うつぶしている香菜子の背中が軽く撫でられる。
　そして、その手は香菜子の肩にかかり、後ろから体を軽く抱きしめてきた。
　香菜子のセミロングの髪が撫でられ、右肩の方に束ねらるように流れた。香菜子の首筋が露出した。
　その首筋に唇を這わせながら、手は両方の脇の下から侵入し、香菜子の両方の乳房を下から持ち上げるようにして、愛撫をし始めた。
「ああっ、香菜ちゃん、やっぱり想像していたとおり、おっぱい、凄いボリュームだね」
　
　その声に、香菜子ははっと驚いて振り向いた。
　いつの間に入れ替わったのか。今、香菜子を後ろから抱いて、乳房をまさぐっているのは、達夫ではなくて智明だったのだ。

「あっ、だめ、白井君、何するの！」香菜子は智明の手を振りほどこうとした。
　しかし、智明は香菜子の後ろから体を密着させて、香菜子を自由にはしてくれなかった。「何って、山内さんと交代したんだよ。ほら、あっちを見てごらん」
　智明に言われて和室の方を見ると、今、そこでは、確かに達夫が恵里の胸に顔を埋め、乳房に唇を這わせている。達夫の手は見えないが、どうやら恵里の下半身に回されているようである。
　恵里はすでに達夫の頭を抱え込み、
「あっ、ああっ！　そ、そこ、弱いの……」と声を上げながら、愛撫を受けている。

「ほら、山内さんも、恵里も、楽しんでるじゃないか。香菜ちゃんも力を抜いてごらん」
　智明は乳房への愛撫を再開した。
「だ、だめ、白井君、だめ、だめ」香菜子は体を揺すって、智明の手から逃れようとした。
「そんなのずるいよ。あの二人は楽しんでるのに、僕たちの方はできないなんて」
そう言いながらも、智明は少しも慌てずに、ゆっくりと香菜子に体を合わせ、背中の方から自分の腰を押し付けてくる。

「し、白井君、お願い、今日は勘弁して……」
　香菜子はそう言う自分の声が震えているのに気がついた。しかし、香菜子自身はその震えの理由をわかっていた。
　さっき、達夫に抱かれた時の高揚感がまた体に戻ろうとしているのだ。
　香菜子は自分が、智明に抱かれるのが嫌で声を震わしているのではなく、むしろ、これから違う男に抱かれる、という気持ちの高ぶりからそうなっているということをはっきりと自覚していた。
　ただ、それを認めてしまうことはためらわれた。

「白井君、ねっ、お願いだから……、さ、最後までいくのは、勘弁して」
　香菜子の口からは、心に思ってもいない言葉が出てしまった。
「えっ？」
　智明は香菜子の言葉の意味がわからないようだった。
「だから、私、白井君とそういう関係になってしまうのが怖いの……」
　香菜子がそう言うと、智明は、
「ああ、わかったよ、中に入れらるのはいや、ってことだろ？　じゃあ、入れる直前までならいいんだね？」
　そう言いながら背中に唇を這わせ、香菜子への愛撫をはじめようとした。
「あと……、お、お願い……、白井君、せめて……、電気だけは消して」
　リビングはまだ電気が完全に点いたままになっていた。
「いいよ。僕だって少しくらい方が好きなんだ」
　智明はすぐに香奈子から一度離れて、リビングの電気のスイッチを切り、ソファーの後ろの壁の間接照明だけにした。

　リビングが暗くなったことで、まだ電気が点いている和室の二人の行為が、まるで壁に投影された映画の情景のように、はっきりと見えた。
　達夫は、今は恵里の女の器を唇で探っているようだった。それと同時に両方の乳房を手のひらで揉み、乳首を指で捏ねている。
　恵里は、
「うっ、ううぅーん」という低い声を出しながら、首を左右にゆっくりと振っている。
　時々、特に感じるポイントを愛撫されると、
「あっ、ああっ」という鋭い悦びの声を上げ、両手で達夫の頭を押さえるのだった。
　それはもちろん、愛撫を止めさせようというのではなく、そうすることで自分の性感を相手に伝えるためのようで、それはいかにも恵里らしい積極性だった。

