日曜日、香菜子が目を覚ましたのは遅かった。
　昨日、和彦との交わりの最中にかかってきた電話のことが気になって、香菜子はほとんど眠れなかった。やっと寝付いたのが明け方で、それからも「はっ」と目を覚ますことが何度もあった。１０時過ぎになって、香菜子はようやく布団から起きあがった。

　あんな電話がかかってきたということは、まだ盗聴が続いているという可能性が高かった。香菜子は自分の部屋にいながら、いつも誰かに監視されているような落ち着かない気分になっていた。
　昨日、香菜子は、あの電話の後すぐに和彦を帰らせ、もう一度自分の部屋の天井裏をのぞいてみた。

　しかし、香菜子は何も見つけることは出来なかった。
　隣に住む達夫に相談しようかとも思ったが、一昨日頼んだばかりでもあり、こちらから彼の部屋を訪ねて相談を持ちかける勇気は出なかった。
「もう一度、山内さんの方から来てくれればいいのに……」
　そんなことを考えながら、香菜子は玄関に行って新聞を取ろうとした。
　このアパートでは、郵便は一階の郵便受けに入れられるが、新聞は各部屋ごとに届けられるようになっていた。香菜子はいつものように玄関の内側に落とし込まれた新聞を拾い上げようとした。その瞬間、香菜子はまたしても凍りついてしまった。
　あの封筒がそこにはあったのだ。

　香菜子は震えが止まらなかった。動こうとしても体が少しも言うことを聞かず、ただ封筒を見つめることしかできなかった。
　だいぶ時間がたって、香菜子はようやく封筒を取り上げ、それを開いた。そこにはまたしてもＣＤが入っていて、そして今度は、二つに折りたたまれた紙も一枚入っていた。
　香菜子はまずその紙をゆっくりと広げてみた。
　そこにはワープロで印字されたこんな文字が並んでいた。
『立花香菜子先生、教え子とのセックスに夢中。自分から教え子の性器にしゃぶりつく淫乱さ。近日公開予定』
　その『近日公開予定』のところは赤く印刷されていた。

　それを見ただけで香菜子はめまいがした。ＣＤには何が録音されているか、聞くまでもなかった。昨日の和彦との交わりの様子に違いなかった。
「やっぱり、まだ盗聴されていたんだ」
　香菜子はどうしたらよいか、まるでわからなくなった。

　誰かに相談したい。誰かに助けてもらいたい。
　でも、誰？　誰が助けてくれるというの？

　香菜子が思いつく相談相手といったら、隣室の達夫以外にはなかった。
「山内さんに頼むしかないわね……」香菜子はようやく決心した。
　香菜子は遅い朝食を食べると、勇気を出して達夫の部屋の前に行った。

　しかし、いざ玄関の扉の前に立つと、香菜子にはチャイムを鳴らす最後の勇気が出なかった。
『山内さん、どう思うかしら？　私も一応は教師なんだから、まさか生徒とのセックスの時の声を盗聴されていたなんて、言うわけにはいかないし……』
　香菜子は達夫の部屋の前を何度も往復した。一度は一階に下りて、自分の郵便受けを調べるふりをした。そんなふうに何度か行き来して、ちょうど達夫の部屋の前にちょっと立ち止まった瞬間、達夫の部屋のドアが開いて、彼が顔を出した。そして、香菜子を見て、
「あっ、立花さん、おはようございます。というより、もう、こんにちわ、か」と言って笑った。
　香菜子もつられて笑い、
「こんにちわ。一昨日はどうもすみませんでした」と言った。
「いいんですよ、あんなこと。それより、もう安心して生活できますか？」
　その言葉を聞いて、香菜子は返事につまった。達夫は、「あれっ？」という顔になった。
「どうしたんですか？　また何かあったんですか？」
「……実は、今日、また、あの男から封筒が送られてきたんです」
　香菜子は下を向いて、小さな声で答えた。
「えっ？　それって、ＣＤですか？　その録音の内容は新しいものなんですか？」
「……たぶん、昨日の……」
「ていうことは、まだ盗聴は続いているってことですね？」
「……はい」
　達夫は「うーん」と唸ったがすぐに、
「こんなこと、立ち話ではなんですから、僕の部屋で話しませんか？　あなたの部屋だと、盗聴している相手に聞かれてしまうかもしれませんし……」
　そう言って、玄関のドアを大きく開いた。
　香菜子は、達夫に続いて彼の部屋に入った。

　達夫の部屋は予想外にきれいになっていた。
　二人はキッチンのテーブルに向かい合って座った。
　座るとすぐに達夫が言った。
「立花さん、申し訳ありませんでした」
「何が、ですか？」
「いや、盗聴器のことですよ。僕は天井裏に隠されていたのを見つけて、それで終わりにしてしまいましたが、しつこい相手なら、二カ所も三カ所も盗聴器を仕掛けることもあるってことを忘れていました。こんなことになったのは、僕のせいです」
　達夫は軽く頭を下げた。
「……そんな、山内さんのせいじゃありません」
「でも、僕にも責任があります。こうなったら僕も徹底的に相手と戦うつもりです」
　達夫は力強くそう言った。

