奥様は接待秘書
浩一 作
刺青の女　４

　あのとき、東池袋のホテルでの殺人、由香利と宏樹が亡くなった事件を、新聞はスキャンダラスに若い男女の心中事件と報じるばかりで、殺人事件と報道するマスメディアなんてありませんでした。
　なのに清河は執拗に、玉川に殺されたと信じてたんです。

「ワシ、勝に殺されるんや。助けてくれ、まだ死にとうないんや…！」
　ひとりにすると被害妄想に、さらにシャブを打つ悪循環に、わたしを求めるんです。

「もう、ワシにゃもうお前しかおらへんねん。なあ緋紗子ォ…！」
　覚醒剤と自身が造る妄想、その緊迫感の中、日中から命を賭するような激しい性行為の連続でした。
　やがて力尽き睡り呆けるだけ、その頃から清河はもうほとんど覚醒剤に深く侵されていたのだと思います。

　永谷由梨名義での清河宛の送金が途絶え、しばらくして由香利と宏樹の名がスポーツ新聞の３面記事に乗り、２人が亡くなったのは間違いないことを知りました。
　家を出るとき持って出た５００万円ばかりの預金も底を突き、食を切り詰めても、シャブを買う金にも事欠く有様でした。

「働かな食われへんやて、緋紗子、お前、玉川に俺を売るつもりやろ。なんでシャブ買う金もないてウソ言うねん。金て、いっぱい持ってたやないか？」

「ひとの金まであてにして、あんなの、何時まであると思ってるのよ！」
　この男から逃げ出したい。主人の元へ戻りたいと、そのとき、初めて背中に刺青を刺れたことを後悔しました。

　もう風俗の仕事に励むしかありませんでした。清河に手を上げられ足げにされても、働かなければ生きていくことが、出来ませんでしたから。

　清河は外へと出ることもなくずっと我が身を隠匿する毎日、一人になるのが恐ろしく、また自分の女が本格的に風俗で、働く事がイヤでたまらなかったようです。

　遊び半分に六本木の店にいたときは午前１時に帰れたのです。それが池袋だと客が途切れるまでとか、近くの方が帰りが遅くなるなんて、アフターで朝帰りも度々ありました。
　その度にです。清河は自分が抱かせたくせに彫雅を嫉妬し疑うのです。

　疑いを持ったのは、彫雅が清河の身を心配し、電話してくれたからなんて馬鹿げてますよね。知らなかったら心配の電話も出来ないだろうって、わたしの朝帰りを疑うなんて、もう人間までひねくれてしまったんです。

　確かに彫雅との関係は続いていました。今ではこちらが生活費を援助してもらう立場です。会うときは早めに出てラブホテルで済ませた後の同伴出勤でした。
　朝帰りのわたしを疑うなんて見当違いもいいとこです。

「誰に抱かれてきた。客か彫雅かァ…！お前がワシを裏切っとるくらい知ってるわい。このメスブタが…彫雅の方がワシよりええんか…！」
　横面を張られ、体が吹っ飛んだ。壁に背中から体をぶつけ、ズルズルと床に崩れた。

「イヤ…ぁ…もうイヤぁ…！もうあんたなんか…」
　殴りたければ殴ればよいと、これで終わりと見上げるように睨みつけてやる。
　男ってどうしようもなくなると暴力的になる。弱さの裏返しだ。

　惨めな男、わたしに棄てられたらシャブさえ手に入らない。この男はそんなことまで計算している。

「緋紗子ォ…ワシが悪かった。すまん許してくれ…なっ…お願いや…！ワシを捨てんとってくれ。な、なあっ…！」
　何故、なんでこんな男と一緒に暮らしているんだろう。

　刺青を背負った身に客商売は大変です。ミニドレスを着ると、太ももの牡丹の刺青を隠すことが出来ません。ノンスリーブでは右肩の刺青が露わになります。

　どんなに気をつけても着替え中に見られたりで、女の子の流言にすぐに背中一面の刺青が知れ渡り、そういう世界を恐れる一般客は遠ざかり、店にいることが出来なくなる。
　そういうことが続きました。

　心配する彫雅の紹介で、歌舞伎町のキャバクラへ勤めを替えました。マネージャーから黒服さんも、みんな彫雅の伝手での知り合い。
　緋紗ちゃんと呼ばれてる間に、いつの間にか源氏名まで本名の緋紗子というありさま。偽りがあるとすれば２つほど鯖読みした年齢だけです。

