奥様は接待秘書
浩一 作
自供する女　２

　事情聴取ののち、極悪人のように手錠に腰縄を打たれた姿で、留置場へと連行されたんです。やっと手錠腰縄が外されたのは、医療室での身体検査でした。

「ハイ、パンティ１枚の裸になる」
　医療室に居たのは、地獄の鬼さんを思わす赤ら顔をした年配の婦警さんでした。
　その見てる真ん前で、命じられるまま静々と脱衣かごに脱いだ衣類、と言ってもＴシャツにスキニージーンズだけですが。
　胸上から肩から背の刺青、それだけで注目の的。

「こいつかァ…初犯にしちゃ、かわいげのない女ね」
　と、年配の婦警は連行してきた婦警とだべり出す始末。

「そう、大事なお客さんだって、警務課長がさ。なに言ってんだか」
　二人して徹底的に無視するんです。

「ブラジャーも、取るんですよね」
　と、聞いたら、白く透ける下着の素材に蔑視の目。

「なにこの女、シャブ中の情婦のくせに？。最悪ぅ…！」
　ですよね、温泉浴場の脱衣場みたいと割り切っちゃおうと、エイやって。

「この、いつまでもボサって立ってない。次あっちだろ」
　と、小突かれ検査台へ。

「目立った身体的特徴、背から大腿部に掛けての刺青」だって。
　引かれるように身体測定。記録する婦警はジロジロと。

「股開いて見せるの。女って隠すとこ色々あるから」
　なるほどこれが身体検査ね。前からお尻まで、やな婦警にパンティをずらし見せてやります。

「留置番号２１番、これがここでの名前代わり、覚えときなさい。ファスナーの付いた衣類、ブラジャーは禁止、まあ自殺するようなタマじゃないだろうけど、これ差し入れ」

　誰が差し入れしてくれたのか、畳んでおいてあったジャージーの上下。このサイズからして男物だろうか、見たことのある草臥れたジャージーに着替えて留置場の檻の中。
　わずかな目隠しに樹脂板が貼られた鉄格子、居室と言う名のひとり部屋に入れられた。担当は半年あまりの教習を終えたばかりの若い婦警さん。

『１名様限りの特別サービスの一人部屋、なにか不足があれば言って下さいね』
　と、妙に明るく親切だったけど、島田警部さんが気を使ってあの女刑事に。そう言えば委細承知と返事してたっけ、そういうことか。

　留置場の居室って、最初は緊張したけどすることもなく、時計もなくて時間は知るよしもありません。睡眠以外は横になるのもダメと、壁にもたれ思うのは主人のこと、どうしたらいい。近ちゃんにも迷惑は掛けられないし。

　極限の心細さに、ガチャリと遙か境界の鉄扉が開く音、コンクリート床に響くんです。婦女子専用の留置場にコツコツと響くパンプスの靴音。カチャリと鍵が外れ鉄格子の扉が開きました。

「留置番号２１番、入浴が許可されたから風呂に入りなさい」
　留置所に移されてからそんなに時間は経ってはいません。週２回と聞いたけどラッキーなことに婦警監視の元ですが入浴許可をもらったんです。

「夕食は１８時からだからさっさと済ませてね」
　と、若い婦警さん。苦虫つぶした年配の婦警は、形ばかりに通路の向こうで見てるだけ。一人部屋の特別サービスって言ってたけど、留置中の女性客はわたしひとりみたい。

「大卒…？」
　と、同行する婦警さんに聞いてみた。

「いえ、短大です。今どき中途半端で良い就職先もなく、ポスターにあった女性警察官の募集に飛びついちゃて」
　年が近いという安心感か、檻の中の住人に真面目に答えてくれるなんて、性格の良い子です。

「二十歳か、若いわね」

「先月、２１になりました」

「そうなんだ。わたしもついこの間、２８になっちゃってね」
　と相づち。狭いお風呂、若い婦警さんは脱衣から入浴中も見ている。それも背中の刺青に相当興味があるようです。

「刺青って興味ある」

「目の前で見るの初めてなんです。肩から太ももまでなんて、女性でここまでの刺青って、なんて言うか凄い物だなって、花と龍ですよね」

「そう、昇り龍に牡丹の花、彫り師さんが一世一代と言った刺青なの」
　若くて性格の良い婦警さんに、よく見えるように背を向けて身体を洗ってあげた。刺青って、ほんわり温もった肌に一段と冴えて美しく見える。

