桃色忘年会 『性愛小説の世界』豪円寺琢磨 作
【第２話】 　真美は長い黒髪を結い上げ、旅館の浴衣をはおり、顔には深紅のアイマスクが装着されています。 　蛇足ながら申し添えておくと、目を隠しているのは真美への配慮です。 　参加者は写真やビデオを撮ります。他人に見せないのがオトナのマナーですが、モザイク処理をして掲示板にアップする人が出てくるかもしれません。そうした場合、処理が甘ければ個人を特定されてしまいます。保存機器がウイルス感染し、意に反してデータが流出してしまう可能性も捨てきれません。 　また、集っているのは真美の夫の知り合いばかりですから、どこかでばったり会うことはじゅうぶん考えられます。そんなことがたびたび起きたら、真美はいたたまれなくなるにきまっています。家庭生活は崩壊するでしょうし、私との関係も精算しなければなりません。 　さて、挨拶が済んで手綱を外された生け贄が、あらかじめ用意された敷き布団に移動させられました。我々は布団を囲むように座っています。 　自分の席に戻った私が参加者たちに声を掛けます。 「まずはコイツを裸にしましょう！　誰かひんむいてくれる方はいらっしゃいますか？」 　最年長の湯島さんが元気よく手を挙げました。 「私にやらせてください。ぜひお願いします！」 「分かりました。じゃあ、湯島さんにお願いしましょう」 　湯島さんが背中を丸めて正座している真美の首輪を引っ張って立たせます。 「真美さん、今から全裸になってもらうんだけど、いまの気分はどう？」 「…は、恥ずかしいです…許してください…」 「そんなのダメに決まってるだろう。思いっきり恥ずかしがらせてやるからな。覚悟しとけよ！」 　湯島さんが紐を解いて浴衣を脱がせると、ベージュのブラジャーとショーツが現れました。真美はすかさず右手で胸を左手で股間を押さえます。 「地味な下着だなあ。これ、いつも使ってるやつ？」 　真美がゆっくりとうなずきます。 「セクシーな下着もいいけど、こういうのも、他人妻って感じがして興奮するな。ねえ、近藤さん」 「そうなんです。そういう雰囲気を出そうと思って、着古した下着をつけてくるよう命じたんです」 「そうだったんですか。それはなかなか凝った趣向だ。でも、私、よく分かりますよ。よれよれの下着なんて、ふつう、旦那以外、見る機会なんてないですもんね。人妻にとったら、新品よりも普段着を見られる方がずっと恥ずかしいでしょう」 　湯島さんが生け贄の腕を押しのけ、両手をブラジャーの中に差し込んで微乳を荒々しく揉みしだきます。 「なんだ、もう乳首が立ってるじゃないか。真美はホントに淫乱なんだなぁ」 　頬を真っ赤に染めた肴が口を開きます。 「そ、そんなことは…」 「だったら、どうして乳首が立ってるんだ？」 「さ、触られたからです…」 「初めて会った男になぶられても興奮するのか？」 「わ、分かりません」 　背中のホックが外されてブラジャーが布団の上に落ちました。女が必死になって両手で胸を隠します。 「なに勝手なことしてるんだ！　気をつけの姿勢をとりなさい！」 　生け贄が諦めたように腕の力を抜きます。 「おお、なかなかキレイなオッパイじゃないか。とても二人の子持ちとは思えないな」 「あ、ありがとうございます…」 　人妻を抱きしめた湯島さんが耳元でささやきます。 「あとはパンティーだな。『脱がせてください』って、お願いしてみなさい。さあ！」 　耳たぶを真っ赤に染めた真美が小声で拒みます。 「そ、そんなこと…言えません…」 「でも、言わないと、ずっとこのままだぞ。それでもいいのか？」 　しばらくして、観念したメスがうつむいたまま恥ずかしそうに哀願します。 「…ぬ、脱がせてください…お、お願いします…」 「仕方がないなあ。じゃあ脱がせてやるか」 　ショーツが一気に足首まで下ろされました。 　湯島さんが股間を見て驚きの声を上げます。 「なんだ、オマエ、パイパンなのか？　いったいいつ剃ったんだ？」 「昨日の夜です」 「自分でか？」 「は、はい」 　しゃがんだままの湯島さんが手の平で無毛のデルタ地帯を撫でまわします。 「いつも剃ってるのか？」 「いいえ。特別な時にだけ。ご主人様のご命令で…」 「なるほどねぇ。近藤さんの命令は絶対ってわけだ」 　生け贄が即答します。 「はい、そうです」 「そうか。じゃあ、ご主人様に次の命令を出してもらおうかな。近藤さん、次はどうするんですか？」 　私が胡座を掻いたまま答えます。 「次は毎年恒例の女体盛りです。これはそのためのパイパンなんですよ」 　ニヤケ顔の湯島さんが私を見て確認します。 「なら、ここに寝せればいいんですね？」 「お願いします。では皆さん、お膳を引いて布団の脇にお座りください」 　湯島さんが真美の両腕を持って敷き布団の中央に寝かしつけます。私が舟盛りの刺身を女体の腹部に移して並べます。 「皆さん、お膳から箸と皿をとって、遠慮なく召し上がってください」 　うわずった声の宮沢さんが感想を述べます。 「近藤さん、こ、これは凄いです。本当にスゴイ！」 「宮沢さんは、こういうの、初めてですか？」 「も、もちろんです。人妻の裸を見るのも初めてですし、こんなのも初めてです」 「そうですか。そりゃあ良かった」 「興奮しすぎて、味がまったく分かりません」 「じゃあ、ワカメ酒の一番手は宮沢さんに行ってもらおうかな」 「ワカメ酒って何ですか？」 「そうか、宮沢さんは若いから知らないんですね」 　経験者の田中さんが説明してくれました。 「宮沢君、ワカメってのは陰毛のことだよ。芸者の伝統芸で、股間にポン酒を注いで直接飲むんだ。酒の中で毛がワカメみたいに揺れるから、そう呼ぶんだ。あっ、でも、近藤さん。ふつうワカメ酒って、正座してやりますよね。それに今日は杯がパイパンですよ」 「そうなんですけど、これなら酒とツマミを同時に楽しめるでしょう？　パイパンなのは、口をつけたときのザラザラ感が個人的に嫌だからなんです」 「なるほど。そういうことですか。さすが近藤さん、極めてますなぁ」 「何はともあれ、やってみましょう」 　私がグラスに入った冷酒を割れ目に少し注ぎます。 「宮沢さん、呑んでみてください」 　生け贄の脇に移動した宮沢さんが、ジュルと音を立てて一気に吸い込みます。 　私がまた酒を垂らします。 「今度はゆっくり。猫が水を舐めるようにして呑んでみてください」 　宮沢さんが黙ってうなずきます。 「割れ目に舌を差し込んでやってください。メス奴隷が喜びますから」 　宮沢さんがペチャペチャと酒を舐めとり、陰裂に舌を這わせます。 　女体がピクピクと反応します。 　私が注意します。 「器が動いたらダメじゃないか。我慢しなさい。返事は？」 「は、はい、分かりました。もう動きません」 　私と同い年の斉藤さんが箸で左の乳首を摘みます。 「みなさん、ほら、乳首が立ってますよ」 　満面の笑みをたたえた三島さんが真似をして、右の乳首を箸で鋏んで刺激します。 「ホントだ。立ってますね。こりゃあ面白い」 　こうして小一時間かけて、参加者全員が女体盛りとワカメ酒を堪能しました。
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『性愛小説の世界』
2016年1月9日掲載
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