第二章．目ざめ、踊る

　孝志が手のいましめを解いたが、美貴はぐったりとしたままで、割り広げられた脚を閉じる余裕も無いようだった。いま孝志によって本当におんなになった部分はぐっしょりと濡れ、処女の証の出血で赤く染まって、無残なさまを呈していた。
　孝志が、こいつが俺のものになったんだと見とれていると、そこから、白いものがじわっとあふれてきた。
　もちろん孝志が放った精液である。
　愛しくなった孝志がティッシュでそっと拭ってやると、ハッとした美貴は、あわてて身体をうつ伏せにして恥らった。
　その上に覆い被さった孝志は、美貴の耳元でささやいた。
「次に俺に抱かれたら、ちゃんとお前が俺のペニスと自分のお＊＊こをきれいにするんだぞ」
　美貴は耳元を真っ赤にさせて恥らった。
　孝志はそんな美貴を見下ろしながら、愛しそうに美貴の尻をなぜた。
　まだ汗ばんでいる、美貴の尻はかすかに、ヒクッと震えて恥らっているようだった。

　孝志はいかにも満足したように、美貴が着物を着るのをせきたて、美貴を車で家まで送っていった。
　途中で、思いついたように孝志の家によってなにかを持ってきて、美貴が車を降りぎわに
「これを見て勉強しろ」と手渡した。
　紙袋に入ったものは、なにかの本だった。

　翌日の晩、自宅の自分の部屋で、美貴がベッドで本を見ていた。
　ブラウスとフレアースカートのくつろいだ姿だ。
　今日は、親戚の者がお祝いに訪ねてきたり、夕食を両親が祝福になにか美味しいものを食べようと外出したので、夜になってやっと美貴は一人に解放された。
　それで、昨日孝志が別れしなに渡した本を引っ張り出したのだ。
　美貴が手にしているのは無修正のいわゆる「裏本」というものだった。
　こんな美しい人がと驚くような美女が無残に縛り上げられ、フェラをして、バイブで性器だけでなしにアナルまで責められ、醜塊な男根で貫かれて、悦んでいる様が無修正の写真でつづられている。
　最初は驚いて放り出したが、昨日孝志におんなの悦びを教えられたばかりである。
　その記憶が蘇り、また手にして恐る恐る眺め始めた。
　・・・昨日孝志さんも、私の手を縛った。
　この本の女性も、こんなに上品な感じの人なのに、無残に縛り上げられて、しかもどう見ても悦びの顔をしている。
　あのときに、男は縛るものなの？
　自分の手に押し当てられた孝志のペニスの熱い感覚がよみがえる。
　裏本では、たわわな乳房にきつく縄が食い込んでいる。
　手がブラウスのボタンを外して中に入り込み、ブラを押し上げる。
　美貴は自分の乳房を強く掴んでみた。次に乳首を指で強くつまんだ。爪を立てて強く。
「あうっ」思わずタメイキを漏らして、じゅんっとおんなの芯に電流が走った。
「いやっ」
　次のページをめくると思わず声が出た。
　グロテスクなペニスにくちづけをしている。
　その横のページでは、先端をすっぽりと口に含んでいる。
　どうして、あんなことが出来るんだろう・・・・
「汚い・・・・」と思いながら、何故か胸が震える。
　きつく縛り上げられた美女が、不自由な姿勢でほおばり、口にねじこまれて、フェラしている写真が続く。
