激しいセックスの余韻に包まれ、香菜子は身動きできなかった。もう、達夫の体は香奈子からは離れたのに、まるで、まだその肉棒が入ったままになっていて、それが熱を持って香菜子の膣をじわじわと内側から刺激するような感覚だった。
　達夫もしばらくは何も言わなかった。彼も、今までにない性の余韻に浸っている様子だった。
　そして、そのまま何分かが過ぎ、ようやく達夫は起きあがり、服を着だした。
「香菜子、何も食べないでセックスばかりしてると、体に毒だよ。とりあえず、コンビニで何か食べる物を買ってくるから、ちょっと待ってて」
　達夫はそう言うと部屋を出ようとした。
「待って、達夫、私も行くから」
　香菜子は慌てて、体を起こしたが、達夫は、
「いいよ、僕一人で行く」と言って、部屋を出て行った。
　
　達夫が部屋を出るとすぐに、押入の戸が開き、和彦が出てきた。
　香菜子はまだ完全な裸のままである上、陰部からは達夫の精が滴っているという状態だったので、あわててタオルケットを引き寄せて、体を隠した。達夫とのセックスの最中は、いくら体を見られても、少しも恥ずかしくはなく、むしろ快感を感じるほどだったのに、今、この姿を和彦に見られるのは、とても恥ずかしかった。
しかし、和彦は手荒にそのタオルケットを剥ぎ取った。
「何するの！」
　香菜子は思わず叫んだ。しかし、和彦はやめなかった。全裸の香菜子の姿が和彦の前にさらされた。香菜子は思わず膝を硬くして、手で胸を押さえた。
　よく見ると、和彦のＧパンのベルトは緩められ、ファスナーはすでに完全に下ろされていた。
「先生、今度は俺とやるんだ！」
「やめて、滝原君！」
　香菜子は四つんばいになって、胸をゆらしながら逃げようとした。和彦は香菜子の肩を捕まえた。
「先生、何言ってるんだ。先生は、あの男のチ×ポを自分から中に入れてたじゃないか。それに、前に俺とやった時だって、絶対に先生の方から誘ったんだぜ」
「そんなことないわ！」
「いいや、そうに決まってる。先生はもともと男が好きなんだ。男なら誰でもいいんだろ？」
　そう言いながら和彦はＧパンを少し下げて、ブリーフから肉棒を取り出した。和彦の肉棒はすでにはち切れるばかりになっていた。

「ほら、先生、俺のも舐めるんだ」
　和彦は肉棒を香菜子の目の前に突きだした。
「いやっ。だめっ！」
　香菜子が首を振りながら下を向くと、和彦は片手で香菜子の顎を持ち、顔を上げさせておいて、もう一方の手で自分の肉棒を掴んだ。
「じゃあ、先生、俺の汁も先生にかけてやるよ」
　和彦は肉棒を自分で激しくしごいた。たちまち亀頭は赤黒い色を濃くし、極限まで張りつめた。
　次の瞬間、和彦の肉棒は弾け、白い精が香菜子に向けて放たれた。それは香菜子の顔から胸にかけて激しく飛び散った。
　和彦は精を放ち終わると、何も言わずにＧパンのファスナーを戻し、部屋を飛び出していった。
　その日から和彦は二度と香菜子の部屋には来なくなった。

　そんなことがあってしばらくして、夏休みに入った。香菜子は朝から達夫の部屋で過ごし、二人で濃密なセックスに耽ることも何度もあった。香菜子の体は、もう完全に達夫なしでは、というよりも、男なしでは過ごせないものになっていた。
　香菜子は少し自分が怖くなってもいた。今は達夫に愛されることで満足しているが、もしも達夫が自分に飽きて、あまり抱かなくなったとしたらどうだろうか。
　香菜子はそれに耐えられる自信はなかった。

