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％　『SM stories on the desk』eConomy 作
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幸の意識が絶望の世界に連れ戻された時、「俺」の右手のメスは何か掬い取り、それを幸の口に入れようとしている。　もう慣れた設定と言えた。　「俺」が幸の心体に何かの負荷を与えようとしている状況。　それより、まだ「術前」なのか。自分の手足を確かめる。（ある。）「フ、フ、良かったな。まだ、手足はついてるよ。さすがに俺でもそんな大仕事は30分では無理だ。」　幸は経過した時間を知った。「ほら、食えよ。豚の餌だ。」　口に含まされるものが何かを理解する。（ウ、ウンコ。）　しかし、違和感はない。この程度の事は「俺」にしてみれば、まだ普通の事に違いない。　拒めば、右手のメスが咽喉の動脈をきれいに破断するだろう。　ここに来る前にも2、3度経験がある。　突き出た男の肛門を舌で刺激する。そして、その周辺を舌で舐め回す。「お～、幸、良いぞ。これが最後の調教だ。これが出来なきゃ、結婚なんかしてやるものか。」　幸は遠のく意識と深い絶望の中で、「少し」のマゾヒズムに勇気を加え、結婚を約束した男の最後の欲望を満たそうと　口を開く。（ポタ、ポタ。）圧倒的臭気。「く、食え。」・・・愛した男の唇が、興奮からか震えていた。　・・・幸が幾らかの「幸せである（はずだった）昔の思い出」から、意識を現実に戻す。「ふーん。モノがわかっていても食えるのか。お前はやはり、こっちが向いているかもな。」　右手の肘にメスが当てられる。「まぁ、良い。さっきどこまで聞こえた。つまり、意識はあった。」「支配者様は、わ、私には豚がお似合いだ・・・と。」「そうだった。お前が今、考えながら、糞を食らっている顔。まさに似合いだ。」　幸の顔の横に臭気の源がある。「まだ、食べますか。」　いつかも同じ事を言った。愛しくてしょうがなかった男の排泄物。　男の満足げでうれしそうな顔。「まだ、食べますか。」「・・・。」男は数秒黙った。「あぁ、見せてくれ。四つんばいで豚の様に俺の糞を食う幸を・・・。」　幸は4つ足の姿勢を整え、汚物の出っ張った部分に口付けし、幾らか口に入れる。　幸の記憶と実際が曖昧になっている。　「俺」は既に全身麻酔の前置きのような安定剤を幸に注射していた。　「俺」にはまだ聞かなければいけない事がある。「食わなくて良い。さっきの話の続きだ。」　体がフワフワと気持ちいい。　幸は多幸感に包まれ、自らで現実から少し引き離れることができる。ここに来て、最も幸福な時・・・。「もう一方の選択がお前にはある。つまり、「俺」は何度も言っている。復讐を命がけでするか。少しのハンディを背負ってな。もし、お前が見事に奴を殺った場合、300万と自由をくれてやる。」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・　　幸は男をまだ待っている。痛み止め、止血剤、そして、気力を取り戻すための麻薬が「俺」の手によって投与された体で・・・。　コートには25cmの刃を持つ包丁を忍ばせてある。（後、どれくらい持つのかしら。）　幸はもう一つのものも「体」に忍ばせていた。時限爆弾のように幸の内部から壊すもの。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・　幸は「俺」の話の後者を選んだ。　話を聞き終わった後、叫ぶように答える。「支配者様。後の方の手術です。」　後の方の手術・・・。　意識を覚醒させる馬鹿げた戯言。人を玩具以下にする愚考。そして、命を「埃」以下に扱える畜生の快楽。　安定剤を押しのけ、幸はそこだけは傷が無いと言える顔を真っ赤にし叫んだ。「入れてください。殺します。支配者様。後の方の手術です。」　後の手術を「俺」はこう言った。「つまり、お前の子宮付近に、これで包んだお前の顔の横にある「俺」の糞を埋め込んでやる。　つまり、破裂したら、お前は壊滅的な打撃を受ける。その雑菌が脳に届けば、当然、死もあるし、永久に意識が戻らないこともありえる。　もし、軽症で済んだとしても・・・、いや、ありえんな。そして、復讐を果たせば、「俺」がそれを取り除いてやる。　つまり、いくつもの偶然が重なれば、お前は300万と自由を・・・。」　幸が叫んだのはこの時だった。　別にボロボロの体に未練はない。300万とて問題でなく、自分に関わった二人の男への復讐。（二人とも殺せるかもしれない。生きていれば・・・、手足があれば・・・、殺せるかも・・・。そう、二人とも。）　この9日の間、何度意識が何かの「力」で遠のいて行ったか。　これほど過酷な責めはないだろう手術のための全身麻酔が、ここに来て初めて幸に傷みを伴わず無意識を与えようと、その役目を果し始めた。　腹を割られた幸の子宮の側には約10時間で溶解するオブラードで包まれた汚物が入れられようとしている。　　「俺」は人間の内臓の側に自らの糞を置いた瞬間、大笑いした。「ハッ、ハッ。ハハハハ。」　人の命を玩具にしている・・・それはここに来た女達、全てに行った事だが、メスを握った「俺」の本来の姿とはまったく逆の遊戯。それは狂気の笑いだった。　幸には分っていた。　「俺」は幸の内臓の間に自分の糞を置き笑い転げるであろう事を・・・。　そして、「俺」の正体が少し見えた気がした。　背徳の時間を区切って遊んでいるだけのエゴイスト。　普通の姿があり、それは病院で「真面目・優秀」と評される外科医。　一人は二人に代わった。（私が殺す。殺さなければ・・・。）　「俺」は例え、幸が中途半端に死んだとしても、その死体をどこかに運ばなければいけない。　この手術の真相が知れれば「俺」は社会的に抹殺される。　つまり、いつも監視しているはず。　生きて男を殺せれば、摘出手術は行われるだろう。　たとえ、男を殺しそこなったとしても、「俺」は幸を隠さなくてはいけない。　その時、「俺」は男の命を残すだろうか。　たぶん、しない、できない。その場所はこんな閉じた空間ではなく、人目がある、証拠が残る場所。　「俺」は究極の快楽殺人者であり続けるため、何らかの手をうつ。（一人目が良かった。私には時間が与えられる。・・・二人を殺す時間・・・。）　「俺」には幸の考えは今回限りは予想がつかなかった。　限りなく死に近い女の執念はその気配を消し去り、医者故、薬の力を過信しすぎていたかもしれない。
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『SM stories on the desk』
2015年1月4日掲載
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