恵里は、最初は香菜子の正面のソファーに腰掛けていたのだが、今は床に下りてきて、あぐらをかいて座っている。薄手のパジャマ越しに、ブラジャーを着けていない乳房が揺れ、かなり悩ましい姿になっている。
　達夫は香菜子の右に座っているが、まだそんなに酔っているようには見えない。
　恵里は達夫にしなだれかかるようにしながら、しきりに話しかけた。
「ねぇ、山内さん。私だって高校の教師なんだから、普段はこんなエッチな会話なんか絶対にしないけど、その分、こういう席ではすごくしゃべりたくなっちゃうの。変かしら？」
　達夫はにこやかに、
「少しも変じゃないですよ。むしろ自然じゃないかな。ほら、学校の先生なんて、普段はセックスには全然興味ないふりしてなくちゃいけないでしょ？　だから、私生活では開放的になった方が、バランス取れていいんじゃないかな」などと答えているが、香菜子には達夫の視線が、恵里の胸のあたりに注がれているような気がした。

　智明は香菜子の左に座っていたが、ワインの瓶を取るふりをして、さりげなく香菜子の方に体を寄せてきた。そして、肘で香菜子の乳房をつつくようにした。
　それから、もっと香菜子に密着するように座る位置を変えると、今度は右手をゆっくりとテーブルの下に伸ばして、香菜子の太腿にまた触れた。そして、香菜子の方を見て、
「香菜ちゃん、今日はもう、山内さんとエッチしてきたんだろ？」と言った。
「白井君、やだったら。もう、そんなことは聞かないで」
　香菜子が嫌がるふりをすると、智明はますます体を寄せて、
「香菜ちゃん確か、大学の時には別の恋人いたよね。ええと、大島君っていったっけ」と聞いた。
　そして、香菜子が答える前に、香菜子の太腿に置いた手をゆっくりと動かしながら、
「てことは、もうそのころには確実に処女じゃなかったはずだから、きっと今度は山内さんに体を開くのも早かったはずだな。蒲田に引っ越したのが４月だろ？　じゃあ、もう５月ぐらいには山内さんと体の関係ができてたんじゃないの？　で、大島君より山内さんの方がエッチはうまいの？」ますますきわどいことを言い始めた。
　一応、声を落として、達夫には聞こえないようにはしているが、香菜子は達夫がこっちを向かないかとひやひやした。

　香菜子の横では、恵里と達夫の会話も、かなり盛り上がってきた。
「香菜もそうだろうけど、教師ってけっこう人間関係が大変なのよ。私だって変な噂が立ったら職場で困るから、こんなふうに本音でしゃべる相手は選んでるの。でも、山内さんなら平気そうね。香菜もきっと安心して付き合っていられるんだわ」
「でも、恵里さんのような美人だったら、学校で、同僚の男の先生や生徒からもてて、大変なんじゃないですか？」
「もう、そんなにお世辞言わないでよ。でも、若い女の教師なんて少ないから、特別な目で見られることは確かね」
「特別な目って言うのは、つまり、いやらしい目ってことでしょ？」
「そうそう。スカートの中を覗こうとする奴もいるし、わけもなく胸に触ろうとする奴もいるし」
「生徒がそんなことするの？」
「ううん、生徒だけじゃなくて、男の教師もやるもの」
「ええっ、それってセクハラじゃないですか」
「そうなの。ホントにセクハラなんていつものことなんだから。ねえ、香菜。香菜のところだって、そうなんじゃないの？」

