奥様は接待秘書
浩一 作
刺青の女 ５

　逮捕されたその日の朝も、清河はシャブ打ち待ち受ける。黒川と同衾し、わずかな転た寝の疲れた身の空きっ腹に、残り少ない薬剤入りのドリンクを飲む。
　衣類を脱ぎすて、帰るなりからシャブマンのお相手でした。清河を断るすべはありません。断れば暴力です。

　もう日常となったキャバクラを引けた後からの黒川との情交。清河は知っていてもシャブ欲しさに認めるしかない我が身をまやかし、爛々と瞳を狂気に燦めかせ、わたしを責めるんです。

「誰とやってきたんや。黒川ちゅう若いヤクザ者か、彫雅に聞いて知っとるど…！どやった上手なんか…？言えっ…！言えや…どんな格好でやるんや…！」

「ああ…ああっ…いや…！ああ…あうっ…ううっ…やめて…！」

「なにが緋紗子のためや…！彫雅の野郎まで懐柔しやがって、言え…！言えんのか、言えんのは、若いヤクザのチンポがええからやな…おおきなチンポや言うやないか、言え…！」

「ああっ…ああ…いや…いやぁ…ああっ…カズさんごめん…ごめんなさいぃ…」
　わたしは責められながら淫靡に燃えていきます。

「黒川って言う…若いヤクザやてな。ええんか、大きなチンポがそんなにええんか…言え…言え…！」
　清河は時には強く、また緩く、わたしを責めます。

「ああっ…うっ…うううっ…つっ…ふ、太くて、大きなチンポぉ。貴大さんのおおきなチンポが…緋紗子のオ○ンコに…ああっ…動いてる。ああ…気持ちいいぃ…」
　この男が悦ぶように卑猥な言葉で応えます。

「そんなにヤクザ者チンポが、お前は気持ち良かったんか…？ええっ…！言え…！」

「ああっ…チンポ、太くて固い大きなチンポぉ…黒川さんのおおきなチンポが気持ちいいぃ…ああっ…貴大さん…！ああ、逝く…貴さん…逝くっ…ああっ、逝くう…！」
　淫猥な言葉に高ぶり逝き、絶頂に飛揚した。

　嫉妬に狂ったように、この男は気を戻そうと首を絞め、わたしを揺すります。

「言え…！ヤクザのチンポに虜になりましたちゅうてみ…！クソ…クソっつ…！」
　清河の最初は黒川をののしりながら…。シャブの力を借りた強烈な１発目。

「ああっ…いいぃ…！ああぅ…うっ…ああああっ…カズさぁん…！」

「アア、クソ…オッ…！逝け…逝けェ…！逝きさらせ…クソ…っ…！ウウッ…ウウ…ウウッ…」
　小刻みに身を震わせ、清河は何度かの射精を続けます。

「ああっ…カズさんいいよう…！カズさんのチンポ…ああ…いいぃ…チンポがいいよう」
　膣内を捏ねくり回され、またまた続く絶頂に、これだからこの男を棄てられないのか。

　そのときです。ベランダに靴音、目をやると大勢の男らがガラス戸の向こうから覗いていました。

「きゃぁ…やっ…！」目を合わしたわたしは悲鳴を上げました。

　それを合図かのようにガラス戸が割られ、表、玄関ドアが叩かれ、警察だ…！と言う声に、２階だというのに裏のベランダ側から何人かの刑事が飛び込んできました。

「てのが、それまでのいきさつ。もう良いでしょ、後は理恵の知ってとおりだから」

「もうちょっと、状況の整理ってか、逮捕時の清河のこと話してよ」

「清河のことって、刑事に逮捕されたときのこと」

「そう私さ、遅れて玄関口から入ったからさ、逮捕時の状況からすべて、正確に知っておきたいの。だから思い出してみて、私を含めてさ」

「そう、あのときさ、清河も言ってたけど、防犯上ベランダから絶対入れない構造になってたから、わたしも安心しきってた」

「まあ、絶対じゃないけど、普通の窃盗犯ならそこまでしないわね」

「でも、よおく考えりゃ、警察って最低よね。あんなときに踏み込んで来んだから」

「それが警察っての、よおく覚えときなさい」

「ふんだ、あんときの清河ったら、男のくせに悲鳴を上げてさ、突き飛ばすんだから」
　抱いていたわたしの上から飛び退き、清河は逃げるのに足をもつれさせたんです。
　あのときの清河ったら情けなくってありゃしない。

