息子の担任に一目惚れされる美しい母親 ＹＯＫＯ 作
新学期、仲の良かった友人と離れ離れになった中山優太は不安になっていた。 　今日から５年生。高学年だ。 　そんな中で迎えた始業式では担任が伊藤弘樹先生と発表された。 　優太にとっては初めての男の担任ということもあり、また不安が強まった。 　それだけではなく、胸騒ぎがしたのだ。 　なぜかはわからないが母親のことが思い浮かんだ。 　そんなこともあり優太は宿題の日記にテーマを出されたのに聞き落としてしまった。 　家に帰り、母、真理子に担任が厳しいと噂の伊藤弘樹になったことを伝えた。 　その日、優太の胸騒ぎはおさまらなかった。 　翌日、日記を提出すると一人だけテーマ以外のことを書いてきたと早速、怒鳴られた。 　優太は先行き不安になった。 　弘樹は優太が落ちこぼれと聞いていたが予想以上の落ちこぼれと見損なっていた。親の顔が見てみたいと思った。きっとだらしない両親なのだろうと想像していた。 　ある日、弘樹はくしゃみをした。 　すると「くしゃみをするとき太陽を見ると綺麗なくしゃみが出る」と言った。 　優太はなぜかわからなかったがまた変な胸騒ぎがした。 　そして、いよいよ新学期最初の授業参観を迎えた。 　優太、弘樹、真理子、それぞれにとって運命が変わる人なるとは気づくわけがなかった。 　弘樹は母親たちを見回し、おばさんばかりとがっかりした。 　一人ぐらい美人な母親がいてもいいのにと思った。 　ホームルームを終えると目の前に一人の美女が現れた。 　一体、誰の母親だろうか？ 　弘樹は目を輝かせる。 「中山優太の母親です。こんにちは」 　あの落ちこぼれの？弘樹は驚きを隠せない。 　そして動揺しながらも慌てて「どうもどうもこんにちは」と挨拶を返す。 　一目惚れだ。こんな気持ちは初めてだった。 　弘樹には美しい妻がいた。 　しかし妻よりも魅力的だと感じてしまっていた。 　真理子は「今日の参観遅れてしまい申し訳ございませんでした」と謝罪する。 　弘樹は「いえいえ、わざわざご挨拶ありがとうございます」 　と鼻息が荒くなる。 　真理子は続けて「今日の懇談会、参加できません。申し訳ございません」と弘樹はがっかりしながらも「ご丁寧にありがとうございます」 「これからよろしくお願いします。」と真理子が挨拶すると弘樹は「こちらこそよろしくお願いします。」と会釈をした。 「あと優太くん、今日、宿題を忘れて来たので残します。一緒にお返しできなくて申し訳ございません。」と言う。 　真理子は「ご迷惑おかけします」と言うと「失礼します」と教室を出て行った。 　弘樹はその様子をニヤけながら見送った。 「ちゃんと宿題を終わらせて帰るんだぞ」と優太に言うと弘樹は嬉しそうに教室を出て行った。 　一方、優太は母と弘樹のやり取りを見て弘樹が母に一目惚れしたことに気づいていた。 　ようやく始業式からの胸騒ぎの理由に気づいていた。 　母のことが心配になった。母を守らなければと思った。 　しかし母を心配する優太の気持ちが弘樹を母に接近させることになるとは気づくわけがなかった。
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2015年4月4日掲載
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