　美女のあそこに股縄がきつく食い込んでいる。
　すごいわ・・・・
　こんどは、男がなにか手にして女のあそこに入れようとしている。
　そうだ、男のペニスと同じ形をしているんだ。
　あんなものを入れられたら、どんな感じなんだろう。
　昨日、孝志のものをねじ入れられたときの痛さ、そのあとこんどは美貴を燃え上がらせた、あの気持ちのよさ｡
　その感覚が蘇ってきて、美貴は我慢できずに本を放り出し、横になった。
　手は自然とスカートの中に入って、白いレースのショーツの中に潜り込んだ。
　美貴はオナニーはいままでほとんどしたことがなかった。
　しかし、昨日孝志に本当のおんなにされ、悦びを味合わされ、しかも勉強しろと、こんな本を渡されたことで、美貴は大胆になっていた。
　脳裏に残っている残像の緊縛写真のように、不自然に身体を捻じ曲げ、足首を縛られているかのようにして、膝を開いたかたちで横になっていた。
　スカートはずり上がって、ショーツが丸見えになっている。
　ショーツが濡れているのもはっきり分かる。
　美貴はスカートを脱がずに、そうっとショーツを脱ぎおろした。
　右手でふっくらと盛りあがった乳房を掌で強く揉んだ。硬くしこった乳首を強くつまんだ。
　電気のように鋭い感覚がツーンと駆ける。
　脳裏には、きつく縄がけされてせり出した乳房の残像がある。
　そうやって右手で乳房をいらいながら、左手は人さし指と中指をそろえて、下のほうへすべらせていった。
　絹糸のように艶があって柔らかい恥草の林を抜けて、その下の肉の可憐な泉へ−−。
「ああ−−」目を閉じて、快い感覚に指を濡らして呻く美貴。
　横臥して心もち片脚を曲げて女体の芯を露わにして、指を濡れそびれた花襞の奥へ静かに沈め、さらにひそやかに蠢（うごめ）かす。　
　瞼の裏に、いままで見ていた写真の、股縄が美女のあそこに食い込んでいるシーンが浮かんで離れない。
　美貴は思いついて押入れから荷物の梱包に使ったロープを引っ張り出した。
　腰に一回りして結ぶ。そして尻のほうからロープをくぐらせた。
「あうっ」
　ちょっと強くロープを引くと美貴のおんなに食い込んできた。
　ロープを左右に揺らすとクリトリスをこすって、強烈な刺激が美貴を襲った。
　もう美貴の頭の中は真っ赤だった。
「くふっ」
　がくがくっと腰が震えて美貴は達した。こんな快感は初めてだった。
　こんなことしてる自分が美貴は信じられないが、この快感の前にはもう止めることはできない。
　美貴の頭にグロテスクな淫具が秘部に突き入れられている様が浮かぶ。
　空想のスクリーンのなかで、その縛られた女体はいつのまにか美貴自身になりかわっていた。
　縛られて両手、両足を精いっぱいに広げさせられて、昨日初めて間近に見て、しかも触れさせられた、
　ドクドクと血管が脈打っているのがハッキリわかるような巨大な肉の昂ぶりが迫る。
　美貴はまたロープで強くクリットをこすった。強い快感が走った。
「あ、あうッ」
　美貴は汗まみれになって呻き、やがて歓びの声をはりあげた。