「ヒェ…ッ、なんで裏からや…！泥棒さえ入れんちゅうのに…よ…！」
　悲鳴を上げ逃げ惑い。すぐに何人もの警察官に押さえ込まれ、なんの状態かも分からぬまま、清河に手錠が掛けられました。

　バチバチとカメラのストロボが発光し、ドアチェーンが外されたのか、玄関側からも刑事さんや青い服に鑑識さんまでが部屋中入られました。

「ワシやない…！殺したんは、ワシやないちゅうねん…！玉川や…玉川の勝っや…！」
　逆手を取られ、床に押さえつけられてもジタバタと、この男は叫いていました。

「チャウ言うたら違うんや…！ワシやないちゅうてるねん。聞けやポリ公」
　何人もの刑事に羽交い締めされた清河は、手錠が嵌められた両手を祓うかのように動かしなじった。

「確保…！清河確保…！」
　Ｔシャツ一枚で胸を隠しうずくまるしかないわたしの側で、刑事は大きな声で怒鳴っていました。

「主任…！注射器、残存物から覚せい剤反応ありです」

「そう、ありがと」
　女性の声、こんな所に女刑事さんが？。と、ホッとしたのも覚えてる。

「１０月２７日午前１０時７分、覚醒剤使用の現行犯で逮捕します」
　押さえつけられた清河を前に、颯爽と見ると男に混ざっても遜色のない身長の、若い凜々しい女性でした。

　それが理恵だっただなんて最悪…！。

　全裸のままの手錠を掛けられ、観念したこの男は、最低限に側にあった衣服を着せられ、連行されて行きました。

　外に向いたガラス戸が無残にも割れていて、そこから見えるワンルームマンションのあの部屋から、警察の人がこの部屋を見ていました。

　覗きさんだからと、まさか警察に協力するなんて思いもしませんでした。

「光田緋紗子さんね。この注射器は清河が使用した物ですか…？」

「使っていません、わたしは使用していません」
　と言ったものの、現実にあの男は使用し、証拠の注射器は女刑事の手に。

「主任、女のバッグからこれが」
　姿見のカガミの前に置いたバッグから、清河に渡した残りの覚醒剤のパケが女刑事さんの手に。

「じゃ、これは何かな、説明してくれる」
　わたしのバッグからも未使用の覚醒剤のパケが取り出され、もう言うべき言葉もありませんでした。

「ねえ、黙ってないで何とか言ったらどう…！」
　小さなパケを指先に持ちわたしの顔の前にチラチラ、ホントに刑事さんの目って恐いくらいでしたから、話さない分けにはいかなくて…。

「覚醒剤です。でも、わたしのじゃありません」

「私のじゃないって、あなたのバッグから出てきた物よね…！あなたのバッグに、勝手に入ってたとでも言うつもりなの」

「いえ、清河にって、持ち帰りました」

「誰かから譲り受けたとでも言うの。言いなさい…！」
　黒川の名前なんて言えるはずがありません。只の売人じゃないんですから、目を反らすしかありませんでした。

「そう、黙秘権でも使うつもり。それなら覚醒剤の所持で逮捕して、手錠に腰縄付けてここから引き出してやろうか。外にはもう大勢の野次馬がいるよ。その格好でいいの。なにふて腐れてんのさ、なめんじゃないわよ！」
　主人に迷惑を掛けたくない。もうこれ以上主人に迷惑を掛けるわけにはいかないと、黙るしかないと。