　新宿はやさしい街です。地回りのヤクザ屋さんも、あのときの不動明王を背負った地回りの兄貴分の人が、彫雅の知り合いだからと、良くしてくれました。
　若い、ホントはわたしより若い２６歳、眉の濃いイラン人を思わす風貌で、名前は黒川貴大さんと言いました。

　最初の指名を頂いたときです。遠慮があって、袖のある長めのドレスを着ていました。

「緋紗子、刺青を恥ずかしいものと思ってんじゃないのか…？ここは新宿だぜ。彫雅に失礼じゃねえのか…！」
　諸事情を知っている。黒川さんに言われてハッと気がついたんです。何でもありの歌舞伎町です。

　それからはごく普通のキャバ嬢が着るような衣装にしました。店の女の子はみんな知ってたことだけど、それだけに大変です。
　ノンスリーブの細い肩紐から、紅白の肩の牡丹、背に掛けて龍の顔が見えてます。お客様の横に座る。超ミニの太ももからも紅牡丹に揚羽蝶です。

「ねえそれ本物…？」
　お酒の入ったお客様が、さわらない分けありませんよね。一気に指名が増えちゃいました。

　幹から枝、もうヘルプに着くとそれだけで話の種というか、ミニの裾を手繰り見せる有様、太ももなんて撫でらせ放題、際物ですね。
　なんといっても１番の変化は自称、芸能スカウトという連中からの声がかりが無くなり、ＡＶ関係が増えたことかな。そんなことを指名をくれた黒川に話してみる。

「そら、趣味が良くなった所為じゃないのか…？男は隠して女は見せるってな」
　と、笑っていた。

「背中を見せてみろ。オオッ…いいじゃねえか…！さすが彫雅だよな。緋紗子、透けてるヤツってないのか…？ない…？なら俺が買ってやろうか…！」
　黒川は超ご機嫌、お陰で着るキャバドレスはさらにエスカレート。

　本当に黒川って趣味が悪い。わたしも嫌いじゃないから、セクキャバ並のブラなしで背中からお尻まで見えそうなくらい大きく開いたドレスや、注文通りの腹から背に掛けてお尻まで見えるシースルーなドレスです。

　奥深いサイドスリットに太ももの牡丹の花が咲き乱れ、かえって和彫りの綺麗な刺青を見せつけることで、女の子仲間には笑われながら変態扱い。
　それが一見の客にも興味津々とそこそこ指名を受けるんですよね。

　どのお店でもそうですが、同伴アフターと時間外の拘束が多く、お客様相手のメールのやり取り、清河のような男を養う身には負担が大きすぎるんです。
　キャバクラ稼業を甘く見ている分けではないのですが、いい女が遠慮がちだとお高くとまっていると言われちゃって。

　この業界は指名が付き同伴出勤など、店を儲けさせる女が総てであり、アルバイト気分のＯＬさんやＪＤさんなど、長く続けられる分けでもなく、指名客が少ない、トラブルを呼ぶ女は自然と淘汰されるということです。

　慣れという物は恐いものです。裏の顔を忘れ、太客になっていた黒川の席に着くときに、ほんの一瞬、沈んだ表情を見せてしまったのです。

「どうした、えっ、浮かない顔してよ。困ったことがあったら、俺に相談しなって…」
　言われて、そう簡単に言えるはずもなく、言葉を濁し躊躇してると「話せ…！」って恐い顔され仕方なく。

「指名が少ないって、マネージャーから同伴アフターに精出せって…２５にもなった男持ちの女にゃ大変なのよね」
　と、愚痴混じりに話してしまった。

「なんだお前そんな歳なのか？。２５にゃ見えねえし、男持ちってのが許せねえが、まあ任せなって…」
　２５歳と、２ッも鯖読んだのにまだ若いって、うれしくなって、黒川につい甘えてしまったのが始まりでした。

　翌日から友人だとか世話になった者だとかが、本指名の太客となってくれ。黒川は客の少ない平日の宵に現れ、ドンペリなんか空けてくれます。
　あれよあれよという間に店のナンバーワンに、歌舞伎町のウィークリーでも５本の指に入ちゃいました。

「どうだ、順調か、良かったじゃないか、俺みたいなヤクザ者が近づくといけないと思ってな。これでも心配してたんだぞ」
　任侠物Ｖシネマの主役のようなカッコ良さです。

　現役のＪＤやＪＫ中退者まで、若いだけが取り得の女が欲に身を投じるこの世界です。あわよくば黒川に取り入ろうとする女ばかりに油断大敵。
　２５歳と鯖読みしても若いつもりがもう２８歳、誰も祝ってくれない誕生日を迎えたのがつい先日のことです。
　パトロン並の太客黒川を逃したくなく、好みに合わせて髪を金髪に染め濃いめのルージュを引いたのは、それなりの気持ちの表れだったのでしょうか。