　智明はソファーに戻ってくると、今度は正面から香菜子を抱いた。
　そして、いきなりというように、乳房に食らいついた。
　香菜子は、これまで関係を持った男達のことを思い出していた。それは、香菜子を強姦したあの男を入れて、全部で６人だった。
　すると、もし、今日、このまま智明に抱かれれば、彼が７人目の男になるということだ。その数字が多いか少ないかは香菜子にはわからなかった。ただ、今まで香菜子を抱いた男達は、ほとんど、まず、香菜子の豊満な乳房を愛撫するということを香菜子は覚えていた。
　男達にとっては、香菜子の豊満な乳房は、性欲を刺激する対象であったろうし、香菜子もまた、男から乳房を愛撫されるのが好きだった。
　特に、乳首をじっくりと舌で転がされると、性の欲望が高まり、挿入への期待から、自分の膣の奥が熱くなるのを感じることが多かった。
　今も、智明は、まず乳房を揉み、そして、激しく吸い、ついに香奈子の期待通り、その乳首を舌で弄びはじめた。
　香菜子の体でくすぶっていた欲望に、今、もう一度火がつこうとしていた。
「ぅぅうっ、ううううぁっ……」
　声を立てまいと堪える香菜子の理性を振り払うようにして、喉の奥から、というより、香菜子の女としての体の一番奥から、性の悦びの声が溢れてきた。香菜子の女陰の潤いが増した。

「ううっ、ぁあっ、あっ、白井君……、は、激しくしないで……」
　香菜子はまた心にもないことを口にしたが、もちろん智明は、そんな香菜子の言葉など聞くはずもなかった。
　智明の手が香菜子の股間に伸びた。そして、太腿の間に入り、尻の穴の方から女の器に触れた。そのとたん、
「ああっ、香菜ちゃん、すごいよ！　何だこれ！　びしょびしょじゃないか！」
　智明の指が香菜子の潤いを探り当てた。
　すぐに智明は、香菜子の太腿を割り、体を足の間に入れて、香菜子の女陰を開かせておいて、股間に顔を埋めた。
「ああっ、そ、そこ、見ないで！」
　香菜子は恥ずかしさで顔を覆いながら言った。しかし、智明は両手で香菜子の腰を上向きに固定させて、顔を近づけて唇を当てながら、
「香菜ちゃん、凄いよ！　きみだってわかってるんだろ？　凄い濡れかただ！」
　そう言って、香菜子の一番大切な部分を愛撫しはじめた。そして、
「さっき、山内さんゴム使ってないようだったけど、まだ中で出してもいないんだよね。うん、そうだと思った」と言った。
　そして、智明は香菜子の淫裂に沿ってゆっくりと舌を這わせ、その付け根のところらある芽を舌で探った。
「ああっ、い、いや！　あああっ、いや、いや！」
　香菜子は体を仰け反らせて、智明の頭に手を置き、何とかその愛撫から逃れようとした。しかし、智明はしっかりと香菜子の股間に顔を固定して、クリトリスをちろちろと舐めるのを止めなかった。
　激しくいじられるより、そんなふうに触れるか触れないかという程度に、舌で弄ばれる方が、香菜子はより耐えられなくなるのだった。

「あああっ、あっ、ぁあっ……ね、ねぇ、白井君、あっ、もう……、勘弁して！」
　そんな香菜子の言葉を無視するように、智明は、愛撫を続けた。
「うっ、あああああっ、ひい、い、ぃ、ぃ……」
　すでに達夫に抱かれる時には、香菜子は、自分の悦びを隠そうとすることはなくなっていたが、今、はじめて智明に抱かれ、最初からこんなにも乱れる姿を見せるのは、香菜子にとっては、恥ずかしいことだった。
　香菜子は久々に、口に手を当てて、自分の声を堪えようとした。しかし、堪えようとしても、声は香菜子の体の奥からこみ上げてきた。
　そして、香菜子がいくらはねのけようとしても、智明はおかまいなしに香菜子の肉芽を舌で転がし続けた。それと同時に、両手は香菜子の乳房を掴み、これも触れるか触れないかという程度に、指先で乳首を刺激し続けた。
「ああっ、あっ！　あっ！　ぅうううっ、あっ、や……、ぅ、ぅ、ぅ……、あああ！」
　香菜子は、体をくねらして漏らす、自分の淫らな獣のような声が恥ずかしかった。
　そしてまた、その恥ずかしいという意識が、香菜子の性感を強く揺さぶった。
「ああっ、も、もう……、だ、だめ！　白井君、だめ、だめ！」
　ついに香菜子の体の深いところにある、あのスイッチが入ったようだった。

