俊介の欲望の炎は激しく燃え上がっている。いまさら、炎を小さくすることはできない。熱くなったものを冷やすためには欲望の証を放つしかない。
　これ以上じらされると気が変になりそうだ。
　上半身を起こし、再び、季子の手首をつかんでいきりたつ陰茎へと擦りつけた。
「はぁっ……はぁ……はあっ……もう、限界だよ」
　俊介は獲物を狙う餓えた狼のような荒い呼吸の中から絞りだすような声をだした。
「こわいよ……」
　季子は狼に狙われた子兎のこどく怯えた顔をした。
　俊介は、そんな季子の様子を察し、昂ぶる情欲を必死に抑えようと、目を強く閉じて大きく深呼吸した。
「ふぅぅ！　ごめん、怖がらせちゃって……俺、そんなに怖い顔してたかな？」
「……」
　季子は無言で頷いた。
「ほんとに、ごめんな……でも……もう、これ以上は我慢できないよ」
　俊介は意識しながら優しく言って、季子の手を解放した。そして、自ら腰を上げブリーフを脱いだ。
　やっと、表に出た怒り狂う陰茎は、俊介の意思に関係なく太い血管を浮き上がらせ竿全体をビクッビクンと揺らしている。また、赤黒い亀頭全体は滲み出たカウパー支線液で覆われていた。
「そんなに、怒らないで……」
　俊介に向かって言ったのか？　陰茎に向かってなのか？　季子は優しく囁き、細い指を陰茎に絡めてきた。
「うっ」
　ひんやりとした感触に、思わず声が出る。
「ごめん、わたしも悪かった……でも、俊介が悪いんだよ。ずっと焦らすから……だから、わたしも悪戯したの……」
　怯えた顔が妖艶な女のものへ再び変わった。不思議な女だ。怯えた時の顔は絶対に守ってあげなければならないと男を決心させるもの。今の顔はこの女を抱けるなら、土下座さえしてもいい思うほどに男を身震いさせるもの。
　季子は視線を反らすことなく唇を歪め妖しく微笑んで陰茎に添えた手を上下に動かしだした。
「ごめん、そんなつもりはなかったんだ。だだ、季子を喜ばせっ、うっ」
　陰茎を扱く手の心地良さに言葉を失う。亀頭を濡らすカウパー液が季子の手と陰茎の間に滑り込んで潤滑油の役割を果たす。滑らかな手の動きにあわせ、クチャクチョと淫猥な音がする。
「すごく、硬い……チン……ンって、こんなに硬ったかんだあ……久しぶり……」
　季子は陰茎をうっとりと見つめ股間に顔を寄せた。
　一日中、蒸れた下着の中に隠されていた陰茎はスルメのような生臭い雄の匂いを放っている。そんな男の匂いに構わずに、季子の唇が陰茎へ向かっていく。そして、手とは違う滑らかな舌の感触が亀頭を擽った。
「おっ……うっ……」
　俊介はたまらずにうめいた。
　季子はそんな俊介を挑発するように見つめ、濡れた亀頭をぺロリと舐め上げ、唇を被せた。
「うっ！　ぐっ」
　俊介は生温かい口中の感覚にまたもやうめいた。
　包み込まれた亀頭に季子の舌が滑らかに蠢く。雁首を中心に舌がねっとりと纏わりつく。この素晴らしい感触にたまらず腰が浮く。
　一体、どんな、イヤラシイ顔をしてしゃぶり、舐めているのだろう。
　垂れ下がった栗色の髪で咥える季子が見えない。
　見たい。視覚でも感じたい。男なら誰もがそう思うだろう。
　そっと、栗色の髪をかきあげた。
(な……なんて、卑猥なんだ)
　こんなに綺麗な女、季子が頬をへこませ己の陰茎を咥えている。こんなシーンを何度、妄想し、オナニーしたことであろう。それが今、目の前で現実となっている。否が応でも情欲はたかまり、呼吸が乱れる。
　咥え舐めるだけではなく、亀頭から唇をはずし、右手で竿をささえながら裏筋に舌を這わしたり陰嚢を唇で軽く挟み込んだりと男を悦ばすツボを得ている。
　一体、いつ覚えたのだろう？　どんな男にこのような性技を調教されだろうかと思うと軽い嫉妬が芽生えてくる。
　そんな俊介の気持ちを察することなく季子は悩ましく鼻を鳴らしながら、チュパ、チュポと淫靡な音をたて陰茎を愛しそうに頬張る。
　熱心にしゃぶられる甘美な快感の中そんな感情もすぐに頭の片隅へ追いやられる。　
　まだ、体内に残るアルコールで肉の感覚が鈍くなっているのが幸いだ。さもなければ、この極上の口技にあえなく果てていたに違いない。
　
　陰茎への情熱を感じながら俊介は半身をおこし季子の下半身を引き寄せ己の顔の上へと跨がせた。互いに性器を愛撫できるシックスナインの体位である。
　目の前に晒しだされた季子の女唇は乾きを忘れたように潤っていた。女唇を中心に菊門の周りまでしっとりと愛液で濡れていた。
