％　『SM stories on the desk』eConomy 作
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「おい、当然寝てはいないだろう。眠ってしまった、と思ってもそれは勘違い。「俺」の声にお前の無意識は中断する。」

　確かに眠っていた。ボロボロの体と神経を休めるために・・・。
　しかし、「俺」の言ったとおり、幸は1,2秒で本来の意識に戻っていた。

「後36時間か。数（かず）、特に時間はいつも正確だ。」
　幸は支配者の方を向き正座をしている。

「お前が生き残る可能性は90％。」
（・・・わからない。何故・・・。この人は私を殺すことで、・・・最後の命乞いの叫びを聞くことでこの「遊戯」を終わらせようとしていたはず。）

「不満げな顔だな。お前は生き残るんだよ。残念ながらな。」
「支配者様。私は復讐の時間を頂けるのですか。」
　生き残る事の意味は幸にとって、もうそれしかない。

　腹には大きな「豚女」の焼印。乳首、ヴァギナはズタズタにされ、もう到底元には戻らない。

　更に、肌はどうだろう。
　これもダーツの当たった部分、尖った針金の鞭が引きずった痕も白の中で目立つ色で残るに違いない。（醜い。）特に乳首の左、ヴァギナは肉が方々に散っていた。

　例えば、こんな体をこれから知り合う男は抱いてくれるだろうか。ベッドの隣で寝てくれるだろうか。

「フッ、フッ。生き残ると言えば、早速、自分の体の確認か。豚でも、やはり女と言う訳だ。」
「俺」は無慈悲に言った。
　幸が残骸のような体に変わっている現状を再確認している中で・・・。

（もう駄目よ。例え、生き続けても誰にも愛されない。そんな女に生きる価値はないわ。）
　涙が滲む。もう、幸の瞳は永遠に涙から切り離される事がない。

「豚。・・・返事をしないか。」
「は、はい。支配者様。」
「なんか、勘違いしてやがる。お前、まだ30時間以上ある時間をどう思っている。また、間の抜けた事を考えていただろう。」

　その通りだった。「生き残る事」にはまだ、多大な力を要する。何度も何度も、目の前の男から知らされている事実。
　生き残る：死＝9:1の比率はもう「俺」の中では決まった事なのだろう。

「お前は何のために生き残ろうとしている。もう、復讐じゃない訳か。」
「俺」は少し呆れ口調で言った。そして何が起きるのかを示唆する。
「じゃ、必要ないものを取ってしまうか。」

　幸には理解できない。また、指を一本、一本切り落とす事でも言い出すのだろうか。それでは、幸の命はたぶん持たない。
　
「良い事を教えてやろう。俺は医者だ。ファ、ファ。」獣の叫びのような笑い声がいつまでも続いた。
　幸は瞬時に思う。（医者・・・。だから私の息の根をわずかながら残し、8日も生き延びさせる事ができた。）

「俺」が幸の運命を聞かせ始める。
「と言うことだ。豚女。これからオペに入る。どっちが希望か聞かせろ。ちなみにここで生き延びた女は今から言う方だった。」（オペ、・・・手術。私はやっぱり助からないの。）

「つまりな。生きてはいるらしいが、今の行方は俺も知らない。俺がホントの豚にしてやったからさ。その餌代に1千万の還元だ。術後はさすがに薬と少しはマシなものを食わせなくてはいけないからな。ただし、俺のオペは1億なのさ。理解できたか。」

（あ、悪魔。生き延びるってそういう・・・。「豚にした。」って何。良く見るＳＭ漫画の様に・・・。結局、売り物の女を作るために、・・・滅茶苦茶にして。・・・悪魔、鬼。）

「少しは理解できたか。こっちも商売なんだよ。だから、顔には傷を付けない。価値が「豚」でも8割引きだしな。・・・教えてやろう。」

「俺」が手術の危険性について話す様な「医者」の無機質な口調になる。ただし、決して助けない医者・・・。

「基本的にはここは女の墓場。8人買ったか。その内6人は死んでいったよ。ショック死だな。見事に全員。これ位に耐えられないようじゃ、手足の肘からの切断なんてのには到底途中で死んじまう。実は1人目の女は見事なマゾヒストでな。ここでも、お前の様な目をしていたが、たぶん、お前の想像していたようなもんじゃない。指を切り落とした際、なんて言ったと思う。フ、フ。」

（思い浮かぶはずがない。想像を絶する時間。私なら、たぶん、そこで息が絶える。）

「あれは1億で当然だな。こう言った。「どうせなら、もういらない手足は全部取って下さい。ご主人様。」だったか。完全にいかれていたよ。しかも、ここに来た事も自分の意思同様。ご主人様ってのは、あの豚にはそんなに偉いのか、「俺」の呼び方を変えなかった。あそこまでになると豚も1億だ。」

「俺」が幸の表情を伺う様に10秒ほど見、またしゃべり始める。
（あぁ、もう死ぬことも生きることも諦めなくては・・・。地獄が待っている。）
　幸の思考が崩れて行く間も「俺」は話を止めない。

「それが良いだろう。お前は3千万だがな。300の餌代付で2700か。お前は結構向いている。その考える事を諦めない顔は割りと「その手」の男に気に入られる。最も手足が無くなればどうなるかわからないが。そして、もう一方は・・・。」

　幸の意識は「俺」の話の最中に遠のいた。
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『SM stories on the desk』
2014年6月7日掲載
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