『美　樹』より続く

第１章　みだれて

　こんなに自分がミダラだなんて知らなかった。
　この間、夫に頼まれた「痴漢ごっこ」
　ゼッタイ嫌だったはずなのに。
　夫以外のものを、車内で初めて受け入れてしまった私。どくどくって、私の中に注ぎ込まれた。
　男の人のもので初めてイッテしまったのも、その時。
　ううん、だって、あの時は、夫のものだと思っていたから。
　夫だと思っていたら、私は知らないおじさんにエッチされてたの。
　でも、その後…
　わけがわかんなくなるくらい、取り囲まれて触られた。
　痴漢されて、いっぱい感じてしまった、私…

　あの後、すぐ、お義兄さん達は、やっと自宅に帰れた。さんざん頭を下げたらしいけど。
　でも、それからが大変。夫は毎日、私を求めてくる。そりゃ嫌ではないけど。

「みき、みきぃ、気持ちいい？」
「ええ、あなた」
　あ〜ん、恥ずかしいから聞かないで。ちゃんと感じてるんだから。夫が私の顔をのぞき込んでくる。
　私は恥ずかしくって、横を向く。
　でも、夫が速く動き出すと、体の奥からわき出してくるヘンな感じで、ああって、ため息が出ちゃう。
「イイって言ってみてよ」
「だめぇ、あぁ、も〜う、言わないモン」
「ほら、どう、これなら、ほら」
「あう、うう〜ん、あなたぁ」
「ほら、言ってごらん」
「ううん、あん、だめぇ」
　体の中がとろけそうになってくる。でも、だめよ。恥ずかしいもの。そんなこと言えない。
　夫の言葉のトーンが突然変わる。
「みきは、逝きそうかい？いくよ、出すよ」
　まだよ、あなた、もうちょっとなの。でも、夫の息が荒くなる。もうちょっとなのに。もうちょとで、あの時みたいに。
　ううん、いいの十分素敵だったわ。
　でも、ちょっぴり、いつかの、体が浮き上がるような快感を思い出してしまう。
　あんな、エッチな体験だったのに、ダメ、思い出しちゃ。貞淑な妻なんだから。
「みきぃ、もう、だめだ、みきも」
　夫のせっぱ詰まったような声。
「ええ、あなた、私も」
「みき、みき、みきぃ」
　夫がぎゅうっと抱きしめてくれる。私の奥で、どくんどくんって、とっても温かいものが広がる。
　私も、下からぎゅうっと夫の首にしがみついてしまう。
　あのおじさんのものは入り口からちょっと入っただけだった。あの時私は…
「みき、どうだった」
　私は、ハッとする。夫と比べてた。
　確かに、あの時は、体が浮かび上がるような快感だった。でも、いいの。私は夫が気持ちよくなってくれれば。夫婦の愛ってそんなものだもの。
「うん、…よかったよ、もう恥ずかしいのにぃ」
「ふう〜」
　夫が、ごろんと降りて、私の横に寝そべる。こんな時のちょっとつかれたような横顔がとっても素敵だと思えちゃう。
「ねぇ、美樹。感じた？」
「もう〜、なによ。そんなこと、なんども聞かないでぇ」
　夫は何か言いたそうな顔をした後、ふと、話が変わる。
「今度、温泉に行かないか。伊豆だけど」
「え？温泉？いいけど、どうしたのよ、いきなり」
「今週、土日に休み取れたからさ」
「そりゃ、うれしいけど」
　とっさに計算してしまう。温泉とか海に行くなら、体調というか、はっきり言ってしまえば生理が問題。
　でも、ちょうど、始まるのは来週の初め。
　ぎりぎり、大丈夫。私の周期は滅多に狂わないし。ちょうど、まだ、安全日だしっ思っちゃうのはイケナイかしら？
「でも、どうしたの？急に」
「実はさ、兄貴達がご招待してくれたんだよ。ご迷惑かけました〜って」
「な〜んだ、そういうシカケってわけね。じゃあ、お義兄さん達も一緒なの？」
「さあ、そういえば、どうなんだろ。ベツに聞かなかったなあ。もし、一緒だったらダメ？」
「ううん、聞いてみただけだけど」
　嫂は、とっても真面目で、きれいな人。久々に会うのはうれしいけど…
　あんなきれいな人と一緒にはいるのは、ちょっと気が引けちゃうかも。ま、ちょっと見てみたい気もするけど。プロポーション。
　オンナ同士でも結構はあるの。でも、比べられたらなあ。
　でも、あんなに素敵な奥さんでも、浮気をしてしまうんだから。お義兄さんたら。ううん、オトコって生き物が悪いのかしら。
　私はふと、夫が浮気しているシーンを思い浮かべようとする。ううん。できない。だって、こんなに優しい人だもの。
「なんかさ、プライベートの露天風呂もあるんだって」
「え？貸し切りにできるの」
「そ。独占できるから、海を見ながらエッチできるよ」
　私はちょっとワクワクする。露天風呂でエッチなんてできるわけないけど。
「そういえば、二人で旅行なんて久しぶりだよね、うれしい！」
「じゃあ、旅行にご招待のお礼に、これにチュってしてよ」