　そんなある日、大学の同級生だった吉岡恵里から電話がかかってきた。
「香菜、元気？　夏休みに入ったから、久しぶりに電話してみたの」
　恵里も香菜子と同様に、都立高校の家庭科の教師だが、彼女の学校は世田谷なので、住まいもそちらだったが、すでに結婚準備の意味もあって、ローンで買った五階建てのマンションの最上階に住んでいるのだった。
「恵里、あなたこそ元気？　白井君とうまくいってる？」
　恵里には大学時代から付き合っている白井智明という恋人がいた。
「うーん、別にうまくいってないわけじゃないけど、もう３年以上も付き合っていると、やっぱりマンネリっていう感じかな。それより、香菜はどうなのよ。新しい学校で恋人できたりした？」
「あっ、いや……。学校ではできていない」
　香菜子が少し慌てて答えたのを恵里は聞き逃さなかった。
「あっ、香菜、恋人できたんだ。で、どんな人？」
「ううん、そんな、恋人ってわけじゃなくて、まだつきあい始めたばかりだし……」
　香菜子がそう答えると、恵里は、早口でこう言った。
「香菜、あなたももう大人なんだから、好きな人ができたらちゃんと付き合わなくちゃだめ。ぐずぐずしてると乗り換えられちゃうぞ。いいわ、私がその人のこと、見極めてあげる。こんど、どこかでその人に会わせてよ」
「うーん」
　香菜子がどうしようか考えているうちに、恵里は、
「じゃあ、善は急げって言うから、明日の土曜、お昼に二人で私の家においでよ。一応、友人のお見舞いってことにしておけば、彼氏を引っ張り出しやすいでしょ？　ちょうど今、私、夏風邪引いているから、外に出たくないの。本当にお見舞いに来て。じゃあ、いいわね」
　それだけ言うと、すぐに電話を切ってしまった。

　香菜子は、本当は恵里に達夫を見てもらいたい気持ちはあった。今は香菜子自身、達夫に夢中になっていて、冷静に見ることができないが、自分の恋人が客観的に見るとどうなのかを知りたかったのだ。ただ、それは少し怖いことでもあった。
　香菜子は迷ったが、結局は達夫を連れ出すことにした。
　香菜子が恵里の見舞いの件を達夫に言うと、彼は怪しみもせずに同行してくれることになった。
　
　その日の夜、達夫は香菜子を長い時間かけて何度もいかせた。
　その日は、妊娠の危険日が終わったために、久しぶりにコンドームなしで交われる日だった。香菜子の方としては、コンドームを付けたからといって、達夫の肉棒から受ける快感は減るわけではなかったが、達夫の方は、やはりコンドームなしの日の方が、より激しく香菜子を突くようだった。
　そして、達夫はその夜、香菜子の中に二度、精を放った。香菜子は疲れはてたが、達夫も珍しく消耗したらしく、二度目の射精までたどり着くと、すぐに寝てしまった。
　翌日、香菜子は外出のためのメイクをすませ、白いシャツブラウスに茶色のミニスカートを着て、達夫の部屋に行った。達夫はまだ寝ていた。
　香菜子が達夫を起こそうとすると、達夫はいきなり香菜子に抱きついてきた。
「ちょっと、達夫。だめよ。ほら、昨日話したじゃない。今日は友達の家にお見舞いに行きたいの。達夫も一緒に来てくれるんでしょ？」
「わかってるよ。行くさ。だから、その前にもう一度香菜子を抱きたいんだ」
「だめだったら。ほら、私、もう出かける用意をしてきたんだから。それに、もう出かけなければいけない時間よ」
　しかし、達夫は香菜子を抱き、激しく唇を吸った。そして、スカートのファスナーを手荒く下ろすと、パンティストッキングを引き裂くような勢いで下げた。
　一緒にガードルもパンティも剥ぎ取られ、たちまち香菜子の下半身はむき出しになった。
「ぁあっ、達夫、昨日あんなにしたじゃない。今は勘弁して。帰ってきたら、またするから」
「だめだよ。今欲しいんだ」
　達夫は、香菜子の股間にいきなり顔を埋め、舌で陰唇を割った。

「あああっ、うーん」
　香菜子の体に昨夜のセックスの余韻が戻ってきた。そして、体の奥、それも香菜子の女の器の一番奥に、ぽっと火がついたような感覚があった。
「ぅううっ、あっ、ああっぁああっ」
　香菜子の蜜の壺は、はたちまちとろりとした熱い液を流しはじめた。
「ほら、香菜子だって欲しいんだろ？」
　達夫は激しく舌と唇を使って、香菜子のクリトリスと膣の入り口近くを攻めた。香菜子は手を膝に置き、足を広げられるだけ広げて、その愛撫を受けた。

「あっ……、あああっあっ……、ああっあああっ」
　香菜子の口から出る声は、すでによがり声になっていた。達夫はパジャマを脱いで、肉棒を露出させた。その張り具合からは昨日の疲れは全く感じられなかった。
　達夫が体を離したすきに、香菜子は自分からブラウスを脱ぎ、ブラジャーも外してしまった。そんな積極的な行動を取るまでに、香菜子の性欲はすでに高ぶってきていた。そして、
「達夫……、下を舐めるだけじゃなくて、胸も……一緒に」
　と言って、自分で乳房を下から持ち上げて達夫の顔の前に突きだした。香菜子は、陰部を舌で愛されるのも好きではあったが、それと同時にＤカップの乳房を揉まれたりすると、多くの快感を得られるのを知っていた。

