| ２９ ヒカリの暴走 少年たち、そして少女の『かくれんぼ』は、十五年もの時を経てようやく終わりを迎えた。 急な風雨が相次いで開始できなかった工事が、明日にはようやく着手できる、ということもあり当面はここに残る北見夫妻以外は、帰り支度を始めていた。 もちろん、今夜と明日を本来の目的…旅行として楽しむために、である。 「…えーと、もう大丈夫だと思うから、部屋割り…戻したほうがいい？」 夜になって、食事のために全員が揃ったところへ、忍がそう尋ねた。巴とヒカリ、そして順平と夢月のための意地悪、そしてある種の気遣いである。 「…まぁ、八重樫君と忍はともかく、君らは高校生だからな。不純異性交遊だけはほどほどにしくれよ。 もしあっても私は見て見ぬふりを決め込むからな」 苦笑いをかみ殺しながら北見がそう言った。『別々の部屋にしろ』とは言っていないし『黙っていてやる』と暗示しているのである。 「じゃ、そのままでいっか」 忍が気軽に言った。巴とヒカリ、順平と夢月が顔を見合わせた。前者は顔を赤らめあい、後者はそっぽを向いてしまった。 （改めておめでとう、巴） 巴とヒカリを、忍は生暖かい目で見守っていた。ある意味、この旅行は忍が仕組んだ面もある。 順平と夢月という飛び入り参加はあったものの、また幽霊騒ぎも起こったものの、こっちの面ではなんとか成功を収めた、というところだろう。 （…もっとも、あたしが何も考えてなくても、あの二人いつかくっついてただろうけどね。 ただ、一年先か五年先か想像もつかないけど） 食事の後、八人は四組に分かれた。北見夫妻、八重樫と忍、巴とヒカリ、順平と夢月である。 北見はもう一度形だけ『間違いは起こさないように』、といかにも『起こせ』といわんばかりに念を押した。 「…あたしたちはとりあえず控えておこうか、一太郎」 「そうだね。自重しよう」 忍と八重樫のほうは、お互いそう言ってうなずきあった。 「…ねぇ、ヒカリ」 「…」 「ヒカリ？」 「…あ、はい？」 夢月に誘われて入浴を共にすることになったヒカリは、脱衣場で少しぼーっとしていた。 「…どうかしましたか？」 「こっちの台詞でしょ。何をぼーっとしてるのよ」 見ると、夢月のほうはすでに下着姿である。対して、ヒカリはまだ何も脱いでいない。 ロッカーを前に、ただ呆然としていたのである。…『あること』を思い出して。 （…もし、あの『相手』が巴さんだったら…、わたしは…） その内容とは、あの部屋の中でノン…紀子が少年達に見せていた『幻』のことである。 一緒にいたせいか、あるいは自分も幻に魅せられていたのか、体には何も起こらなかったものの、感触や快感などは残ってしまっていた。だからこそ、目が覚めた直後に助け起こされた際、彼女はしばらく体の火照りを抑えられずにぼーっとしていたのである。 「…いえ、なんでもありません」 「じゃあ、早く脱いでよ。わたしだけ裸だと間抜けじゃないのよ」 「…あの、見られていると脱ぎづらいんですけど」 上着に手を掛けようとして、夢月がじっと見ているのに気づいたヒカリがそう言った。 「別にいいでしょ、女同士だし」 「それはそうですが、それはそれで恥ずかしいじゃないですか…んっ」 苦笑を返しつつ、ヒカリもまた服を脱ぎ始めた。 「おーおー、相変わらずデッカイ胸しちゃってこの」 「きゃあ、手を出さないでください、手を！」 大浴場に入ると、すでに忍がいて、手を振ってみせた。 「まずは体、洗っちゃおうか」 「えぇ、そうですね」 体と髪を洗ったあと、二人は浴槽に浸かっていた。 もともと山荘があったこの場所には、温泉自体は湧いている。しかし温度が低かったため、ボイラーを使って沸かしているのである。 幸いにして十五年経った今でも源泉は現存していたようであり、北見は許可を得てそれを使用したようだ。 「…念入りに洗ったかい？ヒカリちゃん」 「ど、どういう意味ですか！」 