　両親指を女唇にあて左右に開くと、ピンク色の膣穴から、とめどもなく透明な汁が滴りおちてくる。
「いやらしい、お○○こだ」
　俊介は呟き、首をあげて膣穴に舌を這わしはじめた。
　たちまちに、垂れた愛液が俊介の口のまわりを濡らす。
　ペロッ、ペロッ、ペロッ……。
　ジュル、ジュル、ジュル……。
　チュパッ、チュパッ、チュバッ……。
　どっちを先に果てさせるのか争うように互いの舌が互いの性器に這い回る。
　深夜の静寂の中、舐め、吸い付く淫らな水音がハーモニーのごとくリズミカルに鳴っている。
　ふと天井を見上げると埋め込められた鏡越しに二人の淫猥な姿が映しだされていた。普段、見ることの出来ないアダルトビデオの絡みシーンのようなアングルが刺激的だ。
(　くそっ……この、ま○こに早くぶち込みたい！　早く、降参してくれ)　
　舌の動きを早めると同時にあいた指をつかってクリトリスを擦る。
　そして、もう、これ以上すると舌が攣るのではと思ったとき
「あぁぁん。もう、だめぇ。我慢できないよぉ」
　季子は白旗をあげて俊介の顔から股をずらした。
　当然の結果だ。セックスの定説では男よりも女のほうが、ずっと鋭敏な肉体を持っているといわれている。男の数１０倍、いや数百倍は感じるのだ。また、男はどんなに感じても一瞬で終わりを遂げるが、女は違う。快楽は波のように高く低くうねりつづける。
　　
　俊介は起き上がり陰茎を求め股を開く季子にそっと口づけをして
「季子……愛してるよ」
　と囁き、季子の唾液で濡れ輝く陰茎に手をそえ膣口にあてがった。
「だめっ、ちゃんとつけなきゃ」
　季子は慌てて言った。
　俊介はあんなにも激しく乱れていた季子の冷静さに少し戸惑いを覚えた。
　だが、生の膣肉のよさを知る俊介の行動は止まらない。
「大丈夫……中には出さないから」
　俊介は興奮を抑えつつ優しくいい、腰を落として陰茎の先端を季子の体内に沈めた。
「あんっ、だめだよっ」
　季子は拒絶の言葉を放ちながらも頭をのけぞらす。
(すごい！　なんだ……これは)
　ヌルリとした生暖かい潤いが亀頭に直に伝わり、膣壁がギュッと竿全体を締め付ける。
　この上ない快美に、このまま人生の幕を閉じてもいいとさえ思う。
　更に腰を落とし、膣の奥へと陰茎を前進させた。
　季子の膣肉は、まるで俊介専用に作られたのではと錯覚するほど、隙間なくねっとりと竿全体に絡みついてくる。
　結婚してからは、妻とだけしか交わらなかったが、その前はそれなり、いや、普通の男より多く遊んできた。だから、この膣肉が、今までのものとは比較にならないほどの極上であることがわかる。
　挿入しただけでも、この感触だ。ピストンしたらどうなってしまうのだろう。その先にはどんな快感がまっているのだろうか？
　俊介は未知の快楽を求め、ゆっくりと腰を前後に動かした。
　感度の鈍い陰茎も関係がないほど強烈な快感が電撃のように体中に駆け巡る。
(もう、どうなったていいや)
　俊介はその快美な誘惑に負け激しく腰を振りだした。
「だめっ！　つけて」
　無我夢中で腰を振りだした俊介に危険を感じたのか、季子は腰を捩って陰茎から逃れ、コントロールパネルの埋め込まれたヘッドボードに置かれていたコンドームをとり俊介に渡した。
「お願い……危険日なの……子供ができちゃうよ」
　言われるまでもないことだった。避妊具をつけずに射精をするということは妊娠させる覚悟があるからだ。今の俊介にとってはリスクが大きい。
「ごめん……」
　生肉の魅力に後ろ髪をひかれつつも、季子の手からゴムを受け取り愛液で濡れ輝く陰茎にスルスルと被せた。
　そして、再び、季子の股を開き陰茎を挿入した。
　さすがに、生の肉の感触には敵わない。だが、コンドーム越しの陰茎を締め付ける膣肉の圧力はなんら変わることはない極上のものだ。
　腰を振り始めると
「あぅ」
　季子は小さくうめいた。
　浅く深くとリズミカルに挿入を繰り返す。
　俊介の荒い息遣いと季子の甘い声、男と女の肉と肉の狭間から淫らな粘液が擦れ合う音が鳴り響く。
「はぁ、はぁ……」
「あぁん。あんっ……いぃ」
　ピチャ、ヌチュ、グチャ。
　季子の爪が背肉にギュッと食い込み、軽い痛みが走ったが、この膣肉の感触には敵わない。
　