　夫は私にアレを握らせる。そりゃ嫌じゃないけど。
「あら、ご招待してくださるのは、お義兄さんでしょ。お義兄さんのにしてあげるってこと」
　私が何気なく混ぜっ返すと、驚いた。
　手の中のモノが急に。
「何？、元気ねぇ、どうしたのよ」
「なあ、兄貴としてみたい？」
「そんなはずないでしょ。あなただけ」
　夫が、私の大事なところに手を伸ばしてくる。あん、さっきの名残で、敏感なのに。
「ほら、ぬるぬるだよ」
「それは、さっきの…」
　あうぅん。そんなあ、さっき、中途半端だったのがやっと収まったのに。
　実はまだだった私の身体は、簡単に火がついてしまう。
「ほら、もうこんなになってるよ、どうしたの」
「あ〜ん、そんなことないモン」
「ほら、これ、どう？」
　夫が下から撫で上げてくる。私のそこはもうびしょびしょになってる。
　そんな、さっき、途中だったからなんて言えないし。
「ほら、ほら、こんなに感じてる。急にこんなに感じるなんて」
「あ〜ん、もう、やめてぇ」
「こんなに感じてるよ、クリちゃんも、ほら」
「あうう！」
「兄貴の話をしたとたん、どうしたの」
　私の身体は、正直に反応してしまう。でも、お義兄さんのせいじゃないのよ。
　あん、でも、満足してなかったからなんて言えないし。あううん、どうしよ。
　感じちゃう。指が、あん、敏感な部分を、そんなにくりくりしたら、ヒクンとなっちゃう。
「ほら、どう、この指を兄貴のだと思ってみてよ」
「美樹さん、ほら、どう？」
　夫がお義兄さんのマネをして私を呼ぶ。
　あん、兄弟だから、さすがに似てるって、そんなことを言ってる場合じゃなかった。
　私の身体は、ますます反応してしまう。
　でも、お義兄さんとしたいなんて思ってないのよ。ホントなのに。あなた以外の人となんて。
「あっ」
　私は、また思い出してしまう。満員電車で、見たこともない人たちに弄られて、何度も達してしまったコト。ミダラだったワタシ。
　痴漢さんに、良いように触られてしまった。
　でも、あんなに感じたコトなんて…
　私は、思いっきり足を広げてしまう。ハシタナイ姿。でも、体の奥が熱くなって、そのままじゃいられなかったの。
「お、感じてきたみたいだね、美樹。兄貴のこと思い出したらこんなになるんだ」
「そんなぁ、違うモン、さっきしたばかりだから」
「美樹さん、エッチな格好だね」
　似てた。確かにお義兄さんの声に。あううん、感じちゃう。
　でも、私が悪いんじゃないモン。恥ずかしいだけだもん。夫婦がしているときに他の人の話をしたら恥ずかしくなるに決まってるんだモン。
「もう、やめてぇ」
「あれ、でも、びしょびしょだよ。やめちゃってイイの？ほら、こっちも準備完了だよ」
　握ったままの夫のモノがすっごく大きくなってる。ホシイかも。
　ううんはしたないわ。そんなこと言えない。
「ほら、ぬるぬる。ここをかきまわしてみようかな。でも、やめてほしいんだよね、残念だなあ」
　夫は、ますます指を動かして私を感じさせてくる。あぁ、この動き。敏感な部分、あう、クリちゃんをこんな風にイジられて、我慢できるわけ…
「もう、お願い、あなた、お義兄さんのことは言わないで。それをやめて欲しいのぉ、いじわる！」
「こっちは、欲しいと言うわけ？」
　夫はわざと意地悪く聞いてくる。指も動かしたまま。　
　あ〜ん、もう限界。中に欲しくなっちゃう。
　そう、あの、電車の中で後ろから弄られた時みたいに。あの時だってあなただと思ってたのよ。ほんとなんだから。
　私は、ふと、電車の中で、大事なところに押しつけられた夫以外の男性の感触を思い出してしまう。
　あ〜ん、夫の腕の中でなんてこと思い出しちゃうんだろ。でも、だめぇ。欲しくなっちゃって、我慢ができない。
　私は、目をつぶって、コクって頷いてしまう。
　入れて、あなた。心の中でお願いしてしまう。
「ふふ、エッチだね、美樹さん」
「あん、それはやめてって言っているのにぃ」
「美樹さん、入れてって言ってごらん」
　夫が調子に乗って、耳元で囁く。こんなこと、いっつもしないのに。
　耳って感じちゃう。なんだか、あっちこっち、身体中が感じてしまいそうでコワイ。
「もう！いじわるう」
　私が抵抗できるのも、そこまでだった。だって、さっきも途中だったのに、もう我慢できないんだモン。私がエッチなせいじゃないと、思う、ケド。
　我慢、できない。
「…く、だ、さ、い」
「ほら、どうだい」
「あうう！はうぅ！」
　カラダが満たされて、思ったより、ずっと感じてしまった。
　だってずっとじらされたから。私は夫の背中に手を回して、しがみついてしまう。私の中が夫の硬いモノに絡みつくような感じがする。
