| その２６ 解放 温かな手だった。 すりすりと、微妙な摩擦感の中で、熱を感じさせてくる。 指先も掌も絶妙な擦過の快感が強烈だ。 なのに、焦れったい。 皮膚の一枚下を、快感の川が流れるのに、それはチリチリと全身を泡立てて、爆発を許してくれない。 『あああ、感じてる、私……』 もはや、どう撫で回されているのか分からなかった。 だが、温かなその手が、尻をサラサラとなで上げ、今度は、腰のしなやかなカーブを包み込む動きが繰り返されると、確かに成美の身体は震えてしまう。 見るからに弾力性のある、人妻の柔らかな丸い尻が、ヒクン、ヒクン、ヒクンと反応してしまうのを、もはや止められるわけがない。 ピンと張り詰めた太ももを、両手で包み込むようにしながら、微妙な振動をさせた手が、膝から太ももの半ばまで、スリスリとなで上げる動き。 「はぅっ」 苦しいげにも聞こえる、息を詰める声は、手が太ももから這い上がり、大事な部分に近づくたびに、思わず漏れてしまうのだ。 小さなオーガズムが、何度も、何度も駆け抜けていた。 駆け抜ける小さなオーガズムは、さらなるオーガズムを欲しがる引き金で、子宮の苦の火花は、飛び散る度に、完全なる炎を、そう、大きなオーガズムを求めてしまうのだ。 「あん」 それでも火花が散る度に、しなやかな背中が逆ブリッジのカタチで仰け反ってしまう。 『あぁあ、恥ずかしい、こんなのぉ、あん、でもぉ、オカシクなっちゃう……』 丸い尻が、背中のカーブが、大理石でできているかのようなピンと張りつめた太ももが、くっきりと熱を帯びた手が、撫で上げる度に、小さな爆発が生まれている。 「あ、ま、またぁあ、くっ、あん、あん、あん、あうぅ」 美肉がヒクンと震える。 透明感のある甘い声を抑えられない。 懸命に、抑えようとしても漏れ出る声が出てしまう度に、恥ずかしさで、イヤイヤと顔を横に振るけれど、すぐまた、小さな爆発が起きてしまう。 子宮の中が快楽で沸々と煮えたぎって、弾ける粟野一つ一つが小さなオーガズムになっていく。 弾けるテンポが上がっていくうちに、さらに快感が鋭く、深くなる。 「あぅ、はぅ、あぁ、あん、あぅん」 引きつるような声は、一瞬、苦しげな感じすら帯びていて、それでいて、聞く者を欲情させるメスの発情したうなりになっている。 「ようし、調子が出てきた」 もちろん、その声は成美の耳には届かない。 それどころか、いつしか、オカリナの音は意識から消えていた。 オカリナの向こうで囁く声も意識できなくなっている。 「旦那さんは奥さんを許しているよ。ほら旦那さんが見てる、奥さんを。旦那さんの前でイケ、ほら」 『あぁあ、いや、そんなことぉ』 夫のことを言われたとたん、頭の奥で何かがショートした。 「奥さんは。旦那が望む妻になるんだ。愛する旦那は、奥さんが感じれば感じるほど、喜ぶんだから。ほら喜ばせて上げよう、感じるんだ。旦那の前でイケ、ほら、見てるよ」 「あああ、あん、あん、あ、だめぇ、あう、あああ！あん！あん！」 驚くべきコトを言われている。 夫の前でこんな姿を見せられるはずがない。成美の頭には、秘部をトロトロにしてしまっている自分の姿が浮かんでいる。 そして、それを見つめる、夫の顔。 すぐそばで、悩ましい表情の夫が、淫らな自分を見つめているのだ。 見つめられているのに、自分を隠せない。いや、夫の視線を浮かべたとたん、身体に熱い何かが急速に満ちてしまっていた。 成美の心で何かのスイッチが入ってしまったらしい。 『あなたぁ、見て、恥ずかしいけどぉ、見てぇ、本当はエッチな、私を、見てぇ』 貞淑で真面目な人妻の殻。 心の外側を包んでいた、固い殻が一気に弾けてしまった気がする。 それは、解放。 恥ずかしくて仕方がないのに、夫の視線をはっきりと意識すればするほど、成美は自分が解放されていく気がしていた。 