『幸福わせへ』続編です。

　熱いシャワーが一日の汗を溶かし、流して行きます。
　それは一日の疲れを流してくれる気がしていたのです。
　シャワーの飛水は熱い剣山となって肌に突き刺さって来てるの。
　排気ガスが浮いたメイクアップ。首の後ろに巻き込んだジーゼルの排気の匂い。オイルと獣の汗が混じった様なつなぎの匂い。

　銀座の２丁目の会社から、退社とともに都内を走り回っていたの。
　日比谷トンネルでマシンの排気音を確かめて、今日の調子を見極めるの。
　三宅坂から赤坂陸橋へ。この陸橋のＳ字が大好きなの！
　ここが流れる様に走れた時は最高の気分よ。
　無理なスピードを出す訳ジャァないけれど、左に曲がってすぐ切り返し・・・。
　軽いハミングでも口ずさみたいリズム・・・。
　ここで右手に力が入っていると、日枝神社前の信号で急ブレーキになってしまうの。左前が赤坂警察だもの。目立つ動きはしない方が良いのよ。
　横断歩道橋の上から違反者を捜している事もあるし、白バイのお客さんにはなりたくないもの。カナダ大使館前はいつでも渋滞がひどいしね。ここで多少のスピードを上げても意味ないんだもの。

　表参道は少しゆっくりにして、道行く人たちのファッションを眺めるの。
　まだ肌寒さを残している季節なのに、ノースリーブやタンクトップを目にする処なんて、ここだけだわ。ここはいつでも季節感が早いの。
　疲れている時には、小さなマックで一服する事だってあるわ。
　オリンピック道路から井の頭通り、小田急の陸橋を過ぎたらわたしの家。
「勇敢な運転は、社会の迷惑だよ。」
「先の先まで読めなけりゃ、慌てて事故になり易いよ。」
　グリップを握るたびに思い出すおじさんの言葉・・・。

　一日の汗と埃を水栓に流して今日の悪かった運を流し去る・・・。
　総てを流し去ってくれるシャワー！
　いつもの一日のエピローグ。
　身を清めて、一日の無事を神様に感謝して床に付くのです。
　毎日変わらないわたしの日課。
　いま頃は、あの人どうしているんでしょう？

　奥さんと一緒なのでしょうか？・それとも、また何処かへ撮影に出掛けているのでしょうか？・・・そう云えば「婦人科・・・」 って云ってたから、綺麗なモデルさん達と一緒なのでしょうか？
　別れ際まで「おじさん・・・。」って呼んでいたわたし・・・。
　そんな呼ばれ方したら、どんな男の人だって、ジェネレーションギャップを感じてしまうわよね。・・・それでも肌を重ねたじゃない！

　先生とか、父と一緒にいるみたいだったわ・・・。
　本当に安らいだ時間だったの・・・。
　いつもの様な見栄を張ることもなく、わたしの弱味さえ晒気出してしまった人・・・。
　あの時ほど甘く切ない別離を惜しんだ経験はしたこと無かったもの。
　再会したら、わたしは何を望むんだろう？
　海岸道路から、短いクラクションをたった３回鳴らして直角に曲がって、ベイブリッジに向かって行った後ろ姿。
　振り返ることもなく、走り去って行ってしまった。
　おじさん。・・・会いたいわよぉ。

　あの人から連絡が来ることは無いわ。
　・・・わたし・何にも教えなかったんだもの！
　携帯の番号だけじゃなく、名乗ってすらいないんだもの。
　だから、あの時のトリコロールのＣＢＲ２５０ＲＲに乗って、街を走り回ったわ。
　なかなか見付けて貰えなくて、会社へもＣＢＲで通うようにさえなったの。
　部長や男性社員の怪し気な目付きも気にしない様にして・・・。
　ハイミスが爆音轟かせてレプリカ乗り付けるんだもの。会社の人たちが眉をひそめるのも分からない訳じゃないの。
　おじさんが見付けてくれる手掛かりは、これしかないんだもの。
　縁があるならまた会える筈よ。

　キャンディーレッドのフルヘル。チン・ストラップもくたびれて来ているのに、あの時のメットだもの簡単に取り替えられないわ・・・。
　わたしから連絡を取ることは出来るのに・・・、たった一本の電話が出来ないの。
「わたしは家庭を壊せない。」・・・あの一言の重さ・・。
　わたしの誘惑に乗ってしまったくせに・・・。
　偶然の再会に掛けるしかないじゃないの。

　出来るだけおじさんに見付けて欲しかったの。
　一週間が過ぎ、一月が過ぎ、もう半年が過ぎているのに、まだ見付けて貰えなかった。
　ただ悶々として、満たされない日々がもう、１年も過ぎ去っていく・・・。

