はちみつ太郎 作
| ９９ ベージュの短めのワンピースに黒のクロップドパンツ。寒さのためか、その下には黒のレギンスも穿いている。 望観楼に着いたとき、車を降りる時は、紺色のダッフルコートも羽織っていた。解剖のスタイルと東山に言われ、逆に着込みを多くしたのは言うまでもなかった。 化粧は最低限で、昇に対面させられるその瞬間に何を言おうかも車中で自答し続けていた。答えは出ぬまま、望観楼にたどり着くと、いつものように支配人が出迎えるが、勲の姿はなかった。 裏切りを知られていることは、承知のはずで、それをとがめられる事を恐れてでてこないのだろうと察している。押し出されるように東山に車を降ろされると、車内でつけられた首輪と鎖が、唯一のアクセサリーだった。 結婚指輪を外された笙子は、貴金属的なアクセサリーを外されて、赤い皮の首輪だけが慰安保育士としてのポイントだった。鎖を引く手をきつくしたとき、支配人はようやくその笙子の姿を見た。 唖然とした表情を浮かべるが、支配人には何もすることは出来ない。だが、下着を取り替えるとき以上に興奮したのは、東山の視線に捕らえられた仕草でわかる。 「変わるんだよ・・・笙子は。」 「・・・。」 支配人は言葉の意味を理解できないでいた。鎖に引かれる笙子と手綱を引く東山を響きの間に案内すると、玄関前で勲の言葉を伝えた。 「東山様・・・オーナーから伝言で。」 「なんて？」 「旧館のお客様は、お喜びの様子で・・・。」 「あ、そう、・・・他には。」 「あ、奏の間のセッティングは終わっていると・・・それと、残りのドリンクの納期のことを。」 「それね・・・トランクに入れてる・・・直接、渡すけど。」 「それが、本日、・・・所要で。」 「いねぇんだ。・・・じゃ、金と引き換えで鍵を渡すって。でも、・・・笙子の門出を祝えないんだ、立会いしてもらいたかっただろう笙子。」 「・・・。」 「裏切り者のもとで・・・なぁ。」 「では・・・ごゆっくり。」 響きの間に潜り込んだ笙子をわれみながら、漲る血流を恥じた支配人は、勲に電話を入れた。 「オーナー・・・籠に入りました。物は、トランクの中です。鍵は、渡されておりませんので。」 それだけ告げると、響きの間を見つめ、もう一度股間の位置を直している。 いつもと同じ空気はそこにない。田山の物であろう診察バッグには、何らかの医療器具が入っているに違いなかった。想像をすること自体に震えを感じ、笙子は、框のあたりで足をすくめた。 「どうした・・・。」 「か、帰りたい。」 「何をいまさら・・・帰ればいいが・・・旦那もお楽しみのようだぞ。・・・手入れを入れる手筈だって出来る。そうすれば、新聞に載り・・・お前らの関係も終わり。・・・俺にとっては好都合だが。」 「・・・。」 かなわぬ抵抗をあきらめると靴を脱ぎ、冷たい畳の間に足を踏み入れる。着替えも何も用意していない笙子は、首輪の鎖を床の間の床柱にくくられると、一定の移動距離しかないことに不安を感じる。 時計は午後１９時を指している。宴の時間には持って来いの時間だ。二人しかいない部屋の空気は冷たく重い。数分の静寂の後、準備を終えたという声の後、白衣姿の田山が乗り込んできた。 「おぉ、先生、・・・どうよ、専門外の診療は？」 「えぇ・・・上手くいきました。・・・残ってたのも、全て吐き出させたけど・・・ま、少しの残りはご愛嬌で。」 「じゃ、男のようで。」 「男ではなくなった、そんな感じかな。」 二人の会話は笙子の耳には遠く聞こえていない。聞こえないのではなく聞きたくないが正解だった。準備を促すように田山は、東山を挑発する。 「解剖用の衣装ですか？」 「あぁ、自分で選ばせた。な、笙子。」 「・・・。」 「来るまでに下準備したんでしょ？」 「どうだ、笙子、答えろよ。」 「く、口で・・・しました。」 「お尻の口でかな？」 「く、口です。」 「東山さん・・・感度は上がっているはず・・・お尻ではしてたんでしょ。」 「え、だめなんじゃないのか。」 「お○んこは・・・しないほうがいいとは言いましたが、・・・あなたの好きな穴はダメとは言ってないでしょ。」 「なんだ・・・そうか、・・・どうしたい？１０日もご無沙汰じゃ・・・したくて仕方がないん・・・だろ？」 笙子は何もいえず、下を向くだけだった。交換条件も思い浮かばない。肛交をすれば女体改造を免れることは、もうないと感じていたからだった。 「どうしても・・・手術を・・・。」 「あぁ、望むも望まないもない。・・・慰安保育士として陥れたあいつを恨めよ。」 悟の顔は思い浮かんだが、すぐさま流れ去るように表情は怯えていたまま消えていく。現実から逃避したい気持ちが悟の顔をぼやけさせていった。 昇と須山は、旅館の一室で食事を終えようとしていた。下着姿に前掛けだけの花梨と朱音に酌をされながら酔いの加減を深めていた。 「佐々木さんだっけ、仲居頭さん。」 「あ、はい・・・東山さんですか、もう少し遅くなると、言われてましたが。」 「そうなんですか。・・・食事も、頂きましたんでねぇ。」 「須山さん、・・・お部屋別々にしましょうか？・・・空きもありますから。」 須山と昇は顔を見合わせている。受け答えはないが了承の笑みを浮かべたところで、花梨は少し重いおなかを支えながら、昇の手を握っている。 