解放、それは、猛烈な「魔」のニオイ。 猛烈な「魔」のニオイのする快感が白い裸体に満ちてくる。 『見てぇえ！あなた！』 すぐそばに夫の目がある。 痺れるような快感。 全てを受け止めてもらえる解放という快感。 それは、夫の視線を浴びながら味わう、強烈な魔のニオイのする。 それは、貞淑なはずの成美に潜んでいた、被虐の香り。 それは、身体の全てが溶けてしまいそうな抗いようのない大きな快感。 成美の子宮を今まで経験したことのない解放へと向かわせているのだ。 『感じちゃう、あなたぁ、もっと、もっと、オカシクしてぇ』 いつしか、快感を味わうことにためらいがなくなっていく成美。 いや、さらに囁く声がある。 「もっと気持ちよくなると、もっと夫が喜ぶ」 いつの間にかすり込まれた意識には、驚くべきリクツが仕込まれて、理性が封じられてしまった。 もはや、成美を止めるものはない。 だから、両手が腰を掴んできた時、何のためらいもなく従ってしまった。 恥ずかしい姿勢。 尻だけを高く掲げた、バックスタイルで交わる姿勢そのものだ。 『ああ、こんな恥ずかしい格好で…… 入ってくるんだ…… とうとう…… ああぁ、早く、来て』 そこにためらいも抵抗もない。 もはや、成美の頭には、灼熱の怒張が自分を満たし、弾けさせてくれる瞬間ばかりが頭に浮かんでいるのだ。 「あぁ」 つかの間の「待つ」時間に、ねっとりとした声が、成美の唇から漏れてしまう。 それは男が満たす瞬間を待ち望むメスの声そのものだ。 「旦那の目の前で感じる、本当の自分を見せて。全部、解放してしまえば、きっと治る。旦那も喜ぶ。きっと治る。本当の自分を旦那に見せるんだ。旦那はもっと喜ぶから」 意識すらできないその声は、成美の意識のヒダの中にすり込まれてしまった。 今や、すぐそばで夫が見ているような気がしているのに、そのくせ、感じることをためらえない。 むしろ、成美のすり替えられた理性は、快感に沸き立つ子宮を後ろから支えてしまっている。 『あなたに見られているんだもの、いっぱい感じて、喜ばせなくちゃ』 いつのまにか「声」がすり込まれている。全てを夫に見られて、夫も自分も、最高の快感に浸れるのだと思い込んでいる成美だ。 「あああぁ、あぅ」 いきなり乳房が掴まれていた。 グニュッと揉みこんでくる手に上半身も持ち上げてしまう。 完全な雌犬の交尾の姿勢だ。 『あぁ、何で、胸、こんなに感じてるぅ、ああ、なんで、だけど、こんなに良いなんて。あぁ、も、もっとぉ』 逆らうことなど思いも寄らない。 完全に四つん這いになった、メス犬の交尾の姿勢。 「はうっ」 乳房を揉まれた快感が、成美の脳を直撃していた。 目隠しをされたまま、全てを委ねているこの姿勢。 とっさに、大きな声が出そうになって、慌てて、右手で口元を押さえても、抑えきれない声が漏れている。 感じすぎるほどに感じている、オンナそのものの姿。 ピンと張りつめた白い肌は、うっすらとピンク色に染まっている。 『あん、だめぇ』 腰を掴んだ手が、微妙に動いただけで、力が抜けて、口を押さえたまま、突っ伏してしまっう。 うごめく腰、震える背中は、もはや成美の意志ではどうにもならない。 高々と差し上げた尻は、男の挿入を待ち望んでいるのをはっきりと意識している。 『あぁ、あなた見て、私、本当は、こんなにエッチだったの、あなた、見てぇ』 うねうねと動く、クリンと丸みを帯びた尻だけを高く掲げた姿を夫がすぐそばで見ている気がした。 さっき出かけたはずなのに、いつの間にか帰ってきたのかもしれない。 なぜか、そんな風に思えて、夫の視線が身体に絡みついている気がした。 夫の欲情した視線が身体の奥を貫いて、貫かれる快感で成美はさらに燃え上がってしまうのだ。 