堕（おと）された完熟桃
極楽とんぼ 作
第１章 引っ越しの助っ人に隣の夫人

　３月２９日の日曜日、朝から俊英達は引っ越し荷物の搬入に汗を流していた。
　４月８日の水曜日が入学式なのだが、寮に入る予定を急に変更し、義姉の屋敷の一角に在る「離れ」を間借りすることになったからだ。
　和尚は、監視の効く義姉夫婦の許で、学生生活を送らせようと考えたらしい。

　急に決まった日程だが、荷物の運搬は、拳法道場の後輩２名と先輩の村田の３名が、引き受けてくれた。
　午前９時丁度に、道場の先輩と後輩が運転するトラックが付き、逞しい男４人で運び込んだから、搬入は１時間ほどで完了した。
　先輩と後輩の２名はトラックで姫路に引き返し、搬入した荷物の整理は、俊英と村田、それと義姉の瑠美さんの３人で行う予定だった。
　修行僧だったから、持ち物は簡素だったが、これまで学んできた分野の本と資料は多かった。
　仏教関係の教本と資料、中国医学関係の書籍、それにパソコン関係の本や資料が多く、勉強部屋の８畳間が狭く感じるほどの量だった。
　ベッドに付いては、村田先輩の意見を取り入れ、セミダブルの中古木製ベッドに決めていた。
　洗濯機や冷蔵庫等の家電製品、それと家具類は、交通事故で亡くなった老夫婦の物を使わして貰えた。

「先輩、セミダブルベッドには、意味が有るんですか？・・・俺、寝相は良い方ですから、大き過ぎる感じだけど・・・」
「俊さん、ずーっと、１人寝する心算か？・・・雨戸を締めたら、女がどんな金切り声を上げても、呻いても、此の部屋なら母屋に聞こえる心配は無いわ・・・ズッコン・ズッコン・突いても、軋まない丈夫なベッドじゃ・・・」
「いや・・其処までは頭が回りませんでした・・・」
「蒲団の下に敷くマットは、あまり厚いのは避け、適当なのを見繕っておいた・・・」
「柔らかいベッドでは、熟女の激しい反応を生かし切れませんもんね・・・」
　村田も俊英も、１８０センチ弱の身長と７５キロ程の偉丈夫だったから、柔らか過ぎるベッドは、濃厚で激しいオ○ンコには不向きだと知っていた。

「あらっ！・・殆ど搬入完了じゃないの！・・・大変だろうと、お隣の由美姉さんと手伝いに来たのに！・・・」
「義姉さん、道場の仲間３人が搬入してくれたから、搬入は簡単だったが、キチンと配置するのは、大変じゃわ！・・・細かい事は得意じゃろう？・・・頼むよ！・・・」
「力仕事が終わっているのなら、後の作業は女が得意だもんね！・・・」
　一見したところ、３５〜６歳の女性が、話に割り込んできた。
「そうだ！・・・紹介しないと・・・お隣の遠藤夫人・・・手伝ってくれると言うから、お願いしたの・・・」
　Ｎ○Ｋアナの杉○友紀に似たセクシーな熟女だったのと、今後の隣同士の付き合いも考えて、申し出を受けることにした。
　片付けや掃除をするつもりで来ていたようで、２人ともパンツスタイルだった。
　留美さんはセーターだったが、遠藤夫人は長い髪を巻き上げてクリップで止めていて、Ｔシャツにえんじ色のカーデガンを羽織っていた。
　スタイルは見ただけで分かるが、動く姿を見れば、身体の細部の特徴まで分かるいでたちだった。
　義姉さんも３２歳の色香を漂わせていたが、３８歳とか言う遠藤夫人は熟れ盛りで、殺風景だった部屋が急に華やかな雰囲気に変わった。

「じゃぁ、由美さんは２階の方を頼める？・・・１階は父や母の遺品も有るから、私と俊君とでする・・・終わったら、引っ越しそばを、堀炬燵で戴くからね！・・・」
「分かった！・・・じゃぁ、お勉強部屋のセッティングと、お布団を押し入れに入れるぐらいね・・・」
１階と２階の担当に別れ、男女がペアになり、引っ越し家財の整理が行われることになった。
　電気製品の殆どは、老夫婦の物が残っていたので、それを使わして貰うことになっていた。
　風呂場と台所の器具の操作を留美義姉さんに教えてもらった後、客間に運び込んだＰＣのパーツの整理に追われた。
　留美義姉さんは、居間の物入れの中や台所用品の点検に取り掛かっていた。

　一方２階では、女に対する対応を心得ている村田が、飛び入りの遠藤夫人と巧く分業をこなしながら作業を進めていた。
　重たい物は引き受け、配置の美的センス等は、夫人の意見を巧みに引き出していた。
「ねぇ、大きな本箱が３つも有るけど、３つも用意した意味がある訳？・・・」
「特別意味はないと思うけど、４種類の本が有ると思うから、ＰＣ関係の本と、大学の教科書関係とを１つに纏めて下さい・・・」
「じゃぁ、残りは、どんな種類の本なの？・・・」
「仏教関係の本や経文で１つは埋まると思う・・・残りの１つも、中国医学関係の本や資料で一杯になる冊数がある筈です・・・」
「工学部なのに、何で経文や中国医学の本が、そんなに多いのかしら？・・・」

　村田は、パソコンのインターネット回線の接続をしながら、夫人の質問に丁寧に答えていた。
「と言うと・・彼は、お坊さんの資格を持って居て、更に、経絡の治療・施術の資格を持ったプロと言う訳？・・・」
　この一連の会話で遠藤夫人は、俊英が和尚に拾われ、寺付属の拳法道場師範夫婦に育てられ、拳法と中国医学を仕込まれたことを知った。