「えっ？　おっぱいもいじって欲しいの？」達夫はまた香菜子を焦らしにかかった。
「うん、早く舐めたり吸ったりして！」
　香菜子はもう達夫の前では自分の欲望を隠すことをしなくなっていた。
「しょうがないな、本当に淫乱な先生なんだから」
　達夫はそう言いながら乳房に手を伸ばし、乳首を捏ねるようにしながら全体を揉んだ。乳房は激しく形を変え、乳首が立つのがよくわかった。
「うぅーん、あああっ、あっ、あっ」
　香菜子は自分が感じ始めていることを達夫に知らせるためにも、特に甘い声を出すとともに、自分から手を伸ばして、達夫の肉棒を握った。そして、最初は根本に指を這わせ、次第に上に進んでいった。
　最後に、両手で大きく張り出した傘を包むようにして、親指で優しく擦るようにした。達夫の肉棒の先端からは透明な液体がこぼれ、傘を濡らした。そして、その液体を傘全体になすりつけるように香菜子は指を動かした。肉棒は、香菜子の指が通過するたびにぴくぴくと動いた。

「ああっ、達夫のはこんなにぴくぴく動く。達夫も感じてきてるのね」
　香菜子が言うと、
「そうだよ。だから、指じゃなくて、口でくわえて、もっとしっかり感じさせてくれよ」
　達夫はそう言って、体位を変えようとした。
　香菜子はすぐに、達夫が求めている女性上位のシックスナインのポーズに移った。香菜子は貪欲に達夫の肉棒をしゃぶった。
「ああっ、香菜子、すごいぞ。やっぱりきみは、やればやるほど男が欲しくなる女なんだね」
　達夫も香菜子の秘所に舌を差し込みながら言った。
「うっぁあっ、あっ……、私を……私の体を、こんなにしたのは誰？」
　香菜子はソフトクリームを舐めるように、達夫の肉棒をいろいろな角度から舐めながらそう言った。すると、達夫は、
「僕と出会った時は、もうきみは凄い淫乱だった。こんな体にしたのは、僕じゃなくて、あの高校生とか、その前の、ほら、部屋に忍び込んできみを強姦した奴なんじゃないか？」と言った。
「あっ、ああっ……、それは……、それは言わないで、お願い」
　香菜子は達夫の舌の攻撃をクリトリスに受け、腰を浮かせながらそう言った。
「だとしたら、きみも僕も、その強姦魔に感謝しなくちゃいけないかな？」
「うっ、ぁあっはぁん……、そんな……」
　香菜子はそう言いながらも、ひょっとしたら達夫の言うとおりかもしれないと、少しは思いはじめていた。

　達夫はついに体位をまた変え、香菜子のバックに回った。香菜子は気持ちが高ぶった。
　香菜子は後背位が好きだった。
　この体位だと、香菜子は肉棒を膣に挿入され、抽送を受けながら、同時に乳房を揉まれたり、クリトリスをいじられたりすることができるからだった。
　それに、豊満な乳房を揺らしながらセックスするというのは、女である香菜子自身にとっても快感を覚えることなのだった。
　その上、バックから突く達夫の、この動きの早さも魅力の一つだった。
「ぁぁぁあああっ、うぅうっ、はぁあっ、ああっ、あ、ああっ」
　突かれるたびに香菜子は激しく声を上げた。
　達夫はなおも激しく突いた。
「うぅうっ、うん、はあっ、ぁはあっ、あっ、あっ、ああっ、いい、いいっ……、あっ！　あっ！　いい、いい！」
　香菜子は絶頂に上っていった。

