求めるところは画面に写っていた悟ではなく、昇しかいないのだった。 求められた昇は、不安だけを口にしている。笙子はその不安を払拭するだけの答えを出せる自信はない。東山に認めさせられた女の部分を静めるための道具であると考えてしまっていた。 「じゃ、シャワー浴びてきなよ。」 「うん。」 笙子は、Ｔシャツを脱衣で脱ぎ、下のジャージも洗濯籠に入れる。黒のショーツとブラは東山にも見られ続け、指先を中までくぐらされたものだった。 その下着姿を見つめている昇の下半身は、反応すらなく、笙子はそれを見ることもなく風呂場の扉を閉め、シャワーヘッドを握った。 昇は、笙子の脱ぎ去ったショーツを裏返し、一日の汚れを見ている。黒のショーツには乾いた染みが色つけられている。まだらに染みているのは白く、鼻をあてがうと酸味でなく、汗の臭いがきつかった。 そうしても昇の下半身には反応が薄い。着替えを終えると風呂場に写る妻の汗を流す姿をチラ見だけし、寝室へ向かいかける。 笙子は、風呂場から同じように昇のシルエットを見ていた。そのシルエットが消えるのを見極めると、石鹸の泡を尻の隙間に泡立たせ、指先は東山の舌で蹂躙された菊の穴を揉み込んでいる。 「あひぃぃ・・・うぅぅ・・・あくぃぃ。」 笙子の中指は、限界線を越えられないでいる。指先は、皺の数を数えるようにだけ周りを揉み込んでいるが、関係者なのに立ち入り禁止の札を外すことが出来ないでいる。 すると、立ち入り禁止ではない穴のほうにその指を振り向かせ、泡だった指先は、滑る必要のない襞を押しのけ入り口の案内人に挨拶をした。 「あぁぁ・・・はぁぁぁ・・・ひ、ひ、ひぃ。」 瞼を大きく閉じ念を唱えるように喉の奥から抑えた声を発している。中指と薬指は、笙子の知り尽くした穴を我が物顔で散策する。 尿道裏の膣肉は、中指で弾くように肉を圧迫する。声は口内に押し込まれ鼻で息だけを漏らし続けている。 薬指の動きは、膣道の抗壁の確保のためか一定の圧力で滑る膣道を安定的に拡げたままだ。中指で探るＧスポットの膣肉は、肉のくびれが指にも伝わるくらいで、肉厚だ。 Ｇスポットの奥を指先で圧迫し続けると、自分の指先が誰かに支配される幻想が笙子を襲う。中指、薬指はそのまま膣道を散策したままだが、尻に近い小指は笙子の尻肉の狭間で待ちぼうけを喰らっていた。 小指は、遊び場を見つけた幼児のように、行き先に向かう。幼児には立ち入り禁止の札が読めないのか、爪の先だけが、躊躇うことなく菊門に入り込んだ。 大人の指は子供の指に引きずられるように、膣道から抜かれそうになる。入り口付近でまだ散策がたらないのか、立ち入り禁止の穴へは向かわないようだ。 Ｇスポットからはずれた中指は、前庭で濡れ場を確かめるようにしている。小指はその二人を引っ張るように立ち入り禁止の穴に声をあげ呼んでいる。 「ああぁぁ・・・。」 押し込むように小指は直腸の腸壁を感じている。括約筋は侵入者を排除するように力を押しいれ、小指に圧力をかけた。 中指らが小指を呼び、立ち入り禁止の穴から引きずり出すと、興味津々の中指が、腸壁の具合を確かめようとすると薬指の反対を押し切り中へ侵入していった。 中指は、腸壁を押し込みその向こうにある膣道をノックする。すると、返事なのか隣人からの注意なのか感触を感じた。親指だった。 腸と膣の境は薄い壁で分けられている。隣の部屋の父親は、子を諭すように膣道を押し込み、そこは子供の入る場所ではないことを告げている。 中指は逆らうことなく、括約筋に追い出されると、親指と一緒にシャワーのスコールに汚れを清められていた。 笙子は指先を見つめ、支配から解かれるようにもう一度石鹸を指に泡立てると流し切った後、シャワーのヘッドを二つの洞門にあてがい、立ち入り禁止の札を元の通りに掛けなおす。 昇は、そのシルエットを見続けていた。落ち込み気味だった陰茎への血流は、復活の兆しを見せているようにみえた。 