「どうだ帰り、軽く寿司でも摘まんでいかねえか…？帰り、いつも食ってねえんだろう」
　案の定誘われてもまだ心は揺れていました。

「これ以上、お世話になってしまっては…」
　警察の取締りにみかじめ料さえままならぬ渡世の、ヤクザ相手に世話になり弱みを見せた女です。今さらアフターの付き合いを、渋る分けにはいきません。

「じゃ、アフターは決まりだ。オット…！予約入れるからキャンセルはなしだぜ」
　黒川はチィッチと指でわたしを制止し、断れなくしました。

　黒川のこと、ヤクザ者とどこか警戒していても、言葉巧みに扱われ、適度の酔いにその後を断ることが出来なくなります。

　新宿は夜の街、肩を抱かれ恋人どおしのような雰囲気に、客としての付き合いと念押して、ラブホテルに入ったのは午前２時前でした。

　黒川が選んだのもカガミの部屋、趣味の露悪さはわたし好みです。

　部屋に入るなり抱かれ濃厚なキスに我を忘れさせられ、女落としとウワサされるだけの手管です。
　慣れた手つきの指先が背中を這いファスナーを引き下げ、ワンピを脱がし、すぐに下着姿にさせられました。

「思ってた以上の良い肉体だ」
　カガミの中の、黒川の唇が肩口に緋牡丹の花弁に…。

「エヘ、背の龍が睨んでやがりゃ、さすが、彫雅が一世一代と言う分けだぜ。吸い付くような白い肌に見事な昇り龍だ」
　ブラの肩紐をずらせ、黒川の唇が首筋から耳元の生え際へと這い続ける。

「あっ、ダメぇ…！待って、お風呂に入らせて」

「いいのか、石鹸の匂いに、お前さんのヒモ野郎にバレちまうぜ」

「キャバで男の手垢が付いてるもの。じゃ、せめてシャワーだけでも」

「男の手垢か…なら、一緒に入るか」
　さっさと服を脱いだ全裸の胸割り五分の刺青は、あのときの不動明王でした。

　やっぱり凄い。さすが彫雅の刺青だと、全裸の男に見惚れる下着姿の女。カガミの世界に刺青の分身達が取り巻く。
　行為への期待とやはりヤクザ者だという恐れに、惚けたように立ち尽くすわたしです。

　黒川はなにも隠さない胸割りの下腹部を見せつけます。胸毛、ヘソから続く陰毛、半立ちにしては大きすぎる肉身が象の鼻のように垂れていました。

　固く成長した時の姿を想い、わたしは目をそらすことができません。

「フフッ…やっぱりだよな、背一面に墨を刺れるくらいだ。ただの女じゃねえと思ってたよ。なんだよ…！ジロジロと、俺に脱がして欲しくて待ってるのか」
　指先でブラのホックを外されすぐにパンティ１枚に…。

「いいねえ２５の女の色香ってよ、曲がり角を過ぎた年増女にしちゃ、小っちゃめな乳首だ。けっこう張りがあってデカくて、あんまり垂れもしねえもんだな」
　黒川は乳房を下から撫で上げ、ギュッと鷲づかみし弾力を確かめ、品定めするような目で舐め見します。

「大きくて形良いオッパイだ。手に吸い付きやがるぜ」
　と、撫で上がる。

「乳首がピンク色ってのはマ○コもさぞや良い色してんだろな」
　黒川は指で乳首をコロコロと転がせ、すぐにピンとつん立って、指に挟まれ握られ、手のひらで撫でられ揉まれ、またしつこくコロコロと…。

　乳房を弄る手のひらが背に回り腰を抱かれ、黒川が首を傾け、ぬめる唇が首筋から乳房の麓から乳輪のお鉢に掛けて這いずりまわる。
　チュブチュブブチュリと唾液に粘る音を立てて、乳首を吸われたときなんか全身に鳥肌がたち、腰が砕けそうで太い腕に裸身を預けるしかありませんでした。

「ああっ…つ…もうぉ…」
　オッパイだけで、こんなに気持ち良くされて、ああっ、もう…。

　そんな女がカガミの世界中に…。

「ヘヘッ…見ろよ、そんなスケスケのパンティなんぞ穿いて来るから、もうネトネトのビッチャビチャがバレバレじゃねえか」
　小さなクロッチの部分では吸いきれず、もう化繊のシースルーまでヌレヌレで愛液の洪水です。