　左肩下から肩甲骨に口を開けて噛み付かんばかりの龍の頭、ぼかした墨色の雲と、墨と紅色で縁取られた牡丹の花弁を背景に、右下の尻にかけての背一面に三本爪に身をうねらせ天に昇る龍の姿。
　白き柔肌に丹念に彫られた墨色の濃淡で描いた鱗に覆われた昇り龍だ。

「彫雅って方が彫られたんですね」
　銘に今まで気付いた人はいなかった。

「えっ、そう…！彫雅って銘に気付いたの、あなたが初めて」
　自信作の誇りからか、図柄に目立たぬようにと、薄墨の透かし彫りの雲に隠され、左細腰辺りに彫られた彫雅の銘。
　気付いてもらえたのがうれしくて、左側のお尻の丸っこい膨らみから、前太ももに連続する大輪の牡丹の花に舞う揚羽蝶、一連の彩りを、立て膝に上がり湯で見せてあげた。

　わたし、あの女刑事にはなじられたけど、彫雅の一世一代の彫物に、恥じないように生きなきゃなんないと決意を新たにしました。
　湯上がりに水気を拭き取った肌に巻いたバスタオルからあふれ出た、右の柔らかき乳房の膨らみから、右上腕肩に青墨のぼかしに緋牡丹の彫物、若き婦警は目を見開いて見入っていた。

「差し入れの下着とかあります？」
　畳むとあまりにも小さくて、透けた素材に下着だと気づかなかったみたいで、良く分かるように目の前でヒモＴに足を通して引き上げる。

「ねえ、女としてさあ。ヒモＴのお尻ってどう」
　振り返り後ろ姿も見せてあげた。香里奈が言ったパンティと呼べない代物か。若い婦警さんは刺青の背にヒモパンティのお尻を好奇な目でまだ見てる。

　顔は十人並み以下だが、体育会系なのだろうスタイルは良い。その内こんなセクシーな下着を着けて、一人前の女になるのだろうか。しばらくの無言。

「やっぱり婦警さんも女だから、下着には興味があるのよね」
　そうまた声をかけた。

「ちょっとショックです。こんなで性犯罪を助長して、自慢げにしている女性もいるんだと驚きました」

「性犯罪の助長…？」
　さすが体育会系の婦警のタマゴ。透けるヒモＴのパンティが許せなかったみたいで恐い顔、好印象も半減です。

「そうじゃないですか…！そんなエロパンティを男性が見たらどうするんですか？」

「すぐに襲って来るとでも言うの。男性って狼じゃないのよ」

「女としてのモラルの問題ですよ」

「じゃあ、刺青がきれいだと見惚れていたのは誰？。刺青が悪い訳じゃないし、決めつけるのは一緒じゃない」

「彫師の自信作として、きれいだからと人前で裸になって見せるんですか。女として人に見せられない物。してはいけないこと、それが自慢だなんてバカとしか思えなくて。光田緋紗子さんって昭和の遺物か、どっかおかしな希少種なんですよね。きっと」
　なにが遺物か希少種だ。警察って世間の常識が通用しない世界か。
　せっかく彫物に恥じないようにと思ったのに、あんな若い婦警に嘲笑されただなんて。バカ、ブス、ああ気分が悪い。

　ツンツンとした婦警に居室に戻され後、プラスチックの弁当箱、冷めたまずい夕食を３分１くらい食べました。

　その夜９時の就寝、硬いマット床に薄っぺらい毛布が二枚、ひとりの居住まいに睡ることなんかとても出来ませんでした。それでも気疲れからか、ウトウトとしていたんだと思います。

『…ダメ…ぇ…ダメ…ダメだって…』
　ダメだと叫ぼうとして声が出ません。
　あの女刑事から主人の手に手錠が掛けられた瞬間、わたしを見る主人の顔が、わたしを犯した村田の顔になって、悲鳴を上げようとして、ハッと気付くと消灯後の薄明かりでした。

　鉄格子の部屋の中、ウトウトと起きているのか寝ているのか、浅い眠りに見るのは悪夢ばかり。狭い個室の片側は鉄格子になった扉と壁、その向こうの通路に電灯の薄明かり。
　ジャージの緩めたファスナーから覗く肩先に淡く紅白の牡丹の刺青、背中に彫られた昇り龍。後悔はしたくないと思っても、主人にも見せられない彫物を背負った女。

『あなた、ごめんなさい。緋紗子はもう、元には戻れないんです』
　これが恥じない生き方、自分のバカさ加減もイヤになります。

　あの日、主人の古くからの友人だった村田清麿に犯された夜、大事ななにかをなくしたんだ。酔わされ睡眠薬を飲まされたなんて言い訳にもならない。
　なにが、翌朝目覚めたらベッドで村田が横に寝ていただ。散々弄ばれ気をやるほど逝かされて睡ってる女なんている分けない。
　それを信じてくれる主人なんて、バカ中のバカだ。