「で、立花さん。今回も送られてきたのはＣＤだけなんですね？」
　香菜子はまた息をのんだ。あの紙のことをどう伝えようか？　まさかあのまま見せるわけにはいかないし……。
　香菜子のとまどいを見透かしたように達夫は、
「何か脅迫の手紙のようなものが入っていたんですか？」と聞いてきた。
「……はい」
　香菜子は正直に言うしかなかった。
　達夫は重ねて聞いた。
「盗聴した内容を世間にばらまく、というような脅迫ですか？」
「……はい」
「そのＣＤは、世間に公開されたらあなたがとても困るような内容なんですね？」
　香菜子は今度は無言でうなずいた。　

「それはもう、一刻を争う状況です。こちらもすぐに行動を起こさなければいけません」　達夫は身を乗り出して言った。
「立花さん、こうなったらこの件は僕に任せてもらえませんか？　僕はあなたのためだけを考えて行動します。決して悪いようにはしませんから」
　そう言われて、香菜子は内心でほっとした。
「……本当はお願いできるようなことじゃないんですが、私には相談できる相手がほかにいないんです。申し訳ありませんが、山内さんに力になっていただきたいと……」
「わかりました。任せて下さい」
　山内は自信に満ちた声でそう言った。
　
「立花さん……、引き受ける以上は、僕に全部本当のことを話してくれますか？」
「本当のこと？」
　達夫は真剣な表情で、じっと香菜子の顔を見ながら言った。
「ええ。いままで起こったこと全部です。本当のことを知らないと、その相手と交渉なんか出来ません。他人には言いにくいこともあるかもしれませんが、もし、僕をちょっとでも信用してくれるなら、全部話して欲しいんです」
　それは、ある意味で当然のことではあった。しかし、香菜子にはそれに答える勇気がなかった。香菜子は下を向いたまま、また黙ってしまった。

　その様子を見て、達夫は言った。
「立花さんの方からは話しにくいでしょうから、僕が質問します。それに答えて下さい。どうですか？」
　優しい口調でそう言われても、まだ香菜子には何の返事も出来なかった。
「立花さん、僕たちは盗聴をしている卑劣なヤツと戦って、どうしても勝たなくてはいけないんです。そして、勝つためには、あなたから詳しい話を聞くことが絶対に必要なんです。勇気を持って話して下さい。僕も全力であなたを助けますから」
　達夫は、あくまでも冷静に、まるで問診をする医師のような口調で続けた。
「どうですか？　戦う勇気がありますか？」
　達夫にそう言われて、香菜子はやっとのことで、
「……はい」と小さな声で言った。

　達夫は大きく息をついた。
「よく決心してくれました。それでは、質問を始めますよ」
　達夫はメモとボールペンを用意して、まっすぐ香菜子の方を見た。
「まず……、盗聴器ですけど、立花さんは前に、いつ仕掛けられたのか覚えがないと言いましたが、本当ですか？」
　香菜子は、はっとした。覚悟していたとはいえ、いきなり答えにくい質問だった。しかし、香菜子は少しの沈黙の後で、
「……あの、……もしかしたらあの時かな、と思うことはあります」と答えた。
「それはいつですか？」
　達夫の質問は機械的だった。それはもちろんわざとそうしているので、香菜子にとってもその方が答えやすかった。
「先月の上旬……、ええと、あれは……金曜日、５月９日の夜です」
　香菜子も出来るだけ機械的に答えようとした。
「なぜその夜だと思うのですか？」
「あの……、その日、私、玄関のカギをかけずに寝てしまって……。だから、その日の夜に、たぶん誰かに部屋に侵入されたんです」
「誰かって……、全然気がつかなかったんですか？」
「……はい」
　香菜子がそう答えると、
「立花さん、ここまで来たら、僕に嘘をつくのはやめてください」
　達夫はそれまで以上に優しく言った。

「言いにくいのはわかりますが、いくらあなたが寝ていたといっても、部屋に侵入されて、その上、天井裏に盗聴器を仕掛けられて、まったく気がつかないはずはありません。あなたは、その侵入した男を見ましたね？」
　そう論理的に問いつめられると、香菜子には、
「……はい」と答えるしかなかった。
「どんな男ですか？」
「……あの、本当に怖くて……、ナイフみたいなものを突きつけられて……、目をつぶらされて……、だから、本当にどんな男だか、全然わからないんです。……本当です！」
　香菜子は必死にそう言った。

　達夫は香菜子を励ますように、顔をのぞき込んで、
「立花さん、つらいのはよくわかります。きっと、とても怖い思いをしたんでしょうね。でも、もう少し……、もう少しだけ勇気を出して、その夜のことを思い出して下さい」と言い、質問を続けた。
「じゃあ、その男は盗聴器を仕掛けただけじゃないんですね？　あなたに刃物を突きつけて、ひょっとしたら、もっとひどいことをしたんじゃありませんか？」
　達夫にそう言われた瞬間、香菜子は思わず、
「ああっ、聞かないで」と言って、手で顔を覆ってしまった。　　

達夫はテーブルごしに香菜子の肩に手を置いて、静かに言った。
「あなたのような若くて美しい女性の部屋に男が侵入する目的がなんであるか、僕にも想像できます。その日、そんなことがあなたの部屋で起きたということですか？」
『そうだ。私はあの日、あの男に陵辱されたんだ。この体を、女の一番大切なものを奪われたんだ』
　香菜子の胸の中で、またあの日の屈辱感がよみがえってきた。しかし、その意識は不思議にも、香菜子の体には全く逆の変化を与えるものだった。
　香菜子は、あの日のことを思い出しながら、またしてもその女の秘密の部分の一番奥が、妙にむずがゆくなるのを自覚した。

