鞭を執れ
はちみつ太郎 作
２５．


　おどけた男は、落ち着きをみせているボス格の男に仕事をせかされた。

　顎で指示を伝えられると、横たわる計を引きずり、ほぼフラットな上框をクリアした。

　脇を抱えられ廊下からリビングに消えた計をボス格の男が横目で追う。

　玄関のカギ、チェーンと施錠した後、廊下に力なく横たわる小春の顎をつかむ。

　肌触りの良い肌を撫で、口を少し広げ歯の黄ばみの無さに愛煙家ではないことを確認した。

　手持ちのスマホに小春の顔立、上半身のふくらみ、全身のシルエット、そして意識なく投げ出し、開け広げたスカートの中身をデータとして収めていた。

　送信の音が鳴ると、間もなく既読が表示される。

　返信のスタンプは、ＯＫのマークだけの簡素なものだった。

　小春をたやすく抱え上げ、計の行き着いた先のリビングへと向かう。計を座らせ、椅子の脚と背に手足を縛りつけていたおどけた男に、返信の内容を告げた。

「ＯＫだとよ。」

「当たり前でしょ。旦那の方は？」

「気にしてないだろ、ただのアリバイなんだからよ。」

　ボス格の男は、そのままＭＡＤのリビング繋がりの寝室へ小春を連れいく。ＭＡＤのダブルサイズのベッドに投げ出すと、スカートがめくれ、ＭＡＤ指示のワインレッドのショーツがかすかに見えた。

「身体は、小ぶりで女子高生みたいだが、やってることは、あばずれ以下だな。」

　計を縛り上げる男は、小春のショーツに興味を見せず、計の引き締まった尻肉と太ももを撫でさすり、股間に指を這わしている。

　同じような言い回しのセリフで、

「身体は、消防士か、格闘家か？やってることは、負け犬野郎だな。嫁ちゃん貸し出して、他人棒にま○こ舐められて、自分のち○こは、もういらないんだろうなぁぁ。」

　ベルトのバックルを緩め、ファスナーを下げ、見えたボクサーショーツの盛り上がりを指でなぞる。這った指の臭いをかぎ、ボス格の男に言う。

「３２０１さん、ブラックの嫁ちゃんだっけ？今日はどこまでの予定だったんですかね？」

「おぉ、ＭＡＤに聞いたらよ、旦那と別の部屋で喘ぎ声を聴かせる予定だってよ、風呂も一緒に入ってな、声だけ聞かせるって。」

「ほぉ、ほぉ、サイトの投稿動画よりは濃い内容だ事。」

「最後は、な、夫婦で風呂に入らせて、嫁ちゃんの汚れを落とさせるってさ。」

　呆れたように数字で呼ばれた男は、小春のスカートを捲りながら、内腿に手を這わす。

　小春に抱きつくようにした３２０１と呼ばれた男。背後から着衣のままＣカップと見込んだ乳房を揉む。

　そろそろ、回復しそうなタイミングと心得ていた３２０１は、小春の首に腕を回し、太ももで下半身をホールドすると、小春の吐く息のリズムを聞いた。

　目の開いた小春は、数分前の記憶を戻す前に現実を思い知った。身動きできぬ自身の体と、計の行方まで見渡せない強張り。大きな声はＭＡＤの存在を気にしてか、出さずにいた。

