| その２７ 陽の気 『顎が外れそう』 息苦しさを感じる。 何よりも、その張りつめた存在感に圧倒されている。 でも、なぜか拒めない。 『何で、こんなことをしちゃうの？ 私。なんで？ なんで？ こんなコトしちゃダメなのに…… でも、したくなっちゃうんだもん。なんで？ 』 拒むどころか、先端からにじみ出るモノが、甘く美味に思えてしまって、自ら積極的に舌を絡め、唇でしごきだそうとしている。 『あぁあ、ダメなのに、感じちゃってる、ワタシ…… 』 圧倒的な存在感に唇を犯されながら、まるで秘唇に受け入れているような、そんな不思議な快感が子宮の方から湧き上がっている。 白い貌には、淫らな快楽に酔う、牝の陶酔が浮かんでいた。 人妻の熱心な口唇奉仕を受けている松原は、さも当然と言いたげな顔をしているが、デカイ尻がゆっくりと動いていた。 人妻の唇を犯すかのように。 ぶちゅ、じゅぶ、ぶちゅ、じゅるる、ぶちゅ。 湿った音が響いている。 『不思議…… すっごく気持ち良い。でもぉ、なんで、お口が。こんなに、キモチ、いい、なんて、あぁ、なんでなの、こんなのぉ』 感じたことのない種類の快感に、意識までが遠のいてしまうような気がした。 ジュブ、ジュブ、ジュブ。 頭に直接響いてくる、湿った音。 唇をニュルっと通過しては、軟口蓋まで当たる、その感触。 時に、喉の奥に届く苦しいほどの圧迫感。 不思議な快感に漂っていた。 湿った淫猥な音を立てながら、黒く、太い怒張が唇を出入りしている。 まさに、口をオ○○コに見立てた動きそのものだ。 グチュという濡れた音だけでも、なぜか、犯されているような不思議な快感が子宮を疼かせる。 軟口蓋をヌルヌルと蠢く瞬間、ズンと子宮の奥が熱くなる。 唇が扱き上げていく瞬間、美肉をこすり上げられる快感が唇から生まれていく。 何度も、何度も、短いパルスで、快感の波が背中を駆け上っていった。 「ヨシ、出るぞ」 とっさに覚悟したのは、喉の奥にドクンと射出されること。 熱い精液を受け止めたら、そのまま、もっとオカシクなりそうな、そんな予感だ。 『でも、お口で受け止めたら、私、オカシクなっちゃう、きっと』 夫以外の精子なんて。 普通なら嫌悪感で、飲むなんてとんでもない。 いや、こうして怒張を口に入れるどころか、触るのも嫌なはずなのに。 『ああ、これ…… ドクンって、出てきちゃうぅ』 成美を占領しているのは、夫以外の男。 だが、その精子を喉の奥に受け止めることが、ちっともイヤではないのだ。 それどころか、口の中に広がり、喉をゴクンと通過する瞬間、自分がとんでもない快感を味わうのだと予感してしまうのだ。 『どうしよ、私、すっごく欲しくなっちゃってる、我慢できないかも、ああ、このオ○ン○ン、これ、欲しくなっちゃうかも』 自分にウソをついている。 「かも」ではなかった。 唇で扱き、舌を絡めて、喉の奥に受け入れている怒張から出る精子を飲み込む瞬間。自分がとんでもなく感じてしまう予感が成美を占領してしまっている。 だからこそ、子宮は、欲しがってしまうのだ。 『なんで？ 私。こんなはずじゃ。私、彼を愛してるのに、ああ、でも、ほ、欲しいぃ』 自分が貞淑な妻であると信じてる成美にとって、それはあり得ないことのはずだった。 だが、もはや、自分の喉まで占領している怒張に夢中になるしかない成美だ。 ひとたび、身体のどこかに受け入れてしまえば、オンナは、急に弱くなってしまうのかもしれない。 まして、性の味を知っている人妻だ。信じられないほどの快感を味わっているのに、美肉を満たされないまま、満足できるわけがない。 子宮を蕩かしながらも、さんざんに焦らされた成美だ。 その美肉を、満たしてくれるモノを目の前にして、我慢などできるはずがなかった。 口の中で弾けそうな怒張を味わいながら、これがナカに入ってくる瞬間だけを強烈に思い浮かべてしまうのも無理はなかった。 懸命にこらえようとした、最後の理性は、まだ抵抗を続けている。だが、この「乾き」に耐えられそうにない。 それは、ひりつくような渇きの感覚に似ていたのだ。 『ああ、ダメ、ダメになりそう、あぁ、だめ、ああ、でもぉ』 喉の奥に届きそうなほど、口腔の粘膜は男の怒張を味わいながら、美肉はむなしく震え、ただ、トロトロと恥ずかしいほど、止めどなく秘液をこぼしてしまう。 