「その男は、自分の目的を、最後まで達したのですね？」
　達夫はそう言う聞き方をした。香菜子は小さく頷いた。
「立花さん、 恥ずかしい体験をよく言ってくれました。もう一息です。もう少しだけ、がんばって下さい」
　達夫はそう言いながら、香菜子の手を取った。

「では、その男は目的を達した後、あなたの恥ずかしい姿を写真とかビデオとかに撮影したりはしませんでしたか？」
　達夫にそう聞かれて、香菜子はまたしてもはっとした。そうだ、今までまるで考えていなかったけれど、確かにそんな心配もあるには違いなかった。
　しかし、よく思い出してみると、確かあの男は香菜子を強姦すると、すぐに部屋を出て行ったのではなかったか？　
「……写真とかは、たぶん大丈夫だと思います」
　香菜子はやっとのことで、そう答えた。
「わかりました。じゃあ、僕たちが心配しなければならないのは、盗聴についてだけですね」
　香菜子は達夫が『僕たち』という言葉を使ったのに気がついた。香菜子自身も、達夫との間に連帯感が深くなるのを意識した。

「では、次に送られてきたＣＤの件ですが、そのＣＤに録音されていたのは、たしかにあなたの声なのですね？」
　達夫は、また答えにくいことを聞いてきた。香菜子は沈黙するしかなかった。
「立花さん。実は僕には、あなたに言えない秘密があります。せっかくあなたが信用してくれているのに、僕はそれを裏切るようなことをしていたんです。それを正直に言います」
　沈黙に沈む香菜子に、達夫は突然そう切り出した。
「あの日……、例の男が封筒を落としていったあの日、僕はその封筒を自分の部屋に持って帰って、中に入っていたＣＤを聞いてしまったんです」
　香菜子はまた、顔を上げられないような恥ずかしさに包まれた。やっぱり、達夫はあのＣＤを聞いていたのだ。
『この人は、私のことをひどい女だと思っているに違いない。私は、誰とも知らない男に犯された上、教え子との淫行に耽るような、そんなひどい女教師なんだ』
　香菜子の胸の中に、また恥辱の思いが広がった。

　しかし、達夫はあくまでもやさしく語りかけてきた。
「いくら封が開いていたといえ、若い女性あての封筒の中身を取り出して、しかもそれを聞いてしまうなんて、悪いことだとはわかっていました。でも、僕はあなたのことがとても心配で、それで思わずそうしてしまったんです。どうか許して下さい」
　達夫は静かに頭を下げた。
「香菜子さん。僕たちはもう、お互いに秘密を告白しました。これから先も、僕はどんなことを聞いても、それを誰にも言いません。約束します。あなたと僕だけの秘密にします。だから、全部本当のことを聞かせて下さい」
　達夫は香菜子の手を強く握った。

「香菜子さん。これから僕は、あなたが一番答えにくいことを聞きます。でも、どうか勇気を持って答えて下さい」
　達夫の声は真剣そのものだった。
「香菜子さん。あのＣＤは、あなたがあなたの学校の生徒と一緒に、自分の部屋にいるところを盗聴したものなのですね？」
　そう聞かれた香菜子の目からは、涙がこぼれ出た。香菜子は達夫に手を取られながら、顔を伏せて涙を流し続けた。そして、
『ああ、あんなこと、するんじゃなかった。いくら男が欲しくなっても、教え子に体を開いてはいけなかった』と、強い後悔の念に包まれていた。

　達夫の声は続いた。
「香菜子さん、これは大切なことなので、よく思い出して答えて下さい。その生徒があなたの部屋に来たのは、今までに何回ありましたか？」
　香菜子は泣きながら、かすかな声で、
「三回です」と答えた。
「三回？　それでは、その生徒が部屋にいた時間は、それぞれどのくらいですか？」
　香菜子は混乱して、答えることが出来なかった。
「これは、盗聴テープを取り戻す時に、どうしても必要な情報なのです。相手は、たぶん会話を録音したテープからＣＤにダビングして送ってきただろうと思います。そのマスター・テープに録音されている会話の時間がわからなければ、全部取り戻したのかどうか確認できませんから。だから、よく考えて答えて下さい」
　達夫は、子供に言い聞かせるように、香菜子に優しくいった。
　いつの間にか、達夫は自分の椅子を香菜子の隣に移し、香菜子の肩を抱くようにしていた。
「一回目の時は何分くらいですか？」
「……その時は、一時間もいなかったと思います」
「その日、他人に聞かれて困るような会話をしましたか？」
　香菜子はどう答えていいかわからなかった。達夫は、
「香菜子さん、こんなふうに聞いたら、たぶんすごく答えにくいと思いますが、大切なことなので、ぜひ答えて下さい。その日は、その生徒と……最後までいってしまったんですか？」
　香菜子の目から、また涙がこぼれた。
「……いいえ、いってません！」香菜子はようやく答えた。
「じゃあ、その日のテープは他人に聞かれても大丈夫ですか？」
「……あっ、だめです！　聞かせられません！」
　香菜子は必死で言った。