「分かった、もういい…！調べるから。ちょっと手を見せてもらうね…足も構わないかな」
　強く手首を握られ女刑事さんは、手や足の静脈を確認して行きます。

「注射根はなさそうね。ああ…っ…！もうイヤ…！」
　女刑事さんの冷たい視線浴び、突然ポケットティッシュを渡されました。身体検査に萎縮したのか気がつくといつの間にか、陰部から清河の精液が垂れ出てシーツを濡らしていました。

「なんでよ、なんでよ私、こんなバカ女相手になにやってんだろ。一茂…！こっちを見るんじゃない…！」
　女刑事さんは顔を背け、若い男の刑事さんの視線を反らしてくれました。その間にポケットティッシュを広げ、垂れ出る精液を拭き取りました。

　目が飛び出るほどの恥ずかしさ。こんな格好ですから、刑事さんの中に女の人がいてくれて、まだ救われました。

「岸チョウさん、この女に何か着せて、任同…！」
　そのときに重荷から解放された安堵の気持ちと、漠然とした恐怖を覚えました。

　すべて言い訳なんですよね、現実に引き戻され、自分がなにをしてきたのかと…！。

「光田緋紗子さんやな。一緒に警察に来てもらうから、なんか着てくれるかな」
　わたしまで任意同行を求められ、震えが止まりません。

「何処を見てるの！。一茂は水廻りと天井裏の確認…！」

「ハーイ、主任っ、分かりましたつうの…」

　姿見横のローチェストから下着を取り出すわたしを目で追う、ジャガイモ顔の刑事さんは、女刑事さんの命令にしぶしぶ離れていきました。

　他の刑事さん達は部屋中を掻き回しています。鑑識の方はビニール袋に注射器、破れた使用済みのパケの小袋、証拠だからとゴミかごに捨てた拭き取ったばかりのティシュまで、手当たり次第に集めていました。

　パトカーの後部座席、両側を刑事さんに挟まれ、タクシーで帰った道を逆方向へ、池袋警察署までの僅かばかりの距離を、情けなくって可笑しくて泣きながら笑っていました。

　最初にされたのは覚せい剤使用の検査のための採尿でした。奥まったところにある女子トイレに連れて行かれ、紙コップを渡されました。

　トイレには背の高い、さっきの女刑事さんだけが残り、男の刑事たちはトイレの外へ出て行きました。警察署内でも女刑事さんは本庁主任と呼ばれ、刑事さんの態度から、普通の刑事さんより役職が上なんだと改めて思いました。

　個室に入ってドアを閉めようとしたときです。女刑事さんからです。

「ちゃんとオシッコを採ったかを確認しないといけないから、ドアを開けたままオシッコをしてよね」
　と言われました。

　女刑事さんはまだ若く、背も高く美人でモデルでも出来そうな人なのに、ワザと下品にしている気がして嫌な感じがしました。

　同性の女性にオシッコをしているところを見られるこの恥ずかしさ。女刑事さんの目を避けるように、あわてて穿いてきたローライズのスキニージーンズをパンティごとずり下げ、便座に座ろうとすると、静止させられました。

「緋紗子…！さん、悪いけどベルトとかヒモって禁止なの。外したげるからそこでジーパン脱いで、こっちへ放り投げてよ」
　ローライズのジーンズって屈むと大変なことになるから、普段からメタルの飾りベルトをしていました。でも脱げと言われても恥ずかしいじゃないですか。だってパンティが丸見えになるじゃないですか。

「あっ、はい。ベルトを外せばいいんですか」
　わたしが自分でベルトを外そうとすると、女刑事さんはツカツカと個室に足を踏み入れ、手で肩辺り突かれ便座に尻もちを付かされました。

「あのねェ…！ベルトって、凶器にも自殺の道具にもなるの。分かる。分かったら勝手な行動は取らないで…！」
　その勢いに、わたしはずり下げたジーンズを脱ごうとしましたが、極細スリムなのでサンダルに引っかかって上手く脱げません。