　達夫は抽送のスピードと角度を微妙に変えながら突いた。そして、ある時には、肉棒を深く沈めて、膣の奥で少しずつ早く動かしながら、香菜子の望み通り、乳房を下から揉みあげるようにしたり、結合部分からクリトリスにかけて指でなぞったりした。
「ああっ！　うぅうん、うっうっ！　あっ！　あっ！　あっ！」　
香菜子の興奮のレベルがさらに高くなった。
「あああっ！　ぁぁあああっ！　だめ！　も、もう！　だめ！　い、いく！　も、もう、いっちゃう！　いっちゃう！」
　香菜子は両手をつき、尻を最高に持ち上げて、達夫の肉棒をより深く受け入れるように、迎えに行った。
「おおっ、香菜子、いいよ！　凄い締めつけだよ！」
　達夫の声も少し上ずっていた。
「あぁあっ！　達夫！　達夫！　いく！　いく！　いかせて！　いかせて！」
「よし、出すぞ！」
　達夫は最後に、香菜子の尻を両手で掴んで、肉棒をぐいぐいねじ込むように、深く突いた。そして、
「おおっ、出す！　出すぞ！」と言いながら香菜子の尻に爪を立てた。
「ぅぅううう、ああああああ！　出して！　もう！　いく！　いっちゃう！　ぁああああ！」
　香菜子が獣のような叫びを上げると同時に、達夫も精を放ったようだった。
　二人は、倒れ込むようにして、重なり合って横たわった。
　しばらくは外出どころではないのは、香菜子にはよくわかった。

　結局二人が外出したのは、それから一時間後だった。
　香菜子はしかたなくメイクをやり直し、薄紫のロングスカートと、クリーム色のブラウスを身につけた。下着は上下ともクリーム色を選んだ。
　達夫は、香菜子の友人に会うというので、少し気を遣ったらしく、かなりきちんとしたシャツとズボンを着て、麻の上着まで手にしている。
　行き先は駐車場がないようなので、二人は電車で出かけることにした。

　途中で食事をしたせいもあり、結局、二人が恵里のマンションに着いたのは、午後２時を過ぎた頃だった。
　香菜子が恵里の部屋のチャイムを鳴らすと、中からはなんの応答もなかった。不思議に思って、香菜子は恵里の携帯に電話をしてみた。すると、何度も呼び出した後で、
「香菜、遅いじゃない！　何してるの？」と言いながら、恵里が電話に出た。
「香菜に電話しても、いつも留守電じゃない。今どこにいるのよ？」恵里は何故か少し慌てているようだった。
「ごめん、ごめん。どこって、今は恵里の家の前だけど……」香菜子は少し戸惑って言った。
「じゃあ、今なったチャイムは香菜たちなの？　あら、大変。ちょっと待ってて」
　恵里が電話を切ったので、二人は部屋のドアの前で待っていたが、ドアはなかなか開かなかった。

　５分ほどたって、ようやくドアは開き、中から恵里が顔を出した。
「待たせて本当にごめん。あんまりにもひどい格好をしてたから」
　そう言いながら恵里が出てきた。
　恵里は香菜子よりも少し背が高く、いつも長い髪をなびかせていたが、今日はその髪を後ろで束ねている。そして、たぶんパジャマを下に着た上に、コットンのバスローブを部屋着のようにかさねて着ている。
　恵里は、バストのサイズそのものは香菜子よりも少し小さいのだが、かなり体が細いので、体の線の両側から乳房が横に出ているように見えて、普段はそれだけでも男の目を引く体型だった。それが、そんなバスローブをまとうと、胸のボリュームはある程度はわかるが、体の線ははっきりとは見えなかった。
「あっ、この人が山内さん？　お待たせしてごめんなさい。さあ、入って、入って」
　恵里は二人を中に導いた。

「あっ、香菜ちゃんひさしぶりだね」
　リビングに入ると、白井智明がソファーから声をかけてきた。
「何だ、白井君来てたの？」
「うん、恵里が病気だっていうから来てみたんだけど、全然具合悪そうじゃないじゃん。心配して損した、ってとこだよ」
　智明はポロシャツをラフに着こなして、少し上気した顔でアイスコーヒーを飲んでいた。そんな様子を見ると、まるでスポーツでもした後のような、くつろいでいるような様子だった。
　香菜子に続いて達夫が、そして最後に恵里がリビングに入った。