　香菜子は身をよじらせた。そして、自分の口からこんな叫びのような声が漏れるのを、自分でももう止めることができなかった。
「白井君、も、もう、来て！　は、早く、来て！」
　その声を聞いても、智明はまだその愛撫を止める気配はなかった。
「し、白井君、お、お願い！　あああっ、あっ！　もう、入れて！　あっ、ね、ねぇ、もう入れて！　入れて！」
　香菜子がそういうと、ようやく智明は肉芽から口を離し、
「だって、さっき、香菜ちゃん、入れちゃいけないって言ったじゃないか」と笑った。
　香菜子は、もうなりふり構わなくなっていた。
「あぁぁん、いいから、ね、お願い、入れて！」
　香菜子は腰を淫らに動かし、自分の手で智明の肉棒を探って、それを撫で、挿入をせがんだ。
「わかった、わかったよ、それじゃあ、入れるよ」
　智明は、香菜子の上半身を起こしてソファーに座らせ、足を床につけたままで広げさせた。そして、自分は中腰になって、膝をソファーに当て、香菜子の股の間に体を入れて、下から香菜子の下半身を持ち上げるような姿勢で香菜子に向き合った。
　智明の肉棒が揺れ、香菜子の陰部にごつごつと当たった。
　さっき、ちょっと触れた感じでは、智明のそれは、達夫のものよりは少し短いようだったが、まるで中に本物の棒でも入っているかのような逞しさだった。
『ああ、早くこれが欲しい！』
　香菜子は身もだえした。
　しかし、智明は、その姿勢のまま、また香菜子の乳房を吸い始めた。
「（ああっ、もう、白井君じれったい）ああっ、お、お願い、もう……、（早く、肉棒が欲しい！　入れて欲しい！）ぅうっ、だ、だめ、だめ……、ねっ、ねっ、ねったら（は、早く！）白井君、白井君！」

「よし、それじゃ、いくよ！　ほら！」
　ようやく智明は腰を送り、熱く熟れきって蜜を滴らせている香菜子の欲望の入り口に、自分の肉棒の先端をあてがった。
「（うううっ、ああ、今、入る）白井君、ああ、来て来て！」
　香菜子も自分の体を智明に密着させて、腰を進め、早く肉棒を自分の中に取り込もうとした。
「ぁあっ、香菜ちゃん、凄いよ。きみのオ××コが、どんどん僕のをくわえ込んでいくよ」
　智明はわざと自分では肉棒を送り込まず、香菜子の方から動かせる気のようだった。しかし、それがわかっていながら、香菜子には自分の体の動きを止めることができなかった。
「（早く奥まで入れたい！）白井君、ああっ、いいわ、（ふ、太い、白井君のも太い！）ね、ね、もっと……、もっと、ちょうだい（ああ、白井君、動いて欲しい）ねえ、もっと……、もっと、ちょうだい！（ああ、突いて、突いて！　めちゃくちゃに突いて！）」
　香菜子は激しく腰を動かした。

「うーん、香菜ちゃん本当に淫乱なんだ。それに、凄い締め付けだし……。ああ、僕も我慢できなくなってきたよ」
　智明はそう言うと、香菜子の体をソファーに横たえ、その上に覆い被さるような姿勢になった。
「香菜ちゃん、それじゃ本気でいくよ。ゴムなしで、中に出していいんだね？」
「う、うん……、早く、早く来て！」
　香菜子は、欲望で爆発寸前の自分をかろうじてこらえながらそう言った。
「ああ、香菜ちゃん、好きだよ。前からきみが欲しかったんだ」
　香菜子は、智明が自分を焦らすのを止め、スパートの態勢に入る気配を感じた。
　香菜子は期待感でくらくらし、また膣の奥から蜜が溢れてくるのを自覚した。