　こんなわたしですもの、物欲しそうな顔でもしているのかしら？
　街を歩けば直ぐにナンパの声が掛かっても来たわ。
　でも殆どは坊や達・・・。
　耐えきれない思いを胸に、何人かの誘いには途中までは乗ってみたけれど・・・、物足りなさが残るだけ・・・。真剣に生きてる若い人が如何に少ないか！・・・真剣に生きてる。って人には出会えもしなかったわ。・・・それが今風なのかも知れません？
　何でも軽くしか考えない。・・・それでも何とか生活できてしまう時代ですもの。
　最後まで付き合わざるを得ない時だって無い事は無かったんだけど・、たいていはガッカリされられるの・・・。
　堅くなったコックも・若さだけで堅くなっているの！
　いま迄にお付き合いした人達と同じ・・・。
　本能の飢えだけで女体を求める男・・・。
　そんなのを求めてやしないわ。多少の熱意ががあったって、身体だけが目的では、わたしを満足させるには程遠かったのよ。
　心まで満足させてくれなければ、わたしは満たされないのよ！
　セックスを求めているんじゃない。・・・心までとろけたいのよ！
　白けた別れを重ねてしまうだけになっていたわ。
　心の無い坊やのナンパ師達じゃ、わたしの飢えを補う事すら出来ないの。

　暇を持て余した若い子達がわたしに粉かけてきたのよ。
　わたしから見れば１０歳位も年下の大学生達だったと思うの。いわゆるナンパに近い感じだったの。わたしの方も「おじさん」となかなか出会えなくて、苛ついた気分だったの。それでね、適当にあしらい乍らカラカッて、憂さを晴らそうと思ってしまったんだわ。
　これが大間違いの元だったの！
　いくら若くたって、男なのよ！・若いだけに自制は効かないし、・・・そのくせ腕力だけはあるの。だから若い人には気を付けていなけりゃいけなかったわ。公園の暗がりへ連れ込まれてしまったら、力では全然適わなくって、簡単に押さえ込まれて衝動だけのコックを突き入れられてしまったの！
　女性用の皮つなぎは、お尻の方までジッパーが開く様になっているんだもの。きついつなぎをいちいち脱がせる事も無く、直ぐに無防備になってしまうんだったの。そうなってなかったら、おトイレの度々につなぎを全部脱がなけりゃならないじゃない。
　若い欲棒は確かに凄く硬直しているんだけど、ガンガンゴッゴッと勢い良くわたしの中を出入りするだけなの。恥骨がゴツゴツ当たって、痛い方が先になちゃうのヨ。全然気持ち良く無い。

　無茶苦茶な力だけで抱き着いて来るから息するのも苦しいし・・・。
「ダメッ！・・・だめ・待ちなさいっ！・ばかっ！へたくそっ！！！」大声と年上の自信が男の子達を制したの。
「待って、！・・・・待ちなさいよっ！」
「こっちは出してしまえば、充分なんだよ。」
　って云うのを、
「力尽くで乱暴な事をしたって、こっちは気持ち良くならないのよ！・女を悦ばせるのが男だろっ！・女を無視して男なんて云えるのかっ？！」って・・・。
「俺達は満足できたんだから、抱いた事になるんだよ！」
「バ〜カ！・女を悦ばせてみたいと思わないの？自分一人だけ悦んでいるんじゃ、ただのマスターベーションでしょっ！？・・・そんなんなら、一人で遣ってなよっ。」
『マスターベーション』が効いたのね？わたしも頭に来ていたから、普段なら口に出すのをはばかる様な言葉まで口を突いていたの。

　わたしの剣幕と言葉の遣り取りの為のブランクで、少し萎れ掛かったコックを握ってしごいてやったわ。だけどやっぱり若さはあるのよねぇ。・・・だって、チョット扱いただけなのに、直ぐにカチンカチンになってしまうんだもの！
「凄いぃ・。すぐに準備オーケーじゃない！・・・若さよねぇ。」
「若いモンよっ。・・・お姉さん、こんな事したら強姦じゃなくなるよ。」
「良いのよ！・ここまで来てしまってれば・。」
「さっきの話だけど、あんまり女の子に触ったこと無いでしょう？」
「・・・・。」
「やっぱりね。・女の子に触れる時は女の子の反応を良く見ていなきゃだめよ。女の子は気持ち良くさせて上げるの。・そうしたら、たまにはさせてくれるかも知れないわ。・自分勝手な思い込みだけで力尽くにされたら、アンタだって嫌でしょう？そしたら、女の子が嫌がるのは当然だと思わない？」
「そんな事してたら逃げられちゃうじゃないかっ。」
「ホントに馬鹿ねぇ。・アンタだって好きな子としたいんでしょ？・その子に乱暴したいの？」
「好きな娘には・優しくしたいよ。」
「だったら優しくしなさいよ。・嫌がる事はしないのっ！」
「そんな事云われたって、どうするんだよ？・・・分かんネェよ！」
「分かんない訳無いでしょ！・目ん玉付いてんでしょ？女の子の顔を見ていりゃ分かる筈よ。それで分からなけりゃ、『いやなの？』って、聞いてやるのよ。・・・『わたしを尊重してくれてる。』って、女の子が思ってくれれば、少しずつ先へ進めるわよ。」
「少しずつ？」
「当然よ！・・・女の子の方には後に大きなリスクがあるんですからね。静かにゆっくりが出来ない程度の器量なら、男の看板降ろしちゃいなさい。」

