はちみつ太郎 作
| ８１ 卵管に針を入れられ採取された花梨の遺伝子である卵子と田山しか知らぬ精との受精卵は、クリニックで培養され、シャーレの上で胚は分裂を繰り返していた。 卵を抜き取られた留守の卵胞に向けての刺激を促されている花梨は、どことなく覆い尽くす不安と解放のバランスの中、広田の男を受け入れようとしている。 ２ＤＫといえば聞こえはいいが、築３０年のぼろアパートは、風呂も狭く、扉も戸襖でプライバシーの境は低い。午後から午前に変わり、蓮の寝息は大きくなり布団からはみ出している。 照明を落とした隣の部屋では、声を殺した花梨が広田進の背中に手を回している。男臭さのする布団の上に転がされていた花梨は、口からこぼれる喘ぎを滅却するため四つんばいで広田に尻を向けると、加齢臭のする枕に顔を伏せた。 挑みかかる広田は、１つ目の避妊具を取り出した。所有者は花梨の物で広田は、花梨の気持ちを量りかねていた。蓮を慮った花梨の行動と信じていたが、食事後、帰宅しない花梨に、まさかとは思っていた。 促すことなく蓮を保育園でのように寝かしつけ、睡眠が深くなると、広田の晩酌に付き合っていた。話は、蓮の今後、そして広田の今後と今までのことだった。 逃げた前妻の話から、欠席裁判は判決がくだり、いない被告人は厳罰に処せられた。 「本当にいいの？、春村先生。」 「・・・聞かないでください。」 花梨は枕から顔をずらすことなく広田にうなづきを見せている。花梨の口淫で、滾りをみせつけている陰茎を花梨の花弁に押し付けると、抵抗なく、忘れていた女の感触を広田に思い出させてしまう。 逃げた女房より締まりの良い生殖器に陰茎がとろける感覚を味わっている。奥に差し入れる前に花梨の尻を鷲つかむと尻肉を拡げ窄んだ肛門もその目に入れる。 ２０代の女性保育士の尻穴は、むずむずと開閉を繰り返し膣奥深くに挿しいれると、緩んだ尻穴の皺は大きく花開いていた。初の交わり、２０近く年の若い女の交わりは広田進の想像を超えている。 「きついですか？・・・濡れてますか？」 「う、うん、きついね。・・・動くと、なんだかすぐに。」 「あぁ・・・うん、・・・蓮くん、いつも、眠り深いですかぁぁぁ？」 「あぁ、揺すっても起きないと思います。」 「じゃ、じゃぁ、お父さんっ・・・深くしてくださいぃぃぃぃぃぃ。はぁぁぁぁぁっ。」 鷲つかんだ尻の肉を手のひらで感じながら、ズブリと深く挿し、覆いかぶさるように花梨に挑みかかる。さするように尻肌を手の感触に覚えさせる広田は、花梨の喘ぎを耳にすると、男の感覚を思い出していく。 引き寄せ突き放し、そしてまた引き寄せる。何度もそれを繰り返すたびに花梨は、尻を撫でさする広田の手を触り、指を絡めている。 広田は体を曲げ抜き差しを忘れぬようにしながら、花梨の指を舌で舐めまわす。花梨の指には、男の存在を示す指輪などはなかった。遜色のない顔立ちと明るさ、器量を考えると年頃の女であれば寄ってくる男もないことはないと感じる。 揺すられるたびに漏れる甘い声も、４０過ぎの男に聞かせるものではないとも感じた。垂れ下がったＴシャツの隙間にも手を入れる。外さないままのブラの上から広田はＣカップほどの乳房を揉みこむと、花梨もその手を握りもっとと欲するように力強く揉ませた。 「あ、あぁぁ、あぁ、・・・はぁ、はぁはぁぁ・・・あんっっっ。」 広田は無心で花梨の花弁を押し開きながら、男の感覚を取り戻していった。花梨の喘ぎもそれを取り戻す作用に貢献している。顔は枕にうつぶせているが、女の喘ぎは漏れていて、演技ではないと確信していた。 「あぁ、すごくいい。気持ちいいよ、春村先生っ。」 「あんっっっ・・・。」 