　帰国した主人にも話せなかったこと、ＳＭプレイのように腕と足を拘束され剃毛までされた。
　男を目の前にオシッコをする様を見せるなど変態行為、それも自宅のベッドで大人の玩具で弄ばれた挙げ句、拘束を解かれた状態に最後、求めるように犯されたなんて笑い話にもなりやしない。

　鉄格子に仕切られたわずかな空間。硬いマット床に寝付ける分けもなく、側に頼れる男のいないひとり寝に抑えきれない恐怖。自己嫌悪に忌まわしい記憶が白々と思い起こされるのです。

　こんなの許せないって抵抗は人一倍したつもりだったんです。でも現実は恐怖に村田のされるがまま、そうなったのだから合意の上と認めたということなんだろうな。
　朦朧と目覚めたとき、腕は縄で縛られ自由にならないし、縄でヒザを曲げた状態で固定され伸ばすことが出来ず、ベッドの上でＭ字開脚状態で転がされ、なにより体に力が入らなかった。

「緋紗ちゃん、目が覚めたかい」

「村田さん、なにこれ…！」

「なにこれって、縄手首枷と縄太腿枷って言うんだ。痛くないだろう」

「痛くないだろうって、やめてよ動くこと出来ないじゃない」

「そんなことない。縄枷だから少しは自由に動かせるはずだよ」
　確かに両手首の間はグルグル巻きの縄だから動くことは動くけど、こんなのない。

「ふざけないで、縄といてよ。お願いだから…」
　曲げたまま縄で固定されたヒザで動けば、のたうつ芋虫みたいです。

「ブフッ…！笑っちゃ失礼だよね。でも緋紗ちゃん、俺ってバカなんじゃないのかなって時々思うんだ。高校のときから浩一に成績では一度も勝てなかったし。今だってさ、先に緋紗ちゃんの服を睡らせてる間に、脱がしておけば良かったかなと思っちゃったりして、仕方ないからゴメンね」

　村田は手にした大きな黒カバンから裁ちバサミを取り出した。目に狂気を宿らせ、縄で拘束され逃げることも出来ない、わたしのスカートの裾からはさみを入れたんです。ジョキジョキリっと。手枷足枷、不自由な足と手で必死の抵抗をしたんです。

「キャァ…！」と悲鳴を上げようとしたら、手で口を押さえられたんです。主人にない凄い力に驚きました。

「ダメ…ェ、動かないでぇ…！ハサミ持ってんだから動くと肌を傷つけちゃうよ。恐がらなくてもいいんだよ緋紗ちゃん。なにも傷つけないからね。そうだ…！」
　村田はなにか思いついたようで、わたしの口を押さえながら、その黒カバンからボールにヒモのような物が付いたのを、取り出すのが見えたんです。

「ゴメンね緋紗ちゃん、やっぱし先に脱がせておけば良かったよね」
　手の代わりに素早くボールのような異物を口内に入れられ、皮のベルトで髪の後ろで留められたんです。

「ウオウ〜フォ〜フォ、緋紗ちゃ〜ん…！」
　言葉とも息とも分からぬ叫びに感嘆の声を上げる男。

「ボールギャグを咬ませた緋紗ちゃんって可愛い〜い！。さぞかし浩一のチンポを喰わえたときも口に頬張る、そんな顔してるのかな」

　そんな下卑たことを言い、しばらく村田は憑かれたように、わたしを見てるんです。

「緋紗ちゃんは、これから俺のお嫁さんになるんだ。だからね、約束出来るよね。さっきのように足をバタバタさせない？」

　恐怖に眼は見開いても、口にピンポン玉くらいのボール咬まされ大口を開けたままです。少し声は出るけどしゃべれない。なにより唾液が垂れっぱなしで、恥ずかしいくらい頬を伝うんです。外して下さいと、しゃべれない口と目でした哀願が村田に通じたのか。

「ねえ、大きな声は出さない。約束できるかな」
　これ以上変なことはされたくないと、首を縦に振ったんです。

　村田はボールギャグを外しながら話し出しました。

「先々週も金曜日さ、浩一にアメリカ留学を勧めに来た。あの夜のこと緋紗ちゃんもおぼえてるよね。酔いつぶれた振りしてリビングのソファーでさ。あのときから俺、緋紗ちゃんを助けてあげたいと思ったんだ」