『ああぁ、欲しい、このまま』 成美の目隠しされた目は、はっきりと、とらえている。今、腰を掴んでいるオトコが、カンと、叩けば金属音がしそうなほどに硬くそそり立てている怒張を。 もちろん、現実の成美の秘部から２０センチの場所には本当に、黒ずんで、夫よりもふた回りも太く、エラの張った凶悪は怒張が、禍々しく天を突いている。 成美の目隠しされた目は、まるでそれが見えているようだ。 『欲しい。それを、お願いぃ』 その時、成美はヒクンと背中をのけぞらした。 「あああぁ」 尻に当たっていた。 ヌラヌラとするその感触。 ピッチリと張った尻肉を、硬い怒張がグッと押し込みながら、ヌラヌラとした先走りの液体を尻になすりつけている。 陶磁器のような成美の尻肉には、こんなに弾力があったのかと思わせるほどのくぼみを作りながら、ナメクジの這った跡のような線が幾筋も描かれる。 「あ、あう、あぁ」 弾力のある尻をへこますようにして、硬い亀頭がこすりつけられるだけで、ジンジンした快感が生まれている。 『こすりつけられてる』 ヌルヌルとした感触は、成美の心を震えさせていた。 その正体は、男の出す先走りだと、もちろん成美とて分かっている。 男が美肉を求めて出す欲望の粘液を、なす術もなくなすりつけられ、その上、感じてしまうのは「堕ちる」感覚を呼び覚まされてしまうということにほかならない。 成美自身も意識してこなかった被虐の性だった。 「あ、あ、あ、あうぅ」 淫靡で切ない声を我慢できなかった。 クネ、クネ、クネ、クネ。 尻になすりつけられる怒張を求めて、自然に腰が動いていた。 だが、その動きをかいくぐるようにして、その指が無造作に差し入れられたのだ。 「はううう！」 のけ反っていた。 くちゅくちゅ。 「あん、あん、あん、あん」 静かな部屋に、その場所から漏れる、湿った音に合わせるように、短く、切ない嬌声が響いている。 「くぅう」 時折、呻くのは、指が中でぐるりとかき回してくるせいだ。 満たしてくれる怒張がないまま、切ない美肉は、その瞬間、ズキンとした痛みに似た快感をこみ上げさせるのだ。 だが、そのくせ、そのまま弾けさせてはくれない。 沸々と沸き立つ、小さなオーガズムの連続は、味わえば味わうほど「その先」がほしくなる、切ない絶頂なのだ。 成美の尻は、せめてもの指の動きをねだって左右に動き、上に突き出されたかと思えば、もっと奥へほしいと言わんばかりに、指を求めて突き出される。 『ああ、ほしいのに、あ、もうちょっと、あ、もっと、あ、ふ、深くぅ』 もどかしげに尻が跳ねる。 すぐそばに感じている「オス」のニオイ。 尻に押しつけられているその怒張を入れてもらうことしか考えられなくなってしまった、その瞬間、ヘッドフォンがいきなり取り去らる。 「え？え？あ、あ、え？」 突然戻ってきた、現実の「音」に、一瞬戸惑いながらも、快感は逃げては行かない。 快感と、現実のクロスに、まるで、白日夢からいきなり起こされた人のような反応をしてしまう成美。 松原の現実の低音が、後ろから響いてくる。 さっきまでのヘッドフォンの声と重なったせいなのか、まるで現実味を持っていないクセに、成美の心まで裸にしてしまう響きを持っている。 「奥さん、だいぶ、気持ちよくなってきたな」 「あん、いやあ、おっしゃらないでぇ、いやあ、あううう」 「いいぞ、これこそ正しい気の流れだ」 「あん、ああ、あう、あん、いや、あ、い、あう、だめぇ、いぃ、あうう、恥ずかしぃ」 身体に差し入れられた指で操られているように、快楽のあえぎ声を、自由に引き出されしまう。 しきりに「恥ずかしい」と口では言ってみても、差し入れられた指から、身体が勝手に快感をむさぼってしまうのだ。 『もっとぉ』 声なき声は、成美の頭の中で叫んでいる。 