　そのせいかな、なんだか、さっきより夫のモノが大きい気がする。
　それが私の中を動く度に、腰が溶けてしまうような気持ちよさが、体の中に沸き起こるの。
　ああ、キモチイイわ、あなたぁ。でも、恥ずかしくて口には出せないケド。
　代わりに、夫の背中にまわした手にギュウって力を入れちゃう。
「ほら、美樹さん、ほしかったかい？」
「もう、あうう、やめ、う、てってばぁ、あう、ふうう」
「あれ、やめて欲しくないみたいだけど、美樹さん」
「あう、そのセリフ、あう、お義兄ぃさんのことは、お願い、やめ、やめてぇ」
　それでも、私の快感は強くなって、ああ、私今すごいカッコ。足をこんなに広げちゃって。
　でも、閉じられないの。恥ずかしいのに。ああ、なんでなの。
「え？？？？」
　突然、私の中の熱くなっていたモノがなくなってしまう。
　私は思わず、腰を一度突き上げてしまった。夫のモノを追いかけるみたいに。
　あ〜ん、こんな恥ずかしいこと。あなたがいけないんだからぁ。
「あ、あなた、どうして、ひどいぃ」
「入れてって、言うんだよ、お義兄さん入れてって」
「そんなぁ、そんなこと、言えない、ねえ、許してぇ」
「だって、兄貴の話をしたとたんに、こんなに激しくなって」
「違うのぉ、それは、さっきしたばかりだからぁ」
「ほら、お義兄さん入れて、って言ったら入れてあげるよ」
　そんなこと、言えるわけない。だって、お義兄なのよ。そんなこと言えない。
　でも、そんな、私のカラダは、私を裏切ろうとしてる。
　私のアソコがヒクンヒクンってケイレンしているのがわかる。苦しいの。あなた。苦しいのにぃ。でも、夫以外のモノをほしがったりなんて、ああ、でもぉ。
「ほら、欲しいんだろ。美樹さん」
　夫が私の耳たぶを優しくかじりながら、入り口をとんとんとアレでたたくようにしてくる。
　あうん。私は思わず、感じてしまう。腰が、腰が勝手に動いちゃって。
「ほら、欲しいんだろ、腰がこんなにいやらしく動いてる」
「ああ、言わないでぇ」
「ほら、言わないとあげないよ、言うんだよ、お義兄さん、入れてって」
　ああ、もう、我慢が限界だった。だって、さっきから、ずっと、じらされているのと同じだもの。私がエッチなせいじゃないもの。
　も、う、だめ。
　私の中のどこかが崩れたような気がしたの。
「お義兄、さん、あぁぁ、い、いれて、ください、ああ、もう恥ずかしい！お願い、もう入れてぇ！」
　私は我慢ができなくって、叫んでしまう。そこに夫の熱いモノが埋め込まれる。
「あう、いい、あなた、いいの！ああ」
「だめだよ。お義兄さん、もっと、って言わないと抜いちゃうよ」
「ああ、もう意地悪ぅ。お義兄さん、いれて、もっとしてぇ、あ、あ、あ、い、いちゃう、あ、あ、い、イク、イッちゃうぅ、お義兄さん、イクぅ！」
　ああ、一度言葉にすると、もう止められなかった。自分がなんて叫んでるかなんて、考えていられなかったの。
　私の中の灼熱したもの。腰が背中の方から溶け出していくような、熱い感覚。
　そして、私の中が弾けた。頭の中に白い閃光。
「だすよ、だすよ、美樹ぃ」
「だしてぇ、はやく、お願い」
　私の中に広がる熱い感覚。私は無意識のうちに夫を締め付けてしまう。
　こんなにセックスって気持ちいいんだ。
「はあ〜」
　私の上で、夫が一気に力を抜いたの。ぐっとかかる夫の重み。
　この重み。この重みがちょっと苦しいけどシアワセな気分。お義兄さんなら、痩せてるから、もっと軽いのかしら。
　ふと、私のカラダの上にいるお義兄さんを想像してしまう。
　やだ、ワタシったら、何でかしら。そんなこと。あっちゃいけないのに。
　カラダの奥がヒクンとなる。
　ああ、私のカラダエッチになっちゃってる。
　気が遠くなるようなけだるさの中で、ぼんやりと考えたけど。
　でも、その時ワタシったら、思わず締め付けちゃったみたい。ううん、そこだけ、私の意識と別に動いちゃったんだから。
「あ、美樹そんな急に締め付けたら」
　夫がツルって私の中から飛び出してしまった。私は、広げた足から力が抜けて、動かせない。
　ああ、カエルみたい。恥ずかしいカッコウをしている私。自分のカッコウをぼんやりと浮かべてしまう。
「どうしたの、急に締め付けて。またエッチなこと考えたの？」
　夫がからかってきても、私は反応できない。全身から力が抜けちゃったみたい。
　すっごく眠たいの。夫の声が遠いところから聞こえて来るもの。
「週末の温泉、楽しみだね」
　私はフワフワした感じで、そのまま、眠りの世界へ包まれていく。
　夫がニコって、見たこともない笑顔でいたのも知らないまま。