| ２１ 『もう、いいかい…？』 もう、どのくらい歩いているだろうか。数十分だろうか、それとも数時間？ 足元には道らしい道はなく、落ち葉の散らばり、雨で濡れた地面ばかりだ。 「…ここ、どこだろう…おうち、どこ？まだ、つかないの？」 歩いているのは少年と少女…あわせて六人。他の地方から集まり、山歩きに来たメンバーだった。 もちろん、このメンバーだけで来たのではない。少女の両親もいたし、何人か他の子供の父兄も来ていた。 しかし、ふとしたことからはぐれ、このメンバーだけが道に迷って奥地に入り込んだのである。 揚羽山の標高はそこまで高くはない。しかし、山の天気は変わりやすい。夕方になり雨が降り出すと、たちまち少年少女たちは濡れ鼠のようになってしまった。 「おなか…すいたな」 『カズキ』がぽつりと呟いた。誰しもが思っていたことだ。でも、口に出すと喧嘩になりそうで、誰も言わなかった言葉だった。 「…もう少し、もう少しだから」 そんな少年達を、この中では最年長の少女が励ます。実際には、当てもない、どこを歩いているかも分からない状態なのに。 そんな中、物音がした。驚いて振り向くと、大男が立っていた。人がいたのである。 男は、少年少女たちを、廃墟のような場所に招いた。 『これから暗くなる、山を降りようとすると却って危ない。今日はここで夜を明かして明日山を降りるべきだ。 山荘に車が止めてあるから、そこから下山させよう』 男はそう言って、缶詰などではあったものの食事も出してくれた。 当時揚羽山荘はそれ相応の賑わいがあったし、車が止めてあること自体は不思議ではなかった。 何よりも、この廃墟のような場所は、道に迷った一行にとってまさに救いの手だったのである。 しかし、思えばこの男の誘いに乗ったことこそが、悲劇の始まりだったのである。 （…ここは、あの部屋…） ヒカリは、それがまた『夢』であるとすでに悟っていた。そして、今自分がいる場所が…、あの少女『紀子』が連れてこられ、散々に犯された場所であることも。 男はその日の夜、少女…紀子だけを『大事な話がある』と連れ出した。少年達はすでに眠っていた。 紀子が部屋を出ると、男は部屋に鍵をかけてしまった。そして、紀子を隣の部屋…あの忌まわしい部屋に連れ込んだ。 そして、そこで最初の行為を強要されたのである。 少女はもちろん処女だった。ろくに愛撫もされず肉体を引き裂かれ、悲鳴を上げた。 （やめて…！） ヒカリは、その様子をも体験しなければならなかった。 『…おねえちゃん、どうしたの！？何かあったの？』 隣の部屋から、大声が聞こえた。紀子の悲鳴に目を覚ましたのである。 「…坊やたち。おじさんとおねえちゃんは、今遊んでいるんだ。安心して寝ていなさい」 『遊んでるって、何をして？』 隣の声に、男はすぐに言葉を返す。 「『かくれんぼ』だよ。なぁ、紀子ちゃん？」 「…え、えぇ、そうよ！だから、大丈夫だから！」 紀子は、気丈にもそう言った。下腹部からは、今しがた破瓜させられた血と、精液が混じった液体が流れ出ていた。 「…ほら、もう一度だ。『もう、いいか〜い』！」 男は、わざと大声でそう呼びつつ、再び紀子の脚を大きく左右に広げる。 「…ま、『まぁだだよ〜』…」 隣の子供達を心配させてはいけない。その一心で、紀子はつとめて明るくそう声を出した。 男はニヤリとしたあと、再び紀子の体を貫いた。再び、悲鳴が上がるのを、男の大きな手が口を塞いで遮った。 （これが、あの『呼び声』の真相…だというのですか！？） 男に体を凌辱されながらも、ヒカリは絶句していた。 「ん、ん…あっ…」 まだ幼い体を、太い棒で貫かれる苦痛。ヒカリはつい先日、巴の体で味わったばかりである。 しかし、情愛のこもりかたがまったく違い、男のほうは遠慮もなければ気遣いもない。ただ痛いだけのものである。 （い…痛い、痛い…っ！） 口をふさがれて声が出ない。やがて体は男のモノに必死に順応し、潤滑脂を分泌し始める。 「…あっ、あっ…あぁっ…」 苦痛が、少しずつ快楽に変わってくる。ヒカリは…いや、紀子は徐々に先ほどとは声の質を変えつつあった。 「さあ、気持ちよくなってきたんだろう？…『もういいか〜い』…？」 「…ん…あぁ…」 頭がぼーっとしてくる。男の突き上げが気持ちよくて仕方がない。ただ乱暴なだけなのに。嫌なのに。酷いことをされているのに。 先ほど出された熱い液体の感触が、温度が忘れられない。 「…さあ、『もういいよ』と言わないと…出してあげないぞ」 男は、腰の律動に緩急をつける。そうしないと自分が射精してしまいそうなのだろう。 「…あ、あぁ…」 （わたしは…もう…でも、あの子達は…弟は絶対に、守らなきゃ…） 「・・・『もう、いいよ』…ぉっ！」 「ぐっ…！」 どくん、と、男のものが体内で弾けた。熱い液体が快感となって体中を駆け巡っていった。 「はああぁぁっ…！」 「いやああぁぁっ！」 凄まじい悲鳴とともに、ヒカリはようやく目を開けた。 「はぁーっ、はぁーっ…ここは…」 やっと体を起こす。見回すと和室である。お尻の下が硬い。 （…あの和室…この場所は…） そこは、あの染みがたっぷりついた、異臭のするテーブルの上だった。 『おねえちゃん…迎えにきてくれたんだよね…？』 「えっ…？」 不意に声がしたあと、ヒカリの肩が何者かに掴まれ、起こしたばかりの体がテーブルに押さえつけられる。ものすごい力だ。 『…僕達、ずーっと待っていたんだよ…あのときからずーっと…』 ヒカリの目の前に、先ほどの三人の幽霊の姿が、少しずつ浮かび上がっていった…。 |
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| 2013.9.2掲載 |
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