もっと太いモノ、大きなモノで満たして欲しい。 確実に快感のポイントを刺激されながらも、グッと身体を満たしてくれるモノが欲しくなっていた。 「ああ、も、もう、ああぅ、ああ、あぅ、お願い、ああぁ」 残酷なまでに指は成美の快感を見極めて、絶えず、小さな爆発をさせながら、灼熱のオーガズムを与えてくれない。 繰り返し、新たな快感を与えつつも、断固として絶頂に向かわせまいとする動きは、快感の狭間に植え付けられた意識を増幅してしまうのだ。 『あああぁ、あなたが、見てる前で、あああ、ほしくなってる、私。あなた、いやらしい私を、見てぇ』 キュウッと締め付けてしまう美肉。 「ああああ、はうう」 背中を仰け反らせてた。 もはや、ずっと囁かれてきた言葉に、心も身体を占領されてしまっていた。 切なげに、丸い尻をうねらせてしまう。 『あぁあ、お願い、もうちょっと、もうちょっと、あ、ああぁ』 あとほんの数秒、指を使ってもらえば、切ないまでに横溢した快感にありつける。 しかし、それは蜃気楼のオアシスでもあるかのように、近づいた次の瞬間、遠ざけられてしまうのだ。 「ああ、もう、いやあ、いやあ、もう、あうう、いやああ！」 泣きじゃくるように、せがんでしまう。これ以上の焦らしに耐えられない。 早く欲しいのだ。 「さあ、奥さん、いよいよだ。今日は本格的に気を循環させるぞ」 満たしてもらえぬ焦燥、届かせてもらえぬ絶頂への渇望。 狂乱しかけている成美だが、ヘッドフォンで囁かれ続けたその声は、成美の心を簡単に掴んでしまう。 もはや、何を言われたとしても、受け入れてしまうだろう。 事実、今も、何を言われたのかよく分からない。 「あ、え？ あぁ…… う、あん、は、はい……」 気を循環させる。 そんな言葉の意味は分からない。 ただ一つ、この後「とどめ」をもらえそうだという甘やかな期待は、たとえどんな言葉であっても、成美は受け入れてしまっただろう。 荒い呼吸と甘いあえぎを出し続ける成美は、しなやかに背中をのけ反らせながら、尻を高く突き出したポーズを崩せなかった。 『入ってくる』 それは、はっきりとした「期待」だ。 妻としての貞淑さも、女としての恥じらいも全てを捨て去って、満たしてくれる怒張を求めるメスになっていた。 まるで媚びているかのように、尻がうねうねと動き続けていた。 太ももまで流れだした秘液は、成美の恥ずかしい部分から、ヌラヌラと湧き出し、あふれている。 だが、それを軽く、いなすように尻をポンポンと軽くたたかれた。 「奥さんにも協力してもらう」 「は…… あ、あう、はい」 「仰向けになってもらおうか」 「はいっ……」 一瞬、何でこのまま入れてくれないのと、不満がわき起こる女体だが、いよいよ満たしてもらえるという期待の方が大きすぎた。 体中に満たされた快感の気泡のせいで、思うように身体が動かない。それでも、目一杯の動きで、いそいそと仰向けになってしまう。 仰向けになれと言われただけなのに、ついつい、成美の取った姿勢は、欲望のまま。 肩幅ほどに脚を広げ、膝をわずかに持ち上げ、そのまま外側に完全に倒したカタチ。 『ああぁ、全部、見られてるのに〜』 今さらだとは思うのだが、そうかといって、男の目の前で、受け入れる形で男を待つのはさすがに羞恥心が、刺激されすぎてしまう。 カエルの解剖のように脚を広げきり、小さな茂み以外に、オトコを遮るモノもない、まさに女性自身を丸出しにしてしまった姿が脳裏に浮かんでしまっている。 『お願い、早く、来て』 それが一番恥ずかしくない。 男に飢えて、脚を広げて待つ、この姿をじっと見下ろされるなんて、恥ずかしすぎる。 もはや一刻も早く満たしてほしいのは、待ち望んだ快楽と、恥ずかしすぎるふしだらな姿勢を見下ろされる羞恥心の両方からだ。 