鞭を執れ はちみつ太郎 作
２２ 　２４時間営業のファミレスの三階までエレベーターでなく階段で上がる。オフィスビルというより雑居ビルに近い造りは、マッサージ専門地蔵の看板も違和感はない。 　階段の脇に矢印があり、その奥に看板を見つけた。小春はそこにいる。二人の男と性器と性器の会話をし、愛のない愛し合いを重ねていた。 　ドアの近辺まで近づくと、静まり返っているはずのドアの向こうで小春の嗚咽が聞こえていた。中の照明は消えているが、摩りガラスごしに人影は見える。 　ノックする勇気はそこにない。まだないといった方が正確か、時計を確認すると１１時５５分をまわったところだった。１２時に待ち合わせたことを言い訳に、ドアの前で聞き耳をたてる。 　嗚咽する声の他は、男の声は聞こえてこない。人影も小春一人のように見えないでもなかった。自慰をしていない限り一人きりということはありえない状況。 　黒田は、そうであって欲しかった。体をドアによりいっそう近づけると、その願いは砕かれる。男、それも５０代の声。 　あずさのイヤホンから聞かされた若い方ではなかった。話の内容までは聞こえないが、黒田を蔑んでいる会話ではないかと思いやんだ。 「あと、５分で・・・。」 　決意の表明をした黒田は、第一声をどうかけるか迷っている。投稿名で、話しかけるのがいいのか、クールに受け答えができるのか、迷いは尽きないでいる。 　膣内でディープキスをされるように膣肉を舐め上げられながらも、黒田との時間は気になり、舐め地蔵と同じく時計を見上げる。１１時５９分、ちょうどに迎えに来るとは限らないが、緊張の度合いは舐め地蔵の視界にもはいる。 「奥さーん、アナル窄ませすぎ。・・・もうすぐ、来るよ。白馬の王子。」 「あんっ・・あんっ、お尻は、・・・やめてぇ、お願いですゥゥゥ。」 「じゃぁ、今度、お店に来てよ。・・・その時、みっちりアナル調教してあげるから。」 「えぇ・・・いやですぅ。そこに、興味は・・・。」 「元カレに弄くられてたこと、言ってもいいんだね。」 「だめ、・・・あ、あ、あっ・・・あぁぁぁ・・・ないしょにぃぃぃ。」 「じゃぁ、約束だ。いいね。」 「は、はいぃぃ・・・あ、あ、あ、あ、あっ・・・は、くぅぅぅぅぅっ。」 　約束を取り付けると、再び大きく刺しいれられた舌は、根元の部分までが埋まっていた。舌の腹は、陰唇を押しやりむき出されたクリトリスに触れている。 「コンコンッ。」 　ドアはノックされ、黒田の到着を表した。小春は舐め地蔵が、舌を離し招き入れるものと思って、声を押し殺している。 「パンッ。」 　小春の尻を叩いた舐め地蔵は、横目で見つめる小春に黒田への返事を促がした。 「ど、どうぞっ・・・あひぃぃぃぃぃ、け、けいさんっ。はいってぇぇぇっ。」 「ガチャッ・・・こ、こんばんわ。・・・こ、小春。」 「ご、ごめんね、・・・ごめんね、こんな格好でっ・・・あぁぁ、あっ・・・あひぃぃぃ。」 「ビ、ビルド・・・さんは？」 「う、うん、帰ったよ、師匠さんが・・・あぁぁぁんっ・・・だ、だ、めぇぇぇぇ。」 　四つんばいの頭が崩れるように施術ベッドに埋まる。小春のお尻は再び浮き上がると、先程までまくられていたワンピースのスカートはおろされ、舐め地蔵の頭は見えなかった。 　暖簾をかいくぐるように、小春のスカートを巻き上げると、初対面の舐め地蔵が顔を上げた。口の周りには小春の淫液とも唾液とも判別できない物が顎の下まであった。 「どうも、はじめまして、「ブラックの嫁」さん・・・計さんでいいのかな？」 「は、はい。」 「ビルドを雇用しています、舐め地蔵と申します。・・・小春ちゃん、いや、奥さん。とても、キュートでチャーミングですね。」 「あ、ありがとうございます。」 「あぁぁ・・・と、とめてぇぇ・・・あ、あぁ・・はくぅぅぅぅぅっ。」 　舐め地蔵は会話しながらも、スカートで隠された部分でいたずらを続けている。膣内の潤滑液を指先に纏い、外肛門括約筋を解している。その姿は見えていないが、小春の喘ぎで黒田には理解されているのは折り込み済みだった。 「今日は、とてもいい時間をいただけた。小春ちゃん・・・そうだよねぇ。」 「あぁ、はいぃぃ・・・とても、良くして・・・あぁぁぁ、あひぃ。」 「そ、そうですか。・・・じゃ、じゃぁ、今日は遅いんで・・・帰ろうか、小春。」 　小春は、肛門への刺激を受けながらもあずさの命令に従っていた。夫婦が揃った時、ビルドもしくは舐め地蔵が豹変するのを注視した。 「け、けいさんっ・・・ごめんねっ、ごめんね。」 「小春は悪くない、俺が、・・・他人棒を・・・ごめん。もう、やめるか？」 「ううん、・・・き、気持ちよくされてっ・・・いい人たちだしぃぃぃ・・・今も、もう少しで・・ひぃぃぃぃぃぃ。」 　スカートの中に再び潜った舐め地蔵は、最後の力を振り絞り、舌をピストン運動させ、小春のＧスポットを揺らし続けた。 「いぃぃぃ・・・・・いく、いくぅぅぅぅ・・・・いっちゃ・・・うぅぅぅぅ。」 　舐め地蔵の舌攻めから解放を願い、黒田のズボンにしがみついた。ぺたりと胸をつき施術ベッドにうつ伏せると、舐め地蔵はスカートから抜け出して、顎下の飛沫をタオルで拭った。 「ごめんなさい、旦那さん。調子に乗りすぎました。」 「いえ、・・・小春も、気持ちよさそうだったので・・・では、この辺で失礼します。」 　抱きかかえるように小春を施術ベッドから降ろすと、レギンスと薄いブルーのショーツを黒田は受け取り、ドアを開ける。 　小春は、一瞬舐め地蔵を振り向くと、壁に貼られたポスターの電話番号を指差し、次のお越しをお待ちしますと言わんばかりにしていた。 　薄い会釈を返したが、舐め地蔵の理解力は、いい方に解釈しているだろう。スースーする下半身が気になるが、黒田にショーツを穿かせてと言う言葉さえ、小春は恥ずかしくて言い出せなかった。 　レガシーの助手席に座らされた小春は、物言わぬ黒田に声を掛けられぬまま、ショーツを穿くと、あずさへの報告をし始める。 　ビルドや他の影が見えないと知ると、拉致という二文字は黒田と小春からは消え、舐め地蔵とビルドは捜査対象から外れた。
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2012年12月29日掲載
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