「わたしを助ける？」

「そう、ナイティ１枚の緋紗ちゃんが床に落ちた毛布をさ、掛けてくれたんだよね。あのナイティさ、うっすら透けてノーブラだったよね」

「じゃ、あれワザと…！」

「違うさ！寝室から出てきた緋紗ちゃんが気になったんだ。トイレに起った理由はここでは言わない。ただ体を緋紗ちゃんに向けようとしたらずり落ちた」
　酔いつぶれて寝てるとばっかり、常夜灯の薄明かりといえナイティ１枚、軽率だった。

「俺、あわてちゃって、だってテーブルの上ににさ、コンクリートマイクが出しっぱなしだったからね」

「コンクリートマイク？」

「そうだよ。マンションの部屋の仕切りなど、プラスターボードが軽量材に直接貼り付けられてるんだ。コンクリートマイクなら素通しだよ。まあ緋紗ちゃんは気付かなかったけどね」

「じゃあ、村田さんは寝室を盗聴…？」

「フフッ…！浩一って哀れ、ホントにインポだったんだね。緋紗ちゃんが必死で口でさ。固くならないのにさァ、浩一ってさ射精ってするんだね」

「もう、村田さんってサイテーね…！」

「違う…！違うよ、俺は緋紗ちゃんを助けてあげたいだけだ。アイツから、あの浩一からね」
　手に持ったハサミを振り回し、わたしを助けるだなんて狂ってる。あの村田の目を見たときそう思いました。

「フフフフ…！あいつのさ、浩一の匂いの染みこんだすべてを葬り去るんだ。この部屋も家具も家財もすべて処分して、緋紗ちゃんは俺とやり直すんだ。だからさ着ている物、浩一の手垢の付いた衣類や下着は切り刻んであげるね」

　村田の豹変に恐怖さえ覚えたあのとき。下腹部の肌にあたる裁ちバサミ、金属の冷ややかさ。言われるままに逆らうことさえ出来なかった。ジョキリ、ジョキリとスカートからブラウスまで切り裂く村田の薄気味悪い顔。

「緋紗ちゃんのさあ、その大きなオッパイね。浩一だけがさわってたんだよね。Ｈカップだって、ブラジャーがはち切れそうだ。俺さあ、ずっとさわりたくてさ。ウフッあの夜さ、目の前にずっと、直ぐ近くにあったのにね」
　村田の手が乳房をわしづかむ。痛くても顔をしかめるしかありません。

「そうだよね。もうこれさぁ…俺のだよねェ…」
　村田の手にむしり下げられたブラから、豊満な真白い乳房が露わにされた。ワイヤーの入ったブラだから、ヒモのところをチョキリと切られ剥ぎ取られた。乳房が重みに反動にゆれ、へしゃげるように形を変えた。

「そうだよ、緋紗ちゃんが着る物いっぱい買ったんだ。俺の好みだけどシースルーや肌をいっぱい露出させる物なんだ。緋紗ちゃんに絶対似合うからね。後で着せてあげるから、もうこんなみすぼらしいパンティなんか穿いちゃダメだよ」
　ジョキリと音がしてゴムの力でパンティが弾けた。

「きれいだ緋紗ちゃん…！俺ぇ、この時をずっと待ちわびていたんだ。緋紗ちゃん、なにかの間違いだったんだよ。浩一と緋紗ちゃんが出会うなんてさ。俺が浩一を学園の教師に勧めただなんて、ほんの気まぐれだったんだ。本当は俺と緋紗ちゃんが出会って結婚してたはずだったんだ」
　下着の残片を取り除く手が、全裸にされた股間に伸びてきて、目が恐怖に見開いて唇が震えて、もう悲鳴さえ上げることが出来なかったんです。

「緋紗ちゃんの毛って、なんでこんなに濃いのに手入れしてないの。浩一か、ヤツがさせないんだな。あの野蛮人め」
　下の毛まで手入れするのが一般的だなんて知らなかったんです。こんなこと主人の所為にされたらと、首を横に振ったんです。

「ウフフッ、そうなんだ。じゃ緋紗ちゃんは、俺のために残しておいてくれたんだね。俺にオマ○コの毛を剃って欲しいってさァ」
　村田は指先に恥毛を摘まみ上げ、裁ちバサミでジョキリまたジョキリとあらかた刈り進め、あっという間。今度は不揃いの恥毛を肌に沿って刈り上げて行きます。