『でもぉ、ダメぇ、我慢しなくちゃ、ダメなんだもん、ああぁ、でも、また、あう！』 喉の方まで男をくわえ込みながら、成美は、またもやオーガズムの呻きを上げた。 『ああぁん、なんで、こんなにぃ』 フェラをするだけでこんなに気持ちよくなるのか、信じられない。 だが、簡単にオーガズムの電流が突き抜けるのだが、そのたびに、さらに、子宮が、いや美肉が、男を要求する悲鳴が、成美の背中を駆け抜けるのだ。 『ダメなのにぃ』 人妻としての貞操が、懸命に押しとどめようとはしていたのだが、何度目かの小さなオーガズムで、子宮が震えてしまえば、もはや最後の防波堤はもろい。 『ください、おねがい、これ』 心の中で哀願した瞬間だった。 男は、成美の崩壊を正確に見抜いていたのだ。 「んぐ？」 ぴちゃっという湿った音をかすかにさせて、いきなり怒張が引っこ抜かれた。 『あっ、来る？』 一瞬の喪失感は、別の充実を予感してしまう。 予感と言うよりも期待かもしれない。 『これが、アソコに……』 入ってくることを期待していた。 だが、男の腰は、自分の脇腹にくっついている。 とっさに、怒張を掴んでしまったのは、なぜなのか、自分でも分からない。 『あぁ、硬い……』 ヌルヌルになった怒張は、まるで、鉄でできているように、硬く、そして、熱かった。 熱さを感じた次の瞬間、掌から何かの電流のような快感が、一瞬のうちに貫いたのだ。 『来る、何か、あぁあ、と、と、届い、ちゃ、う、ああああ』 掴んだ掌から、快感が駆け上ってきたのだ。 『くぅ〜、なんなのぉ、これぇ』 耐えられない。 初めての快感だ。 美肉に受け止めるのとは全く違う。 さっきまで、口を犯されていたのとも違う。 『何、これ、す、すごい、これぇ』 快感と言う名の波動が、直接、掌から脳につながったみたいだ。 さっきまでの自分の唾液と、怒張が吐き出すヌルヌルにまみれた右手を、成美は、無我夢中で扱き上げていた。 『ああ、きちゃうぅう！』 気が付けば男のぶっとい指に、美肉が同時にかき回されていた。 ホンの数秒のことだ。 『あ、あ、あ、なに、こ、これ、く、来る、来るぅ、あぁ…… 来たあぁあ！』 瞬間的に、頭の中が爆発していた。 全身が突っ張ったように動きが止まる。 「あ！だめ！あ、あう、ああ！だめぇ！い、いくうう！」 焦らしに焦らされた絶頂は、あっという間だった。 白い背中が、布団の上で伸びきり、腰をわずかに持ち上げたカタチ。 絶叫していた。 だが意識も保てぬその瞬間も、しなやかな手が怒張を扱いていた。 細い指が絡みつき、ニチャニチャと滑らせている鉄の塊のような怒張に、瞬間、命が宿っていたのだ。 何か大切なものが、その中を通り抜けていく感触を成美は感じ取っていた。 「いくぞっ！」 塊のような白濁液が、ドクンと白い胸の谷間に飛び散ったのだ。 『熱い！』 マグマの塊かと思う、熱い精液は、成美のさらなる快感を生み出している。 息もできぬまま、全身に力が入っていた。 どくん、どくん、どくん。 三度にわたって、勢いよく、飛び散った熱い滴。 白い身体には、白濁した男の欲望が烙印のように溜まっている。 意識できぬまま意識した、その右手は、被された手の動きそのままで、さらに絞り出す動きをしている。 ポタ、ポタと先端から滴となって、こぼれてくる。 『熱い…… 』 白熱するような快楽の嵐が、ようやく静まってきてから、成美はその熱さだけを意識していた。 なぜか、その熱さが、とてつもない快感の塊のような気がしている。 『欲しい？え？うそ…… そんな』 その滴を身体に受け入れたい。 なぜか、身体にしたたった精液が欲しくて仕方ない自分がいる。 愕然としていた。 もしも、この瞬間、誰も、そう、松原さえ見ていなければそれをすくって、子宮の奥に押し込みたい衝動が生まれていたのだ。 信じられなかった。 だが、身体に熱くしたたっている精液の熱が冷めぬうちに、身体にとりこみたい、気が付けば、そんな不思議な衝動が、成美を支配していたのだ。 ヌルヌルと動き続けている右手は、半ば、成美の意志かもしれない。 精液の滴の残りに指がヌルヌルとしているだけで、不思議な満足感が生まれているのだ。 