　急に話を振られて、香菜子はびくっとした。というのも、その時には智明の手は、スカートの上からではあるが、すでに香菜子の膝から太腿の内側に入り込み、足の付け根の部分にまで達していたからだった。
　香菜子は、
「ええっ、恵里、なあに？」と言いながら、智明から少し体を離し、彼の手から逃れた。
「香菜なんか、おっぱいは大きいし、凄い美人なんだから、もう学校じゃ大変なんじゃない？　たぶん、香菜の写真をこっそり撮って、部屋に隠している生徒なんか、１００人くらいいるんじゃない？」恵里が言うと、智明は体を乗り出して、
「その生徒達、香菜ちゃんの写真を何に使ってるか、当ててみようか？」と言って、その会話に加わるふりをしてまた香菜子に近づき、もう一度手を伸ばして、香菜子の股の間に置いた。
「生徒がその写真を見るのは、夜、ベッドの中でじゃないのかな？」
　智明はそう言いながら、テーブルの陰になっているのをいいことにして、右手の指を香菜子の股間にねじ込んできた。
「そして、香菜子先生のいちばん大切なとこに、自分のものをはめ込むシーンを想像しながら、手を動かすんだぜ」
　智明は、人差し指を香菜子の股間で肉棒のようにピストン運動させた。その位置は、香菜子の膣口のかなり上ではあったが、香菜子は自分のクリトリスがその刺激に反応するのをはっきりと感じた。
「やだもう、白井君」そう言って、香菜子は智明の手を振り払うように、一度中腰になって座り直した。
　
そんなことを話しているうちに、達夫がトイレに立った。達夫がいなくなると、智明は遠慮なしに香菜子に顔を近づけ、手を尻に回して、
「ねぇ、香菜ちゃん、後でしようよ。いいだろ？」と言った。
　それを聞きつけた恵里は、
「バカねぇ、いきなりそんなこと言ったって、香菜がすぐに言うこと聞くわけないじゃん。香菜とエッチしたいんだったら、もっと時間かけなくちゃ。ねぇ？」と言った。
　香菜子は驚いて、
「ええっ？　恵里、白井君が本気で私を口説いても、気にならないの？」と聞いた。
恵里はまるで「当然のこと」というような調子で、
「うん。山内さんとつきあい始めたばかりの香菜にはわからないかもしれないけど、智明と私って、もう大学時代からのつき合いでしょ？　最近、ちょっと倦怠期になっちゃったから、ちゃんと秘密を守れそうなカップルを選んで、たまにはこんなことをしてみたりもするの」と言った。

「でも、誤解しないでね。今日は、最初はそんなつもりはなかったのよ。だけど、香菜達が来るのが遅いものだから、さっき香菜が想像してたとおり、智明ともうエッチしはじめちゃったの。そしたら、その最中に二人が来るんだもん。もう、ほんとに大変だったんだから」
　恵里が言うと、
「そうだよ。香菜ちゃん達は、ここに来る前に家で済ませてきたからいいんだろうけど、こっちはまだ、一度も最後までいってないんだぜ。欲求不満の固まりみたいになってるんだから」
　智明もそう言った。その間も智明の手は、香菜子の尻を撫で回していた。そして、智明はその動きを恵里に隠そうともしなかった。
　恵里は香菜子を正面から見て、
「どうかしら、香菜。秘密を守るってことについては、恵里は私と同じ教師だし、山内さんも話してみると大丈夫そうだから、こんなことするにはちょうどいい相手なんだけど、香菜はこんなのいやかしら？」と聞いた。

「恵里、今まで何度くらい、こんなことしたことあるの？」
　香菜子はかなり驚いて、思わず聞いた。
　恵里はそれには答えず、まるでテニスのダブルスのペアを決める時のような口調で智明に言った。
「香菜はまだ初心者なんだから、いきなりパートナーのチェンジなんて無理よ。まず、それぞれのパートナーではじめておいて、盛り上がったらチェンジもあり、ってことにしたら？」
　それを聞いて智明は、しぶしぶというふうに香菜子から離れ、今度は恵里の腰に手を回しながら、
「まあ、それでもいいか。とりあえず、今すぐやりたくなってきたしな。最初は恵里とやって、たまっている分を出しておくか。じゃあ、香菜ちゃん。あとでするの、楽しみにしているからね」と言ったが、香菜子には何とも答えようがなかった。