　そんな遣り取りがあって、わたしがこの子達３人に教える事になっちゃったのよ。

「始めは触ったか触らないかが分からない様な触れ方から始めるの！・・・アンタ達位の子がセックスに飢えているのは、女の子の方だって分かっているんだから緊張しているのよ。神経が異常に鋭くなってね。・そんなトコへチョットでも強めの力が加わったら、もの凄い力に感じるのよ。・・・だから、アンタが『分からないかも知れない？』って思う様な力でも、女の子の方はしっかり受け止めているものなの。」
「坊やの元気が戻ったから、今度はわたしにも良い思いをさせるのよ！」
「エッ・・・！」下になっていた子が驚いた顔をして、わたしの主導権が確かなものになっていたの。
　左手は男の子の肩を抑えて、組臥した子の先を右手でクリットに合わせて腰を沈めたの。

　今度はわたしの方にも淫欲があったから、坊やを扱いているうちに、わたしの気持ちも欲求不満解消へ向かっていたの！・淫性の分泌が滲み出していたのよ。
　始めに突き入れられた時には、ほとんど乾いたままだったヴァギナに滑りが起きていたの。
　それは固くなった坊やをスムーズに受け入れました。
　クリットが拡げられ、ヴァギナが入り口から少しずつ奥へと充実感が進みこん来るんです。
「ハァ〜ァ。」身体中の空気が押し出される様に口から吐き出されていったわ。
　ヒップ回りが固く、重くなる感じ・・・。久しぶりの感じだわ。
　腰が密着して、坊やのすべてがわたしの中にいました。
　遣っちゃった！・・・愛して欲しい人じゃないのに・・・。
それでも、わたしの中には確実な充実感があるの！
「どお・？」坊やの目を見据えて遣ったの。
「お姉さん、・良いの？」呆気に獲られながらも、いぶかしげな顔で聞いて来たの！
「『相手を尊重しなさい。』を早速使うのね。」開口一番に、わたしの立場を聞かれたので、良い気持ちになってしまったわ。この子達を楽しませて遣っても良いか！・なんて、不遜な気持ちが広がっていたわ。
　こんな気持ちが起るなんて思えなかった！・・・わたしを愛して欲しいのは「おじさん」。それなのに、他の人・・・それも自分から迎えるなんて！
　・・・・・なかなか合えないからだわ。

　腰をグル〜ッて廻したの。
「ォォオ〜ゥ・・・！」男の子に呻きが上がって、わたしの中の坊やがピクピクッてなるのが分かるの！・・・わたしにも鋭い刺激が突き上げてきていたの。
　男性を組み伏せてリードするセックスなんて初めてよ。・変な優越感が湧いてきて腰を廻し続けたけど、続けるのが結構大変なの。
　男の子に被さる様な前屈みの体勢も不自由だったから、体を真っ直ぐに立てたの。
　両手を左右に開いてバランスを取りながら腰を癪って遣ったわ。・・・癪って戻し、また癪っては戻す・・・。クイックイックイッて感じで・・・。
　ヴァギナの奥の子宮口の辺りがくすぐったい様な快感を出し始めたの。「おじさん」の時に比べれば、快感が小さい気はするけれど、それでも久しぶりに感じる感じ・・・。
　もっと欲しい・・・。・・前後に振る腰に勢いが付いていたの。
　カクカクカク・・・って、わたしにこんな腰の振り方が出来るなんて知らなかった！
　お腹の中から、いいえ、わたしの中心から喜悦が大きくなってくるの！
「ォゥォゥ、ォォオオゥ！」下の子の身体がピクッピクって起き上がろうとするの！・まだ逝かないわよね？こんな子の子供なんて孕みたくないんだからね。妊娠なんて願い下げよ。
　ビンビン、ビンビン、ビビンッて、中心から手足の指先、頭の頂点にまで響く喜悦が沸き上がって来る！
　いい感じ！・・・わたしの中にコアが出来た様なの。それが、わたしと小擦れて、まるで発電機みたい・・・。喜悦の電流が身体を走り回って行くぅ・・。
　わたしの腰、どうにかなったみたい！？・・・凄い勢いで前に後ろに弾かれる様な往復、していたの！・・・自分の身体じゃないみたいなの。・・・気持ち良い・・・ンッ！
「まだ・大丈夫？」わたしの意思を離れて前後に振れる腰の動きに不安がよぎったのよ。
「・・・すごいよっ！・ァァッ、逝っちゃうぅ！」歯を食い縛って眉間に皺を寄せた坊やが吐き出す様に云ったの！
「イヤッ！・・・」夢中で腰を引いたわ！
　ブルン！って、震えた先から、白いモノが飛んだ気がしたわ。男の子は、腰が突き上がって弓なりに反っていたの！
　坊やの先からは２度３度ピュッピュッと白いモノが飛び、彼の胸に落ちていたわ。
　危なかったぁ！・・・

「アンタの子供なんか出来ちゃったらどうするのよっ！」
「ゴメン・なさ・い・。」
「わたしに漏らさなかったでしょうね。」
「大丈夫。だと思う。」顔は確信があるようだったの。それで少しは心が落ち着いたわ。
「で、どうだった？」
「お姉さん凄いよ！・脳天まで突き抜けた感じだもの。」
「わたしは物足りなかったわよ、まだ。・・・もっと我慢しなきゃ、女の子は喜んでくれないわよ。」わたしが良い気持ちになって直ぐなんだもの！・これじゃぁ楽しい思いにはほど遠いわ。
「お姉さんのあんな遣り方凄いんだもの！良くあんなに腰が動くねぇ！・・・フラダンスでも遣っていたの・？・・・フラダンスか？ベリーダンスで位しか、あんな腰の動きは見た事無いよ！」
「やっぱりそんなに凄かったんだ・！」

