惠　ルーズリーフ
『愛と官能の美学』Ｓｈｙｒｏｃｋ 作
第２話「先生の香りは魔法の香り」

「わっ、ピッタリだわ。お姉さんと体型がよく似ているみたい」

　ポツリとつぶやく惠。
　次の瞬間、洗面所の鏡に映った真吾を見て、惠は思わず叫んだ。

「きゃっ！」

　何と真吾が惠の着替える姿を覗いていたのだ。

「やだ〜、だめじゃない。真吾くん、覗いたりしちゃあ〜」
「先生、ごめんなさい。お母さんに言わないで」

　真吾はちゃんとドアを開け、惠にペコンと頭を下げた。

（年頃の男の子だし、まあ、仕方ないか……）

「お母さんには言わないけど、もうこんなことしないでね。びっくりするじゃないの」
「うん、もうしない。先生、ごめんなさい」

　素直に謝る真吾。その姿が健気に思えて、惠はそれ以上叱る気にならなかった。

◇◇◇

　ショートパンツに穿き替えた惠は真吾が待つ部屋に行った。
　鞄から教材を取り出す。筆記用具、ルーズリーフ、参考書、そして最近ではタブレット型ＰＣが家庭教師の必需品だ。
　教材を取り出した惠は、授業とは直接関係のない質問をぶつけてみた。

「ねえ、真吾くん。どうして私の着替えるところを見たくなったの？」

　真吾は顔を真っ赤に染めて、うつむきながら惠に言った。

「僕…惠先生のこと、ずっと前から好きだったんだ。それで、今日先生が着替えてる最中だって思うと、もう居ても立っても居られなくなって、つい覗いちゃったんだ。本当にごめんなさい」

　惠は思いがけない告白を驚くと同時に、彼のひたむきさに感心した。
　真吾は感情を思ったまま真っ直ぐに表現できる子、そして自分が行なったことを包み隠さず正直に語ることのできる子。
　本来ならば『覗き見』という、男子として恥ずべき行為を、教師の立場からもっと厳しく注意すべきだろう。
　だけど惠は強く叱る気にはなれなかった。

「真吾くん、今日は英語よ。この前の宿題はできた？」

　惠は椅子に腰を掛けている真吾に近づいた。
　プンと甘い香りが漂っている。
　香水を着けているわけではない。
　十八歳の惠から自然に溢れる香りだ。
　女性には若いころに特有の甘い香りがあり、それは加齢とともに失われていくという。
　その正体は桃やココナツなどの香りの構成成分であることが判明している。
　その香りをかぐと、見た目の印象も変わるという、まるで魔法の香りだ。
　真吾にとっては初めて知る若い女の香り。
　十六歳の少年の鼻腔をくすぐるするには充分過ぎた。
　真吾は別の世界に意識が飛んでしまい、惠の言葉にすぐに反応できなかった。

「……え？　ああ、宿題？　うん、できてるよ……」
「どうしたの？　真吾くん。何か考え事をしていたの？」
「先生ってすごくいい香りがするね」
「え？　香り？　そんなにいい香りがするの？」
「うん」
「どんな気分になったの？」
「え？　う、うん……なんかちょっと変な気分……」
「変な気分って？　もしかしてエッチな気分とか？」
「そんなの……」

　真吾は顔を赤らめうつむいてしまった。

「そんなに照れなくてもいいのよ。男の子は年頃になると、女の子に興味を持つものなのよ。ねえ、真吾くん、女の子の身体って見たことある？」
「そ、そんなのあるわけないよ！」
「じゃあ、聞くけど、私の身体を見てみたい？」
「ええっ……！　い、いいの……！？」

　真吾は思わずごくりと喉を鳴らした。
　実に正直な少年だ。

　惠は真吾が座る学習椅子に、尻をギュッと押し付け自分も座った。
　二人とも尻が椅子に収まりきらず、半分近くはみ出したような状況になっている。
　惠は小刻みに震える真吾の肩に手を廻して、耳元で囁いた。

「ねえ、女の子の胸って触ってみたい？」

　驚きの表情を見せ、石のように固まっている真吾の手を取りブラジャーの方に導いてやった。

「あ、ホック外さなきゃ」

　惠はカットソーをめくって水色のブラジャーのホックに手を廻した時、突然、真吾が乳房を鷲掴みにして来た。

「ちょっと、ちょっと、待ってよ！　まだブラジャーのホックを外してないわ〜」

　惠の言葉が真吾の耳に届かないようだ。
　ホックを外す前に、ブラジャーのカップの下からむりやり手を捻じ込んで来た。
　ブラジャーが乳房の上にずれてしまい、惠の小ぶりではあるが美しい乳房がポロンとはみ出した。
　すぐさま力まかせに乳房を揉みしだこうとする真吾。

「い、いたい……真吾くん、もっと優しくして……」

　惠はやさしい声でささやいた。

「あ、ごめんなさい。痛かった？」
「だいじょうぶ」

　真吾は惠に詫び、乳房に触れる手の力が急に衰えた。

「女の子はね、優しく扱ってね。ガラス細工を扱うみたいにね」

　真吾の不慣れな仕草が、惠にとってはむしろ新鮮に感じられた。

「うん、上手よ。それでいいの。ねえ、オッパイ吸ってみたくない？」

　惠の言葉に黙って肯いた真吾は、頬を寄せ愛らしい乳首を吸った。

（チュゥ……チュゥ……）

　なんと赤ん坊が母親の乳を吸うように、乳首を軽く甘噛みして吸っている。

「やぁん、くすぐったいよ〜。んんん……、舌でペロペロ舐めて欲しいな」

　真吾は舌で乳首やその周りをゆっくり舐めたり、吸ったり、舌先で刺激したりと、惠の胸を舐め続けた。

「あぁ……あ……ん……真吾くん……上手よ……あぁぁ……」
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2021年4月21日掲載
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