「それでは、人に一番聞かれたくない部分はどこですか？　それを知らないと相手と交渉できませんから、つらくても答えて下さい」
「……そ、それは……」
　香菜子は、どう言っていいか、言葉を失った。
「これは僕の想像ですけど、その生徒はあなたの体を無理矢理求めたんじゃないんですか？　そうでなければ、あなたのような真面目な方が、自分の学校の男子生徒と関係を持つなんて考えられません。そうですよね？」
　香菜子は黙ってうなずくしかなかった。達夫は続けて言った。
「ということは、その日、あなたは一線を越えずに踏みとどまったのに、生徒の方は最後までいってしまったということなんですね？　で、聞かれてまずい理由は、その生徒をいかせたのが、あなただったということじゃないんですか？」
「……そうです」
「どうやっていかせたんですか？」
　香菜子は達夫の追及の鋭さに、また涙をこぼした。達夫は重ねて聞いた。
「あなたの口でいかせたんですか？」
「いいえ！　その日は、口ではしていません」
「では、股でですか？　もしかして、胸に挟んだんですか？」
　達夫の質問はますます厳しくなった。
「……手でです。普通に、手で……」
「あなたが生徒のものを手でしごいて、放出させたんですね？」
　香菜子はかろうじてうなずいた。

「それでは、二回目の時は、その生徒が部屋にいたのは何分くらいですか？」
「……あれは、たぶん……、５時間くらいだと思います」
「えっ、５時間？　その間、ずっと二人で抱き合っていたんですか？」
　香菜子は顔が上げられなかった。
「ひょっとして、その日の会話が僕がこの間、聞いてしまったＣＤの内容なんですか？」
「……そうです」
　香菜子は小さい声で答えた。
「僕が聞いたのでは、生徒に体を求められたあなたは、最初は嫌がっていましたが、最後の方では自分から進んで生徒のものを求めたりしてましたよね」
　達夫にそう言われて、香菜子はまた後悔と恥辱の嵐に巻き込まれた。涙がとめどなく流れ落ちた。
「僕が聞いた以上にまずい会話はありませんでしたか？」
「……私、もう……、わからなくなりました……」
「香菜子さん、これは大切なことです。盗聴された全てのテープを回収するためには、どうしてもその内容を正確に知る必要があるのです。がんばって下さい」
　達夫は、香菜子の肩を抱きかかえて、香菜子を励まし続けた。

「あのＣＤでは、あなたは生徒のものを口に含んでますよね」
「……ああっ、もう言わないで！」
「香菜子さん、気にしなくてもいいのです。若い女の人なら当然することですから、それをしたことを恥ずかしがることはありません。でも、それを盗聴されてしまうとやっかいなことになるというだけのことなのです」
　達夫の声が香菜子の耳元で聞こえた。達夫はもう香菜子を完全に両手で抱いて話をしていた。
「ＣＤの中では、あなたと生徒は５、６回、体を交わしてますね？　それで全部ですか？　あれ以上の性交渉はありませんでしたか？」
「……あっ、ありません。あれだけだと思います」
　香菜子は気が遠くなりそうだった。

「それでは、最後です。三回目の時は何分くらいですか？」
「……たぶん、１時間くらい……。そのあとすぐ電話があって……」
「ああ、それが昨日のことなんですね？　では、昨日は二人はセックスまではいっていないんですね？」
　『セックス』という言葉に、香菜子の体はぴくっと震えた。昨日の和彦の肉棒のイメージが香菜子の膣によみがえった。香菜子はまたも、膣の奥からあふれ出る淫蜜を意識した。

　香菜子が答えないので、達夫は重ねて聞いた。
「じゃあ、昨日は他人に聞かれても問題ない内容なのかな？」
「……いいえ、だめです。昨日も、一度は最後まで……」
「じゃあ、生徒が来てすぐに一度目のセックスをしたんですね？」
「……は、はい」
「その時、生徒はあなたの体の中に自分のものを入れて、そして、それを動かして、最後にはあなたの中で出したんですね？」
　香菜子は混乱した意識の中で朦朧としながらも、昨日の和彦の肉棒の動きを体の中によみがえらせていた。

「……うぅっ、ああ、もうだめです」香菜子は上半身を折り曲げるようにして、テーブルに崩れ落ちた。達夫はそれを抱き起こし、なおも耳元で質問を続けた。
「香菜子さん、もう少しだけです。これで最後です」
　香菜子はその声がどこか遠くの方で聞こえるような気がした。
「昨日の二度目のセックスはどうだったんですか？　全部服を脱がされて、体の一番敏感な部分を舐められたりしませんでしたか？」
「ああっ、もう……」
「あなたの方から、生徒のものを求めたりしませんでしたか？」
「うっ、うっ……」
「男の、大きくなったものを、あなたは口に含みましたね？」
「はっ、はい……」
「たぶん、そうしている時に電話がかかっていたんじゃないんですか？」
「そ、そうです……」
「ああ、香菜子さん。よく頑張ってくれました。もう質問は終わりです」
　香菜子の体から完全に力が抜けた。

　達夫は、今は完全に香菜子の体を抱き、背中をさすりながら言った。
「あなたは寂しかったんだ。だからそんなふうに、生徒から無理に体を求められた時に、それに応じてしまったんだ。そうじゃありませんか？　だって、あなたの方からその生徒を真剣に愛するようになったわけではないのでしょ？」
「……はっ、はい」
　今の香菜子には、そう答えるのがやっとだった。
「でも、この関係はいつまでも続けられることじゃありません。たとえ今回の盗聴事件がなかったとしても、生徒との肉体関係を続けていたら、いつかあなたは大変なスキャンダルに巻き込まれることになります。その生徒と別れなければいけません。どうですか、あなたにはそれができますか？」
「……はっ、はい」
　香菜子は催眠術にかかったように、そう答え続けた。