　何度か、同じ動きを繰り返した俊介は体位を変えようと季子の背中に両手を回して上半身を引き起こした。小柄な彼女は軽々と持ち上がった。そして、そのまま背中から寝転び騎乗位へと体位を変えた。
　騎乗位。性の悦びを知る女は自らの感じるところを刺激するため腰を使う。いやらしい顔、揺れる乳房、艶かしく動く腰、女性の淫らな姿が一望できる体位。また、男にとって両手を自在に操れることもいい。　
　
　陰茎が膣の奥まで深くのめりこみ季子は顔を歪めた。
「あっ、すごい」
　季子は眉を顰めながら声をあげ、寝転ぶ俊介の腹に手をおき、なやましく腰をふりだした。
　はじめ遠慮がちに動いていた季子は、快楽のツボを確認したのか、髪を振り乱しそこを刺激するように激しく乱れてきた。
　俊介は季子の動きにあわせて揺れる乳房を持ち上げるように掴み揉みだした。
　その手を払いのけることなく季子は暴れ続ける。
　ズリュ、ズリュっと陰毛が擦れ合うほど激しく尻を振る。そして、
「ああっ、だめっ、すごぃ、やだっ」
　季子の喘ぐ声が一層高まり、更に腰の動きが早まった。
　膣肉がズリュズリュと陰茎を擦ってくる。その感触に射精感が襲ってくる。たが、まだ早い。結合してから、まだ、季子は昇りつめていない。先に彼女を果てさせることに満足を感じる。欲望を放つのはその後でいい。
　俊介はギュッと尻に力を込め射精感を塞ぎこんだ。
　そして、気分をかえるため、半身を起こし季子と向かい合った。男と女が最も密着できる対面座位だ。
　季子の手が自然に首に巻かれた。
　俊介は尻を持ち上げズンズンと激しく突らぬいた。
　これでもか！　これでもか！
　というよう恥骨がぶつかり合うほど荒々しく突き上げる。
　ズブッ、ズブッ、ヌリュ。
　季子は喉を晒し、髪を振り乱して、淫らな水音をかき消すほど大きな声で喘いでいる。
「あん、あん、やっ、あっ、ああんっ！」
　グチョン、グショッ、グチュン。
　膣肉がギュッと絞りを増した。
「だっ……いやっ、ダメッ、いっちゃう！」
　季子は一際、大きな声をはりあげ背をそらし、首にまいた両手をはずして背中からドスンとマットに崩れ落ちた。
　
　頂点に達し軽く目を閉じて全身をピクピクと痙攣させている季子に俊介は細く微笑んだ。
(よし、次は俺の番だ)
　そして、快楽の余韻に浸ろうとする季子を許すことなく彼女の細い足首を掴み左右に思い切り開き腰を落とした。
「あう！　ああああああっっ……」　
　ずぶりと奥まで入った陰茎に季子が再び喘いだ。
　その喘ぎに応えるように、ピッチを上げていく。ピストンする度に陰茎を膣壁がキュッキュッとしめつける。
　季子の悩ましい声、揺れる乳房、薄っすらと汗をかいた額、眉をひそめる切なそうな顔、今にも涎が垂れてきそうな開いた唇。
彼女の痴態が五感を刺激する。俊介は最後の力を絞りだすように激しく腰を動かした。
「あっ、いいっ！　そこっ！　やっ……だっ……くっ……いっ、くぅっ！」　
　喉奥から絞り出るような季子の声と同時に膣肉がギュッと陰茎を絞り込んだ。快楽の高波に襲われ強烈な射精感が湧き上がる。
「うっ！　ぐっ！　おっ！　おおおおおっっ！」
　俊介は溜まらずに歓喜の雄叫びをあげた。と同時に全身に震えが走り風船がパンッと破裂するように欲望の白濁液が勢いよく放たれた。
　そして、限界を超え、気力のみで走っていたランナーがゴールにたどり着き体中から力が抜け崩れ落ちるように、陰茎を膣穴から抜くことなく季子の上にぐったりと重なった。
　
「おっ……重いよう……」
　季子の訴えに俊介は無言で応じ、横にずれた。同時に膣穴からヌルリと陰茎が抜けた。
　あまりもの快感の後で言葉がでない。
　季子は半身を起こした。そして、肩で息をする俊介の濡れたコンドーム越しの陰茎に触れてきた。
「すごい……まだ、大きい……」
　季子はスルリとコンドームを抜き、その切り口を口に当て風船のように膨らまし、
「いっぱい……でたね」
　とお茶目に笑いその根元を指で摘み左右に揺らした。

「最高だった……」
　やっと、息を整えた俊介は優しく囁き、そっと季子の唇にキスした。
「あたしも……気持ちよかったよ……」
　そして、二人はそのまま横たわった。
　季子の頭は俊介の胸元に置かれている。
　時折、季子は何かを書いているように胸板の上で指を動かす。
(ああっ、なんて素晴らしいんだ。もう、季子から離れることはできない)
　俊介は忘れていた穏やかな気分に満たされながら眠りに落ちていった。

　つづく