　智明がゆっくりと動き始めた。
　最初は肉棒を深く沈め、そして、次にゆっくりと引いた。
「うううっ、ぁ、ぁ、ああああっ」
　香菜子は智明の背中に手を回し、肉棒の動きに合わせて男の背中を撫でながら、抜き差しされている感覚を十分に味わった。
　女の悦びに目覚めた今の香菜子には、達夫と智明の抽送の仕方の違いがよくわかった。　智明の抽送は、ストロークは短いが、その一突き一突きに力がこもっているように感じられた。そして、香菜子は、いつもの達夫とは違う方法で愛されるということに、背徳の悦びを感じ始めていた。
『ああ、これなんだわ。恵里たちがこんなことをする理由は』
　香菜子の興奮がより高まった。
　智明も次第に高ぶりが増したようだった。
「香菜ちゃん、いいよ、凄いよ」
　智明はしきりにそう言いながら、香菜子を突いた。そして、突くスピードが早くなってきた。
「あ、あああああっ、し、白井君、ああっ、ああっ」
　香菜子は、今は智明の首に手を巻きつけ、男の体を引き寄せるようにして抽送を受けた。香菜子の腰は智明の動きに合わせ、まるでそれ自体が生き物でもあるかのように、ひくひくと動いた。
『ああ、覚えちゃった！　達夫とは違う白井君の、この動きを覚えちゃった！　ああ、その動きに合わせて、私の腰が、そして、股の付け根の……、ああ、あそこが、自然に動いちゃう！』　
　自分の淫らな動きを自覚することでますます高ぶった。

「あああっ、白井君、白井君！　うっ、ぅぅぅぅ、う、あああっ……、いい！　凄い！　いい……、だ、だめになっちゃうくらい、いい！」
　香菜子は頂点に向かって駆け上った。
「ああ、香菜ちゃん、僕もいいよ！　きみは最高だよ！」
　智明の声も上ずっていた。智明自身の限界も見えているようだった。
　しかし、今の香菜子には、性の悦びに関しては、底が見えないほどの貪欲さが芽生えていた。
　香菜子は智明の肉棒を、自分の女の肉襞でしっかりとくわえ込み、さらに締め付けながら、
「ああっ、白井君、ね、もっと、もっと……、もっと突いて！」と言った。
　智明は、
「ああ、香菜ちゃん、香菜ちゃん」と叫ぶように言って、必死で肉棒を送ってきた。
「あああっ、いい、、いい、白井君……、も、もう少しで、い、いきそう」
　香菜子はそうは言ったが、それはもちろん『もう少し突いて欲しい』という意味にほかならなかった。

　智明の抽送のスピードが極限まで上がった。
　智明は、必死で射精をこらえつつ抽送しているようで、
「香菜ちゃん、香菜ちゃん」という声が息苦しそうだった。
「ぁあっ、白井君、白井君……、ああっ、来そう！　あっ、もう、来そう！」
　香菜子は絶頂が近いことを智明に知らせようとした。
　智明はこことばかりに、必死で腰を送った。
「あ、あああっ、い、いきそう……、い、いきそう！　もう少し、ね、もう少し！」
　香菜子は、貪欲に智明の肉棒の、さらなる奉仕を求めた。
「香菜ちゃん、ああっ、もう僕！　いっちゃうぞ、いくぞ！」
　智明がついに限界を迎えたようだった。
　その声を聞き、香菜子もついに自分の頂点を自覚した。

「あっ、あっ、あっ、白井君！　ああっ、うぅうっ、はぁあっ、ああっ、あ、ああっ！」
　最後の何度かのストロークを、香菜子は腰の動きで深く受け止めた。
「うぅうっ、うん、はあっ、し、白井君、い、いく！　いく！」
　香菜子がそう言うのと同時に、
「香菜ちゃん！」
　智明は大きく叫び、腰の動きが止まった。
　それと同時に、香菜子も動きを止めた。
　香菜子は自分の膣の奥に智明の熱い男の精の放出を感じた。
「ぁはあっ、あっ、あっ、ああっ、白井君！」
　香菜子は息がとぎれそうになりながら、それだけ言うと、ぐったりとなった。
　そして、うすれゆく意識の中で、
「私、これが今日、何度目なのかしら」とふと考えた。
　でもその考えの裏側には、
「今日、あと何度するのかしら」という意識があることに、香菜子自身気がついてはいた。

　まだ日付が変わるまでには２時間ほどあった。
　長い夜はまだ終わらなかった。
　

（以下、次回に続く）