　その格好が可笑しかったみたいで女刑事さんは笑い転げてました。

「もう、バカ丸出し…いい歳こいた女のくせに子供みたい。先にサンダルくらい脱いだらどう」
　便座に座り直し、言われたとおりサンダルを脱いでからパンティだけをそのままに、ジーンズを脱ぎ、女刑事さんに渡しました。

　女刑事さんはパンティが何か気になるのか、ヒモに指を掛け軽く弾力を見ました。

「すぐ切れちゃいそうだから良いけど、これってパンティよね」

「はい、普通そうだと思いますけど…」
　女刑事さんはまだ不審げな顔でこっちを見ています。

「ねえ、素敵な格好だと、きっとそうなんだろうけど、そのパンティって穿いてる意味って、ある物なの…」
　同性の女刑事さんに、どう返事して良いか分かりませんでした。
　ずり下げヒザ辺りに引っかかったままのＴバックのヒモパンティ。
　白って意外と透けるんですよね。

　警察に踏み込まれたとき、笑われるかも知れませんが、清河と性行為の真っ最中だったんです。わたしまで任意同行ということで、あわてていたから数少ない白いのを取ったからです。
　刑事さんの前で赤や黒などの色物はダメかと、そのとき一瞬思ったんですよね。

「他に金属類は持ち込んでないわよね。便座に手を付いてお尻をこっちに向けて…！」
　女性相手に後背位の格好を取るのは屈辱以外の何者でもありませんでした。

　女刑事さんはＴシャツをブラの上まで捲り上げ、ホックからヒモの留め金までチェックし、なにを思ったのかブラの上から乳房を触りました。

「なんて大きな乳房なの、これじゃ肩こらない」

「ええ、高校生のときから、９０センチを越えてましたから…」

「そうね、あん時から確かにデカ…っ〜いと、大変だよねェ」

　女刑事さんは詰まらせた言葉を飲み込み、しげしげと背中の刺青を舐め見し、指先で触れ擦ります。

「まあ、辰年の年賀状にも使えそうな、お綺麗な龍の落書きですこと、とても善良な市民だと思えませんわね」
　指先はそのまま龍の胴身たどるのか、お尻のところで止まりました。

「ねえ、あんた、若い子ならともかく２８になった女がさ、どうしてこんなの刺れる気になったの」

「刑事さんは、和彫りの刺青って、綺麗だと思いませんか…？」

「思わない思わない…！こんなのヤクザか、どうしようもない男がするもんでしょ」

「わたしって、どうしようもない人間ですか」

「そうよ、あんたなんてどうしようもない女よ…！もっと股、開いてみて」

　もう、逆らえないのが分かっていましたから脚を開きました。女刑事さんの指が後ろから微妙な辺りまで探ります。

「へへぇ…なにあんたこれ、やっぱしこの周り毛、剃ってんだ…！ホント、あんたって変態よね。それにしてもツルツル、毛根もないのか…？」
　女刑事に上から目線で言われました。永久脱毛したとは恐ろしくて言えません。

「ねえ、剃ってるのって、男にそうしろと言われたとか。まさか流行のファッションてことは無いわよね」
　ここで南野一族の名前を出して良いか、どう返事したらと迷いました。

「刑事さんはわたしが接待秘書だったこと知っておられるのですよね」

「まあね。調べるのが仕事だから」

「だったら分かってもらえるでしょ。ハイジニーナ脱毛って陰部を清潔に保つためです」

「怪しい、あんた何か隠してる。ま、いいか、後で徹底的に聞き出してやるから」

　それで解放され、便座に座りオシッコをしようとしたけれど、鬼のような形相の女刑事さんを目の前にして出るわけなどありません。時間が経つばかりです。

「あんたって、ホントォ…！非ィ、協力的よねえ…！」

　帰りっぱな、汗だくの性行為を１時間近くに渡って続けた身に、警察に連行された緊張感で、オシッコなんか出ませんでした。

「小娘じゃあるまいし、元接待秘書って超高級の娼婦さんなら、見られたって平気でしょうに…もう…！」
　女刑事さんに上からアゴを押さえられ、警察って恐いところだと思い知らされました。女刑事さんの叱責、バカにしたような口利きに、下腹部におもいっきり力を入れたら、やっとの事で、チョロチョロと紙コップに１センチくらいのオシッコが出ました。