「アンタ達もしたいの！？？」男の子に股がったままで振り返ってボーッとしている二人に怒鳴っちゃったの。
「・・・・・。」黙ったまま、二人共頷くのよ！
「ジャァここに寝て！」最初の子の横を指して云ったの。・・・わたし何を考えているんだろう？・普通じゃ考えられない事だわ。・・・この子達、さっき知り合ったばっかりなのよ。
どうして、次の子達まで相手しよう。って云うの？・・・一遍に３人も相手にするなんてわたしに出来るとは思わなかったもの。・でも始めの子は、わたしが感じ始めたトコで逝っちゃったし、中途半端なのよ。なんか遣り切れない思いが残って、不満の方が大きかったのね。
　何っ！・・・二人とも寝てるのよっ！
「一人ずつよっ！・同時に二人なんて出来ないわよ！」
「ビデオなんかじゃ、３Ｐも良く遣ってるじゃない？」遠い方の寝た子が口を尖らせていたの。・なんか可愛いけど、３Ｐなんて冗談じゃないわ！
「これはビデオじゃないの！・わたしだって、ポルノ女優じゃないのっ！・普通の女性に、３Ｐなんてせがんでも無駄な事よ。」直ぐ横に横たわった坊やのジッパーを引き降ろしたの。
　遭ったばかりの男の子達だもの、さすがにフェラチオはしたくないから、手で扱いてやった。
「ァア、・・・ゥゥウウ！」直ぐに呻き声が出て来たわ！
　始めの子と一緒ね、直ぐにカチカチになっちゃったの。・
　余計な時間も掛けたく無いと思ったわ。・・・前の余韻があるうちに続ければ、わたし自身が高見に昇れそうな気がしたのよ！・・・わたし自身が満足したかったの。
　この子達は生きたティルドゥー。・・・わたしを満足させるのよ！
　すんなりと受け入れられたわ。作り物には無い体温が、わたしの中心を熱くし始めるの。
　今度はわたしも達するの。
　わたしの中を確かめる様に腰を前後に振り始めたわ。力強く無くても良い。静かに腰を前に癪り上げると、入り口の後ろに固いものがあたって前壁を圧すの。腰を引く時は入り口の前の縁が後ろへ引き戻したわ！その先が腰の倍の速さで動くのよ。
ヴァギナが吊って、強い悦刺激を生み出していた。
　ァア・イィ！・・・再び熱くなったわたしの中心が欲望を露にするの。
　分泌液が増える！・滑りが良くなったヴァギナ。・・・滑りが良くなって刺激がまろやかになっているのがとっても心地良いわ！
　今度の子は自分でも腰を振っているの。浅くなったり深くなったり、わたしのリズムとは微妙にズレがあって、そのズレのお陰で、ヴァギナの横の壁まで様々な刺激を作り出して来るの！

　イイッ！・・・。・・・強い刺激が続々と生み出されて来る。
　グッグッググ〜ン！と身体を貫いて行く淫悦。・・・喜びが身体の中心から広がって来るの！
　それは、あの「おじさん」の時から待ち焦がれていたモノの筈だったの。
　下から突き上げて来る坊やに合わせる様に、わたしも身体を上下させようとしたの。
　これは出来ないのよ。下で腰を振る坊やのピッチに合わせてなんて、速すぎるわ！
　わたしは身体の総てを上下しなければならないのよ。
　坊やは腰だけを上げ下げすれば良いんだから・・・。

　そうかぁ、わたしも腰だけを動かせる体勢になれば良いんだ！
　真っ直ぐ立てていた上体を、あんまり気乗りはしないけど、前倒しにしたの。下の坊やの両肩に両手を突いてね。
　でも、思う様には腰は振れないの。直ぐに抜けてしまいそうなんだもの！
　仕方なくまた身体を真っ直ぐに起こして、始めの体勢で腰を振るより無かったわ。
　先が子宮口のしこりに届いているのか？わたしが腰を振る途中でちょっと引っ掛かる気がするの。これは気持ち良いの！・前に後ろに腰を振って、しこりと坊やの先が当たった処で腰を廻してやったの。
　しこりを坊やで廻すのよ。微かに触れた感じのまま腰ごと廻すと、わたしの中でヴァギナが回るの！ユラユラする暖かみの波が全身に伝わる・・・。
　ともすれば倒れそうになる身体のバランスを両手で取りながら腰を振り続けたの。・気持ち良い！
「ァァアッ・イクッ！」坊やの叫びがわたしを現実に引き戻したの！
　あわてて腰を引いたわ。・間一髪！
　ピュゥゥゥ・・・。って音がした様な気がするほどの勢いで、精が飛んで行った・・・。
　また、わたしが満足する前に終わってしまった・・・。

　３人目もやっぱり同じだったの。
　タップリと不満が残ったけれど、坊や達に再び向かう気はなかったわ。

　あの・おじさんとの３６時間。
　あんなに充実を感じた時間は二度と出会えないかも知れないわ？
　全てを委ねても心を落ち着けていられる幸せな時。心も身体もとろけてしまったあの体験。
　思い出しただけでわたしの中心がとろけ出すの！
　自尊心の強いわたしには「恋いなんて出来ない。」と、思っていたのに・・・。
　寄りに依って、父みたいな歳の人に・・・。