　そこに達夫がトイレから戻ってきた。恵里は何事もなかったような平気な様子で、
「ああ、何だか急に体が熱くなってきたわ」と言って、パジャマの胸をはだけ、智明に体を預けた。
　智明は恵里を受け止めて、パジャマの胸の部分をさらに広げ、恵里の乳房をみんなにも見えるように露出させておいて、そこに手のひらを当てた。
「あれっ、また熱が出てきたんじゃないの？　胸のあたりがとても熱いぜ」
　そう言うと、今度は人差し指と中指の間に乳首を挟み、乳房全体をマッサージするように揉みはじめた。
「ああっ、ああっ、智明ったら、お客さんの前ではだめよ」恵里が言うと、
「それなら、ちょっと失礼して、病人には寝室に移ってもらおうか」
　智明は恵里を立たせて、抱えるように隣の和室に入った。そして、手早く布団を敷くと、恵里を横たえた。
「じゃあ、申し訳ないけど、しばらく時間をもらって恵里のご機嫌を取るよ。二人ともちょっと待ってて。それで、眠くなったら、廊下の左側がベッドルームだから、そこで寝ててもいいよ」
　智明はそう言うと、和室のふすまを閉めた。

　そのふすまが閉まったとたんに、
「ぁあっ、智明、早く！」という恵里の声が聞こえた。
「ああっん、私、もう我慢できない。あなたも早く服を脱いで！」
　もちろん恵里は、わざと大きな声を出して、香菜子と達夫に聞かせるつもりに違いなかった。
　智明も、
「なんだ、恵里ったら、自分からパンティまで脱いじゃうのか」と聞こえよがしに言う。
「ほら、早く来て。ああっ、胸よりも、ほら……、ここにキスして」
　恵里はどうやらクンニをせがんでいるらしかった。
　智明はそれに応じたようで、しばらくは無言の状態が続いたが、すぐに、
「あ、っ、あああぁっ、智明、いいわ、とても……いいわ」という恵里の声が聞こえた。
　そして、それに続いて、布団の上でごそごそと体を動かす音と、
「ああっ、それ……、あぁあっ、あっ！　それ、止めないで！　もっと……それ、もっと続けて……、ああっ、ああっ！」という声になった。

　達夫と香菜子は、しばらくは唖然としてことの進行を見ていた。香菜子は、達夫がどういう反応をするのか心配だったが、彼はすぐにこの状況を読みとったようだった。
「何だ、そういうことなんだ。それなら、見舞いなんて言わずに、最初からそう言ってくれればいいのに」達夫が香菜子に言った。
「そういうことって？」
「これって、４Ｐってやつなんだろ？」
「やだ、なにそれ。４Ｐなんて、私、知らないもの」香菜子はその言葉の意味がうすうすわかったが、知らないふりをして言った。
「えっ？　違うの？　それとも、あの二人、単に自分たちのやってるところを覗かせたいだけなのかな？」
　達夫にそう言われて、あらためて和室のふすまを見ると、それはこの間、香菜子の部屋で、和彦に自分たちのセックスを見せつけた時と同じように、数センチの隙間が開いている。
　達夫は四つん這いになってふすまに近づき、その隙間から中を覗いた。そして、香菜子を振り返って見て、声を潜めて、
「ほら、香菜子、きみも見てごらん。二人とも激しいよ」と言った。
「いやよ、いや！　達夫ったら、そんなの覗いちゃだめよ」
　香菜子は達夫の手を引いて、ふすまから離そうとした。すると、香菜子が力を入れた瞬間に、達夫は急に香菜子の方に体を倒してきた。二人はソファーの上にもつれ合って倒れ込んだ。

