良妻賢母は二度ベッドインする


良妻賢母は二度ベッドインする保留守人作

１０．　ブルブルと体を震わせながらママの寝室に忍び寄る。　廊下は天井の両サイドから間接照明で照らされており、スタンドライトだけのリビングルームより明るかった。　扉まであと数メートル、その手前には畳敷き六畳の和室がある。　床の間に、ダルマの絵と判読できない文字が書かれた掛け軸がぶら下げてあり、高価そうな花瓶に活け花が添えられている以外、何も置かれていない部屋。　翔太は子供心にも、外国人の来客者を喜ばすためだけにある空間だと認識していた。　障子が開け放たれたその和室の前まで来たとき、先に見える寝室の扉の前に、またしても黒い布きれが落ちていることに気がづいた。　きっとママが履いていたパンティに違いない。　まるで雑巾でも落ちているかのように、無造作に放置されているのだ。　脱いだとき絡まったようなママのパンツがポツンと床に落ちている……。　それは今まで見たこともなかった、非日常的光景だと言える。　まさか、本当にママはレイプの被害に遭っているのか？　激しい動揺と恐怖心が翔太を襲う。 ……《ガチャッ》　寝室の扉が開けられる音を聞いた。　子猫が突然の物音に驚いたときのように、翔太はピョーンと飛び跳ねるようになって、瞬時に障子の裏に身を隠していた。　障子の扉一枚隔てた裏側を、無言の人影が通る。　こちら側は真っ暗なので、和紙に自分の影が映ることもなく、相手が振り向かない限り見つかることはないだろう。　恐怖と緊張の中、翔太は障子に張り付き、畳の上で背をかがめ、その人物が通り過ぎようとする後ろ姿を目に焼き付ける。　デニムのズボンに黒の革ジャン、スポーツ刈りが伸びてモジャモジャになった頭髪、１８０センチを優に超える背丈は、まさか……、（っ！…孝太郎……にぃちゃん？……）　腰が抜けたようになって、動くことが出来ない。　革ジャンの男は無言のまま、玄関を出て行ったようだ。　このあと、自分はどうすればいいのだろう。　急いでママの様子を見に行くべきか。《キュルルルル…バウ～ン……》　レクサス・LS600hとレンジローバーが納まっているガレージの中からだった。　大型バイクのセルモーター音と低いエンジン音が、コンクリート壁の車庫内に反響しているのが聞こえた。　そして“革ジャンのライダー”は深夜の住宅街に気を遣っているのか、早めのシフトアップでエンジン音が高くならないようにして走り去っていった。　翔太は本当に腰が抜けてしまい、畳に尻もちをついた状態になっている。　そんな時、なんとママが静かに横を通り過ぎたのだ。　驚きのあまり、目を見開き口を大きく開けて、そのうしろ姿を見送る。　頭の後ろ、髪をお団子に丸め込んだネットのような物の上に、黒いリボンの飾り付けがあった。　白い首筋から流れるような両肩には黒く細い一本の紐がかかっている。　ママは上半身に黒いキャミソールを纏っていた。　そのキャミソールの裾はママのくびれた腰辺りで途切れている。　ワンピースを脱ぎ捨て、パンストとパンティはそれぞれ散らばっていることから判断すれば当然だろうが、ママは下半身に何も身に着けていなかった。　黒い肌着の切れ目から下には、ママの白く大きなお尻が丸見えになっていた。　今まで革ジャン男と一緒にいた寝室から出てきたママが、白い尻肉をプリプリと振って、静かに歩いてゆく。　　しかし翔太の驚きは、それだけでは済まなかった。　その大きく美しい尻タブの地肌に、なんと落書きがされてあったのだ！　用いたのは黒のサインペンだろうか、ママのお尻の割れ目から一本の曲線が引っぱられ、その先端に矢印が描かれている。　そしてその先に書かれた文字は………… ……“ウンチくさい”。　その後、ママは散らかっている衣類を拾い集めているようだった。　そして最後にバスルームへ向かったようだ。　翔太は自分が立てる足音に注意しながらも、這う這うの体で２階の自室へ逃げ込んだ。　頭がパニクって整理がつかない。　