後背位で続けられている交わりは、よそよそしさの表れか名前で呼ぶことのない二人の交わりにはまだ距離があった。埋めるにはまだ時間がかかるであろうし、広田には埋め尽くせる実感もなかった。 「ひ、ひ、ひぃぃ、あぁぁぁんっ・・・いや、いや、・・・・あんっ、だめぇ、・・・きもちいいぃぃ。」 花梨の声は、広田の耳に木霊する。広田は花梨の気持ちを量りたくて仕方がない。演技なのか、蓮に対する慰めだけなのか、陰茎に響く性感が増すたび、自答は繰り返されている。 「お父さんっっっ・・・お願いですぅぅ、私、キスしながらいい・・・だからっ、してくださいぃぃぃ。」 「あ、あぁ・・・うん。」 抜き去る前に体を押し付けると、花梨の体をくるりと反転させそのまま正上位でことを再開する。広田は花梨のトロンとした目を見つめると、して欲しいことが伝わった。 顔を近づけていくと、花梨はあごに手をあて、引き寄せるように広田の舌に吸い付いた。グラインドせぬままでも花梨の息使いは荒い。 鼻息、呼吸は広田に吹きかけられているが、甘い中に漂う夕食の残り香が、生活の中に溶け込んでいる感じがして堪らなかった。 花梨の舌は広田の鼻の下にまで伸び、無精ひげのざらつきを花梨の舌に響かせている。 あご、鼻の下、耳裏と行き来する舌は、広田の自信を回復させるのに十二分だった。男の性は回復どころかいつもより増し、生活の活力は離婚以前の感覚に戻るであろうと予測する。 花梨はまだ広田のあごを舐めまわす。広田は花梨の太ももを腕で押し、担ぐように押さえると、挿入の具合を深くさせた。 「うぅぅ、うぅぅ、うぅぅ・・・・あんっ・・・あぁぁぁ、こえがぁぁぁ、でるぅ。」 花梨は戸襖の向こうの蓮を気にした。広田は少し戸襖に指を当て、コブシ一つ分ほど開けてみる。花梨は、横目で蓮の寝姿を確認すると、二、三度軽くうなづきを見せ、広田に閉じるよう懇願する。 広田は襖を閉じると、Ｔシャツにもぐらせた手で花梨のブラに手をかける。蓮の寝息を聞いた後、花梨に神経がようやく向けきれた。 花梨は背を少し浮かすと、広田の手を先導するようにホックへ向かわせる。手間取るが、解放された乳房はブラのあとを残したままＴシャツと混ぜられ花梨の体から離れていった。 広田は薄くらい照明のなかながら尖りを二つ見つけている。赤子のように吸い付き、男のようにもう一つを転がした。花梨は、かきむしるように薄毛の広田の髪の毛をなでていく。喘ぎをごまかすように首を曲げると頭皮に口を押し付けて漏れる声を抑えていた。 乳首を転がしながら、一休みしている陰茎は、ゴムの感覚を忘れるほど敏感になっている。花梨は、目を閉じたまま転がされている乳首に広田の顔面を押し当てる。 耳元で喘ぐように懇願したのは花梨だった。 「もぉぉ、・・・我慢できませんっ。・・・コツコツ・・・あんっ・・・そ、そぉぉぉ・・・。」 ささやいた花梨の顔を見つめる広田は、行き着く先を問うた。 「中で・・・出しても・・いいかい・・・もちろん・・・ゴムのままだけど。」 「はい・・・うん。」 目を見つめ返すと花梨は再び舌をのぞかせ、広田もそれに合わせて花梨の赤い舌を吸い取っていく。繰り返される腰の打ちつけは、夢の中の蓮に聞かせているように大きくなり、花梨の喘ぎの中にも蓮への感情が移りこんでいた。 「あひぃぃ、ぃぃぃぃ・・・・あぁぁ・・・・れんくんっっっっ・・・先生、ごめんねぇぇ。・・・あ、いっいぃぃぃぃぃ。」 「春村、せんせぃぃぃ・・・あ、・・で、でそぉぉ・・・あっ、あぁぁ。」 卵のない排卵日に擬似的なる受精行為を施された花梨は、夢の中の蓮へ侘びをなんども繰り返しながら、２回目の交わりを広田に求められていた。 クリニックでは誰ともわからぬ精をかけらられ、花梨の受精した胚が４回ほどの分裂を始めている。