「ねえ緋紗ちゃん知ってる。ここのさ、毛を全部除毛するのがブラジリアンスタイルってんだよ。サンバを踊るときのハイレッグ衣装にも陰毛が見えないようにだってさ」
　横にした裁ちバサミの刃先がチョキチョキと、ポテリと膨れた大陰唇から恥丘へと登ってきます。

「緋紗ちゃん、言っとくけどアンダーヘアの除毛くらい常識だからね」
　婦人雑誌の広告に載ってはいたけど、常識だとは思いもしなかった。

「だからさ、ブラジリアンにした緋紗ちゃんならセクシーなヒモＴやＹバックパンティもきっと似合うよ。ハイレグカットのバニーガールだって、セクシーな透け透けのドレスを着てさ。アアァ…！もう最高だァ！」
　恥ずかしさ悔しさより、大声を上げた村田の狂気が恐かったんです。

　村田の手で縄で縛られた両脚を押し開らかれ、無残にも短く刈られた陰部のすべてを、眼前にさらしたんです。

「見てよこれ、アメリカじゃＶＩＯ脱毛が常識だってのに、浩一は女性の美にたいして何一つ分かっていないんだ。どうしたら緋紗ちゃんが魅力的な女性になるのかをね。待ってて」
　楽しげに風呂場から持ち出した楕円形の洗面ボウルに、持ってきた電気ポットからお湯を入れたんです。そして手には主人のカミソリまで。

　わずかのスキに逃げ出せる物ならと、縄を緩めようと手足を動かしていたんです。

　それを見透かされたのか、村田の目にまた一瞬の狂気が浮かんだんです。

「う〜ん、動いちゃダメだよ！。これからカミソリで剃るんだから。緋紗ちゃんは足を完全に動けなくする方がいいのかな。大事なところだから、傷つけちゃうの恐いよね！」
　言葉の端端に凄味を利かされ、逆らう意欲まで萎えてしまうんです。
　きっと手にした黒革のカバンから何が出て来るのか、恐怖に脅える顔をしてたんだと思います。

「ゴメン、緋紗ちゃんに拘束具なんて使うつもりもないのに、変なこと言って恐がらせちゃったね。浩一の使ってたこのカミソリ、最新式の五枚刃ってヤツなんだよね。だから大丈夫、安心して足を広げていいからね」
　今度はやさしげに語りかけてきたんです。その落差、異常者ような瞳の輝き。

　傷つけられるのが恐くて体をずらされベッドの端にやられても、村田の前で恥ずかしさを押し殺し、もうされるがままに思いっきり脚を広げてたんです。

「緋紗ちゃんのこれ以上ないくらい、きれいにしたげるね」
　乱雑に短くトラ刈りにされた恥毛に、指でシェービングジェルが塗り捏ねられ、恐怖に見下げた恥丘は白く泡に盛り上がってた。
　その上に村田の手で軽く湯で搾られたタオルが乗せられ、熱い感じが変に快くて。

「う〜ん丁度良く、毛先が柔らかくなってる」
　もう、されるがままでした。主人が使っていたＴ字カミソリの鋭い刃が音もなく、白い泡に混ざる黒い短い毛をジェルごとゴソリと取り去って行きます。

　またカミソリを洗う、洗面器に溜まる白い泡が広がり、お湯に黒い毛が浮かんでた。

　爛々と眼を妖しく輝かし、わたしの足と足の間にある村田の顔、小陰唇の襞を指で押さえられ、太ももの間から柔らかく盛り上がる大陰唇に剃り進むカミソリの動き。肌に触れるカミソリの刃の位置までが分かるんです。

「緋紗ちゃんゴメン、Ｏラインを、お尻の穴のところまで剃りたいから足を一度持ち上げるよね」
　中空に上げさせられた縄足を恐くて精一杯広げてた。
　そんな変な格好にジェルが塗られる。

「心配しなくていいよ。医療用のＫＹゼリーだからね」
　今度はカミソリの刃、指先の動きに思わず肉蕾に力が入りキュキュッと締まります。微妙な肌に当たるカミソリの刃が小刻みに蠢き動く。

　変に折り曲げられた肉体の負荷に、恐怖に忘れていた尿意が。

「ウフフフッ…！ヒクヒクと窄めなくって大丈夫だって、ハイ…！お尻の穴んとこきれいになったよ。フフフン、緋紗ちゃんてホントに毛が濃いんだね」
　機嫌よさそうに村田は鼻歌交じり。カミソリの刃がお尻から離れても恐怖の連続に逆らう気力はありませんでした。それより問題なのは尿意です。
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あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。
2015年11月21日掲載
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