ニヤニヤしている忍と夢月に、ヒカリが流石に怒った。 「…だって、これから甲賀君と…でしょ？」 「な、何を言ってるんですか、もう」 真っ赤になったヒカリが浴槽に沈み込んだ。 「…否定は、しないのね」 部屋に戻ると、巴はいなかった。たぶん、浴場にいったのだろう。 ヒカリはベッドに座り込み、あの『離れ』で起こったことを頭の中で整理していた。 「…！」 …するとどうしても、紀子によって見せられていた『幻』のなかで起こっていたことが脳裏に浮かんでしまう。 （…あ、そういえば…わたし、お尻にまで入れられていたような…あそこ、入るんですね…。 入れたらどうなるんでしょうか…って、わたしは何を考えてるんですか、でも巴さんになら…） 途中で大きく首を振るヒカリ。そしてその直後に 「何やってんの、ヒカリちゃん」 と声をかけられた。 「っきゃあっ！？」 びっくりしたヒカリは後ろに倒れこんだ。頭を起こすと巴がいた。いつの間にか戻ってきていたようだ。 「な、なななな、なんでもありません！いかがわしいことなんて何も考えていません！」 普段からは考えられない動作の速さで起き上がり、両手を大きく振るものの、途中で （これじゃ『いかがわしいことを考えていた』と言ってるようなものじゃないですか） と気づき、さらに顔を赤くする。 「え？あ、いや、その…」 そう言われると巴のほうも正直返答に困る。悲しいかな、彼には忍のように、今のを軽く受け流すセンスは皆無である。 「ま、まぁ、それは置いといて…、やっと、全部終わったね」 なんとか受け流しつつ、巴はヒカリの隣に腰掛ける。 「…えぇ。なんだか、今まで起こった事すべてがまだ信じられません。 過去に起こった失踪事件、あの幽霊たち、ノンちゃん…」 そう言いつつ、ヒカリは俯く。つい先日の夜は、ノンは自分と共にベッドに眠っていたのだ。 見た目相応の子供のように、寝息を立てていたのだ。それが、今日…。 「…確かに、過去の失踪事件の真相も含めて壮絶な出来事だった。でも、俺は…」 巴がヒカリを見る。 「…俺は、ヒカリちゃんに何もなくてよかった、ただ、それだけでいい」 「巴さん」 「あの時、俺がもう少しヒカリちゃんのほうに注意を払っていれば…あんな目に会わなくても済んだかもしれないのに」 北見と共に走っていたときのことである。直後、ノンを含めた四人はシャッターによって分断され、その間にヒカリは連れ去られている。 「…でも、手をそんなにまでして、助けようとしてくれたじゃないですか」 巴の手には、絆創膏が貼られ、包帯も巻かれている。あの部屋の扉に体当たりしたり、殴りつけたりして出来た傷だった。 「大事に至らなくて…よかった」 ヒカリの手が、巴の肩にかかり、そのまま自然に二人は抱き締めあっていた。 「今日は…ノンちゃんはいませんが、周りに皆さんいますし、声を上げないようにしましょうね」 「う、うん」 直後、二人はベッドの上にいた。ヒカリが仰向けで下に寝ており、巴は上である。 こういうシチュエーションになるのは二度目である。しかし、お互い性格的になかなか慣れないもので、互いに真っ赤になった顔で見詰め合っているうちに、ヒカリが吹き出してしまった。 「…ふふっ、夜が、明けちゃいますね…」 そう言った彼女は、巴の服を脱がし始めた。 「…手、痛いでしょうから、無理しないでくださいね」 「うん」 つられるように、巴もヒカリのパジャマを脱がせにかかる。前よりは手つき自体は慣れている。 というより、今回は真っ暗ではなくライトを点けているため、ほの赤い灯りが二人を照らしているのである。 「…綺麗だ」 素直に、巴から感想が出た。綺麗だ、と言ったのはヒカリの肌、そして乳房二つの意味である。 そう言われたヒカリのほうは、気恥ずかしいのか胸を手で覆ってしまった。 それを見た巴は、無防備なズボンを一気に下ろしてしまった。 