ベッドに備わっているアーム式の小さなライトだけを点けて衣服を脱ぎ、下着姿でベッドに横たわった。　スマホを手に、バスの車内で受け取った画像を改めて開いてみる。　黒いパンティを引き下げられた女は肛門と女性器を曝け出し、頭に黒いリボン飾りを付け、上半身には黒っぽい服を纏っている。　よく見るとワンピースのスカートが腰までたくし上がっているのだと気づく。　受信時刻は２０時１８分。　あの時は家に帰りついたら、これを見ながらオナニーをするつもりでいた。　だが今、パンツの中のイチモツは平常時の三分の二ほどまでに縮み上がっている。　なぜなら、被写体の女性が自分のママである可能性が、限りなく１００パーセントに近いと判断せざるを得ない状況だからだ。　わずかに写りこんでいるベージュ色のソファの生地も、ウチの物とそっくりだ。　さらに踏み込んで言えば、メールの送り主は孝太郎にぃちゃんということになるだろう。　だとすれば、そんな行為は一体、何を意味するのだろうか？（あああああぁぁぁっ……！）　翔太は頭を掻きむしり、枕に顔を押さえつけるように突っ伏した。　一体いつから、ママは孝太郎にぃちゃんとセックスをするようになっていたんだ？　青天の霹靂、驚天動地。　どんな言葉を羅列してもその驚きは言い表せない。　危うく自分を生んだ母親の肛門と淫裂の画像をネタに、オナニーをしようとしていたなんて笑い話にもならない。　そして清潔好きなママの尻タブに書かれた屈辱的な文字……。　　それからしばらく、翔太は何度か睡眠と覚醒のはざまを行き来していたようだ。　何か夢を見ていたようだが、そのストーリーが、思い出せそうで思い出せない。　気が付くとパンツの中で冷たいものを感じた。　慌ててパンツのゴムを引っ張り、中を覗く。　ペニスは平常時の大きさを保っていたが、パンツの生地との間に、透明な液体が糸を引いていた。　勃起した覚えはなかったのに“ガマン汁”を分泌させていたと気づく。　時計の針は５時を指していた。　日の出までには、まだ時間がある。　静かに起き上がり、２階のトイレで小用を済ませた。　水はとりあえず、流さないでおく。　再びベッドに潜り込んだとき、ようやく翔太は深い眠りについた…………。 ――――「……す…すみません、絵美子さん……孝太郎…です……」　何か思い悩んだ風な孝太郎の声に絵美子は敏感に反応した。＜……何か…あったの？……＞「ちょっと…ご相談したいことが…あって……」＜……どうしたの？＞「出来れば……すぐに会って欲しいんです……」＜え？　今…すぐ？　孝太郎さん、まだ近くにいらっしゃるの？……＞「ゆうべ、一緒だったのに…ホント、すみません」＜わたしは、いいのよ。それで、…どうすればいいの？＞「１時に、サンシャインホテルのスカイレストランに予約できたんで……」＜……駅前のサンシャインホテルね。わかったわ＞「その方が、目立たないかなと思って……。間に合いますか？」＜大丈夫。すぐに支度するわ＞「それじゃ、１時に……」＜はい、わかりました……＞「ありがとうございます」　孝太郎は電話を切ると、力なく頭を垂れた。「ホッホッホッホッ……さすが斉藤孝太郎くんですな。　今、日本一注目されている美人の人妻を、　いとも簡単に呼び出すことが出来るんですからな」　浅黒い肌、スキンヘッドの中年男が不敵な笑みを浮かべて言った。「…………」　拳を握る孝太郎の手は震えている。「さあ、君はもう東京へ帰りなさい。悪いようにはしない。　あとはわたしに任せておけばいい……」「あ…あの……」　孝太郎は何か言おうとしたが言葉にならず、男に一礼してその場を離れた。　ホテル一階にあるラウンジ、容姿に異彩を放つその男は顎に手をやり、遠くの一転に焦点を合わせていた………… …………つづく
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2015年12月19日掲載
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