　そして一ヵ月後美貴は孝志と結婚した。
　町一番の実力者の息子である孝志の結婚式は誰もがうらやむような派手な結婚式だった。
　美貴は周囲の誰からもいい人と結婚したと祝福され、毎日が幸せに過ぎていた。
　意外なことに新婚旅行中も、それからの新婚家庭の夜でも孝志はノーマルなセックスだった。
　美貴の頭にあの写真集のことが強い印象で残っていたのだが、孝志に優しく抱かれているだけで十分幸せだったので、いつしかそれがあたりまえの感覚になっていった。

　美貴は、踊りの披露が全部終わって、ホッとし冷たいジュースでのどを潤していた。
　富山県の平野が山にかかったところにある小さな町。
　この町の踊りは平家落人伝説を織り込んだ、格調高く、哀調あふれる民謡にのせて踊る。
　男は羽織はかまに刀をさして、勇壮な男踊り。女はあでやかな着物姿で優美に踊るおんな踊り。
　いまでは全国的に有名になり、踊りの会場のお寺の境内は見物人でごったがえすようになった。
　各地区の男女が、寺の境内で順に披露するのだが、午後三時からの昼の部があって、そして今は夜の部が終わったところで、夜の１０時を回っていた。
　美貴はぼんやりとあのことを考えていた。あのカメラマンのことを。
　昼の部に踊り始めてすぐに「見られている」と感じた。
　この踊りは、全国的に有名になり、たくさんのカメラマンも押しかけてくる。
　だから、カメラの列が並んでいるのは、毎年のことで慣れていた。
　しかし、確かにそのカメラで見られていたのだ。どのカメラかは、すぐに分かった。
　そのカメラの視線が自分に集中しているのが痛いほどよくわかった。そのカメラマンは、白いジャケットの男だった。
　不思議なことにそのカメラの前では、自分が裸になって踊っているような、カメラの眼によって、自分が犯されているような気になってしまった。
　それが、不思議なことに何故か気持良かったのだ。
「ああ・・・私を見ている」
　どうしてか分からないが、見られていることが嬉しくて、カアッと身体の芯から熱くなってきたのだ。
　踊り終わって、ホッとしたとき、ショーツがぐっしょりと濡れているのに気が付き、あわてて家に戻って穿き替えてきた。
　夜の部に舞台に出ると、美貴は無意識にそのカメラを探していた。
　そして、カメラが待っていたのを確認すると、やっぱり・・・・と嬉しかった。
　カメラマンがカメラを通して私を見ている。踊り始めてすぐに気持が高ぶってきた。
「もっと見て」
　いままで何度も踊ってきて、こんなことは初めてだった。自分が裸になって、何もかもさらけ出して見せている。
　あのカメラに。踊りながら、美貴は自分の秘所が熱を持ち、露をこぼしてきゅうっと鳴いているのを感じた。頭の中がボオッと熱くなった。
　この踊りは手の動きのあでやかなところが、ひとつの見所であり、踊り手は指先に神経を集中させて踊る。
　その指先までが赤く色づいていた。
　なんとか最後まで踊って引っ込んだとき、たまらずトイレに駆け込み、指で自分を慰めた。
　ベッド以外の場所でオナニーするなんてことは、初めてだった。
　そのあとで、控え室に戻って、ぼんやりとのどを潤していたのである。
　目の前のテーブルに誰が活けていったのか、一輪の赤いバラがあった。
「コンチネンタル」
　すっと美女が背伸びをしたような華麗な、姿の美しいバラだ。
　それをぼんやりと眺めていると、また秘所がうずいてくるようだった。
　・・・今日のわたしは、どうしちゃったんだろ・・・・

　そこに玄一が入ってきた。黒須玄一、金沢でカメラマンをしている。
　踊りの写真を撮りにきて美貴を発見した。
　少し以前に、この町の公園で一度見かけていい女だと思ったが、今日の美貴の着物姿、踊りを見て惚れこんでしまった。
　なんとかきっかけをつかもうと、毎年ここに通ってきていて勝手知っているため、この控え室まで侵入したのだ。
　美貴は白いジャケットの男が話し掛けてきたので仰天してしまった。
　踊っている自分を興奮させた男。いままでぼんやりと考えていた当の男が目の前に居るのである。
「やあ、今日の踊りはとても素敵だったね」
「夢中であなたばかりを写真撮っていたよ」
　美貴はどぎまぎしていた。
　そして目の前の男が、少し前に公園で声をかけてきて写真を撮った男だと気がついた。
「ところで、この前薔薇と一緒に撮った写真がとてもよく撮れていてね、ここで会えるとは思っていなかったんだが、車に置いてあるんだ。よかったら車のとこまで一緒に来てくれないか」
　そう云いながら玄一は赤いコンチネンタルのバラの花を掴むと、花びらをむしった。
　美貴は、あっと心の中で叫んだ。自分の身体のどこかを激しくかき乱されたような感覚が襲った。
　いつもの美貴なら、軽々しく男の後などついていかなかったろうが、いまの美貴は動転していた。踊っているときに興奮させられた相手が目の前に立っているのだ。
　どうしようと思ったが、さっさと歩いていく玄一に引っ張られてあとをついていった。
　美貴は水色と白のきれいな着物を着て、踊りのときにしていた紅のたすきは、外して首から下げた姿だった。
　玄一に導かれて駐車場まできた美貴はいきなり当身をみぞおちに入れられ、気を失った。

（続く）