思わず、目隠しされたままの顔を、右手で隠していた。 ちょうど目隠しの上にウデを置いた形だ。 だが、そのウデが、グッと掴まれた。 『え？なに？』 「さあ、まず、これを掴む」 「え？あ、きゃ、いや！」 思わず、拒否の声を出したのは、その動きが唐突だったからか、はたまた、男が入れてくれなかったからなのか、成美自身にも分からない。 ただ一つだけの真実は、男に掴まれた右手が何をさせられるのか、自然に理解していたと言うことだ。 『熱い！なんなの、これ、気持ち良い！』 硬くそそり立つモノを掴んでいた。 「そうだ。そのままだ。どうだ、硬いだろ」 満足げな声とともにギュッと乳房を絞り上げられて、それだけでも、またまた、軽いオーガズムが突き抜けてしまう。 「あん！ あぁ…… そんなぁ、ダメぇ あぁ」 無意識の動きだ。 怒張を確かめるように、しなやかな細い指先が巻き付いていた。 「ダメ、ダメぇ」 弱々しい声を上げながらも、右手が動き始めている。 男に尽くす、動きだ。 ヌチャリと先走りの液に指を浸しながら、カリを撫で上げ、幹を扱き、ウラスジを指先がたどる。 今まで、夫にもやったことのない動きが、なぜか自然にできていた。 「あんっ」 まるで、ご褒美だとばかりに、胸を揉まれたのだ。 ツーンと刺激的な、そのくせ甘やかな電流が脳に駆け上ってくる。 「あんっ」 「勘違いするな。これはスケベなことではない、治療の一環だからな」 「あん、ち、ち、りょう」 乳首をクリクリと刺激されては、満足に考えることすらできない。 その上、右手に掴んでいる怒張から、何か不思議なほどの何かが流れている。 怒張をいらう指先、密着した掌、巻き付いた指をヌルヌルと浸す先走り。あらゆる所から、ビンビンとした快感が生まれている。 それは成美が考えたこともないが、まるで、女性自身が右手に生まれ締まったかのような、そんな錯覚までしてしまう直接的な快感なのだ。 「そうだ。奥さんは、逝くときに陰の気を放つ。オレはそれを取り込んで陽の気を吐き出すわけだ」 「それって……」 成美の中で生まれた強烈なイメージ。 自分の胎内で、先生が弾ける、その瞬間だ。 身体の奥に、ドクリと射精されたモノが熱く広がる…… 『あぁ、そんな、たまらないぃ』 夫以外の男を望んでいるはずもないのに、早くその瞬間が訪れることを望んでしまう。 そのイメージは、成美の美肉を強烈に収縮させていた。 「ほれ、オレの身体の中に、奥さんの陰の気が、たっぷりと流れ込んできているからな。どうだ、硬いのは分かるか？よく確かめろ」 「は、はい」 松原の手が怒張に絡みついている右手に添えられた。 言われたとおりに、しなやかな指を巻き付けて、く、く、くっと力が入った後、指先がカリにそって動かすと、男の手に動かされるまま、ゆっくりとしごく動き。 「よし。そうだ。そのまま、オレの陽の気が出るように協力してもらうぞ」 「え、でも、どうやって」 このまま手でしごき続けろと言うことだろうか？ 『このまま入れてもらえないの？』 不満の代わりに疑問の形を口にしてしまった。 「なにをカマトトぶってる。今やってるじゃねーか。そうやってダンナにしてやるように、すればいい。そうだ。そのままだ…… もっと早く」 『このまま、動かして、気持ちよくしていけば』 これ以上硬くなるのだろうか？ まさか、このまま出してしまう？ 手にしたモノを我が身に受け入れることを望んでしまったメスにとって、このままの射精は、恐れでしかない。 そのくせ、ヌルヌルした男の液が、絡みつけばつくほど、成美自身が気持ちよくなっていくから、手の動きが止まらない。 「どうだ、大変か」 「いえ……」 ゆっくりと顔を左右に振っている。 ゾクゾクとした快感が右手から流れ込んでいた。 