　そんな事ばかり考えていたある日、同僚が教えてくれたんです！
　出会いの神さま「出雲大社の分詞が六本木にある。」んですって！
　もう直ぐ、あれから１年にもなろうとしていました。
　もう、神頼みしかないと思っていましたから、夢中で場所を聞き出して、早退届！
　その分詞へ向かいました。
　出雲大社が「縁』の結び神だとは知っていました。ご利役豊富な事も・・・。

　六本木七丁目。
　六本木通りは良く通ります。・・・銀座から渋谷に向かうには、気分的にも好きな道だったんですもの。もちろん、溜池から六本木交差点までの渋滞は好きじゃぁないんだけど、その間に感じる街の雰囲気は嫌いじゃぁないわ。
　六本木四丁目からの上り坂は高速の下を通れば殆ど渋滞しないし、良く右折車で止まることになる坂の途中のＴ字交差点も、直ぐ右にある公園が小さいけれどもとってもお洒落な感じがしていたの。
　六本木交差点を乃木坂方向に右折して、ホテルアイビスを過ぎた信号を左折してベルファーレを通り越すの。突き当たって右折。
　３０ｍ走れば、左の雰囲気が違うビルが出雲大社ですって・。
　どこかのマンションみたいな雰囲気があるビル・・・。気を付けて見直せば、正面真ん中に幅広い階段が雰囲気を違うものにしていました。
　時代なのよねぇ・。
　出雲大社って木造の「神社ぁ！」って、造りだとばかり思っていたんだもの。
　ここは何度か通った事はある筈だけど、気付かなかったのはこの造りの所為だわ。
　それでも青紫ののぼりに「出雲大社」って書いてあったから、出雲大社を改めて探していたわたしは通り過ぎてしまう事はなかったの。
　駐車場が自動車で一杯なので、その先のバイクが並べてある処の隙間へ斜め駐車したわ。

　ヘルメットを脱いだ途端に、「ドドドドドド〜ン！」って、空の方から太鼓の音が聞こえていたの。こんな処で太鼓の音を聞くとは思っていなかったけど、一応神社なんだからふしぎでもないか！と、思いもしたの。
　ぽつりぽつり階段を上がって行く人がいたので、わたしもその後について階段を上っていったわ。上がり切ったと思ったら、ガラス戸一面で鍵が掛かり「社務所は三階です。」の張り紙。・・・振り返ると今上がって来た階段を中央に、左右に狭い階段があります・。
「三階はこの階段を上るのね。」声にはしなかったけれど、ほんと・口に出したい気分だったの。
　でも、神様のお住まいに文句は厳禁！・・・天に唾するのと同じ事ですもの。
　狭い階段は折り返しになってまた登り！
　やっと付いたと思ったら、格子戸の中が人で一杯！
　テラスの様な前広場にも２〜３０人の人がいたの。神前の広間と思えます内宮には、百人以上の方が正座で拝んでいました。
　左側の壁に白い紙が貼られて、「四月一五日 春の大祭」と、書かれていました。
　わたしは儀式のある日に来てしまったんだわ。
　周りの人達を見ていると、格子戸の処に置かれた賽銭箱に入れて、柏手を四回打っていました。神様って、「お辞儀をして柏手を二回してお辞儀。」だと思っていたのに、ここでのお参りは二回お辞儀して四回の柏手、一回のお辞儀・・・？みんながしている様に真似してお参りしてお守りを買えるところに行ったの。直ぐ左隣なんだけど、床の高さが違うせいか？上から見下ろされているんですもの！
　係の人達は屈んで目線を下げて、眼を同じ高さで見る様にして注文を聞いていたわ。
　やっぱり神様に使える人達は違うわねぇ・。凄いわよぉ！・建物の造りだからしょうが無いと思うのに、御自分が高いところにいるからって、不安定になる体勢を採ってまで、お客さんと同じ目線で話そうとするんですもの。

　相手の方と同じ目の高さで話すのは、良いコミニュケーションを作るための最初のエチケットだけど、今の世の中、これは意に介さない人達が多いんですもの！・・・子供や犬猫、小さな生き物達相手でもこれは大切なのよ。
　大人の人は別に偉ぶりたいと思っている訳ではなくても、膝を折って背を縮めるのを億劫がる様になり易いのです。エチケットを億劫がるのが一人前の大人のする事？
　今、出来る人はずいぶん少ないわ。

　順番待ちの列の後ろに付いたの。
　わたしが欲しいのはァ、もちろん、あのおじさんにもう一度出会えること・・・。
　良縁招福のお守り・。おじさんにとっては不倫ですものねぇ・・・、神様・お願いを聞いてくれるのかしら？
　倫理に反する様なお願いだもの。聞いてくれないかも知れないわ・・・。それでももう、出会いの神様にお願いする事しか出来ないんですもの・・・。
「出会いの神様」って云えば、出雲大社が一番でしょう。
　東京の分詞を教えてくれた同僚に念を押されなくても、出雲にだって、お願いに行くつもりになっていたのよ。東京に分詞があるなんて、知らなかったから。