「さあさあ、立ってないで座って座って。香菜、山内さんを私たちに紹介してよ」
　恵里に促されて香菜子は、
「あっ、この人、私のアパートの隣の部屋に住んでる山内達夫さん。困ったことがあると、いつも相談に乗ってもらってるの」と、達夫を二人に紹介した。達夫は、
「山内です、よろしくお願いします」と言って頭を下げた。
「ええっ？　なになに、隣に住んでるの？　それじゃ、付き合ってるっていうより、いきなり同居しているようなもんじゃない？」恵里が驚いたような声を出した。
　智明は笑って、
「恵里、初めてあった方にそんな失礼なこと言うなよ」と言って、
「二人とも、食事は済まされたんですか？　もしまだなら……」と聞いた。
「いえいえ、途中で済ませてきました」達夫が答えた。
　恵里は、
「それじゃあ、一緒にケーキ食べようよ。智明が買ってきてくれたの」と立ち上がった。
「あれ、私たちもお見舞いにケーキ持ってきたんだけど」香菜子が手に持った箱をテーブルに載せた。
「いいわねぇ。ケーキバイキングみたいじゃない」
　恵里はそう言ってキッチンに入り、アイスコーヒーとケーキ皿を用意して戻って来た。
　４人はしばらくケーキを食べながらおしゃべりを楽しんだ。そのうちに、達夫も他の二人とかなりうち解けてきたようだった。
　
「じゃあ、じきに晩ご飯の時間になっちゃうから、ピザとか宅配の料理とかをたくさん頼んで、今日はみんなでゆっくり飲もうよ。明日、日曜なんだし」
　恵里が明るい声で言い出した。
「恵里、病気はどうなったんだ？」
　智明がすかさず、からかうように言うと、恵里は、
「うん、もう全快、全快。だから今日はお見舞いじゃなくて、快気祝い」
　そう言って、早速あちこちに電話をかけ、料理を注文し始めた。
　もともと、恵里は酒好きな方なので、マンションにはビールやワインのストックがかなりあった。
　５時を過ぎた頃には、テーブルには酒のグラスが並び、ビールの栓が抜かれた。
　酒が入ると、さらにその場はうち解けた雰囲気になった。
　恵里は、パーティーやコンパではいつも盛り上げ役で、人に酒を勧めるのも上手かった。
　４人はみんな、かなりのピッチで酒を飲んだ。

　そのうちに、酒は冷えた白ワインに変わった。すると、味が変わったせいで、またかなりの量が飲めてしまう。まだ外は明るいのに、４人はすっかり酔った状態になっていた。　恵里は、今はソファーの上に足を乗せて、あぐらをかくように座り、みんなに酒を勧めていた。いつの間にかバスローブ脱いでしまったので、クリーム色の半袖のパジャマだけになっている。
　パジャマの生地は薄いので、恵里がブラジャーをつけていないのもはっきりわかるし、それ以上に、股間のあたりでは、下に穿いているかなり濃いピンク色のパンティが透けて見えている。
　恵里はもともと、セックスにおおらかな方で、智明とのことも香菜子に平気でしゃべるほどなので、下着が見えても気にならないのかもしれないが、香菜子にしてみれば、達夫がどんなふうに見ているのか、少し気にはなった。

　香菜子は何気なく恵里に聞いた。
「ねえ、私たちが来た時、なんであんなに玄関で待たせたの？」
　恵里はワイングラスに残ったワインを一気に飲むと、
「だから……、香菜達を待っているうちに、智明が来るし……、それでも香菜達なかなか来ないから、二人でお昼とか食べてるうちに、部屋も散らかるし……」
　そう言いながらまたグラスをワインで満たした。
「ええっ？　そうかな？　私たちが来るまで、二人で何してたのか、かなり怪しいな」
　香菜子は笑いながら言った。
　恵里は少し口をとがらせて、香菜子に反撃してきた。
「何言ってるのよ、あんなに待たせるからいけないんじゃないの。でも、怪しいと言えば、香菜だって相当に怪しいわよ。だって、香菜は山内さんと一緒のところに住んでるんでしょ？　外で待ち合わせたわけじゃないのに、来るのがあんなに遅れたってことは、出がけに何があったの？」
　図星の指摘をされて、香菜子は少し焦った。
「何って、別に何もないわよ」
「いや、絶対に怪しい。香菜を裸にしてみると、どっかに山内さんの歯形でもついてるんじゃないの？」
　すでに酔っている恵里は、笑いながらそんなきわどいことを言いだした。

「何言ってるの、恵里こそおかしいわ。パジャマの下のピンクのショーツ、丸見えよ。だいたい、人が来るのに、クリーム色のパジャマの下にそんな派手なピンクのショーツなんて、普通つけないもの。それって、裸でいる時私たちが来たからあわてて、何でもいいからって穿いたんじゃないの？」
　笑いながらではあるが、お返しの意味で香菜子もかなりきわどいことを言った。
　すると、恵里はその香菜子の言葉に驚いた様子を見せた。
「ぁあっ、香菜、変わった！　少し前まで、いくらお酒飲んだからって、そんな下着の色のことなんか、絶対言わなかったもの」　
　恵里に言われてみると、その通りだった。今までの香菜子は、性的なことに関する冗談などは口にしないタイプの女だった。