火曜日、大学病院の診察室ではない研究所に昇は足を運んでいた。椅子に座り、問診を続けている。 それは少しくらい表情だが、向山の表情はそうではなかった。 「それで、奥さんのオナ・・いや、自慰を覗いたときは、良かったけど・・・。」 「えぇ・・・シルエットだけですけど、興奮を覚えて・・・いけるかなっと思ったんですが。」 「駄目だった。」 「はい。・・・また、一からですかね。」 「んー・・・一からでもないわね、だって、奥さんはその後、前立腺マッサージは施してくれたのでしょ。」 「はい・・・でも、私は一向に。」 「昨日も？」 「えぇ・・妻はしてくれましたが・・・オナ・・いや、自慰を見たわけでもないのでより乏しくて。」 「奥さまの協力なしに、回復はありえないということがわかっただけでも、ＯＫですよ、立川さん。」 「そうなんですか。」 「そうよ、・・・鍵がわかったから、これからよ。」 「妻も呼んだ方が・・・いいのですか？」 「いいえ・・・まだ、早いと思うわ。時期が来たら面談をお願いするかもしれません。それよりも、なるべく毎日・・・前立腺を・・・してもらってください。」 「あ、はい。」 「では、・・・お大事に、また来週いらしてください。」 昇は、一礼だけして研究所を去った。カーテンの裏から河がひょっこりと顔を出す。 「なさけねぇなぁ・・・あんだけの嫁さんがいて・・・インポなんて。」 「河さん、・・・寝取ってしまう？」 「私の顔が良けりゃ・・・もうしてますよ。」 「いい美容外科、紹介してもいいわよ。」 「先立つものが・・・ねぇ。」 「そうねぇ・・・それで、今週の報告書は？」 「あ、これです。」 「メールでって言ってるのに・・・。」 向山は、茶封筒から報告書を取り出すと笙子の一週間の動きを流し見る。火、木、土と一定の日にちだけ帰宅が遅いことと、木曜日の行動のところだけを簡潔に記している。 「木曜に・・・元間男のとこにいったの？」 「えぇ、・・・私が張り込みをしていないので良くわからんのですが・・・一度、マンションの下まで行ったようです。」 「で・・・部屋まで行った？」 「いえ、・・・下の駐車場に２分ばかし居ましたが・・・すぐに帰宅したようで。」 「あ、そう・・・未練でも？それとも・・・女が疼き始めてるのかしら？」 「どうでしょうか・・・気になるのは・・・一人黒塗りの車に乗った男と接触しています。その２分の間に。」 「どんな男？」 「そちらの男の車を尾行しなかったんで・・・。」 「一人だったのね・・・。」 「はい・・・経費不足でして。」 「あら、言うわねぇ・・・別れて４ヶ月・・・旦那との交わりも・・・薄い。そろそろ、我慢できなくなってるのは間違いないわね。」 「えぇ・・・保育園での保護者らとの接触は見られません。・・・男性保育士も２人ですが、毎日、直帰の妻子持ち・・・シフトも違います。」 「でも、間違いなく・・・男を欲してるタイミングよ・・・だって、旦那に隠れて風呂場でオナニするんだから。」 「え、・・・動画でも？」 「みたい？」 「えぇ・・・一週間分の経費飛ばしても。」 「ふふふ・・・その息で仕事に励んでよ。・・・動画はないけど、それ以上のもの、見れるから、いつか。」 「はい、では・・・この黒塗りの男が現れたらそちらを尾行してみたいと思います。」 「頼んだわよ・・・じゃ、これ。」 「ありが・・・とう・・・ございます。」 河は礼の言葉を言い終える前に渡された封筒から札束を抜いていた。枚数に不服はあるが結果の出ていない状態では、その口を引っ込めた。今晩の尾行の成果で数枚の札が増えることはまだ知りえない事実だった。 |
| あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。 |
| 2014.6.18掲載 |
はちみつ太郎さんの作品群→ |
無断転載禁止！