その受精卵には田山がすでに名をつけている。 「いっちゃん・・・上手く育ってお母さんの元に帰してあげるよ。」 田山は自らする初の体外受精に興奮を覚えている。下腹部をズボンの上からさすりながら、春村花梨の受精卵に付けた名前を呼びかけ、分裂を促しているようだった。 春村花梨と広田進の２回目は、時間をおかずして始まっていた。土曜の深夜、交わりの音は隣室の大学生にも聞こえているようだった。壁ドンをされることはない。聞き耳を立てているかのように静かだった。 学生は、隣の中年おやじが子供を寝かしつけたあとＡＶを見てるくらいにしか思っていなかったが、花梨の生々しい喘ぎに色めき立ったのか、ベランダの戸を開けこちらの音を気にしだした。 広田には気がついている。隣人の素性は引越しの挨拶で見聞きしていた。花梨と同年代ではあるが、女に縁遠い顔立ちだった。広田進も先週まではその学生と同じ部類の男だった。 転がってきた幸福を逃さまいとする広田は、２回目の交わりに消極的だった。花梨のかけた言葉はそれを否定する。 「このまま、まだ、したいです。」 花梨の言葉は想定外だった。シャワーにもいかず、抜き去った陰茎の避妊具を外し、膝立ちの広田に土下座するように汚れた亀頭を咥え込み、舌で舐め取っていく。 きれいにし終えてもなお、亀頭から唇を外そうとせず、舌で膨張を促すように鼻から吐息を漏らしながらしゃぶっていった。 「うぅぅ・・・あぁ、春村せんせいぃぃ・・・いいよぉ。」 「うぐぅ、うぐぅ、うぐぅ・・・口に出してもいいですよ、お父さん。」 花梨は上目で広田を見つめると尖らせたままの口を吸い上げ、一度亀頭を口から離していた。腰の引けた広田は、花梨の髪の毛をさすりながら、照れたように苦笑する。 「夢見たいだぁ。・・・春村先生みたいなかわいい女性と・・・。」 「チュッ。・・・ぐちゅぐちゅぐちゅぅぅぅぅ。」 鈴口を尖らせた唇でタッチし、おちょぼ口で亀頭を吸い込むように口内に封じ込めると、花梨は目を閉じ毛の生えた広田の乳首を指で転がしながら、男の怒張を玩んでいく。 「あぁ、たまらないっ。・・・あぁぁ、で、でそぉぉ。」 「うんぐうんぐっ・・・うぐぐぐぐぅぅ。」 口内でのストロークを増し、舌を巻きつけるように亀頭を締め上げる。上目見た広田の顔は低い天井を見つめ、花梨のこめかみに手を沿え、押し付けるように口内を蹂躙した。 「あぁ、・・・・・あっ、いくっ・・・あぁ、あぁぁ・・・でるっ。」 花梨は口から離すことなく二度目の広田の精をのどの奥へと受け入れた。唾液を分泌させ、精を絡めると鼻につく臭いを封じるように目を閉じて喉を鳴らした。 飲み込んだ後、口元のよだれを手で拭うと、花梨は放出もとの睾丸を軽く揉み、天井から視線を下げた広田の言葉を待った。 「気持ちよかったです、先生。・・・苦くなかった？」 期待した言葉ではないが、蔑まれ続けてきた慰安保育士へのねぎらいの言葉のように感じた花梨は、目に涙を浮かべていた。 「ごめんなさい・・・苦かったですよね。・・・お茶、持ってきます。」 陰茎を垂れ下げたまま広田が台所に向かおうと体を向けたとき、花梨は広田の太目の腰に抱きつき陰茎をしごきながら言った。 「花梨を・・・気持ちよくしてくださいっ・・・これでっ。・・・このままでっ。」 広田はお茶を取りに行くのをやめ、腰にすがる花梨を抱き寄せ、陰茎を咥え込んでいた花梨の唇に吸い付く。絡められる花梨の舌は巧みに動き、三度目の発射の準備は万端になっていく。 薄い敷き布団の上で広田と絡み合う花梨は、口に含んでいた陰茎の先端を指先で撫で上げている。自分の唾液と広田のカウパー液は混合し、粘膜の保護をしながら花梨の花弁に狙いを定める。 