「本当に出来ますか？　しばらくするとまた寂しくなって、男が欲しくなるんじゃないですか？」
「……はっ、はい……、あっ、いいえ、そんな……」
「あなたは、学校の先生なんだから、生徒と肉体関係を持ったり、変な男と付き合って悪い評判が立ったりしたら大変です」　
「……はっ、はい」
　達夫の右手はいつの間にか香菜子の体の前に回っていた。香菜子はその日、ＴシャツとＧパンを着ていたが、何度か達夫の手はそのＴシャツの上を何度か往復し、乳房を下から撫で上げるような動きをした。
「でも、心配しないで下さい。もう僕があなたを全て守ってあげます。もうあなたには、寂しい思いなんてさせません」
　達夫の手はゆっくりとＴシャツの裾から侵入し、香菜子の腹を撫でながら、上へと進んだ。
「香菜子さん、僕が全部を忘れさせてあげます。あなたが強姦されたことも、生徒と淫らな関係を結んだことも、全部忘れさせてあげます」
　達夫はブラジャーの上から、香菜子の乳房を強く掴んだ。
「僕を信じて下さい。香菜子さん、僕の言うとおりにして下さい」
「……あっ、あっ、うぅぅっ」
　香菜子は呻くように声を上げた。自分の体のどこかでスイッチが入ったような気がした。　　　
　達夫はしばらくそのまま乳房を揉むと、背中に手を回してブラジャーのホックを外した。今日は体にぴったり合ったＴシャツを着ているので、その中での達夫の手の動きは、香菜子の肌にじかに伝わった。
　香菜子は自分の肌が男の手で撫でられる感触を十分に味わった。和彦の手はごつごつして大きかったが、それに比べると、達夫の手はしっとりとしていて、香菜子の肌に吸い付くようだった。
　達夫の手は、香菜子の脇の下をなぞるように通って前に戻り、またゆっくりとブラジャーを剥がしていった。そして、ついに手は乳首に到達した。乳首が親指と人差し指によって軽く摘まれ、こりこりと動かされた。
「うっ、ぁぁあっ！」
　香菜子の声のトーンが上がった。それは、はっきりとした悦びの声だった。

　達夫はしかし、それ以上は乳房を愛撫せず、またゆっくりと手を下に移動させ、脇腹のあたりを軽く撫でて、今度はＧパンの上から尻を揉んだ。
　香菜子は、Ｇパンのごわごわした布地ごしに、達夫の手がゆっくりと動くにつれて、快感が深くなるのを意識した。香菜子はそれまで尻を撫でられて感じたことはなかったのだが、達夫のやり方は巧みだった。
　達夫は尻の割れ目に親指を当てて、それをＧパンの縫い目に沿って、尻の穴の方に向かって強く動かしながら、手のひらで尻全体を揉むようにした。
「あうぅっ……、あうぅっ……」
　香菜子は達夫の親指が動くたびに、尻の穴から快感が突き上げてくるような気がした。
　次に達夫は、股の方から手を入れ、香菜子の尻の穴から陰部にかけてをＧパンの上から強く刺激した。
「あっ、あっ……、ぃい、いやっ……、ぁぁあっ、あっ、あっ」
　香菜子は体を震わせた。声がまた高くなった。

　香菜子はもう我慢が出来なくなっていた。達夫に愛されるのは初めてで、そんなに乱れてはいけないという意識は十分にあるのだが、体が勝手に反応して、それを止めることができなかった。
　それに、香菜子の心のどこかに、
『この人には、もう自分の一番恥ずかしいセックスシーンを聞かれてしまっている。そうなった以上は、いまさらどう思われてもいいんだ』という意識があったのかもしれない。香菜子は女教師としての清楚な仮面を脱ぎ捨てて、一人の淫乱な女となってこう言った。「ああっ、もう……、もう焦らさないでください。……ねぇ、さっきの約束を……」
「約束？」達夫の声はまだ冷静だった。
「さっき……、私に全部忘れさせてくれるって……、寂しい思いをさせないって……」
　それを聞くと、達夫は少し笑いながら、
「香菜子さん、やっぱりもう、男が欲しくなったんだ。ほら、僕の言ったとおりじゃないですか」
　と言い、香菜子の体を起こすと、椅子から立ち上がらせて、奥の部屋に連れて行った。そこにはベッドがあった。
　二人はベッドに腰掛けて、唇を交わした。
　達夫はゆっくりと時間をかけて、香菜子の唇を吸った。そして、舌を絡めながら、またＴシャツの上から香菜子の乳房を揉んだ。
　Ｔシャツの下にはまだブラジャーがまとわりついている。今日のブラジャーはワイヤー入りなので、それが肌に当たってごつごつする感覚がまた香菜子を刺激した。

　しかし、香菜子の欲望は、もうすでにその程度の愛撫では満足できなくなっていた。
　香菜子は思わず、
「……このままだと、下着が当たって痛い……、ねえ」
　と言い、暗にＴシャツを脱がし、ブラジャーを取り去ることを達夫に求めた。
　達夫は、
「あっ、痛いですか？」
　と言って、乳房を揉むのを中断して、今度はやはりＴシャツの上から背中や脇腹を撫でるのだった。
　香菜子は焦れた。そして、手が自然と達夫の股間に伸びた。
　香菜子はズボンの上から達夫の肉棒を探り当てた。それは香菜子の手に、ずしりと重い質感を与えた。香菜子はもう、それが欲しくてたまらなくなっていた。