「これしか出なかったんですけど」
　と、小さな声で言い、女刑事さんにと紙コップを見せました。

「ちょっと少ないわねぇ大丈夫かしら、谷口君ちょっと…」
　女の刑事さんは外で待っている男の刑事さんを呼びました。

　男の刑事達がドヤドヤとトイレに入ってきて、女刑事さんに軽く頭を下げ虚礼します。わたしはあわてて恥毛が隠れる程度しかないヒモパンティを引き上げ、個室のドアに半隠れするようなポーズで立ちました。それが余計に気を引いたのか、刑事さんたちの目線は１点に集中です。

「警部補殿、谷口はまだ…ちょっと遅れるようなんで…」
　話されたのは、岸チョウさんと言う、清河の逮捕時に素っ裸のわたしに何かと気を使っていただいた中年の刑事さんでした。

「それで岸チョウさんが、マルＢ相手の連中まで引き連れて、なんなのよ…」
　女刑事さんが並み居る無頼の刑事さんを睨みつけます。

「いや〜、さっきから聞いとりますと、マル対に手こずっているようなので、組対の強者と主任のお手伝いにと…」

「お〜い、谷口君、本庁の主任さんが急ぎだってお呼びだぞ…」
　その刑事さんは誰もいない女子トイレの外に向かって言い放ちます。

　それが可笑しくて…。

　恐い女刑事さんといる緊張の連続でしたから気も萎えます。多数の刑事さんに見られてる安心感というのか、個室のドアから離れ、岸チョウさんに寄り添うようにして御礼を言いました。

「おねえさん、きれいなモンモンさんやねェ」
　横に立つ、強面のヤクザと見紛う方が、尻から太ももの牡丹を褒めてくれました。

「僕ら、仕事柄よう見慣れとるんやが、ウン、確かに綺麗や。よっぽど腕の良い彫り師さんの仕事やね」
　あんな威喝い男の方が、僕らだって、なんだかうれしくなります。

「白いモチモチっとした肌じゃな。フムフムなるほど、尻から太ももの牡丹を見せよるためん、Ｔバックのヒモパンティを穿いちょるんか…？」
　振り返り見ると６０くらいの、もうおじいさんと呼んでもおかしくない方でした。

「察庁のお偉いさんが言うたとおり、お嬢んさんは確かに綺麗じゃ…！。この彫物を上まで、もう少し全体を見せてもらえんかな」
　わたしは女刑事さんに貶された刺青が称賛されたのがうれしくて、前屈みにＴシャツを捲り上げました。

「ちょっと待ちなさい…！あなたそれ、被疑者に対するセクハラよ…！所属を言いなさい…！」
　女刑事さんは分けもなくカンカンになっています。

「課長…！ダメですよ。本庁主任はこれでも女性ですよ」
　面白いですね。男性に囲まれ少し余裕のできたのか、課長と聞いて女刑事さんの顔がこわばるのが分かりました。

「川上警部補、申し訳ない。警備のキャリ坊が言った通り、このお嬢んさんの尻が、余りにも素敵んじゃったもんでの」
　女刑事さんの顔があきれかえっていました。

　後ろになった刑事さんには申し訳なかったですが、前屈みにＴシャツを引き上げたとき、ゆるんだヒモにお尻の肉蕾ちゃんまでが少し見えたみたいです。

「ワオッ…」と、小さな歓声が上がり、ヒモパンティで喜んでもらえるなんて、わたしを抱いた警察庁の課長だった近ちゃんも、警察署の課長さんも同じスケベな警察官だと心落ち着きました。