「香菜子、成長した。大人の話ができるようになったんだ。それって、山内さんのおかげ？」
　恵里は今度は達夫に話しかけた。
　達夫も笑いながら、冗談めかして答えた。
「ええっ？　香菜子って前はそんなに硬い感じだったんですか？　僕と会った時には、もう、かなりきわどいことを平気で言う人でしたよ」
「ええっ？　本当？　それなら香菜って、女の友達の前では本性を隠しておいて、彼氏の前では気を引くためにエッチなことでも何でも平気でする、二重人格女じゃない」
　恵里はテーブル越しに香菜子のグラスにワインを注ぎながら言った。
「うわっ、ひどい、恵里！」
　香菜子が少し傷ついたふりをすると、智明も、
「香菜ちゃん、恵里はもう酔ってるんだから、全然気にしなくていいよ」と言った。
　すると恵里は、自分の胸を押さえながらこんなことを言った。
「ぁあっ、智明、香菜の味方してる！　もともと智明ったら香菜に気があったんだから。前も、私とエッチした後で、『おっぱいに関しては、おまえのより香菜ちゃんの方がでかい』なんて言うんだから。私だってＣカップはあるけど、Ｄカップの香菜と比べられると、自信なくしちゃう。智明、そんなに香菜がいいなら、今から乗り換える？」
　智明は、
「おいおい、恵里、何言うんだよ。香菜ちゃんや山内さんに失礼じゃないか」と言いながらも、そんな話題が嫌だというわけではないようだった。

「香菜ちゃん、ごめんね。恵里は少し飲み過ぎだよ」
　智明は香菜子にそう言った。その様子を見て恵里は、
「ぁあっ、智明、本格的に香菜を口説こうとしている！　こうなったら私は、山内さん口説いちゃうぞ！」と言って、ソファーから下り、山内の腰掛けている横の床に座り込んだ。
「ねえ、山内さん、もう香菜とエッチしたんでしょ？　香菜ってどうなの？」
　恵里は達夫の膝に手を置いてしなだれかかるようにしてそう聞いた。
「どうって……」
　さすがに達夫も答えに困ったようだった。すると恵里は、
「香菜、こんな席なんだから、何聞いてもいいよね？」と香菜子に聞いた。
　香菜子もかなり酔いが回っていた。
「恵里、エッチ好きすぎ。達夫に変なこと聞かないで」
　すると恵里は、
「香菜こそ、本当はエッチ大好きなんじゃないの？　どうなの、山内さん？」と達夫に迫った。
「ええ、香菜子は今はものすごいエッチ好きですよ。たぶん恵里さんより好きなんじゃないかな」と答えた。
　その答えを聞いて、恵里と智明のテンションが上がった。
「ねぇ、智明。聞いた？　聞いた？」恵里が言うと、
「山内さん、すごい。なんだ、香菜ちゃん、そんなに好きなんだ」智明も答えた。
　香菜子は仕方なしに、
「違うの、違うの。達夫がいけないの」と大きな声で言った。
「うわっ、それって、のろけ？　山内さんが香菜を本当の女にしたってこと？」
　恵里も大きな声で言った。
「違うったら！　私、そんな好きじゃないんだったら」
　香菜が言うと、恵里は、
「山内さん、一日で最高何回、香菜子としたことある？」今度は達夫に聞いた。
「えっ？　それって僕が出した回数？　香菜子がいった回数？　どっちですか？」
　恵里はすぐに答えた。
「じゃあ、山内さんが最高出した回数は？」
「一晩だったら４回。二日がかりで、連続１０回以上したこともあるけど」
「それだけしても、香菜は嫌がらないんでしょ？」
「うん。全然嫌がったりしなかったですよ」
「じゃあ、香菜はその間、何回ぐらいいったの？」
「うーん、数え切れない」
「うへー、すごすぎ。それって立派な淫乱じゃないの」
「ええ。僕は香菜子のこと、淫乱女教師って呼んでます」
　そんな会話を聞きながら、香菜子は恥ずかしさと酒の酔いで体が熱くなってくるのを感じた。
　と同時に、いつの間にか智明の手が、香菜子の膝に置かれ、それがスカートの上を滑るようにゆっくりと動く気配を感じていた。

　長い夜になりそうだった。　

（以下、次回に続く）