　神司(かみつかさ)さん達の中ではお若く見える方が声を掛けて下さったの。
　眼鏡の奥に優しそうな光が見えて、わたしは「おじさん」の事を洗いざらい話してしまっていました。
　たぶん奥様がいらっしゃるでしょう事までも・・・。
　３０分近くは色々話を聞いていただきました。
　その間に、神前に集まられた人々が集まりを終えられて次々と出てきていました。右手の廊下を渡り、どこかへ向かわれる方々、出て来られた方々の後ろ姿を目で追いながら、苦しい胸の内まで話していました。
「それは苦しい思いをなさいましたねぇ・。・・・で、連絡先がお分かりになっていらっしゃるなら、連絡は取るべきです。あなたが仰る様なおじさんでしたら、八方丸く収まる知恵を出して下さるはずですよ！・もし、そうでないなら、神様は出会いをお作りにはならなかったと思います。」神司さんの仰り様はまるで天の声の様に聞こえました。

　連絡を取ると云うことは、わたしも断られた時の心構えを作って置かなければならない事です。その事態が怖くて・おじさんに電話が出来なかったのです。
　思い返せば、積極的だったのはわたしの方ですもの！
・おじさんの躊躇につけ込んでさえいた気がします。・・・と、なれば、悪いのはわたしです！

　不倫する人達を軽蔑さえしていたわたしだったのに・・・。おじさんに不倫を強制して、今またその続きを迫ろうとするなんて・・・。連絡を取るべきだと思いながら、決断を付けられないまま階段を下りていきました。２階から１階に下りる階段に差し掛かったとき、道路の反対側のマンションの中２階に珈琲屋さんがあるのが見えたのです。
　出雲大社・出雲大社・・・って、探しながら来たときには全然気付かなかったのです。

　全面に格子の入ったガラス戸に何かに惹かれるようにコーヒーが飲みたくなって、道路を渡ってまた低い階段を上り、そのお店に入りました。
「いらっしゃいませ、お一人でしょうか？」マスターらしい方の落ち着いた声が、心地良い響きを持っていました。 オールデイズのポップスがＢＧＭで流れます。奥行きのある店内は１５席ほどカウンターが主体で、洞穴をイメージするボックス席が２カ所にありました。
　山小屋か中世ヨーロッパの居酒屋を彷彿とさせる太い梁を剥き出しにした店内なのですが、それはそれでまた、落ち着いた雰囲気を醸し出していたのです。
　店内には４人の中年男性とお一人の素敵なご婦人のお客さんがいらして、一目で分かってしまいます。
　空の席の一つにショルダーバックが掛かっていました。

　みなさん一目でハイソな人達に思えます。トーンが違います。強すぎず弱すぎないコントラストを保った色柄の身なり、それぞれの方がそれぞれの思いを乗せた身なりなのですが、それぞれの方の優雅な生き方が伝わってくるような・・・？
　金糸を混ぜた黒いブラウスのご婦人、軽く茶の掛かったショートの髪とのマッチングが絶妙な素敵な印象でした。
　左手の親指と人差し指だけでゆったりと摘んだデミタス。薬指の異彩を放ちつゝ控え目にさえ見えるダイヤの指輪。
　余所でならお水っぽく見えてしまうでしょうに、仕草の違いかしら？上品な香りが漂ってくる様な気さえします！・・・「これが品性です。」と、眼には見えないものを見せつけられた様な衝撃さえ感じていました。
　数人のお客さんの雰囲気だけで圧倒されそうななんです。

　ひょっとしたら、場違いなお店に入ってしまったのかも知れない？
　ここはハイソの隠れ家・・・？
　気取った感じな訳ではないんです。古い英国かフランスのパブにでも迷い込んでしまった様な雰囲気です。
　華やかな六本木の喧噪からは、一歩も二歩も引き下がった処にあるんですもの。
　我が国では格式の高い出雲大社の正面に、中世とまでは云いませんけど、１９世紀のパブを思わせる雰囲気のカフェ・・・。

　黒い皮ツナギだけでは幾らか寒さを感じていたわたし。
「済みません？・お手洗いは・？」です。
「アッ！・真ん中の鎧戸なんですけど、今お使いの方がいますので、チョット待っていただけますか？」そう云いながらマスターの出して下さったメニューに目を移してチョットぎょっとなりました。ブレンドだけで３種類が並んでいるんです！
「コクのある苦み」「軽やかな苦み」「爽やかな酸味」と、ストレートコーヒーの産地名、バラエティーそれぞれの説明書きがありました。
「初めての珈琲屋さんではブレンドを頼むんだよ。」おじさんの言葉がよみがえります。
「コクのある苦み」は、チョット苦みが強そうだし、酸味はあんまり好きじゃないんですもの。「軽やかな苦み」をお願いして、メニューに傾注している間に、空いた気配のトイレ。
　入っていらした方もお席に戻られたようですので、鎧戸を引き用を足し、髪とお化粧を整えて出てきますと、お店の中が混雑していました！・・・ほんのちょっとの時間なのに・・・、前の出雲大社やでお集まりになっていらした方々が流れ入って来られたのかも知れません？
　マスターとさっきは見えなかった人が話しているのです。
「今日は盛会だったみたいだね？」
「うん、天気も良かったからねぇ。２００人位かなぁ？」
『あぁ、さっき先に入っていた方ね？』と、思ったのですが・・・、声が！