　Ｔシャツを手繰り上げたまま、周りの方にも背の刺青を見せました。

「シャツを下ろしなさいぃ…！あんたまで、サツカンに媚び売ってどうするの、この…！緋紗子ってホントどうしようもない変態よね…！」
　女刑事さんはプリプリと怒り、ジーンズのベルトを引き抜こうとされていますが、凹凸のある飾りベルトだから焦ると上手く抜けません。

　刑事さんたちには透け透けパンティで、白く透けた小さな三角に手入れした恥毛や、マンスジまで丸見えな情けない格好ですが、ジーンズはまだ女刑事さんから返してもらっていませんから仕方ありませんでした。

「オウ、谷口君か」

「岸チョウさん、ばっかりいい目すね…！」
　そう言いながら谷口と呼ばれる方が入ってきました。

「谷口君…！いい加減にしなさい。警察官でしょ…！見世物じゃないんだからね」

「川上警部補、本部入りとはいえ、これでも所轄の生活安全課の刑事ですよ」

「だからって…！こんなときに仲間意識って、どうなのよ…？」
　まだベルトと格闘中ながら、怒鳴る女刑事さんに、谷口と呼ばれたその刑事さんから、半透明の蓋がついているプラスチック容器を渡されました。

「警部補、ちょっとくらい美形のマル対を、拝ませてくれてもいいじゃないすか」

「そうですよ本庁の主任さん、スッピンでも絶世の美女だって、もう署内のウワサですぜ」
　こんな立場でも美女とか言われるとうれしくなります。つい職業意識が出て刑事さん達に微笑んでしまいました。

「フン、あんたって、所轄のゴリラのような男にまで」
　女刑事さんが、目の敵のようにわたしを睨みつけ、ジーンズを投げ返してくれましたが、勢い受け損なって落としてしまいました。固まるわたしに、ゴリラのような刑事さんが、落ちたジーンズを拾い、手渡してくれました。

「気に入らない女だからって、いじめダメ絶対ってね。本庁の女主任殿って、僕ら組対よりマル対に恐がられてるじゃないすかね」
　女刑事さんは怒りの余りか、無言で個室に放置していた紙コップを持ち出し。

「谷口君、この量で大丈夫か…少ないか確認して…！」
　紙コップのオシッコが少ないとを、女刑事さんが谷口刑事に冷たく言います。

「ああ本庁主任殿、なんとかオッケイです」
　谷口刑事は紙コップの中を見て、わたしに目をやり大丈夫ですと言いました。そのときは鬼のような女刑事さんに、もう怒られなくてすむと心から安堵しました。

「午後から事情聴取だからね…！谷口君あとは頼んだわよ…！」
　女刑事さんはプラスチックの容器を渡し、プリプリと怒って出て行かれました。

「あれで、僕より２つも下っていうんだかんな。２８で終わってるよな」
　えっ、あの女刑事さんが２８歳だって。わたしと同じ年齢で年上の刑事さんを怒鳴りつけ、命令するなんて信じられませんでした。

　わたしはやっと恐い女刑事さんの目を逃れ、大勢の警察官の前でスリムの穿きにくいジーンズを、これ以上大変なことはないという風に、やっとの事で着用することが出来ました。

　刑事さんに取り囲まれながら、指示通り紙コップの尿をプラスチック容器に入れ替え、プラスチック容器のフタを閉めました。

「じゃ、写真を写すからそこに立って…」
　谷口刑事さんにその場に立たされ、尿の入ったプラスチック容器を、持たされた姿をカメラで撮影され、プラスチック容器に名前を書かされました。

「大丈夫だよ、俺、写真撮るの上手いから。この後、午後から事情聴取だけど、本庁の主任から目の敵にされちゃったみたいだから大変だね」

　午後から事情聴取か、それより警察の写真って人相の悪いのばっかしだし、Ｖサインやピース顔が出来ず、どんな顔で写っているやら凄く不安で気になりました。

「フ〜ン、私がカツ丼買いに行ってる間に、所轄の刑事といい気な物よね。ねえ、おひさ…！私さ、あんたが言うような意地悪をいつしたァ…？脚色なんかすんじゃないわよ！」
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あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。
2016年1月9日掲載
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