「ふむ」 満足げな低音の声。 「よし。すっかり気を放ったようだ」 『え？』 まだ硬さを失ってない怒張を握った右手首が掴まれて、しなやかな手は怒張から離れた。 怒張がゆっくりと顔に移動してくるのを感じた瞬間、成美は「次」に何をしてしまうのか、はっきりと、わかっていた。 『あ、これ、私、しちゃうんだ……』 最後にこぼしたドロドロが、たっぷりと絡みついた手。 怒張を待ち受けながら、思わず知らずのうちに、指先を確かめるようにヌメヌメと動かしている。 『ほしい……』 後から絞り出した精液にドロドロに汚れきった指先。 ツンと精液の匂いが鼻腔を刺激する。 艶めかしく、つややかな唇をゆっくりと開いていた。 それは「覚悟」ではない。 成美が望んでいることだった 『美味しい？ なんで、あ、だめぇ、でも、これ、響くぅ』 ペロ。ペロ。ペロ。 ネットリとした舌遣いで、舐め上げてしまう。 自分の動きがどう見えるかも、男を感じさせることも、今は頭にない。 ただひたすら、子どもがキャンディーをなめるように、成美の舌は、ドロドロにこびりついた精液を舐め取っていた。 気が付けば、身体にしたたった精液をすくい上げては運ばれる指を熱心に舐めていた。 舐めさせられているのではない。それが欲しくて仕方が無いのだ。 ペロ、ペロ。 唇に運ばれる指先を愛しげに、舐め続けていた。 「これは、陽の気を込めたモノだからな。全部だ。残してはダメだぞ」 「あん」 乳房をぐにっと押しつぶしながら、乳房に飛び散ったモノを指先ですくい取っては運ばれる。 ペロ、ペロ、ペロ。 舐める度、飲み込む度に、子宮が熱さに満たされている。 『ああ、あん、何なの、この、感覚、熱い、ううん、気持ち言い、ううん、違う、何なの？ この感じって』 セックスの快感とも違う何か。 何かが流れ込んでくる感覚だった。 どれだけそうしていたのか、分からない。 長くそうしていた気もするし、あっという間だった気もする。 終いには、硬さを半ば喪った怒張に自ら吸い付いて、唇で扱き上げながら、精液の残りをむさぼっている自分がいた。 体中の血液が沸き立って、白濁したエキスを求めていた成美が落ち着くまでに、何分かかっただろうか。 ようやく、全身からぐったりと力が抜けきった成美の身体に、温かな掌が当てられていた。 「さてと、そろそろご主人が戻ってきますよ」 「え？あ…… はい」 ゆっくりと、全身を先生の手がなで下ろしている。 優しい動きだった。 「今日の治療は、このマッサージでお終いです」 「はい……」 なぜか、終了を告げられた瞬間、泣きそうになっている自分がいた。 『なんで…… もう、終わり？う、うそぉ、そんなぁ』 その瞬間、自分は、はっきりと、怒張を受け入れることをひたすら望んでいたのだと思い知ってしまった成美だ。 夫だけを愛しているはずの自分が。 あり得なかった。 だが、強烈なまでに、あの怒張が欲しかったのだ。 掌に感じた、怒張の中をドクンと精子が通り抜ける感触が蘇ってくる。 しわぶきを身体の奥で受け止めたかったのだと、はっきりとわかってしまった。 あり得ない感覚だった。 「明日は、どうしますか？」 「明日、ですか？」 明日なんて、考えられない。 『今すぐ、どうにかしてぇ』 わずかに、両脚を広げてしまったのは、成美自身も意識できない本能なのだろう。 オトコを受け入れる形に、長い足が広がっていた。 「集中治療を、明日までやれば、腰の方は、まあ、これで大丈夫です。不妊の方は、また、別の話になりますけどね」 「あの、明日は……うっ」 腰に降りてきた手が、ゆっくりと秘毛をなで下ろしたのだ。 たった、それだけで、ズーンと重低音のような鈍い快感が身体の奥に響いてしまう。 「ご主人も、明日は出勤なさいますよね？それなら、ご主人のいらっしゃる夜にしますか？それとも、ご主人との夜の時間を大事なさって、昼間のうちに？」 明日ではない。 『今、して』 懸命に口を閉ざした成美だ。 欲しい。 その言葉だけが喉の奥に引っかかっているのだ。 治療なんて言葉をいつの間にかどこかへ吹き飛ばして、ただ、女として、子宮の奥まで満たして欲しかった。 