はちみつ太郎 作
| １１ 小春の帰ったホテルの一室でＭＡＤは、タバコをふかしながら、回想し、動画をパソコンで編集している。その４までアップすると、「ブラックの嫁」あてにメールを送信した。 『その５』が投稿されるまでには時間が掛かりそうだった。「他人との相性」のＭＡＤの投稿コメントは、かなりの数で埋まり、それに起因してかブラックの嫁の欄にもコメントが殺到していた。 『ＭＡＤさま、この奥さんって、「ブラックの嫁」さんの奥さんですよねぇ。他人棒の動画を他人棒の持ち主が投稿するなんて・・・。羨ましすぎるんですが。』 『ＭＡＤさん、一回戦で終わりってことないですよね。あれだけの物を持ってらっしゃるんだったら、あの奥さん、いきまくりでしょ。離すわけないよ。・・・続きの動画、アゲ期待。』 『ずるいぃぃぃぃ。あんな、かわいい嫁ちゃんをぉぉぉ。』 『ＭＡＤさま。他人棒を咥えこんだ奥さまのご感想って・・・あっ、「ブラックの嫁」さんに聞いた方がいいんですかねぇ。それにしても、奥さん可愛すぎるし、モザイクの隙間から見えた顔だちが、ドストライクっす。』 『ＭＡＤ、許さんっ。』 『ブラックの嫁さま。奥さまの貸し出し動画、ＭＡＤさんのスレッドから見ました。顔モザイクなしの動画ってあるんですか？あったら、投稿もしくは、有償って・・・できたらいいなぁ。』 『ブラックの嫁さんへ、小柄な嫁ちゃんがＭＡＤさんに突かれ跳ね上がる姿に、やられました。あれだけの物をもっているＭＡＤさんにヤラレチャッテ、寝取られどころか、移籍しちゃったら・・・。そんなことないですよね、二人の仲は・・・神のみぞ知る？』 『その４以降が、あげられてないんですが？・・・もしかして、ハード過ぎてだせないとか？ブラックの嫁さんが止めてるとか？。その１から４までをループで見てます。つづき、ぜひっ。』 『ブラックの嫁さん。その４以降は、騎乗位、バック、そして正常位、最後にお掃除フェラ、こんなとこでしょうか。・・・編集手伝いますよ、マスターをくだされば。ここに、メールください。』 色々な文言を書かれたコメントは全てを見通すまで一時間を越えて掛かる。読み終えると他のコメントが、数件増えていた。 午後１９時に始まったＭＡＤと小春のたまさかの逢瀬は、都合三回の射精を終えたのが、午前０時を回った頃だった。 小春は、三度の射精を、挿入したままのゴムの中で二度、口内で一度、受け止めていた。ＭＡＤから泊まるよう進められたが、泊まってしまうと、浮気をしたような感じになると小春は言うと、タクシー代を渡され帰路についた。 何度も、連絡先を聞かれるが、はぐらかし、旦那のメールアドレス、実際はあずさの管理するアドレスだけを伝えた。もし、気が向いたらと、ＭＡＤの名前や、電話番号は控えることが出来た。運転免許証も見せられた。 黒か白、その判断はあずさに任せるとしたが、灰色でも黒でもない印象はあずさに伝えた。次の朝、７０９から出てきた、ＭＡＤをあずさは尾行する。 電車ではなく、駐車場から白の高級セダンにのったＭＡＤをあずさは追った。尾行はまかれることなく、小春の記憶した免許証の住所と合致した。 ニュータウンの一軒家で、恐らく独身であろう。洗濯物などの有無、庭の手入れ具合を見るとある程度わかった。 所轄に引き継いで、身元だけは調査させるつもりだったが、本部長は止めておけということは、なんとなくわかっている。 業務連絡を本部長の携帯に入れると、ＭＡＤの投稿動画を見ていたようで、判断は「白に近い灰色」と下された。 その理由はあずさにはうすうす感じていた。２,３度目に豹変することもありえると、だが、本部長の性的触覚に触れただけで、小春への陵辱具合を見たいだけであろうとあずさは口に出したかった。 ただ、それだけでなかった。警視監としての眼力は、旦那のいない場所での行為がそれを許さなかったとしたら、そこを見抜かれた。 確かに、４人中３人は、旦那とのラブホテルでの行為中に失踪している。その旦那の死因は、頚部圧迫などだ妻は容疑者とはされていないが重要参考人とされたままだからだった。 「白に近い灰色」の判断で、小春にはＭＡＤへの逢瀬を続ける旨の連絡をしなければならないあずさは、朝の８時を過ぎた頃、携帯に電話する。 「小春？・・・私、起きてる？」 「あ、おはようございます。・・・どうでした？」 「えぇ、本部長判断は、灰色ね。・・・継続捜査、参考人、西村賢。」 「はぁ、白じゃないんですね。」 「そうね、不服？」 「いえ、て、ことは、また、・・・。」 「そうなるわね、でも、少し時間を置く。」 「・・・。」 「どんな、具合だった？」 「大きくて、力強い・・・でも。」 「でも？」 「んー、やさしさは感じられた。でも、突かれてる時の言い回しが怖かった。」 「動画、撮ってたから演技とか？」 「んー、誇張してたって感じは、ありましたね。」 「他の相手、今までの相手に関しては、武勇伝的なこと、言ってなかった？」 「皆無です。聞くんですけど、はぐらかすというか、ありきたりな言葉で。」 「わかったわ、疲れてるでしょ・・・ゆっくり休みなさい。」 「はい、・・・じゃ、切ります。」 電話の後、少し寝た小春は、目が覚めると、ラフな部屋着に着替える。咽喉を潤したくて冷蔵庫を開けに行った。開けた冷蔵庫の中には、半分だけ食べ残した、アップルパイが残っていた。そこに、昨日の晩の小春の置手紙が挟まれている。 裏を見ると、 『アップルパイ、美味しかったよ。 半分残しておいたから、帰ったら食べてください。捜査、気をつけてね。 計 』 小春はそれをたたむと、ホッとして涙が零れてしまった。 |
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| 2012.11.26掲載 |
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