　小春の動きを目にしたおどけた男は計の股間から離れ、スマホの動画を再生前にした。

「こんばんは、ブラックの嫁ちゃん。びっくりしたよねぇ。」

　小春は、何も言えず、喉の奥へ唾液を流す。小春は、おどけた男の差し出したスマホを見て、そして男の言葉を待った。

「ＭＡＤさんからの指示でね、ブラックの嫁ちゃんと旦那さんを驚かす趣向なのよ。これ、動画メッセージ見てよ。」

　ＭＡＤの名前が出てようやく、強張りが３０％ほど解けた。

　羽交い絞めの男も、小春の力を受け止めるように絞めを緩める。

　小春の視線がスマホに注視したのを見て再生ボタンを押した。

　ＭＡＤは自宅のソファーに座り、何やら緊張気味に話し始める。

「や、やぁ、ごめんね、、、驚かせたみたいで。」

「今の状況、少し気になると思うけど、、、そこの二人は、、私の他人棒仲間の、、、、３２０１さんと、、、、３８、、、。」

「そう、３８０９さんなんだ。貸し借りがいろいろあってね、今日はこういう趣向で、進めようと思ってる。」

「ＮＴＲのＮＴＲ的な、感じで進めるよ。そうだね、二人の身元は僕が保証するよ。だめだったら、二人に言って、帰ってもらうことも可能だし。」

「返事を彼らのスマホから、送信してくれるかな？いい返事を待ってます。・・・。」

　少し視線を泳がせながら動画は終わった。小春は、返事を言えず、どうしていいか、困惑している。

　小春は計の返事も聞きたかった。それを口にできず計への視線を向けた。

「旦那さんの答えかい？少し意識が戻ったようだねぇ。」

　３８０９と呼ばれた男は、同じスマホを離れたとこに繋がれた計に見えるようにする。

　意識の戻った計は、小春の様子を伺った。ＭＡＤの趣向だろうと思い、暴れることはない。

「じゃ、旦那さんに判断してもらおう。」

　計は、身動きの取れない体で男のスマホ動画を目にする。画像は暗く、首に縄を掛けられたＭＡＤの様子がかすかに判別する、小春への動画の内容と違っていた。

「・・・、旦那さん、、、、ご、ごめんなさい、、、、こ、こんなことに、、、、、なるとは。」

「彼らに、、、決して逆らわない方が、、、、いい。お二人の命は、、、保証すると言ってる。、、、、言う事は、、、全て聞いてください。」

「ぼ、ぼくの、、、、命も、、、。」

　動画音声は、結末を言わず終えた。スマホをしまい、３８０９が羽交い絞めの小春の横を抜け、クロゼットの取っ手に手を添える。

　２０ｃｍほど開いた隙間。クロゼットパイプにぶら下がるＭＡＤの姿を見た計は、心臓の鼓動だけが早くなる。

　小春に旦那への返答を聞くよう促した、３２０１。

　少し頷くと、小さめの声で計に届いた。

「どうする？」

　計は、少し時間が開くが、首を縦に振るだけで、返事した。クロゼットの扉は閉じられると、３８０９は小春にスマホを宛がい、承諾の言葉を採った。

「ＭＡＤさん、計、、、あっ、旦那がＯＫなんで、、、。あ、はい。お願いします。」

　計の名を呼びかけ中断し、承諾の意を告げた。録音した音声データを送信すると、即座にＯＫマークと、３２０１の一人だけが相手し、計と３８０９が別室で待機することを文字のみで指示された。

　３２０１は、なんて返信があったか、小春に尋ねる。

「あ、うん、、えっと、、、３２０１　　さん？と、１回だけで、、、旦那は、別室で待ってるようにって、、、。」

「それで？」

「１回終わったら、また、音声で教えてって。言われました。」

「別室に旦那さんを移動するのは大変だな。」

「う、うん。解いてくれないんですか？」

　３８０９が、計に問いかけた。計は、考える間もなく、

「い、いや、、、このままで、、、うん、大丈夫。」

「らしいよ、、、音だけで満足のようだよ。」

　そういうと、すぐさま三枚引戸を閉じていく３８０９。引戸のポリカは、ベッドサイドの明かりのみの部屋を映している。

　小春の声で、シャワーを欲するが、ＭＡＤからシャワーなしのプレイを聞いていると小春は言われ、反論の余地なく、後ろから抱きしめられた腕に

　抵抗なく、体の力を３２０１に預けていった。

　重なるようにベッドへ倒れた小春のシルエット。その奥にある、ＭＡＤの吊られた体は、小春の陰部とは逆に冷たくなっていく。
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2020年8月2日掲載
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