　聞き覚えのある声なんです！
　忘れようにも忘れられない・・・。

　いきなり頭の中が混乱していました。
　恐る恐る、その声の主を覗き込もうとしたら、その方・わたしに振り向いたんです！
「・おっ・おじさん・・・！」大きな声を上げていました。
　店にいらした方、全ての人の視線がわたしに突き刺さって来ます！
「おぉ、君かぁ！」おじさんもわたしを思い出していました。
　あまりに突然の再会！
　身体中の感覚が消えていきます。
　おじさんの見詰めた目だけが大きく広がって来るんです！
　頭の中が爆発してしまったようです！・様々な考えや思いが交錯して全てが断片となって渦巻いています。
　纏まった答えが出せません！
　幻じゃぁないわよね？・・・蜃気楼でもないわよね？・・・いま、おじさんが目の前にいるのよね？
　ただ、目頭がどんどん熱くなって、ワァ〜ッと涙が溢れてきました。
　話しをしていた人達の声が途絶えました。
　全ての人達の視線がわたしとおじさんに集中しているんです。
　総身から力が抜けていくんです！
　膝が崩れます。・・・おじさんの椅子の前に跪いてしまいました。
　目の前にはおじさんの膝。
　頭をおじさんの腿に委ねると、喉に込み上げるものがあるんです。
　いつの間にか・・・わたしは泣き出していました。・・・大きな泣き声を出して・。

　お芝居の主人公になっていました。わたしたち・・・。
　お店のお客さんは観客。・・・ドラマのクライマックスのシーンを固唾を呑んで見詰める・・・そんな雰囲気でした。

　BGMのピアニシモがハッキリ聞き取れるほどシーンとしたお店に、わたしのすすり泣きの声だけが・・・。
　泣く積もりなんてないのに・・・。

　急に恥ずかしくなりました。
　・・・３０過ぎの女が、壮年男性の膝で泣き崩れているんですよ。
　おじさんの手が背中を撫でてくれています・。
　・・・大分・落ち着きました。
　タイミング良く、マスターがわたしを立たせてくれます。
「・・・ここに膝間付かれると、お客さんが通れないんですよ。」
　いつの間にかおじさんの横の席が空けられているんです。
　両肩を掴んだマスターがその席へわたしを座らせました。
　おじさんは何も云いません。・・・わたしが落ち着くのを待っているようです。
　いま何かを云われたら、飛んでもない言葉が飛び出して行きそうですもの。
　わたしを分かってくれている。・・・１年以上も会えなかったのに・・・。
　こういうおじさんの優しさが好き！
「こいつにそんなに遇いたかったの？」口火を切ってくれたのはマスターでした。
　このマスターも素敵。
　物憂げで他人を突き放しそうな雰囲気だったのに、わたし達の雰囲気の全てを一瞬で読み取ってくれていました。
　たった一日のお付き合いで、一年のブランク・・・。
　・想いが募っても連絡できない思い・。
　恋い焦がれて偶然の再会を待ったわたし・・・。
　そんな雰囲気をわたしは出していたのかも知れません？
　それを読み解くマスターの優しい眼。
　その眼を見て、黙って頷きました。
「優しいんだね・。」おじさんの言葉が重なりました。
「・・・。」首を振って見たおじさんの目も悟った眼でした。
「レイです・。」おじさんへの始めの一言は名乗っていました。
「真咲です。」
「名刺・置いていったじゃない・・・。」
　真咲義美・・・何度読み返したか分からない名刺の名前。
　晴に付け、雨に付け、風が吹いても遇いたくなって握り締めた名刺・・・。
　わたしの身体に染み付いているわ！
　周りからの好奇に満ちた視線はまだ抜けません。

　恥ずかしさに居たたまれなくなりそうになったとき、マスターがコーヒーを差し出しました。
　白いデミタス。・・・白地に青だけの花柄のお皿。小さなメッキのスプーン。
　八分目のコーヒーが「大丈夫だよ、ここの人達はみんな優しいよ。」語り掛けた気がしました。
「こいつ、近頃は滅多に来ないからね。・・・運が良かったね。・奥の席空けようか？」　何とか話しの切っ掛けを作ってくれているのでしょう？
　おじさん素敵なお仲間に囲まれていたんだぁ！
「ここで良いよ。レイさんだって！・・・ここのマスター。」おじさんは恥ずかしくないのかしら？あんなに注目されたばかりなのに・・・。わたしをマスターに紹介し直したりして！
「野辺です。素敵な女性は大歓迎ですよ。」
「素晴らしいお店ですねぇ。わたし恥ずかしい。・あんなトコお見せして・・・。」
「こいつが持てるかねぇ？・あなたのような素敵な方に。」
「恥ずかしいわ。・・・ここのお客さん、みなさん素敵ですもの！」
「アッハッハッハッハ・・・・、お嬢さん持ち上げ過ぎだよぉ。」隣にいらしたスマートなおじさんが云いました。・・・また、わたしは店中の視線を受け止めざるを得ませんでした。
　でも、いまは好奇の目ではなく、温かい歓迎のような気がするんです。お店だけでなく、お客さん達まで素敵な優しさ・、六本木にこんな素敵なお店があったなんて知りませんでした。