　香菜子は自分から達夫の舌を吸い、体を密着させて達夫の肉棒を激しく撫でた。
　達夫は、
「もう、我慢できないの？　そんなにこれが欲しいの？」と聞いてきた。
　香菜子は黙ったまま、達夫の胸に顔を埋め、「はぁ、はぁ」と荒い息をしていた。
「僕の方は、香菜子さんをゆっくりとリラックスさせて、つらい記憶を忘れさせようとしてますから、あまり急ぐつもりはないんです。だけど、あなたが欲しくなったんなら、そう言ってくれたら、すぐ次の段階に進みますよ」
　達夫はそう言いながら、まだＴシャツの上から背中を撫でている。そんな中途半端な愛撫をされることで、香菜子の欲情はよけいに刺激された。
「……ああ、もう……、もう、次に……」
「服を脱がせて欲しいですか？」
「……は、はい」
「それより、自分で脱いだら？　こんな体にぴったりしたＴシャツやＧパンは脱がせにくいですから」
　達夫はそう言って体を離し、自分も服を脱ぎだした。

　香菜子はこれまでの性体験の中で、男の前で自分から服を脱ぐという経験がなかった。それは、香菜子にとって新鮮な恥ずかしさだった。
　達夫は手早く服を脱ぎ、トランクスだけになって香菜子を見ている。
　香菜子は「見られている」という意識の中で、よけいに恥ずかしさと恍惚を感じながら、まずＴシャツを脱いだ。すでにブラジャーのホックは外されているので、豊満な乳房がブルンと露出する。香菜子は、達夫に背を向けてブラジャーを体から外した。
　そして、Ｇパンのファスナーを下ろしたが、それは本当に体に密着しているので、一度立ち上がらなければ脱げないようだった。
　香菜子はベッドの上に立ち上がり、Ｇパンを腰まで下ろすと、今度はベッドの縁に腰を下ろして、腿からふくらはぎへとＧパンを脱いでいった。
　香菜子はまさか今日、達夫に抱かれるとは思ってもいなかったので、パンティは穿き古した白い普通のものだった。今になってみると、それが少し恥ずかしかった。
　香菜子はそのパンティ一枚になって、両手で乳房を隠しながらベッドの上に座った。しかし、達夫はなかなか香菜子に近づいてこなかった。

　香菜子はついに自分の方から、
「ねぇ……」と言って、眼で達夫を誘った。
　達夫は、
「えっ？　だってまだ下着つけているじゃないですか。だからまだかと思って……」と言い、自分は立ったままトランクスを脱ぎ捨てた。香菜子は見ないふりをしたが、上目遣いにそっと達夫の肉棒を盗み見た。それは香菜子にとっては驚きだった。
　和彦の肉棒は確かに大きかったが、達夫のものはちょっと見ただけでも、亀頭の部分の太さが明らかに和彦のものよりも太かった。香菜子の肉襞の奥の疼きが激しくなった。

　香菜子は一応は達夫に背を向けて、ベッドの上に両足を乗せて、パンティを脱いだ。そして、達夫が自分に近づく気配を待ちこがれた。しかし、達夫はまだ来ない。
　香菜子は思わず、
「あぁん」と言いながら、後ろを振り返った。
　達夫は、
「香菜子さん、こっちを向いて、僕に全身を見せてごらん」と言った。
　香菜子は言われたとおり、ベッドの上に座ったまま振り返った。
「ほら、胸を隠さないで。そして、立ってごらん」
　香菜子は今は達夫の言われるままだった。ベッドから下りて立つと、両手を下げて全身を達夫の前にさらした。
「ああ、香菜子さん。とてもきれいだよ。本当に処女みたいにきれいな体だ」
　達夫は香菜子に近づき、ようやく体を抱きしめて唇を激しく吸った。そしてすぐに二人はベッドに倒れ込んだ。

　達夫はまず、香菜子の乳首を口に含んだ。そして、舌と唇と両手を使って、丹念に乳房を愛撫していった。
「あ、ぁあっ……、んぁあああっ……、あっ、あっ、ああっ」
　香菜子の欲望は爆発した。香菜子は乳房を揉まれただけで、もう腰を動かしながら絶叫した。
「処女みたいにきれいな体で、おっぱいが大きくて、その上、こんなに淫乱……。香菜子は男にとって、この上ない女だ。あとは……」
　達夫はそう言いながら、香菜子の秘所に手を伸ばしてきた。
「ここ……。ここの具合はどう？」
　達夫の指が香菜子のクレバスを探った。
「うぅっ、ぁうぅぅっ……」香菜子は呻くように声を立てた。
「えっ？　なに？　こんなに濡れてるの？」達夫は驚きの声を出した。
　香菜子にも自分の秘所がすでに十分な淫蜜に溢れているという自覚はあったが、達夫の指が触れただけで、もう器からこぼれて内股にしたたるほどとは思ってもいなかった。
「香菜子……、凄いよきみは。これは……蜜の壺だ」
　達夫はそう言いながら体をずらし、香菜子の股間に顔を埋めた。香菜子はすぐに達夫の意図を察したが、今の香菜子は陰部への愛撫よりも、達夫の肉棒の挿入を受けたかった。　香菜子は、
「ぃゃ、いや……、口はいや」と言って体をよじり、手で達夫の肉棒を探って、
「これ……、これ……」と言った。

