鞭を執れ
はちみつ太郎 作
２３

「巡査長の協力も影響して、ここまで５組の相手が出来ました。延べでいくと８回。」

「複数回行っている者も？」

「えぇ、最初に接触したＭＡＤという独身男性と３回、牡男というスワッピングカップルと２回です。」

「その中での灰色は？」

「今のところ・・・ありません。」

「３ヶ月か、・・・管区局長の娘さんの居場所だけでも・・・特定できれば。」

「他にも、拉致された女性はいるんですよ。」

「あぁ、わかってるよ。・・・今後の接触はどうなっている。」

「今晩、もう一度ＭＡＤと・・・黒田巡査長を交えて・・・３人で。」

「そうか、でも、白なんだろ？」

「えぇ、恐らく、しかし、他人棒を餌にするには撒き餌も必要で。」

「ＭＡＤの動画か。」

「はい、アクセス数がＭＡＤの動画の後は、伸びが著しくて。」

「その中に、犯人がいる、そういうわけだな。」

「そうだと・・・いいんですが。」
　小池は、あずさの肩を揉みながら、パソコンのモニターを覗き込んだ。そこに映し出されているのは、ＭＡＤと小春の３回目の動画だった。

『温泉その６』　

　露店風呂つきの客室が、映されている。枕元にのみ行灯が光っている。一泊２万円後半くらいの客室では、敷かれたままの布団と、かき乱され掛け布団すらない敷布団の上に夫婦ではない男女が交わりを続けている。

　完全固定のカメラは、腰を振るものと振られるものを真中に捉え、聞こえにくい音声が見る者の想像力をかきたてていく。

「あぁ、あぁ、あぁ、あぁ、・・・賢さんっ・・・いいぃ・・・はっ、はっ・・・おくを・・・。」

「小春ちゃん、いいんだね、・・・奥を、どこの奥を？」

「お、お○んこの・・・奥っ。」

「ほら、ほら、・・・こうかいっ。」

「うん、うんっ・・・そ、そうしてぇぇぇ・・・もっと、おくぅぅぅぅぅ。」
　お互いを名前で呼び合い、上の口と下の口で会話を続けている。深く挿し、重なりを見せ付けるようにカメラの方をＭＡＤが見る。体の重なりの向きを変えると、薄暗い中でも出し入れがわかるようにした。

「ヌチャ・・ヌチュ・・ヌチャ・・ヌチュチュ。」
　餅つきの杵と臼、出入りのタイミングは何年も逢瀬を重ねた不倫関係のようにも見えている。小春の手がＭＡＤの尻にまわされ、もっと奥へといわんばかりに押し付けている。

「もっとかい？」

「うん、もっと・・・そ、そうぅぅ・・・そこっ。」

「ゴムないほうがいい？」

「いいけどぉぉ・・・今日は、ダメ・・・絶対だめぇぇぇ。」

「小春ちゃん・・・性欲万倍日かぁ。旦那さん知ってるの？」

「し、しらなぃぃ、生理の日、しらないからぁぁ。」

「赤ちゃん・・・欲しくないのかな？」

「赤ちゃんできたらぁぁ・・・こんなこと出来なく・・・なるぅぅぅからっ。」

「排卵日に貸し出しされるって、・・・どんな気分？」

「あぁ、あぁ、あぁ、・・・わからないぃぃ・・・けどぉ。」

「けど？」

「綱渡り・・してるみたい。」

「そうだね、僕が、ゴムの先・・・チョッキンしてたらって考えると、旦那さんは、いつも以上の興奮だろうね。」

「はぁ、はぁ、はぁ・・・うん、・・・もぉ、だめだよぉぉぉ・・・いぃ、いくぅぅぅ。」
　ＭＡＤの尻から手を離すと、首筋を抱きしめる小春。背筋を反らせると、３回程度、反射的な痙攣をし、大きく喘ぎをついた。

　ＭＡＤは、果てることなくそのまま小春を突き続け、ピストンを激しくすると１分後にゴム内で果てた。

　連続してアップされている動画を小池はクリックする。

『温泉その７』

　朝焼けが窓の奥を染めている。時間は恐らく朝の５時前頃だろう。両サイドの衝立のほかは、新緑の山と、鳥の目覚めのさえずりが聞こえている。

　丸い桶のような湯船に二人が浸かっている。寄り添うようにして後姿だけが映され、隣室を気にした小声の会話は、微かに聞き取れている程度だ。

「もう一泊したいね。」

「え、ここ、高そうですよ。」

「いやぁ、小春ちゃんと居られるなら、１月でもいい。」
　ＭＡＤは、そういうと肩口に手をまわし、唇に吸い付いた。右手は乳房をもみこみ、肩口回った左手は湯船の中に潜り込む。