交われるかどうかの確証もない昇は、花梨に気を使うように須山の部屋をでていった。それを見定めた佐々木は、須山にエナジードリンクを呷らせ、飲み口を口につけさせる。 二回にわけ飲み干した２５０ｍｍ缶を佐々木に手渡すと、朱音に挑みかかろうとするが、余興の場所はここではないと耳打ちすると、朱音をおいたまま部屋を連れ出されていく。 足元はしっかりしたままだが、離れにむかう須山の視線はおぼろげで、どこをどう歩いているのか、自分では定かでない。佐々木に何度も、行き場と帰り道をたずねるが、あきれるように突き放した。 「さ、お客さん。・・・東山さんとお気に入りの奥さん、ご用意しておりますよ。」 「あ、あぁ・・・あ、なんだって？・・・お気に入り？」 背を押すように玄関から押し込むと、佐々木は少しだけ中を覗き、宴の進行具合を垣間見た。 「あらら、・・・そのままあの男に交わらせるつもりねぇ。」 須山は、上がり框の上で浴衣を早くもはだけている。ベージュのマットレスの上に半裸で転がされている笙子の姿を見ただけで自分へ供される物だと問いもせず感じ取っていた。周りには東山も田山もいない。 床の間の行灯だけが光を帯び、笙子のシルエットを表現していた。すぐさま、浴衣の帯を解き、Ｔシャツを脱ぎ捨てトランクスのみになった須山。 下着姿で後ろ手拘束の人妻活け作りに、よだれを垂らしながら、手づかみで踊り食っていく。 足の狭間に体をもぐらせた須山。太ももを押しのけ、笙子の股座に顔を押し当て、生の匂いを嗅ぎ別けていく。何事か笙子に話しかけるが、聞く耳に入らない笙子は、荒々しく捌かれる舌の動きに翻弄されていた。 須山は太ももを大きく割り、笙子のワインレッドのショーツを半ずらし、尻肉の割れ目とまだ閉じられたままの陰唇を視界に入れる。ショーツは膝に絡ませたまま、その間に潜り込み、陰唇に指を這わせながら、左右に力をこめると赤身の刺身が下の上に乗った。 「あぃぃぃ。」 膣前庭、陰唇を大きく舐め上げると須山は笙子の女の違いを言い当てた。 「あれ、奥さん・・・クリちゃん、大きくなってんじゃ？・・・包茎気味だったのに・・・プクッと見え隠れしてる。」 「あ、あぁぁぁあ、だめぇぇ、ですぅぅ。」 「ほぉらぁ・・・剥かなくても、ね。」 須山は包皮に守られている先端だけを舌先で転がすと、笙子の体のよじりかたで、赤身の刺身に熱が入るのを知った。自分の唾液でもないものが陰唇からじわっと垂れ下がると、すしネタを握るように指先で赤身をこね始める。 「グチュグチュゥゥゥゥゥ。」 須山の指は反転し、すしネタを握るようにＧスポットをこじている。何度もその赤身の肉を押し固められるようにされていると、笙子の声は正直な女の声になった。 「あぃぃ、いっちゃぅぅしぃぃ・・・あんっ・・・で、でるっ。・・・・ジョッ・・・ジョ。」 ベージュのマットレスはこぼしたしょうゆのように染みを作り、際限ないように範囲を広げていた。中指と薬指は抜かれることなくまだ赤身のネタを握っていた。 クチュクチュと音だけたて、握られていると活き作りな笙子は、口をパクパクさせ絶命まじかな舟盛りの鯛を思い出させている。 「さっきいただいた舟盛りとそっくりだよ。・・・相方は刺身が苦手だが、この奥さんの舟盛りだったら飛びつくんだろうなぁ。」 沸いて出ている笙子の蜜壺の入り口に受け口で顔を近づけると、抜いた指を一度舐め、手ぬぐいでなく笙子のショーツで拭い去る。 笙子は、話の中身を精査する。昇が来ているのは明らかだった。ただ、同じ行動をしているかは定かではない。田山の会話に出ていた男じゃなくなった男というのが気がかりで、昇に万が一のことでもあったのではと、須山に尋ねてしまう衝動は押さえが効かない。 「ほ、かにもだれか・・・来ているんですかぁ。」 笙子は、喘ぐ声を少し制御しながら、須山に問いかける。 「東山さんたちは、見ていないが奥さんと一緒に来てるんだろ。・・・俺は、部署の部下と来ているけど。３Ｐがお望みなら仲居頭に電話するが・・佐々木とか言ってたか。」 「・・・い、いやです。・・・東山さんに・・・叱られます。」 「あぁ、そうだな。・・・ま、部下の男も、今、お楽しみ中だが・・・どうやら妊婦のコンパニオンちゃんとよろしくしけこんだよ。」 「妊婦さん。」 「あぁ、まだ２０代前半の・・・かわいい子だよ。・・花梨ちゃんだったかな、源氏名は。」 「花梨っ・・・。」 「知り合いかな？・・・でも、彼は、・・・自信をなくしているようでなぁ・・・奥さんともご無沙汰らしいから、変わったプレイで元に戻ればいいんだけど。」 「あぁぁぁぁあぁぁっぁあ。・・・・・だめぇぇぇぇぇ。」 笙子の拒絶の声は、誰にも届かず、昇にも須山にも、宴の演出家である東山にも伝わらずにいた。ただ、喘いだ女の声を察した須山は、陰唇から離れ、笙子の胸元を跨ぐと、差し出した陰茎をしごきながら、喉もとを越え、往生際の悪い舟盛りの鯛の口元に尖りを差し込んだ。 |
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| 2014.8.18掲載 |
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