| 惠 ルーズリーフ 『愛と官能の美学』Ｓｈｙｒｏｃｋ 作 |
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| 【登場人物】 惠 十八歳、京都嵐山女子大学一年生 直也 二十一歳、伏見文化大学三年生 真吾 十六歳、北大路高校二年生 第１話「あっ！車の水はねでスカートが」 北林惠、十八歳、京都嵐山女子大学の一年生である。 故郷を遠く離れ、今は大学の寮で暮らしている。 部屋はルームメイトと二人暮らしなので、彼氏がいても連れてくることができない。 ちなみに彼氏の直也とは現在冷戦中なので来ることはないはずだ。 些細なことから喧嘩になり、かれこれ一週間ほど連絡が途絶えてる。 惠も意地になってしまい、電話もメールもしていない。 今までも喧嘩することはあった。 だけどほとぼりが冷めた頃、どちらともなく連絡を入れて事なきを得た。 だけど今回だけは謝る気になれなかったし、直也からも謝罪がなかった。 事の起こりは直也のスマホだった。 それは先週末、直也のマンションに惠が泊まったときに事件は発生した。 直也が風呂に入り惠がソファで寛いでいると、テーブルの上に置いてあった直也のスマホがＬＩＮＥの着信を知らせた。 惠は自分のスマホが鳴ったものと勘違いし画面を見た。 次の瞬間、惠は「あ、私のスマホと間違えた」と小さくつぶやいた。 画面には見知らぬ女性の名前があった。 「火曜日、５時に変更にしたいの ごめんね」 という文章が記されていた。 直也のスマホを惠が自身のものだと勘違いしたのは理由があった。 惠がスマホを買い替えする際、直也も「僕も同じ機種に買い替えるよ」といっていっしょに買い換えた。 そのとき何気なくまったく同じ機種で、まったく同じカラーのスマホにしてしまったのだった。 それが間違いの元だった。 惠は少し取り乱し、風呂上がりの直也を問い詰めてしまった。 直也は血相を変えて懸命に弁解した。 惠の怒りはおさまらない。 「英美理さんっていったい誰なのよ！」 「だから同じクラブの後輩だって。クラブでは打合せがあることぐらい惠だって分かっているだろう？」 「うん、それじゃ信じてあげる」 「何だよ。その高飛車な言い方は。それはそうと、どうして僕のスマホを見たんだよ。いくら彼女でも彼氏のスマホを覗くべきじゃないことぐらい分かってるだろう？」 「だから謝っているじゃない！間違った、ごめんなさいって」 「謝ればいいってものじゃないだろう？」 「もういいわ。そんなにいうなら私もう帰る」 惠はそう言い残し、バックを肩にかけるとあわただしく部屋を出ていった。 スマホを見たのは悪かったと思うけど、クラブの後輩っていうのは、どうも怪しい。 直也から納得のいく釈明があるまで、惠は自分から連絡はしないでおこうと思った。 そんな出来事があった日から１週間経つが、直也からはまだ何の連絡もない。 ちょっと気にはなったが、惠は少し冷却期間をおくことにした。 ◇◇◇ 彼と喧嘩をした日から９日後の月曜日。 惠は学業のかたわら家庭教師のバイトをしていた。 その日もいつもどおり生徒宅に向かっていた。 朝から雨がしとしとと降り続いている。 「嫌だな……」そう思いながらも、花柄の傘を開き寮を出た。 雨は一段と激しさを増してきた。 生徒の自宅に近づいた時、一台のクルマが猛スピードで惠の真横を通り抜けていった。 （ビシャ！） クルマは水たまりを走り抜け、惠の紺色のスカートを水をはねてしまった。 スカートはびしょびしょに濡れてしまった。 （あぁ、やられちゃった……まいったなあ……） ハンカチで拭いてみたが、びっしょり濡れてまったく役に立たない。 クルマの水はねは立派な道交法違反だが、クルマが立ち去ってしまったのでどうしようもない。 腹の虫がおさまらないが、遅れてはいけないので、とりあえず生徒宅へ急いだ。 真吾の玄関に到着した惠はインターホンを鳴らす。 すぐに応答があったが、出たのは母親ではなく生徒の真吾であった。 生徒とはいって年齢は二つしか違わない。 惠はばつが悪そうに真吾に頼みごとをした。 「ねえ、真吾くん、悪いけどタオルを一枚貸してくれないかな？ クルマにハネをあげられてスカートを濡らされちゃったの。あ、それとね、図々しいお願いだけど真吾くんのショートパンツか何か貸してくれない？」 「うん、いいよ」 真吾はにっこりと笑って部屋に戻り、まもなくタオルとショートパンツを持って来た。 「姉のショートパンツだけど先生合うかなあ？ 僕のだとダブダブだと思うんで」 「真吾くん、気が利くね。ありがとう、助かるよ。お姉さんっておいくつなの？」 「僕より四つ上だから二十歳かな」 「そうなんだ」 惠は土間で濡れたスカートをタオルで拭きながら真吾に尋ねた。 「お母さんはお出かけ？」 「うん、母さんは同窓会って言ってたよ。姉も遅くなると言ってたから、今は僕一人なんだ」 「そうなの。ああ、真吾くん、ここでスカートを穿き替えられないから、すまないけどどこか場所を貸してくれないかな？」 「うん、じゃあ風呂場の脱衣所を使って」 「ありがとう」 脱衣所の場所を確認した惠はすぐに向かった。 ◇◇◇ 脱衣所はアイボリーで統一されていてとても清潔感に溢れていた。 惠は鏡に写る自身の姿を眺めながら、ゆっくりと紺色のスカートのジッパーを下ろした。 きめこまかい白い肌に純白のショーツがぴったりとフィットしている。 長いストレートの黒髪を後ろで結んでおり、目鼻立ちがくっきりとして実に美しい。 スカートを脱ぎ終わった惠は、真吾の姉のベージュ色のショートパンツを穿いてみる。 「サイズ、ぴったりだわ。真吾のお姉さんと私の体型が似てるみたい」 惠は安堵のため息をついた。 |
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| 2021年4月17日掲載 |
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