「お宅も、パソコンの扱いに慣れているようだけど、彼のＰＣ関係の本も凄く多いわ！・・・難しそうで、専門書みたいのが多いし・・・」
「私はＹ電気の修理部門に居ます・・・彼もＰＣの知識と経験は、私と同じぐらいですよ・・・大学も、電子工学を選んだぐらいですから・・・」
「じゃぁ、今セットしているパソコンは、彼の自作って事？・・・メーカーのロゴが無いみたいだから・・・」
「かなり高性能な自作機です・・・部品の性能や耐久年数を知っているし、メーカー再生品を上手に使っているから、安く作っている筈です・・・これは、５万円程で上げています・・・」
「メーカー再生品って、何？・・・聞いたこと無いけど・・・」
「故障で返品されたのを、メーカーが修理した部品です・・・新品には該当しないので、安いんです・・・略、半値だと考えて良いです・・・保証も付いています・・・」

　簡単に作ると言うことや、金額の安さ、その事情などに驚いて、夫人は好奇心を掻きたてられていた。
　村田の巧みな誘導に乗ったのであろうが、主人から譲って貰っていたノートパソコンを落して壊したことや、小型のデスクトップタイプが欲しいと漏らしていた。
　ノートパソコンが直れば、それを息子に持たせ、自分は安いデスクトップＰＣを買おうか？と、考えていたのだ。
「壊れたパソコンを預からして貰えれば、直るかどうか？、修理代は幾らか？、１時間あれば診断できますよ・・・修理部在籍だから、安く上げる方法は幾らでも有りますので・・・」
「じゃぁ、後で持ってくるから、見て下さる？・・・」
　好奇心旺盛で明るい性格の遠藤夫人は、すっかり打ち解けて、飲み物の用意をしながら片づけに励んでいた。

「村田さん、此の紙袋の中身は何？・・・何処にしまったら良いのかしら？・・・」
　夫人が手で持ち上げたのは、村田が俊英に送ろうとしている入学祝の品だった。
「あ！・・それは・・俊さんへの入学祝なんです・・・」
　あからさまにコンドームだと言えば、気まずくなり、雰囲気が壊れかねない危険が有った。
「ねぇ・・何なのか、教えてよ！・・・私の息子だってＪリーグ傘下の寮で合宿生活だし、同室の友達に贈物する機会も増えると思うわ・・・相談された時の参考に、聞いて於きたいのよ！・・・」
「困ったなぁ！・・・でも・・まぁ、良いか？・・・」
　逡巡しながら、紙袋の中身を取り出して包装を解き、マンモスの絵柄が付いた１０ダースのコンドームの箱を夫人に手渡した。
“ＭＥＧＡ　ＢＩＧ　ＢＯＹ”と記された品物が何なのか？直ぐには分からなかったみたいだが、岡本理研ゴムの名前を見つけてコンドームだと気付いて慌てていた。

「これは、早くガールフレンドをつくれ！と言う激励のようなもので、僕も大学に進学した時に、道場の先輩から貰いました・・・門下生の儀礼みたいなものです・・・」
「姫路の拳法道場って、変な風習が有るのね！・・・入学したての彼には、岡山にガールフレンドが居ないには確かだし・・・」
　理屈をつけて納得した風を装っていたが、耳まで赤く染めて狼狽え気味だった。
「４０近い自分が、こんなことで狼狽えてどうするの！・・・」と、自分を叱咤している様子だった。
　適応する男根の直径のサイズを見ていたのは分かったから、頬を染めた理由も村田には掴めていた。
「下は略片付いたから、お蕎麦の用意をするわよ！・・・１０分以内には、降りて来てよ！・・・」
「ハーイ！村田さんは、直ぐに降ります！・・・私は少し拭き掃除が有るから・・・」
　夫人の陽気な声が発せられ、村田は先に降りるように促された。
　耳まで染めた顔を見られるのが恥ずかしく、興奮が鎮まるのを待とうとしたようだ。

「俊君、居間の堀炬燵で食べない？・・・４人だから丁度良いし、炬燵板の下に薄い布カバーを掛けるわ・・・」
「炬燵で食べるのは良いけど、布カバーは必要か？・・・」
「女性も居るんだから、気を使いなさい！・・・俊君は寒いの平気だけど、お客様は寒がりも居るのよ！・・・花冷えになっても、これで電気コタツを点ければ、絶対大丈夫！・・・」
　義姉さんの申し渡しは絶対だったから、素直に従ったが、四角い炬燵で向き合い、並んで食事すると、互いの親近感が一挙に高まる事を知った。
　隣の若い男に興味を持ったのか、遠藤夫人は開けっ広げな留美義姉さんに、色々と質問を投げ掛けていた。
　多少は脚色があったが、俊英の育ちや特技等を義姉さんが面白おかしく喋るものだから、話は弾んだ。

「遠藤さん、落して調子が悪くなったと言うノートパソコン、今持って来て呉れる？・・・チヨット見れば分かるから・・・」
　豪勢なエビのかき揚げを盛ったそばを平らげると、村田が遠藤夫人に声を掛けた。
「あらっ！・・どんぶりや鍋の片づけを、手伝わなくて良い？・・・」
「俊君が手伝ってくれるから大丈夫！・・・早く見てもらった方が良いわよ！・・・勝手口の傍の潜り戸から帰ったら早いじゃないの！・・・」
　留美義姉さんの勧めもあって、夫人は両家の共用塀の潜り戸からＰＣを取りに帰った。
【次】
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2017年1月28日掲載
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