Ｒｅｓｅｔ 　『SM stories on the desk』eConomy 作
No.5 　 不明確は、いつも比較論。比較する対象は現在にないし、未来にさえ実在しないかもしれない。 　男の考えでは、大抵、対象が現実的。剛志の場合、理沙の存在そのものである。 　だから、明確。理沙の現実的変化はどのようなものであっても、不思議には感じない。 　男と女の関係は、経済と少しのスパイスによって、いつも物語に仕上げる。 　今が見えなくなった理沙には、やがて剛志の存在自体が自分の生きる目的、そして大袈裟に言えば未来を司る全てのようなものに思われてきた。 　 　実際には、状況的変化は何もない。 　剛志の言葉に「明日、消えろ。」があるかもしれない。しかし、それがもう考えられない。 　簡単に書くと、理沙は剛志を愛してしまった。 　土曜日がうれしい。剛志はいつまでも、ベッドの隣に寝ている。そして、ランチの時間まで決して起きない。 　その朝、理沙の手は、拘束具によって自由を奪ったままだった。理沙は朝食兼昼食を作らなければならない。 　理沙の舌が、剛志のペニスを刺激する。小さいままのペニスは何の反応も示さない。 　しょうがなく、肛門に舌を移す。剛志は肛門の刺激に敏感で大抵、目を覚ました。 　しかし、疲れているのか、ペニスの時と同様に小さい寝息を立てている。少し舌を肛門の奥に潜らせる。 　小さい寝息は消えた。 　初めての朝の経験に少しの苦味を感じる。 　10分も経っただろうか。剛志はまだ起きそうにない。 　たぶん、もう目は覚めているはずだった。ペニスに不自由な手をやってみる。まるで、10代の朝立ちのような硬さが手に伝わった。（気持ち良いのね。続けてあげる。） 　 　理沙の細い指は自由がないため、ペニスを自由にできずにいる。 　そのもどかしさが、一層、理沙の肛門への口での奉仕を過激にする。やがて、唇を肛門に付け吸う大きな音が立ち始めた。 　そして、より奥に舌を指し込み、舐めると言うよりは、出し入れさせる。 「うぅ、うぅ。」剛志の声が聞こえた。今までSEXの最中、射精の瞬間にさえ剛志は声を上げた事がない。 （見つけた。剛志さんの弱点・・・。） 　理沙は懸命に唇と舌を動かす。 （このまま、射精させる？いや、やっぱりSEX。・・・聞いてみようかしら。） 「剛志さん。お目覚めでしょう。もっと気持ちよくして差し上げます。私の手を自由にして下さい。」 「いや、そのまま続けろ。もっと奥まで。」 　理沙には剛志の顔が見えなかったが、幾分の高揚が感じられる声。 　 　理沙は少し微笑み、そのままの表情で唇をもとの位置に戻し、再び舌を使い始める。 　しばらくし、剛志が聞いた。 「手を自由にすれば、どんなサービスが待っているんだ。」 　先ほどの理沙は、ペニスを手で刺激しようと考えただけだったが、今回は違う答えが理沙には必要である。 　剛志の気に入る行為を的確に行うことが理沙の現在の立場だった。 　 （どうしよう。ペニスへの刺激が駄目のはずがないし・・・。でも、剛志さんが望んでいるのは、もっとお尻の穴のほうへのご奉仕・・・。手が自由なら。） 　アラビアンナイトを女は朝から考える。（いっそ、舌が全部、お尻の穴に入ったら。手で拡げても無理だろうし・・・。剛志さんはお尻が急所なんだから。） 　 　理沙は窮した。仕方がないので剛志に、「望み」を聞いてみる。 「どのような事を、理沙にお望みですか。」 　思ったとおりを剛志に言った。　 　剛志は合理的な会話が好きな男である。わからなければ聞けば良い。それに自分の考えは仕事の上でも帰す。 「は、は、・・・良いんじゃないのか。理沙。だんだん、ここの住人にふさわしくなったな。」 　素っ頓狂な声を上げ笑った剛志の目は、少し暗かったかもしれない。 　しかし、理沙には嬉しい言葉だ。大きなカーテンのような「不明確」に少し風穴が開いた気がする。 「何をされたい・・・か。今のは、確かに心地良かったし、興奮もした。そして、少し理沙が見えた気がする。肛門からな。はっ、はっ。」 　剛志の目が、明るい笑顔の中で、少し暗い色を持っていることに理沙も気が付いた。 　少しのスパイスは、何なのか。
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『SM stories on the desk』
2017年12月30日掲載
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