　達夫は少し笑ったようだった。そして、
「香菜子は本当に淫乱なんだな……。よし、しかたがない。ちょっとだけ、味見をさせてあげるよ」と言った。
　達夫は香菜子の膝を立てさせて挿入の姿勢になった。そして、
「最初は出さないから、避妊しないよ」と言った。
　香菜子は昨日、和彦にはコンドームを付けさせたが、すでに自分の危険日は過ぎているという自覚があった。そこで、
「今日は、避妊は大丈夫」と言った。
「そうか、家庭科の先生が言うんだから生でも平気かな？　やっぱり先生も生の方が好きなの？」達夫はからかうように言った。
「……ん、もう、馬鹿」香菜子の言い方は、恋人に甘える口調だった。
「ねぇ、それより……、もう……、早く」香菜子は催促した。
「わかった、わかった、今、入れてあげるからね」
　達夫は膝を送り、腰を香菜子に密着させた。そして香菜子の腰を両手でつかんで、肉棒を膣の奥まで送り込んできた。
「うぅぅぅっ……、あっあっあああっ……」
　いきなりのことに香菜子は仰け反って声を上げた。本当に「すぶすぶ」と音を立ててめり込むような挿入だった。香菜子の性感は一挙に高まった。

　達夫は挿入すると、両手を腰から外し、片方の乳房を吸いながら、もう一方を激しく揉んだ。そして、肉棒をゆっくりゆっくりと動かした。
「んぁあっ、あああっ、あっあっあっ……、い、いや……、もっと……、ね、ねっ、もっと、もっと……」
　香菜子は肉棒の激しい抽送を受けたかった。達夫は、
「えっ？　もっとどうするの？」と言って、わざと一度肉棒の動きを止めた。
　香菜子はしかたなく、自分から腰を使って、抽送を促した。
「なんだ、凄く腰を使うのが上手いじゃないか。どこで教わったの？」
　達夫は体を起こして、
「そんなに動きたいなら、香菜子が上になってもいいよ」と言った。
　香菜子は戸惑った。もちろん香菜子には自分が上になってセックスをした経験がなかった。だから、どうやっていいかわからなかったばかりでなく、「恥ずかしい」と言う気持ちもかなり強かった。香菜子は戸惑った。

「どうする？　僕はまだ出したくないから、そんなに早くは動かさないよ」
　達夫にそう言われると、香菜子はしかたなく、
「じゃあ……、上に……」と言った。
　達夫は一度結合を解き、ベッドに仰向けになった。
「ほら、、自転車に乗るみたいに、僕に跨ってごらん」
　香菜子は、上半身を起こして達夫に跨った。
「次は、僕のを香菜子の手で、自分の中に入れてごらん」
　達夫はまた恥ずかしい要求をした。香菜子は少しためらったが、結局は達夫の肉棒を手に取った。達夫の肉棒は太さも長さも予想以上だった。香菜子はそれを手に持っただけで、膣の奥からまた蜜がわき出てきた。

　香菜子はもうためらわず、その肉棒を自分の膣口にあてがった。肉棒の先端は香菜子の手では掴みきれないほどに膨張していたが、膣口にあてがうと、それはするりと中に入った。
「ぅうっ、ぁぁぁあああっ……」香菜子はまた上半身を反らせた。
「入れるだけでいいの？　中で動かして、奥を突いて欲しいんでしょ？」
　達夫に言われて、香菜子は腰を動かしはじめた。最初は上手く動かせなかったが、膝を移動させて、下半身の位置を決めると、あとは自然に体が動いた。達夫は香菜子と手をつないで、香菜子の動きを助けてくれた。
　何度も腰を上下させるうちに、動きが早くなった。
「ぅぅうぅん……、はっ、はっ、ぁはあっ、あっあっあっ……、あっ、い、ぃい、いいっ……、あっ、凄い、ぃいっ、いいっ」
　香菜子は、頂点に登り詰めていった。
「香菜子、いってもいいよ。きみが好きな時に、気を放っていいよ」達夫がそう声をかけた。
　香菜子は、達夫にそう言われなくても、もう我慢が出来なかった。
　その瞬間、達夫が下から力を込めて肉棒を突き上げた。
　香菜子は、
「あああっ、あああああっ！」と叫んで、体を思い切り反らせて果て、そして、達夫の体の上に倒れるように突っ伏した。

　達夫はそんな香菜子の髪を優しく撫でた。
　香菜子はまだ、「はあっ、はぁぁっ」と荒い息をしていた。
「香菜子、凄くよかった。僕もいきそうになったよ。あんなに動いて、疲れただろ？　少し休もう」
　二人は結合を解いて、並んで寝た。
　達夫は香菜子を抱き、乳房を軽く撫でながら、
「香菜子のあそこ、入り口が狭いし、中がざらざらしていて気持ちがいいよ。今日は生でしたから、なおさらよかった。今までもそう言われたことある？」
　香菜子は怒ったふりをして、
「山内さん、すごく遊んでいるんでしょ？　私のこと、ほかの女と比べて欲しくない」と言うと、達夫は、
「山内さんなんて、もう呼ばないでくれよ。達夫でいいよ」と言った。
「それに、僕はそんな遊び人じゃないよ。コンピュータの仕事ばかりしていて、女の人と付き合った経験なんてあんまりないもの。香菜子の方がはるかに凄いよ」
「だめ。私のことは言わないで。忘れさせてくれるって約束したじゃない」
　達夫は笑って、
「そうだね。じゃあ、さっそく忘れさせる治療をしよう。まず、若い女の人だったら誰でもが男に対してすることを僕にもして、僕のものに元気をくれないか」と言った。
　香菜子は達夫がフェラチオを求めているのはすぐにわかったが、自分からすぐに動くのはまだ恥ずかしかった。そこで、
「達夫は、私にはしてくれないの？」と聞いてみた。
「いいよ、するよ。じゃあ、またきみが上になって、お互いに大事な部分を舐め合おう」
　達夫はと言って体の向きを変えた。