「わたしもバイクに乗りたかったのよ！」先程、素敵！っと、思いましたご婦人も声を掛けて下さったのです。
「皮のツナギで素敵じゃない！・・・わたしじゃぁと詩だからツナギなんて気粉せないわぁ！」 始めからいらしたお客さん達が次々と声を掛けて下さるんです。
「そうそう、女性のバイク乗りって、それだけで素敵だもの！颯爽としていてさぁ。その女性がこんなに素敵だったら、男心はグラグラだよなぁ、真咲さん！」
「・・・・・。」おじさん大袈裟なゼスチャーで右手を拡げて顔を覆いました。
「ここの常連さんでしたの？」顔を覆ったおじさんにわたしは追い打ちを掛けました。
「昔はね・。いまはあまり来ない。って、マスターも云ってただろう？」ゆっくりと話し出したおじさんに、わたしはデミタスを口に付けすすりました。
　苦みが口腔の中に広がりました。・・・アッ・爽やか！・・・口だけでなく心まで清々しくなっていきそう・。
「美味しい・！」コーヒーを美味しいなんて感じたことがあったかしら？
　苦みだけじゃない！口腔の中に広がったコク・も。むかし、コーヒーの本を読んだときに書かれていた「爽やかさ」の意味がいま分かりました。
　熱く迄されてない口を付けやすい温度でサーブされたことも相まって、・味わえるんです！
　コーヒーにこれほどの思いが乗ったことなんてありませんでした。
　なんて素敵なコーヒー！・・・なんて素敵なお仲間・・・おじさんの生き方のチョット片隅が分かった気がします。
「マスター！・お褒めいただいてるよぉ。」おじさん、おどけた様子でマスターに云いました。
「素敵なコーヒーです。」わたしも偽りなく感動を伝えました。
「こんな素敵なところ、わたしもチョクチョク来ちゃおうかなぁ？」おじさんに会えただけで嬉しいのに、こんな素敵なところの常連さん達がわたしを受け入れてくださっている。浮かれ始めたわたしは悪戯心も止められなかったの。
「そうだっ！・おじさん、あの時の写真・見せてっ！」会いたかったおじさんに会えたら、あの時、少し恥ずかしいポーズさえ取ったのを思い出したんです！
「急に云われてもそんなに持ってないよ！」
「そんなにって事は幾つか持っているのね？・見せてっ。」わたしの云い方まるで十代の女の子！・・・なんか？おじさんといると、幾ら甘えても良いような気になるの。
　それを全部受け止めてくれる雰囲気を持っているからだわ。
「ちょっと待ってゝ・・・、車から取ってくる。」スッと立ち上がって表に出て行ったの。
　ホンの１〜２分かしら？戻ったおじさんの手には小さな紙袋が握られていました。

　袋から２０枚位の写真が出てきたんです。
「キャッ、エッチぃ！」ツナギのジッパーを下げて、胸の谷間が見える写真が１枚目でした！・・・髪の半分位と大写しの顔。顎の下に谷間がパックリと口を開いているんです。バックにはボケた富士山の稜線。良い顔したわたしがいました。
　悪戯心を出して、胸を開いたときの写真でした。
　・・・なんでこれが最初なの？
　２枚目は太陽を背にしたわたし。
　半身に構え視線は空へ・・・。ジッパーの開きが細く、バストが見えるはずのポーズですが影になって判別が付きがたい表現です。
　その割には斜めに構えている顔は明るさがあるんです。・・・フラッシュの効果ですね？
　そして背に太陽がある所為ですか？わたしの輪郭が光っているんです！
　バックから浮き出たようなわたし・。こんな撮り方・・・まるでスターじゃない！
　次々と捲る度に、見たことのないわたしが現れました。
　素敵！・・・おじさんこんな撮り方するンだぁ・・・。
　２０枚ほどの流れは、「酸いも甘いも乗り越えて、それでも人生を謳歌しようとする女性？？？」・・・殆ど完成された女性の見本みたいに撮られている感じでした。・・・わたし、こんなに高尚じゃないわ。

「わたしも拝見させて貰って良いですか？」またマスターが前に来ていました。おじさんを見たんですが、肩を竦めていました。・・・右手を開いて、わたしに差し出すように・。
　わたしに「決定権を渡した。」って、意味ね？
　マスターに向き直って、見終わった写真を手渡しました。
「・・・・・！・・・あなたセクシーですねぇ！・それに光り輝いている。真咲さん、また腕、上げたんじゃない？・レイさんの素敵な処を余さず捉えてますねぇ。」
「でも、恥ずかしいわ。・・・モデルさんにでもなった気にさせられていたんだもの。」
「レンズを向けた人は全てモデルだよ！・プロもアマも無くね。」と、おじさん。
　隣のおじさんも覗き込んで来て「素晴らしい写真じゃぁない！」って云ってくれました。
　今日初めてお会いしたハイソの方々に、チョットエロティックな写真をお見せするのは戸惑いがありましたが、流れでお見せしてしまいました。みなさんの写真を褒める言葉で、わたし自身が思っていたほどはエロティックなものではないと思えたのです。
　考えてみれば、男性だって凛々しい姿を良しとしているでしょう？凛々しさって、女性から見ればエロティックなモノの筈です。ここで写真をご覧になって下さった方々の受け取り方は、「わたしの良いところを捉えている！」と、見て下さったようです。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つづく