しなやかな指を巻き付け、何度もカリの形を確かめるように人差し指でヌルヌルをすくい取っては、ヌラヌラと撫で上げ、親指も、反対側を同じに動かす。 ピチャ、ピチャ、ピチャ。 粘液質の音をさせて、扱くスピードをだんだんと上げていく。 男に尽くす動きなのに、怒張を滑る、一つ一つの場所から快感が生まれている。 膨らんで、膨らんで、膨らむ。 イッているのに、イケない、果てのない快感を子宮にため込んでいるかのような。 『何なの、これ？ああ、これ、私に、何か、流れ込んでるぅ』 それは右手でするセックスだった。 アイマスクをつけたその下で、成美の白い相貌は、これ以上ないほどの淫靡で、淫らで、狂おしいほどの切ない快感に陶酔しきっている。 もちろん、その間も、男の手が、好き放題に身体を弄んでくる。その一方的なマゾヒスティックな快楽は、身体だけではなく、成美の脳を溶かしてくるようだ。 「あうう。あう、ああ、もう……」 太腿がヒクヒクとケイレンしては、クイクイと腰を浮かび上がらせるような動きをしている。 オトコを求める仕草だ。 『だって、ほしいんだもん、我慢、できない、もう！』 せめて、指でだけでも、あの灼熱のオーガズムが欲しい。 もうそれだけしか考えられない。 「あ、あぁあ、もう、もう、ああぁ、いやあぁ」 「いかん、いかん、まだ、気を放ってはならん。イキたくて、仕方がなくてもだな」 言葉だけは厳しいが、そのくせ、乳首を、コロコロと弄ぶ仕草には、男の余裕があるのが、分かってしまう。 これだけ狂わされているのに、男には余裕がある。 ビンと硬くなった怒張は、成美の快感のために「してやってる」と言わんばかりの気配なのだから、オンナの全てを屈服させられた、そんな被虐の快感すらあるのだ。 「ああう、あう、ああ、もう、あう」 「奥さんが逝きたいなら、陽の気が出るまでがんばらないとな」 「あぅ、だってぇ」 恥ずかしげもなく腰を持ち上げて、突き上げる仕草をしてしまう。 入れてほしい、と全身で訴えていた。 焦らしに焦らされた、あと一歩の快感の頂点を求めて、狂わんばかりに身体をケイレンさせている。 「なんだ、がまんできないのか」 「はう、あ、あ、だって、だめ、あぁ、もう、あぁ、お願い、もう、ああ、あうぅ、苦しくて、あん、ああ！」 「それなら、もっと早く、陽の気が出るように協力してもらうしかないな。逝かせてほしんだろ？」 「あぁ、はい、し、しますから、もう、あう、い、いかせてぇ、ああ、恥ずかしいっ」 もはや恥もてらいも捨てて、とどめの一撃をねだってしまう成美だ。 その瞬間、松原は、膝立ちして、一気に顔に近づけてきた。 「あうぅ」 右手を添えたままの怒張は、成美のピンクに染まった頬をキュッと押しつけてくる。 『ホッペに、くっついてる』 ほしいモノが身体にくっつけられる悦びと、怒張を頬に押しつけられて喜んでいる自分のへの倒錯感がないまぜになって、成美の頭を真っ白にしている。 ヌルヌルとなすりつけられている頬を、動きに合わせるようにわずかに動かしながら、しなやかな右手は、怒張を握りしめて、頬に押しつけてしまう。 『あぁ、これをお口に……』 ほしい、と思ってしまう成美だが、それは男のためにではなく、オンナとしての飢餓感が、怒張を心底咥えたくなっていた。 ヌラヌラと頬を押しつけている怒張が、唇に近づく度に、その整った形の唇は、その黒ずんだ亀頭を受け入れようと微妙に歪む。 だが、キンと音がしそうなほどに張りつめた怒張は、すんでのところで唇から遠ざかり、頬をなぞり上げては、また戻ってくる。 怒張を咥えたくても咥えさせてもらえない。 焦らされた成美の手は、微妙なストロークで扱き続けているのは、自分の手全体が性器にでもなってしまったように、鋭い快感が伝わっているからだ。 だが、ほしかった。 『掌じゃだめ。