　すぐに達夫は香菜子の口を吸い、ブラウスの上から乳房を揉んだ。
　実は、香菜子の肌の下ではさっきから、智明に触られたり、いやらしい話を聞いたり、そして、二人の絡む姿を想像したりするうちに受けた刺激で、欲情の火種がちろちろと燃えていた。そして、今、乳房を揉まれたことで、その火種が一気に燃え上がろうとしていた。
「うぅん、いや。達夫、いや、いや……、いやだったら」
　香菜子は小声でそう言いはしたが、その声に決して本当の拒否の気持ちが入っていないことは、何よりも香菜子自身がよくわかっていた。
　もちろんそれは、達夫にも覚られているようだった。
　達夫は香菜子の心を見透かすように、香菜子の体を、わざとゆったりと愛撫をした。すぐにロングスカートの中に手を入れたり、脱がせたりしようとはせず、ゆっくりとスカートの生地越しに、太腿の内側や足の付け根の敏感な部分を軽く撫でた。達夫は、それが一番香菜子の欲情を高ぶらせるということを、よく知っているようだった。

「はぁああっ、止めて……、ああん、いや……、ああん、ぅううっ、ううっ、ぅあああっ、や、止めて、達夫、お願い……」
　香菜子はそう口に出して言いながらも、まったく抵抗らしい抵抗をしなかった。達夫は、今度は、唇を香菜子の首筋に這わせながら、両手でゆっくりと乳房を愛撫した。そして、その次に、香菜子の唇を強く吸い、自分の舌を香菜子の舌に絡ませてきた。
　香菜子は達夫の愛撫の仕方に慣れてきていたので、心の中で「はっ」と思った。
　達夫が舌を絡ませるのは、いつも香菜子の服を脱がしはじめる時だった。香菜子は、達夫の次の行動を期待し、それと同時に、自分の膣の奥から多量の愛液が溢れてくるのを自覚した。
「ふぅん、ああっ、達夫、ここじゃ、いやよ……、見られちゃうから……、お願い、達夫」
　香菜子はそう言ったが、心の奥では、自分たちがセックスしている様子を、恵里達に聞かれたり見られたりするという恥ずかしさと、その恥ずかしさがもたらす快感に溺れたようになっていた。

　香菜子の言葉の裏を読み取っているものと見えて、達夫は香菜子への愛撫を止めようとはしなかった。香菜子の予感通り、達夫は香菜子の舌を吸うと、今度は床に膝をつき、両手を香菜子のブラウスのボタンにかけた。そして、ゆっくりとボタンを外しはじめた。
「ああっ、達夫……、そんな……、ああっ」香菜子の声も大きくなった。
　それを意識した瞬間にふと気づくと、和室の恵里達は、もうかなり興奮が高まった状況に突入しているらしく、
「ぅううっ、ぅうううっ……、あっ、ふぅん……、そ、そこ……、そこ、いい……、ああ！　そこ、いい！」という恵里の、大きなよがり声が聞こえている。
　別に対抗する意識が芽生えたわけではないが、香菜子の心の中で何かが弾け、香菜子はもう自分を抑制することができなくなった。

「達夫、もうだめ。私、もう……、ああ、怖い。怖いわ」
　香菜子が言うと、達夫は香菜子のスカートを脱がせながら、
「怖いって、香菜子は何が怖いの？」と聞いてきた。
「わからない！　達夫、わからないけど、怖い！」
「そうか。香菜子は、こんなことまでしてしまう自分が怖いんだね」
　達夫は優しく言った。
「でも、大丈夫だよ。香菜子は本当は淫乱なんかじゃないよ。というより、本当は誰だって淫乱なんだ。ほら、恵里さんだって、白井君だって」
　達夫の言うとおり、和室からはふすま越しに激しく体を動かす音と、二人の荒い息づかいが聞こえていた。

　達夫は香菜子をブラジャーとパンティだけの姿にすると、自分も服を脱いだ。
「ほら、二人に急いで追いつかなくちゃ」
　達夫は香菜子の体を、わざと乱暴に俯せにした。そして、一気にパンティを剥ぎ取ると、香菜子に尻を突き出させ、いきなり挿入の姿勢になった。
　あっと思うまもなく、香菜子の女の器に、達夫の肉棒が突き立てられた。
「ぁあっ、達夫、いきなり、あっ、何っ、何するの！」
　そう言いながらも、香菜子の淫裂は、それ自身が意志を持っているかのように、悦びで肉襞をくねらせながら、達夫の男の物を受け入れた。
　香菜子の体を流れる豊かな水脈から、また溢れるばかりの蜜がわき出してきた。

