％　『SM stories on the desk』eConomy 作
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張り裂けそうな心臓が幸から言葉を奪い、その目線はダーツを握るのを「待って」いた。 　最初のダーツから時間にして30分。残りは87本。 　後の80本は間違いなく的に突き刺さる。しかし、残りは別の的に中るに違いない。 　 　案の定、山のようにあるダーツの10本は的をハリネズミにしていった。 　少しの時間の違和感。 　別の的・・・、幸自身が狙われている。 　右の太ももに突き刺ささった。 　狙いの場所に中ったのだろう。苦痛の瞬間が想定できていた幸はボトルを口にやる顔を眺めて思った。 （後、6本は私が的。酔っ払って、手元が狂わない限り。顔はいや。頭はきっと狙わない。 　この汚れきった体はもうどうでもいい。でも心臓の上に中った時・。・。） 　その後の5本目、また異なる感覚を得た。 　ダーツは幸の右のヴァギナに中る。それは体内に侵入した後、すぐに肉の「脆さ」が下に落とした。 「アウ、アウ。」痛みのみではない。出血は起こらなかった。 　もう、ヴァギナと乳首は神経が麻痺しているのかもしれない。 　その衝撃は快感とは当然言えない。諦観の中にある屈折した意識。 （死にはしない。）は、快楽に近い事象かもしれない。 　70本を過ぎたころ、「疲れたな。もう終わりにするか。」右手のダーツがしゃべった。 　幸も疲れきっている。それをダーツが言った様に聞こえた。 　 （終わり？この「遊び」を・・・？私を・・・？） 　ダーツは、頭の後ろに置かれ、投てき前のポーズが取られる。 「いや、助けて。」幸の声はダーツの放たれる前。 「ふっ、ふっ、死ぬのはまだ嫌か。お前、痛みを無意識にできているな。一種の悟りか。単なるマゾヒストか。後2日だ。もう、お前が生き残る可能性は50％以上ある。ただし、5体満足は保障できないけどな。」 　 　言い終えると、ダーツは投げられた。 　明らかに名手が投げたもので、酒の影響をまったく感じさせない1投であった。そして、今までの数倍の力が込められていたのだろう。 　ダーツは幸のクリトリスを貫通し、10mmほど体にめり込んだ。 「ヒャ〜。」声になっただろうか。 　その代わりに尿と糞がポタポタと落ち、幸の意識がゆっくりと消し去られていった。 　翌日、幸は床に転がされている。 　昨日のダーツは突き刺さったままだった。 　片足が幸の顔を踏み、意識の回復を促す。 　幸はぼんやりと生を回復していく。 「目が覚めたようだな。俺はお前を生かすも殺すも自由だ。」 　初めて、1人称を使った幸の買い手は勝手に話を続ける。 「まぁ、良く生きていた。90％は死ぬか、自殺する。最初の焼印で死んだ女も多い。お前が二人目か。まだ、この世でやりたいことがあるわけだ。 　それは俺には関係がない。」 　確かにそうである。 　幸は自分を裏切った男を殺さなければいけない。その後なら、バラバラにされて死んでも良い。 「今日を含め後2日。お前は生き残るだろう。前の女もそうだった。ただし、忘れるな。そのボロボロの体の所有者は俺だ。 　豚女、それが俺の呼び方。お前は俺をなんと呼ぶ。」 　幸は下半身の痛みに耐えながら言った。 「しょ、所有者様。」 「は、は、それで良い。さすがに年の功か。前の女は、「ご主人様」とかぬかしやがって、左手の小指を切り落としたがな。ここを勘違いした罰だ。ここはSMプレイの場所じゃない。」俺と名乗る男はなお続ける。 「あの女は1千万だった。体に大きな焼印、火傷のケロイド、そして、お前より酷い全体の傷、その上、小指。しかし、生き延びて1千万を手にし、ここから去った。まだ23だったか。たかだか1千万が命の火を消させなかった。お前は3百万。金目当てではないだろう。いずれにしても、そんなはした金で未来は買えないが。」 「残りの2日はお前自身が、所有者である俺を全てにおいて満足させる日だ。それ以外は許さない。お前の死ぬパーセンテージはまだ50％残されている。それを理解し務めろ。」 　幸には理解できなかった。このボロボロの体に何を要求されているのか。 　SMではない。「ご主人様」ではない。所有者には何が必要なのか。
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『SM stories on the desk』
2013年7月13日掲載
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