お口に あぁ、あ ……あそこに』 何度目だろうか。 その熱いモノを受け入れたくて焦れったさが頂点になったのを見極めて、待ちに待っていた、その瞬間がやってくる。 「さ、奥さんが、これを受け入れろ」 「あぁ。だめぇ」 言葉とは裏腹に、自分から怒張を迎えに行っていた。 唇を舌先でねっとりと濡らしてから、その先端を迎えたのだ。 はしたなくも、成美のすらりと伸びた長い両脚は、これ以上ないほどに広がっている。 「いいぞ。そう。もっとしっかりと絞めろ」 言われるがままに唇でキュッと亀頭を締めながら、その口腔では舌先がチロチロと先端を味わっている。 「そうだ。もっと奥だ。このまま、丹精込めろ。舌を使って」 微かに頷きながら、先端からにじみ出るヌルヌルを飲み込んでいる。 舌先で絞り出す動きだ。 「頑張ることだ。なにしろ、こっちが陽の気を放てるようになるまで、いかせてやれないんだからな、ほれ、そのまま、もっと」 「あぁ……」 ジュブ、ジュブ、ジュブ。 喉の奥に届くほど飲み込みながら、ねっとりと硬く張り詰めた怒張を柔らかな唇がしごき続けている。 『大きいぃ…… これ、この部分。 ……張り出してるぅ』 夫と比べるつもりはなくても、その身体に「受け入れる」というのは正直だ。夫に尽くすときより、さらに大きく開いているアゴが、現実を思い知らせてしまう。 おまけに、普段以上に広げた口の中を、ヌルヌルと圧倒的な存在感で、つつかれていれば、自然と、その大きさを感じてしまうのだ。 『これが入ってきたら……』 それは恐れでは、既にない。 渇望だった。 この強烈な肉棒に、身体を満たしてほしい。 『イカせてぇ』 突き詰めればそれしか頭になかった。 何度も何度も小さなオーガズムが突き抜けているのに、もっともっと大きなオーガズムが、もっとほしくなっている。 性を知る人妻の肉体は、灼熱のオーガズムを予感だけさせられて、ちっとももらえないまま、今もまた、口腔で身体がひりつくようなオーガズムを味わっているのだ。 『とにかく…… あぁ、ああ、イ、カ、せ、て』 頭の中がふつふつと沸き立って、もはや限界だった。 ジュブ、ぐふっ、んぐっ、ジュブ、んん、ん、いぐぅ。 何度、小さな泡が弾けているのだろう。 しかし、これではダメなのだ。 頭の芯から吹き飛んでしまうような爆発が、欲しかったのだ。 『もう、限界』 自分からすがりつこうと思った。 目隠しをかなぐり捨てて、抱きつくしかないと。 全身に力をためた瞬間だった。 成美の限界を見極めた松原が突然、動いたのだ。 「ほら、逝かせてやるぞ。どうだ」 「はう！あうう！」 「ほら、そのままだ。わかっているな」 怒張を飲み込んだままの動けない頭が、カクカクカクとわずかに振っている。 「はぐっ」 くぐもった叫び。 さっきまで慎重に避けられていた雌芯が、激しくかき回され、親指が連続してクリトリスを弾いてきたのだ。 しなやかな裸体が反り返ってしまう。 口を塞がれたまま、急速にこみ上げてくるオーガズムの白い津波。 強烈にのけぞる成美の口を好き放題に犯している松原の怒張。 まるで本当に犯されているように、細い腰がヒクヒクとうねり、空腰を使ってしまう。 「あぐ、ふ、ふぐっう」 白い火花が頭の中でスパークしている。 強烈なオーガズムに背中でブリッジを作って、求めても求めても与えられなかったオーガズムが全身を暴風のように吹き飛ばす。 「ヨシ、良いぞ」 強烈なオーガズムのスパークに、成美は溶かされていた。 |
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| 2013.2.16掲載 |
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