　達夫は、挿入はしたものの、肉棒を激しく動かすことはしなかった。
　香菜子の膣の感触を確かめるように、ゆっくりと肉棒を突き進め、そして、奥まで送り込むと、今度はぐいっと引き抜いた。それを何度か繰り返した。
　そうしながら、達夫はやっと香菜子のブラジャーを外した。
　達夫の指が乳首をまさぐった。香菜子の乳房は、達夫が肉棒を突き入れるたびに揺れた。香菜子はそれを感じると、いつもよけいに発情してくるのだった。

「ああっ、達夫、いい、いいっ……、でも、あっ……、もっと、もっと、ねぇ……、もっとして」
　香菜子はすでに次の段階に進みたくてしかたなくなっていた。
「よし、香菜子、そんなにいきたいなら、先に一度、いかせてやるぞ」
　達夫は、両手で香菜子の腰を固定させた。そして、自分の体を密着させると、いきなり香菜子の女の器を突くスピードを上げた。
　香菜子の尻に達夫の腰が当たって、ぴちゃぴちゃという音を立てた。
「あああっ、そう……、それ……、それ、凄くいい、ああっ、いい、いいわ！」
　香菜子の声がひときわ高くなった。

　すでに、香菜子には、恵里達に声を聞かれてしまうことについて、恥ずかしいと思う気持ちが、まったくといっていいほどなくなっていた。
　むしろ、今あるのは、もっと声を聞かせたい、そして、達夫に愛されているこの姿を、恵里達にも見せたい、という気持ちだった。
「ああぁあ、ああっ……、いいっ、凄くいい、達夫、凄くいい！　ああっ！」
　香菜子は自分からも腰を激しく動かしながら、大声で叫んだ。
「ああっ、い、い、いく……、いく、いく、も、もう、いく！」

　香菜子はめくるめく快感の中に溺れながら、しかし、もうその次のことを考えていた。
『ああっ、私は、今度は、白井君に抱かれるのかしら？』
　香菜子の頭の中には、自分の体の上に智明が覆い被さり、しきりに腰を動かしている姿が、イメージとして浮かんできた。しかし、今の香菜子にとって、そんな自分を想像することには、そんなに抵抗感がなくなっていた。

　香菜子は、恋人に抱かれながら、別の男とのセックスのことを考えている自分に気づき、そして、その想像が新しい欲情をもたらすのに驚いた。
「ぁぁあっ、だめだめ……、も、も、もうっ、だ、だっ、だめ！」
　香菜子はそう言いながらも、さらに深い快感を求めて、いきそうになるのを何度か踏みとどまってこらえた。達夫も肉棒の動きを緩めなかった。しかし、ついに香菜子は限界に達した。
「ぁあっ、達夫、お願い、あっ、あっ……、い、ぃ、ぃ、いきたい……、ぃ、ぃ、ぃ、あっ、あっ、いく、いく、あああ！」
「よし、香菜子、いってもいいよ」
　達夫は肉棒をぐいっと女の器の奥に突き入れ、そこで動きを止めた。
「あっ、あああああっ、うううっ、あぁ！」
　香菜子は顔を仰け反らせて、気を放った。　

　さっきまであんなに激しく体を動かしていたのに、一度いってしまうと、香菜子の体は、まるで電池の切れた人形のようにぐったりとなり、全身に力が入らなくなった。
　香菜子は、目をつぶったまま、ソファーに横たわり、そこに顔を埋めた。

　しかし、香菜子の長い夜は、まだ始まったばかりだった。　

（以下、次回に続く）