「みっともねえよな、恥ずかしいくらい漏らすもんだ。ビチャビチャに濡らしたパンティくらい自分で脱ぎなよ。恥ずかしい女にゃ尻叩きだ」
　ペチンパチ、ピシャリンピシャと、大きな手のひらで尻をひっぱ叩かれ続け、叩かれた尻肉が紅くなる。それも気持ち良くって…。

「あ〜ん、もう恥ずかしいぃ…」

「淫汁を漏らしたパンティだ。脱いだからって恥ずかしくはねえだろ。ヘヘェ…どっちが客だか分からねえが、客として扱えって言ったのは緋紗子、お前なんだぜ…！」

「いた…っ」パーンと大きな音がするくらい尻を叩かれ、慌ててパンティを脱ぎました。

「いいか、俺たちゃ好き合う男女じゃねえんだ。アフターの続きでキャバの女が客の男と寝てやるだけの話だ」
　みるみる赤く大きな手の形が浮き上がってくる。

「ドＭさんなのか、ハマに居たって言ったから黒人さんの彼氏でもいたのか」

「もう、黒人ってなに言うのよ…！」
　黒人という言葉にドキリとします。

　日本人の中には黒人に抱かれた女を嫌がる人もけっこういたし、興味本位に聞き出そうという方も、接待秘書のときに多くおられましたから。黒川はどっちだろうと。

「やっと正気になりやがったか。俺のデカマラを見て興味も怖じ気づきもせず、垂涎となった女は初めてだよ」

「半立ちでそれなら３０センチ以上に成るんだよね」
　赤黒いカリの膨らみ、膨張したらさぞ凄いだろうと、こんなのを見せられるともうダメです。もうメロメロ…。すぐに抱きつき確かめるように握りしめた。

「やっぱりな、お前さんなら黒人さんとくらい、寝たことがあると思ってたよ」

「ああっ…もう、いけ好かない人…」
　抱き合いながらのヌルヌルのマ○コに指マン。親指でクリちゃんをコリコリされ、あふっ…っ…。

「あるんだろ。黒人とやったこと、言えよ、何人くらいにさせたんだ。言え…！」

「あん、もうぉ…させたのは、させたのはふたり、２人だけだよ」
　抱き合いながらの指マンに、もうメロメロ、ウソでもなんでも話してしまう。

「２人ねえ…意外と少ねえな。で、どんなふうにだ。エッ…！」

「ホテル、５ッ星の超高級ホテルのスイートで同時に２人で、朝まで…気が戻ってこないほど、やられっぱなしで…そのまま中で…」
　記憶の中で思う最高のエッチでした。

「朝までやられっぱなしって…！生出しの３Ｐをか…？すげえな。お前…」
　抱き合いながら、わたしは黒川の物を軽く握って扱いていました。だんだんと固くなって来る。手のひらの雁首の大きさが半端ではありません。

「これが欲しい。こんなのが欲しかった」
　と、黒川の耳元で囁きます。１２センチのヒールを履いてなければ届かない背の高さです。
　手の中で缶コーヒーような太さに成長し、プラムのような膨らみの先からは、透明な液が垂れ、握り動かす丸めた指を濡らして行く。

「アアッ、欲しけりゃくれてやらあ、どうせ何処の馬の骨か知らねえ男のだ」
　肩を抱かれてのバスルーム。シャワーを出しっぱなしに男の広い背を流す。

　黒川の図体がいくら大きくても、広い、広すぎる高級ラブホテルのガラス張りのバスルームです。体洗いは肌にボディソープで泡立てて抱き合いながら洗いました。
　たわし洗いは出来ないけど、黒川には３センチ辺の超可愛らしい三角ブラシは気に入ってもらったようです。

　シャワーに流し水滴に、湯気で曇ったカガミに映るのは刺青まみれの男女です。長いキッスに黒川の手指を順次壺洗い。太くてごつい指先が愛液に糸を引きます。
　わたしは黒川の股間に屈み右手を添え口にしました。大きすぎる膨らみを唇で締め、舌先で口に含んだ亀頭の下部を舐め、顔を前後に動かした。

　大きく固くなっても、プリっとしたカリの縁が柔らかい。

「緋紗子って、面白れえ女だよな。どっか生まれが良さそうで、男と暮らしてると言うほどの生活感がなくて、貧乏ってしたことねえだろ」
　黒川は特大の肉身を喰わえたままの、わたしの顎門を片手に持ち、眼下に見下げて語り掛ける。

　わたしは口いっぱいに、膨張しきった肉身を頬張りながら、黒川を見上げ目を合わせました。
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あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。
2015年12月30日掲載
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