　香菜子は女性上位のシックスナインの経験もなかった。しかし、今はためらいはなかった。香菜子は体を起こし、達夫の肉棒に顔を近づけ、自分も秘所が達夫の顔の方に向くように動かした。
　達夫は、
「ほら、僕の頭を足の間に入れなくては、届かないよ」と言った。
　香菜子は言われるままにそういう姿勢になった。
　香菜子は達夫の肉棒を両手で掴み、丁寧に舌を使って、下から上へと舐めていった。
　達夫はやはり両手で香菜子の尻を掴み、尻の穴の方から舌を這わせて大陰唇に分け入り、甘い蜜を滴らす壺と、その蜜にたっぷりと濡れた女の芯を舐めた。
　たちまち香菜子は熱い息を吐き出した。
「ぅぅうううっ……」
「ほら、あんまり感じてると、僕のを舐めるのができなくなるよ」
　達夫はそう言って、舌を使うのをやめた。
　香菜子は今度は達夫の亀頭を口に含み、舌と唇でぺちゃぺちや音を立てて舐めた。達夫の亀頭は香菜子の小さな口に溢れるばかりの大きさだった。

「よし、僕も元気になった。さあ、それでは治療の次のステップだ」
　達夫はそう言うと、正常位に戻り、香菜子にキスをして、愛撫を再開した。
　達夫は香菜子の反応を見ながら、乳房、乳首、首筋、耳、肩、背中、脇腹、太腿、そして、女の一番敏感な部分へと舌と指を這わせ、そのパーツの一つ一つを点検するように、愛撫していった。
　香菜子は悶えた。達夫の指と舌が通り過ぎるたびに、その部分は極限まで敏感になり、性感が高められた。
「あああっ、だめ、だっ、だめ！　もっ、もう、だめ！」
　香菜子はもう我慢が出来なかった。
「入れて！　ねっ、ねえっ、入れて！　もう、入れて！」
　香菜子は足をばたばたさせるようにして、達夫に挿入を求めた。
「よし、僕ももう出したくなった。いくぞ。今度は二人でいこう」
　達夫はそう言って、香菜子から体を離した。
「今度は後ろから入れるよ」
　達夫は香菜子に、後背位を求めた。香菜子はすぐに俯せになり、尻を突き出した。
「あっ、バックは慣れてるんだ。いいポーズだよ」
　達夫はそう言いながら香菜子の腰を掴み、すぐに挿入した。
「ん！　んあぁ！」
　香菜子はまたしても自然と体を反らした。
　達夫の指が香菜子の女の芯に当たった。
「あっ！　ああっ！」
　達夫は香菜子に体を密着させて、肉棒をゆっくり動かし、女の芯と乳房への愛撫を続けた。
「だめっ！　もう、もう、だめ！　達夫、来て！　来て！」
　香菜子の我慢が限界を越えた。達夫の息も激しくなった。

「香菜子、香菜子、最後は前からしよう」
　達夫は香菜子を仰向けに戻し、膝を立てさせて挿入した。
「あっ、達夫、もっと！　ああっ、もっと！」
「わかってるよ、早く動いて欲しいんだろ？」
　達夫は激しい抽送を開始した。達夫のピストン運動は抜く時が早く、送り込む時が少しスピードが遅くて、力強かった。香菜子はすぐにそのリズムに合わせて腰を使った。
　二人は絶頂に向けて登り詰めていった。
「ああっ、香菜子！　いいよ！　とってもいいよ！」達夫の声も、さすがに興奮していた。
「ああっ！　うぅうん、うっうっ！　あっ！　あっ！　あっ！　い！　いく！　いく！」　
　達夫の動きがさらに早くなった。
　香菜子は驚いた。香菜子が今まで頂上だと思ったさらに先に、もう一つの頂上が見えた。
「ぃい、あ、あ！　ああ！　だめ！　もう、だめ！」
　香菜子はそういいながら、激しく腰を動かした。達夫の方も手をベッドについて、上半身を立ててより激しく動いた。
「ぅううん、はっぁっ、あっあああっ、ほんとにだめ！　だめ！　だめ、だめっ！」
　香菜子は今までにない官能の中で、さらに上の頂上に上り詰め、絶叫した。
「よし、香菜子、いくよ！　僕もいくよ！」
　達夫は強いストロークを送り、最後に腰を香菜子に押し付けながら動きを止めた。
「あああああっ、達夫、達夫、達夫！」
　香菜子の肌は上気してピンク色に染まり、全身は最高の悦楽に包まれた。
　達夫の男の精が香菜子の膣の奥に発射された。香菜子はその熱い精を膣で感じながら、果てた。

　女教師の香菜子は、今、女としての幸福の頂点にいた。

（以下、次回に続く）