ついさっき飲み下した精液が、子宮に満たされる瞬間を想像してしまうと、それだけで美肉がヒクヒクとケイレンしてしまう。 『今、奥まで……』 ちょうだい、と言いかけて、かろうじて口を閉じる成美だ。 たゆたうような快感の残滓の中で成美に浮かぶのは、ただ、それだけなのだ。 だが、ゆっくりと秘毛をなでつける手は、それ以上の快感を送り込んでくれない。 今日は、これで終わりなのだ、と、成美には、残酷にすら思える、明確な意思表示。 「旦那さんの見ている前で、こんな治療、しちゃいます？」 「ああぁ、だめぇ」 指先が、快楽の中心をとらえていた。 身体が溶ける。 大きく脚を広げてしまっていた。 男の手が悠々と動いている。 『あんっ、来る、また、ああああ』 微かに湿った音をさせて、太い指が、ゆっくりと挿入されてきた。 「あ、ぐっ、あん、ああ、あうう！」 何かが、頭の後ろ手弾けている。 小さなオーガズムが連続して弾け続けている。 「不妊の治療も、できれば、そのまま進めたいですよね？」 指が小刻みに動きながら、連続して絶頂させてくるのに、大きく弾けて下がることを許してくれないのだ。 「あ、えっ、あ、は、ぁはい」 グンと伸び上がるようにして、快感を逃がさないと、狂ってしまいそうだ。 枕に頭がグンと沈む。 身体の奥まで指が入った指は、ゆっくりとかき回している。 『こんなエッチなところを見せちゃってる』 大きく脚を広げたまま、ヌルヌルになったその部分を指でかき回され、見下ろされているのだ。 身体の奥まで、全部見せているのに、脚を閉じることすらできない。いや、脚はさらに広がる一方だ。 身体は、怒張を望んでいた。 「じゃあ、旦那さんに横で見てもらいながら、夜、やりましょう。……ほら、すぐ横に、旦那さんがいますよ、ほら、見てる。奥さんの感じる姿を」 「あん、いや、いや、言わないで、見てないもん。見てないぃ、あ、いや、ごらんになったらぁ」 夫の顔を思い浮かべさせられてしまう。 なぜか、その優しい顔が浮かんだ瞬間、背中をオーガズムが駆け上ってしまったのだ。 激しく頭を振りながら、新たなオーガズムを受け入れる。 指を入れられたまま、腰を大きく、うねらせていた。 「ほら、見てるよ、奥さんのこと。こんな風に、脚を広げて、ほら、また、ほら、ほら、ほら、旦那さんの前で、ほら、どう？ほら！」 「あああぁ、だめ、そんなことぉ、いやあ、で、きなぃ、あうう！あああ！」 顔を覆っていた華奢な手が、いきなりシーツを握りしめて、細い背中がしなやかなカーブのブリッジを描きだす。 臨海を越えていた。 小刻みなオーガズムが、一気に噴き上がってきて、大きな、大きな波になる。 「いくぅう」 腰が溶けるかと思うような、熱いオーガズムに、全身に力が入る。 白い背中はブリッジを作ってしまうった。 はあ、はあ、はあ。 指がゆっくりと抜かれる瞬間、それを追い求めるように腰が動いたのは、もはや本能なのかもしれない。 荒い息のまま、ぐったりと手足が伸びてしまう成美。 全てを委ねたオンナの媚態そのものだ。 閉じることもできない、大きく広がった脚。 「じゃあ、奥さんがご指定の通り、夜ではなく昼間にしますね。今日は、ご主人もそろそろ帰っていらっしゃいますしね。このくらいで」 「ぁあ、は、はい」 自分がいつ返事をしたのかも覚えていない。 気が付けば、松原の声が、明日のことを告げていた。 返事をした記憶は無くても、自分が何も拒めないことを成美は知っていた。 「お時間は、１時頃で良いですか？」 「あんっ、あ、は、はい」 「腰もだいぶ良いですからね。おっと、じゃあ、最後に、もう一度瞑想をして、マッサージをしましょうか」 両耳を塞ぐヘッドフォン。 つかの間の静寂の後に流れてくるヘビーメタル。 じっくりと撫でられるのかと、何となく思った予想を裏切って、いきなり美肉をかき回される。 「あんっ」 いきなりの直接攻撃。 ボンという、火のつく音が聞こえた気がするくらい、瞬間的に身体が燃え上がる。 敏感なボタンを指がクチュクチュされれば、子宮から真っ白な電流が噴き上がるのもあっという間だ。 「いくうぅう！」 もはや、声を我慢することなど考えられなかった。 だが、次の瞬間、ヘッドフォンが取り去られた。 「え？あ。