「あっ」 止める間もなく一気に下着一枚にされたヒカリは、しばらく巴を見つめていたものの、やがて胸の前に組んだ手を解いて、巴の前に広げてみせる。 「…巴さん」 「…うん。ヒカリちゃん」 ベッドの上で、ヒカリと巴が強く抱き締めあった。 （うぅ、やっぱり二度目でも恥ずかしい…ドキドキします…） 二度目、とはいっても前はノンがいたこともあり、部屋に明かりがなかった。 しかし今回は違う。赤々と照るライトの輝きがヒカリの肢体を艶かしく映し出している。 「ん゛っ！」 唐突に唇を塞がれた。 （ん…そういえば、前も、キスからでしたっけ…ん） 眼を閉じて巴の唇、そして唇の隙間を割って入ってきた舌を受け入れるヒカリ。そのまま舌を絡めあい、優しく吸いあう。 （…気持ちいい…） 声を立てず、抱き合いながら唇を貪りあう二人。これも、先日と同じだ。 （あ、巴さんの手…胸に…） いつの間にか、右の胸が巴の左手に包まれている。唇をまさぐる舌の動きと同じく、これもまた優しく揉み解している。 （あ…っ） 巴の唇が離れると同時に、ヒカリの胸から手が離れ、それがショーツの中へ入り込んだ。 「…もう、濡れてる」 「…やだ…意地悪…」 正直にいえば、キスや愛撫で濡れたのではない。先ほど、『離れ』での幻のことを思い出していたときからすでに濡れてきていたのである。 （巴さんになら、ああいうことをされてもいい…されたい…） そんな想いが彼女の中に巡っていた結果、体に興奮となって現れたのだった。 「…今日は、わたしから、しますね」 「え？」 ゆっくりと身を起こしたヒカリが、巴の手を取ってその体も引き起こす。そしてベッドに座らせると、自分はベッドから降りて、巴の脚の間に陣取る。 （…すごい…） 巴のものはもうすでに、先日のように大きくズボンを押し上げている。 するり、とズボンを少し下げ、下着からモノを取り出すと、案の定興奮して血走り、膨張した上に反ってしまっている。 「…大きい…」 ヒカリが自分のモノを口に咥えこむ様を、巴は見下ろすような形で見ていた。 洗ったばかりの髪が艶かしく揺れている。 「んちゅっ、んぅ…んんっ…」 （なんでしょう、凄いことをしているはずなのに…とてもいやらしいことをしているはずなのに、なんでわたしまで気持ちいいんでしょう、興奮するんでしょう、幸せなんでしょう…） 唾液の水音を大きく立てながら舐め、吸いつくヒカリの頭と舌の動きが少しずつ早くなっていく。 「…っくっ、ん…」 巴のほうも、全身全霊をかけて快感の波に耐えなければならなかった。 「…んくぅっ！」 どくん、とヒカリの口の中でモノが脈打った。 「！！」 巴は特にヒカリの頭を抑えたりはしなかったものの。ヒカリのほうが必死にモノに喰らいつき、放たれた精子を飲もうとしているのが分かった。 「んっ…んんっ…ちゅぅ…んく…」 ヒカリが喉を脈打たせる。さすがに巴にそれは見えなかったが、ヒカリのほうは出された精液を飲み込んだ上、残ったものも全て絞るように先端を吸い上げ、舐めている。 （あぁ、すごい…苦い…濃い…この前は、これがわたしの中に出されて…巴さんの、赤ちゃんの素…） 「…ごめんなさい、つい、夢中に…」 再び巴の横に腰掛け、顔を真っ赤にしてうなだれるヒカリ。 「大丈夫。…あ、いや、何が大丈夫、って言われると困るけど」 巴のほうもいちいち照れてしまう。まさしく忍がいたら蹴りでも入れられそうなところである。 「…えーと、それじゃ、今度は俺が…」 「…いえ、もう入ります。ですから、その…」 巴の言葉を遮り、ヒカリがベッドに横になる…のではなく、なんと四つんばいになってしまった。 「…ですから、入れてください」 |
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| 2013.9.21掲載 |
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