　小春の指先が、ＭＡＤの陰茎の根元と先端に触れ、血流活動を促進すると、時間をおくことなく立ち上がり小春の眼前に仁王立ちする。

　咥えろと指示するでもなく、指先を根元に添える小春。先端だけを口に含むと、ＭＡＤの顔を上目で見つめる。そのまま、舌を廻しながら亀頭の周りだけを舐めまわす。

「あぁ、きもちぃぃ。」

「ペロッ・・・ジュボッ・・・ペロッ。」
　湯船のへりにＭＡＤが腰掛けると、湯の中で膝立ちになった小春が、乳房を揺らせながら陰茎をしゃぶっている。

「これも、朝立ちかな。」

「口に・・・出す？」
　少ししゃぶるのをやめた小春が、ＭＡＤの射精欲を問いただす。

「そうだ、・・・ここの温泉って、酸性湯なんだ。」

「酸性湯？」

「あぁ、温度も高めだし・・・生で・・・出ても、精子は生きられない。」

「え、・・・えぇぇぇ・・・ほんとに？」

「あぁ、ほんとだ。・・・ザブンッ。・・・入れてごらんよ。」
　ＭＡＤは再び湯船に浸かると、小春に跨るように言った。湯船の中の足を跨ぎ、ＭＡＤの腹と小春の腹をくっつけ、着水する。

　切っ先をＭＡＤが小春の小陰唇付近に探りを入れると、先端を掴んだ小春は、迷うことなくしゃがみこんだ。

「ヌルッ。」

　滑るように挿入されると、生での感覚が小春の膣襞をいっそう敏感にする。危険日であることと、湯の中の浮力を感じてか、率先した腰使いは出来ていない。

「ジャバッ・・・ジャバッ・・・ジャバッ。」
　波打つように湯船からこぼれる湯。とめどなく注がれているためか、湯量の減りは感じられない。ＭＡＤの首周りに手をまわし、薄くこぼれる喘ぎを唇に押し付け消している。

　隣の部屋からも、朝風呂を楽しむ声が聞こえ始める。恐らく昨晩の小春の喘ぎは聞こえていたであろう。それを察した小春は、ＭＡＤの唇を息継ぐように外す際、手のひらで口を押さえ漏れる喘ぎを閉じ込める。

「隣の・・・夫婦・・・聞いてたかな、昨日。」

「あ、あ、あぁ・・・い、じわるぅぅ・・・ゆっくり、・・・賢さん、ね、ゆっくりぃぃぃ。」

　湯の波立つ音で、小春の喘ぎを消そうと、湯の抵抗を感じながら膣襞を解していく。湯の温度と、その抵抗でＭＡＤの持続力は、数割増している。

　グラインドを少し止めたＭＡＤは、小春の張り詰めた乳房を揉み、片方の乳首に吸い付いた。舌先で転がされた小春は、一度、大きく声をあげてしまうと、隣の部屋の風呂の音は静まり、衝立の裏に人の気配を感じた。

「聞いてるよ・・・５０代の夫婦・・・今入ってるの、旦那だね。・・・チュゥゥゥゥ。」

「あひぃぃ。・・・ジャバババババ・・・あん、あぁん。」
　湯船を叩くようにするとその音で自分の漏れる喘ぎを消そうとしている。すればするほど、排卵で体の火照る小春の張った乳房を揉みこみ、突き上げを小刻みにさせた。

「あん・・あん・・・だめっ・・き、きこえちゃぅぅぅぅ・・・。」

「聞かせたいんだ、・・・小春ちゃんのエッチな声。」
　少し腰を浮かせ、湯船から接合部分が露出する。すると、抵抗感をなくしたＭＡＤの腰つきは、昨晩の布団の上と同じく激しく小春を跳ね上げた。

「あぁぁぁ・・・だ、だめぇぇ・・・きこえ・・・るぅぅぅからぁぁ。」

「聞いて欲しいくせに。・・・ほらぁ、ほらぁ。」
　突き上げに耐えられない小春は、ＭＡＤの鎖骨辺りに口を当て、漏れる声を遮断させる。ＭＡＤの腰振りが強くなると、湯船の波立ちは大きくなりすぎ、聞かせたい声も消えてしまっていた。

「だめだ、湯の音の方が大きいや。」

「はぁ、はぁ、はぁ、・・・いじわるですよぉぉ。」
　隣の声を気にしたまま、ピストン運動を繰り返すこと５分ほど、後背位や騎乗位を交互に楽しみながらＭＡＤの先端は、発射の準備を整える。

「あぁ、あぁ、・・・出すよ、出すよっ。」

「あぁ、あぁ、あぁ、・・・ほんとに、・・・出来ない？」

「見てたらわかる・・・あぁぁ・・・で、でるっ。」
　射精感はＭＡＤには感じられたが、小春には膣襞で感じ取ることは出来なかった。ＭＡＤも臆したか、射精と同時に膣道をすばやく抜け、湯の中に放出した量のほうが多かった。

「ほら、・・・みて、小春ちゃん。・・・僕の分身・・・もう死んでるよ。」

「あ、固まってる？」

「あぁ、・・・ね、大丈夫だろ。」

「う、うん。」
　小春はそういうと念のためか、ぽっかり開いた自らの膣道に指を潜らせ、中に残った精液をこそぎ出し湯の上に浮かぶ同士のように粘性と鞭毛運動を失わせようとしている。

　掬った固まりつつある精液を、湯船の外にほり出すところで動画は止まり、小池はあずさとの交わりを始めていた。
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2013年1月5日掲載
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