あん、いやあ！」 オーガズムの波濤が砕けた次の瞬間だっただけに、夢中になってしまった自分の姿が恥ずかしすぎる。 けれども、快感にケイレンする身体は何一つ隠せない。 男の手を股間に受け入れたまま、成美は「この世」に帰ってきた。 「奥さん、あのですね、実は、お教えしなくてはいけないことが」 「あん、あぁああ、いやあ、恥ずかしい、え？え？な、何、を、です、かああ？」 「実は、ご主人、ずっと見てたんですよ」 『え？うそ、そんな、ウソよ、ウソよ』 信じられないコトを告げられる。 『ウソ、今までのを見られたなんて』 瞬間的に、信じたくない、いや、信じられないとうことだけが、成美の頭に響いて、思考が停止する。 『あんな姿を、あの人に……』 ついさっき、先生の出した精液すら、美味しく感じていた自分を、もし、夫に見られていたとしたら…… 「大丈夫です」 「う、ウソですよね？うそ、うそって言って！」 「ご主人、奥さんの姿をご覧になって、どうなったと思います？実は、すっごくよろこんでいらっしゃったのですよ」 「え？」 「証拠をお目にかけますね」 低く、よく通る松原の声が、そう囁いた次の瞬間。 「え？あ、いやああ！」 目隠しがいきなり外されて、いきなり世界が明るすぎる。 ハレーションと言うヤツだ。 真っ暗な世界になれた目には、室内の灯りすら、真夏の直射日光以上に、桁外れに明るく感じてしまう。 「ほら、こっちですよ、さ」 「あん、きゃ、だめっ」 なんと、軽々度抱き上げられてしまった。 お姫様抱っこ。 「あの、いったい、何を」 身体の隅々まで知られてしまってはいても、こうして、視力が回復して、裸をお姫様抱っこされるのは、恥ずかしさが違う。 ついさっき、視力が回復した瞬間見えた、先生の股間が、目の裏にチラチラもしているのだ。 だが、恥ずかしがって、懸命に身体を縮こませる成美をよそに、悠々と先生は、成美を抱えたまま、リビングへと歩んでいる。 しっかり閉めたと思っていた仕切りは、いつのまにか１０センチほど開いていて、そこにつま先をひょいっと引っかけて、仕切りを勢いよく開けてしまった。 誰もいないと分かっていても、瞬間、ヒクンと身体をすくめる成美。 「あの、な、何を？」 「あぁ、あったあった。やっぱり。うん、匂いがしたから、そうだと思ったんですけど、残ってましたね。ほぉら、ごらんなさい、これ」 ゆっくりと床に降ろされた場所はその仕切り戸のレールを跨いですぐの場所。 成美の裸の尻をゆっくりと床に降ろした先生は、そのままの格好で、すぐ目の前の柱を指さしたのだ。 「え？はい？」 「これ、おわかりですよね」 ホンの小さな滴。 『これって、セーシ？』 指ですくうのを見つめる成美の頭には、瞬時に、それが、夫が出したものだとわかってしまう。 「そうですよ。奥さんが、さっき、気持ちよくなったのを見ながら、ご主人も、気持ちよくなったんです」 「うそ……」 妻が他の男の手で、絶頂を味わった。いや、その後、夫にもしたことのないやり方で、男の出したモノを飲み下していた。 それを見つめていた夫は、なぜ、止めなかったのか。 あまつさえ、それを見ながら、射精をしていたなんて。 もし、今までの成美だったら、その瞬間、ついさっきまでの自分の淫らさを吹き飛ばして、夫への怒りか、悲しみか、あるいは嫌悪を感じていたはずだ。 だが、今この瞬間も子宮の奥に、ジーンと響いている、今まで味わったことのない快感が、そうさせたのか、あるいは、驚きが過ぎれば、何も考えられなくなるものか。 確かに、その瞬間、成美の心は、空っぽになっていたのだ。 「ね、奥さん。話を聞いていただけますね？」 唖然と目を見開いたまま、松原の目を反射的に見てしまう成美は、ゆっくりと頷く相手に合わせて、コクリと頷いてしまった。 「あのですね、お二人のこれからのことなんですけれども……」 心ここにあらずの、空っぽの身体に、先生の言葉がしみこんでいた。 |
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| 2014.1.15掲載 |
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