| ２２ 奮闘 「ん゛っ！ん゛っ！んぶぅっ！？」 そのころ、一階廊下を走っていた忍は、突き当たりで二人の幽霊に襲われていた。こちらはどちらも大人の姿をしている。 （く、くそっ、あたしとしたことが、迂闊だったか…） 姿を見せた幽霊を先走って追った忍は、ちょうど二階組の北見と巴のように頑丈な防火壁で閉じ込められたのである。 （…一太郎にみっともないところを見せずに済んだだけでもいいか…しかし、子供にしちゃデカいね） 一人が壁際に忍を座らせ押さえ込み、もう一人は、そんな忍の口にモノを含ませているのである。 「おねえちゃん、気持ちいいよ…」 忍にしゃぶらせている『幽霊』が、息を荒らげている。 （この分ならもう少しだろう。しかしこいつら、本当に言動が子供だね。叔母さんの言ったとおりだ…） さすがに処女ではなく、一太郎という恋人もおり、ある程度セックス慣れしている忍は、『幽霊に犯される』という恥辱を負ってはいるものの、聖やヒカリとは違い、ある程度考える余裕は持っている。 （ここは話に乗ってやって、あまり抵抗せずに出来るだけ情報を引き出すか。子供に犯されるのは癪だけどね） 幽霊相手に肉体での抵抗は通じないかもしれないが、大人の女性である忍のほうがセックスについては一枚も二枚も上手である。 （ほら、いつまでもやらせてないでとっとと出しちまえ！） 口の中の硬いモノを、舌と唇を使ってぎゅっと締めてやる。 「くあっ」 直後、目の前の幽霊が声をあげ、同時に苦い液体がドロリと口の中に溢れた。 （…ちょろいもんだね。一太郎ならあと五分は持ち堪えるだろうに。 問題は…やっぱり本番もさせられそうだ、ってことか。一太郎が近くにいなきゃいいけど…。 さて、あたしがヘロヘロになるか、大男の皮を被った子供二人が骨抜きになるか、勝負時だね） 案の定、ジーンズと上着が脱がされる。いかにも『慣れていない』手つきである。 （…そういえば、こいつら、なんで大人の姿で出てくるんだ？） 脱がされながらも、忍はそんなことを考えている。 （といっても、答えはひとつしかない。子供じゃ大人と対等のセックスが出来ないからに決まってるし、組み伏せるのも大人のが楽だからね。問題は…中身が子供なのに、妙に女性を襲うことに執着してる、ってことだ。 こいつら、なんとかしないとあたしたち以外の被害者が出るぞ…） 今までは、何故かは分からないが、この幽霊達は大人しかった。女性が手を出されることもなかったようである。 しかし、今は違う。現に聖も自分も幽霊に襲われている。忍に至っては現在進行形だ。 いつの間にか下着姿にされていることに気づいた忍。 （…ずいぶん時間かけたねぇ…大した抵抗してないのに） 内心で忍は苦笑する。外見や腕力は大人のものだが、中身は子供だということは分かっている。 脱出する気になれば、付け入るスキはいくらでもあるはずだ。しかし、忍は今はそれをするつもりはなかった。 逃げたところで、通路はシャッターでふさがれているし、袋小路にある扉は『ボイラー室』の札がかけてある。 中に入っても行き止まりである可能性も高く、逃げたところで意味がない。 「綺麗だ…あのおばさんも綺麗な人だったけど」 （くそー、見てないでとっとと入れてとっとと済ませろよ…） 白い下着姿の忍を、幽霊達が眺め回す。その姿はもはや『幽霊』とはいえないほど鮮明であり、触れた感触すら伝わってくるほどの存在感があった。 （こいつら、まさか、この山に登ってくる『登山客』の男の姿を投影して大人の姿になってるんじゃ…） 忍が行き着いた結論はそれだった。十五年前から存在しているであろう彼らは、この山の中で多くの登山客を目にしてきたはずだ。 （…叔母さんは、覚えている限りの男達の外見を教えてくれた。でも、こいつらはそのどれとも違う。 見るたびに姿を変えているようにしか思えない…） 「…んっ！」 そこまで考えたところで、やっと胸や下腹部に手が伸びてきた。 「…あれ？なかなか濡れてこないなぁ…あの人はすぐに濡れたのに」 「あっ、あんっ…あぅ…んっ」 数分後、下着も脱がされ全裸にされた忍は、壁にもたれかかり大きく脚を広げられいた。 一人はそんな彼女の胸を、もう一人は足の間に体をもぐりこませ、下腹部を舌で舐めている。 「あ…あぁ、く、くすぐったいぃ…」 忍の正直な感想はそれだった。普段八重樫との激しい交接や優しい愛撫を経験しているため、見た目は大人とはいえ技術がなっていない彼らの愛撫では、『くすぐったい』以上に行くことがなかなかできないのである。 「だ、だめぇ、あはぁ…」 （あーもう、これじゃ一年経ってもイかないよ…。セックスから離れていたらしい叔母さんはともかく、あたしを満足させるのは結構根性いるよ…？） 『愛撫』がもうくすぐったくて仕方がなく、『幽霊』たちを興奮させるために声を出してはいるものの、正直喘ぎ声より笑い声を出したくて仕方がないのである。 そんな中、下腹部を責める舌が、ようやく『そこ』を舐めた。 「あぁん…っ」 ようやく、忍は演技ではない快感の声を上げる。 （ほら、そこだよ、そこが気持ちいいんだから責めなよ） しかし、少年の幽霊は『そこ』が気持ちよかった、とは気づくことができない。 経験が浅いからなのか、忍の演技が上手いのかは分からないが。 「も、もう俺、我慢できない…っ！」 下半身を愛撫していた男が不意に顔を上げると、右手で忍の肩を掴んで壁に押し付ける。 「痛っ！？」 力だけはやはり強い。もちろん、体が大人のものだからであろう。そして、その下半身についているものも、やはり大人のものである。 「ちょっ、ま、待て、まだこっちの準備が…」 ぐちゅうっ！ 「ひぃっ！？」 ろくに濡れていない入り口に、硬い男のモノが文字通り捻りこまれる。 「…あ…くっ…」 気持ちいい、というよりは痛みのほうが強い。経験はあるといっても、準備が整っていないうちに挿入された体験は少ない忍は、しばらく口をあけたまま絶句した…が、直後激しい怒りを覚えることになる。 「うあっ！」 どくんっ！ 忍と男が同時に声を上げた。いきなり射精されてしまったのである。 （…うわ、最悪だコイツ…！濡れてないのに入れた挙句入れてすぐに射精だと…！？） かっとなった忍は、触れることができるのをいいことに男を突き飛ばした。 「わっ！？」 よもや抵抗されると思わず、まともに突き飛ばされた男は尻餅をついた。その顔面に、忍の足が見事にヒットする。 「わああっ！？」 「こんの、へったくその早漏野郎どもーーーーっ！！」 忍が一喝すると、男達の体の濃度が薄まっていく。 「きょ、凶暴女だーー！」 「誰が凶暴女だこらーーー！」 腕を振り上げる忍。しかし、男達の体はどんどん萎むように小さくなり、最後に子供の背丈くらいまで縮むとそのまま霧のように消えてしまった。 「…ったく、いっちょ前に量だけは出しやがって…妊娠したらどうすんだ…。 ま、いくら登山客の姿を『投影』したっていっても生きた男のものじゃないんだから、妊娠まではしないだろ、多分。 …だが、あいつら本当に中身は年端も行かない少年のものなんだな。まさかアレで逃げちまうとは思わなかった」 かっとなったのを反省しつつ、忍は辺りを見回す。結局情報を得ることが出来ていない以上、ここにいつまでもいても仕方がない。 のだが、見事に行き止まりである。来た道はシャッターでふさがれている。 「…やれやれ、あまり使いたくなかったんだけどなぁ」 忍は、床に落ちていた『杖』を拾い上げ、左手で持ち、シャッターの前へ。 「こいつを体当たりで壊すのは骨が折れる…っていうかいくらあたしでも無理だし、やるしかないか。 ヒカリちゃんと巴がどうなってるか分からないし」 腰の高さに杖を構え、左手を少し引く。右手を杖の前へ。 いざ、というとき、目の前のシャッターがいきなり凹んだ…のではなく、盛り上がり、凄まじい轟音が響いた。 「わあっ！？」 驚いた忍は、思わず杖を取り落とし、尻餅をついた。 轟音は二回三回四回と続き、そのたびにシャッターがどんどん損傷していく。 「忍！そこにいるんだな！離れていてくれよ！」 八重樫の声だった。忍は慌てて袋小路のほうに走った。 ついにシャッターが捲れあがり、壮絶に破壊されたのが忍の目にも分かった。 「一太郎！」 シャッターに駆け寄る忍。捲れ上がった隙間から現れたのは、やはり八重樫の無精髭顔であった。 その両手には、どこから持ってきたのかは分からないが、大きな脚立が握られている。シャッターを破るためにどこかから調達したのだろう。 「…あ」 直後、忍は顔を真っ赤にした。 「…あ、その、向こう、向いてて、ね」 そう、素っ裸なのを忘れていたのである。 「…その様子じゃ元気そうではあるけど、酷いことをされなかったかい？」 やっと服を着た忍を抱き締めつつ、八重樫がそう言った。いや、酷い目には合っているだろう。 でなければ裸になどされていないはずだ。 「…んー、強制フェラからの濡れてないアソコに挿入、直後に中出し、かな。 あぁ、そういえばあいつら、どうやら普通に殴ったり蹴ったりすれば逃げていくっぽい」 とくに悪びれもせず、忍が言った。 「それでなんともなさそうなのが、君らしいね…」 苦笑する八重樫。もとより、そんなことが起こったくらいで忍を嫌うような人間ではないし、それ以上に、彼は忍を愛している。忍もそれが分かっているからこそ、包み隠さず自分から暴露しているのだ。 何より素っ裸に、下腹部からは白濁が出ているのだからどうしようもない。 「…まったく、もともとが子供とはいえ、入れた直後に射精とは、不完全燃焼もいいとこだよ。 一太郎、帰ったら…頼むよ？」 「はいはい、分かってる。今はそれよりも…」 「うん。巴とヒカリちゃん、叔父さんはどこに行ったんだろうね」 とりあえずは二階だ、と二人は頷きあった。 |
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| 2013.9.4掲載 |
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