定めたのは広田でなく花梨で、２度の射精と口淫を終えているためか、前戯に時間をかけることはなかった。横たわった広田は、主導権を花梨に渡し、跨った花梨に視線を送った。 手のひらに載る程度の乳房は、乳首を尖らせ広田の方を向いている。半開きに開いてしまった広田の口を花梨は見つけると、体を被せるように広田の顔面に胸元を宛がった。 挿入前に確かめることもあった。広田は聞いた。生挿入を求める花梨に、覚悟のない男の問いかけだった。 「中で、出ちゃったら・・・。大丈夫な日、なの？」 「うん、・・・大丈夫です。・・・だから・・・いっぱい、したいから。」 胸元を押し付けると、片方の乳首は広田の口に含まれる。甘噛みし、舌で転がすと花梨の顔は天井を向き、甘い声は隣人にも聞こえやしないかと慌てる。 甘声を花梨は押し殺すと、陰茎に手を添え緩みきった花弁に粘膜のまま宛がわれていく。花弁の割れる感触は、亀頭にダイレクトに伝わり、また、避妊具のついたファーストコンタクトより明らかにスムーズに潜り込む。 広田の感想は当たり前だった。 「あぁぁ・・・あったかいぃぃ。」 「う、うぅぅんっ・・・いぃ、ですぅぅ・・・・動いても、いいですかぁぁ？」 「あぁ、・・・。」 花梨は、広田の上で体をビクつかせながら小刻みに揺れている。ぬるぬるとした膣肉は、飲み込んでいる陰茎を何度も抜き差しさせ、白いぬめりを纏わせながら摩擦を楽しんでいた。 「ぬっちゃぬっちゃ・・・ぬっちゃぬっちゃ・・・ぐちゅぅ、くちゅぅぅ。」 会話は無くなるが、下半身の重なり合う音は淫靡になり、寝息を立てている蓮のことも忘れがちだ。二度の射精が影響しているせいか広田の持続力は生挿入のわりに耐えていた。 広田はまだ、花梨の真意に気がつけないでいる。交わりながら聞くほど野暮ではないが、越えてもいいといわれた一線に自分でハードルをあげる。 上で動き続ける花梨の腰をつかむと、体を押し倒すように敷き布団に転がした広田。生挿入のまま、挿入部位を覗き込み、若々しい割れ目に喰いこんだ分身に声をかけるように、交わりの姿勢を男目線に変える。 ストロークを密にさせ、体を抱き合わせながら、舌を絡ませていく二人。時折、花梨は広田の耳元に舌を這わせ、女の切実を語る。 「うぅ、いぃ、いぃ、いぃ、いきたいぃぃぃ、ああ、ああ、あ、あ、あ、あ、あ、あぁぁっぁ。」 「あぁ、いきそぅ、がまんできんっっっっ。」 「あぁぁ、あぁ。」 花梨は広田の体にキツク抱きつくと、中に出される精を搾るように膣肉がきゅっと締まったのを感じた。が、広田はそれにおびえたように、陰茎を抜き去ると狙うでもなく、白く泡立っている花弁に向けて射精した。 手を添えずに抜いた広田は、力なく花梨に抱きついている。花梨は、広田に問いかけることなく、耳元で女心を口にした。 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、・・・良かったです。」 「おれも。でも、やっぱり、中はだめだよ。・・・春村先生。」 「うん、そうですよね。汗すごいですね、あ、私もだぁ・・・お風呂・・・いきましょ。」 エアコンの効きの悪いぼろアパートで交わった二人は汗腺から吹き出すように出た玉の汗は狭い風呂場で交わり、汗と生殖に使われた二人の分泌液を排水溝に流しさり、四度目の交わりはそこで行われたであろう。 虐げられる交わりに別れを告げたい花梨は、待ち受ける受精卵の着床までの間に結論を出せそうな気がしていた。 |
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| 2014.7.5掲載 |
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