| 良妻賢母は二度ベッドインする 保留守人 作 |
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| ２． 家を出て、駅までの徒歩１０分、健一は昨夜の妻との“営み”を思い起こしていた。 …………あの衛星ライブ中継が終わったのは夜も更けた１１時ちょっと前。 息子、妻、そして自分の順で入浴を済ませ、健一は寝室へ戻った。 夫婦の寝室のドアの前まで来て、健一はハタと思う。 絵美子はもう眠っただろうか。 まだドライヤーで髪を乾かせているところかもしれない。 一人のときの妻の様子が知りたくて、そっと扉を押し開いてみた。 目に入ったのは薄暗い間接照明の中、パジャマ姿の絵美子が無表情で鏡台の前に座り、鏡に映った自分をじっと見つめているうしろ姿だった。 そんな妻が肩まで届くセミロングの髪を、三つ編みのオサゲにしていることにハッとする。 いつもなら就寝時には、お団子に結んでいるはずなのに、どういう心境だったのか。 夫の視線に気づくと絵美子は照れ笑いを浮かべ、立ち上がった。 「あら、お風呂、早かったのね」 「あ…ああ、俺はいつも、カラスの行水さ……」 その、絵美子の表情。 三つ編みの髪。 化粧を落とした“ヌードの唇”。 ３７歳の妻は、襲いかかりたくなるほど可愛らしく感じた。 夫なのだから、それもありだとは思う。 ためらってしまう理由はやはり、絵美子がいつもとは明らかに違うオーラを発していたからだ。 きっと絵美子は孝太郎のことを思い浮かべ、自分も若返りたいという思いから髪を三つ編みに編んだのではないかと直感したのだ。 ダブルベッドの床に就いてからも様々な思いが頭に浮かび、なかなか眠れなかった。 一時間は経っただろうか、天井をボーっと見つめ、いろいろ思考していた健一が妻の様子を横目で覗く。 布団の中、体を横に壁側を、つまり健一に背を向けて寝ている絵美子。 健一は意を決し、そんな妻の背中を人差し指でツンツンと突いてみる。 振り返った絵美子は、はにかんだ表情で囁いた。 「まぁ、どうしたのかしら……」 当然、絵美子は夫の意図を理解している。 そしてそれはまた、夫を拒もうとする反応ではない。 むしろ歓迎している合図といえる。 健一がすぐに覆いかぶさり、唇を重ねる。 久しぶりに舌を絡ませた粘っこいキスは、健一の掴みどころのない不安の表れでもある。 息が続かなくなり、ようやくして唇の密着を離す。 夫婦はともに息を荒くしながらも、しばし見つめ合う。 息が整って、 「今日はどうしたの？ あなた……」と、絵美子も、しおらしい声で驚いてみせる。 最近、めっきり夫婦の営みが減ってしまったのは、やはり、孝太郎が持っていたカメラの画像データを見てしまったあの一件以来である。 そんな事とは露とも知らない絵美子はどう思っているのか、夫からの誘いが減ったことに不信感さえ抱いていたかもしれない。 潤んだ瞳を見ていると妻が本当に愛おしくなった。 握っていた妻の手を自分の口元へ運び、彼女の指を口に含む。 するとそのとき、絵美子が慌てるようにその手を引っ込めた。 明らかに不自然な妻の動作。 しかしその理由を健一はすぐに悟ることになる。 妻の指を近づけた瞬間、プ〜ンと、発酵臭を感知したのだ。 そのチーズくさいニオイと、清潔好きで可愛らしい顔立ちの妻とのギャップを著しく感じる。 そう、妻は夫のすぐそばで、密かに自分の性器を指でいじっていたのだ。 絵美子がオナニーをしていたこと自体が衝撃的だったが、それに加えて別の感情も同時に生まれる。 絵美子はテレビで孝太郎の若く美しい肉体をじっと見つめていた。 そして三つ編みにして鏡の中の自分も見つめていた。 状況から考えて絵美子は孝太郎に抱かれている――あるいは抱かれていた？――ことを思い浮かべていたのかと勘ぐってしまうのだ。 健一は、愕然とする反面、なぜか説明のつかない激しい性的興奮も覚えた。 妻の自慰を問い詰めたりするような野暮なことはしなかった。 そのかわり、気づかなかったフリをして、妻のボタン付きパジャマの上着を一気に脇までたくし上げた。 うす暗い寝室の中、白さを誇る絵美子のバストだけが発光しているように浮かび上がる。 「や…やだっ、あなた。もっと暗くして……」 照明は落としているつもりだったが、ダイヤルで無段階調節できる間接照明は、比較的明るく設定されていたのだ。 「いいじゃないか、夫婦なんだし、もう１５年以上も見てるよ、絵美子のオッパイ……」 健一は、その優しい口調とは裏腹に、激しく妻を攻めようとしていた。 柔らかくきめ細やかな絵美子の肌。 自分のパジャマも捲り上げ、互いの肌を密着させ、妻の体温を感じる。 ボリューム感のある白い乳房に、薄茶褐色でやや大きめの乳輪のコントラストが、熟女ならではのエロチックな雰囲気を漂わせていた。 絵美子本人はこの乳輪に少しコンプレックスを感じているようだが……、 （絵美子……、君はもう孝太郎にこのエッチなオッパイを…見られてしまったのかい？） そんな、夫の心の声は、妻に聞こえない。 健一がブチュブチュと音を立てるほど、荒々しく乳首を吸いたてる。 しかし、我が妻のこのオッパイは、既に孝太郎の舌が這いずり回った跡かもしれない。 「あっ…アン…ヤン…ヤッ……」 声を押し殺そうとしながらも腰を浮かせて背を反らせ、早くも悶え始める妻、絵美子。 きっと、高校生だった孝太郎少年は興奮のあまり、飢えた野獣のように鼻を鳴らして絵美子のオッパイにしゃぶりついたのではないか。 そして彼は、恩師の妻が身悶えする、そんな姿を目に焼き付けていたかもしれない………… ――――４年と数ヶ月前、絵美子が孝太郎少年を可愛がるようになり、彼との共同生活も順風満帆に思えたある日、最初の“事件”が勃発した。 我が家に孝太郎少年を迎え、彼に与えた居住空間、それは健一の亡き祖母が長年使っていた自宅敷地内にある木造の離れだった。 猫の額ほどの炊事場に六畳の和室がひとつ。 それに小さな風呂と和式便所が備わっていた。 妻が孝太郎を家族の一員として認め、人間関係に全く不安が無くなっていた頃、孝太郎少年の不在時に、どうしても離れの中に入らなければならない事態が発生した。 安価な煙感知器が誤作動を起こし、ブザーが鳴った為である。 中に入ると以外にも彼は整理整頓ができていて、ホッと胸を撫で下ろしたものだった。 感知器をリセットし、すぐに退室してもよかったのだが、ふとゴミ箱の中にある大量のティシュペーパーの残骸に目がいった。 彼も異性の肉体には興味津々なはずの少年期。 男なら誰しも心当たりがあるものだ。 しかしこの時、孝太郎がどんな“ズリネタ”を持っているのかと、健一にいたずら心が働いた。 そっと机の引き出しを探ったり、本棚を物色したが見当たらない。 着の身着のまま我が家にやって来た彼唯一の財産、一眼レフのデジタルカメラとその付属品が入ったバッグが机上にあるだけ。 最後に押入れを開け、綺麗にたたまれた布団の中を手探りしていると、小さな柔らかい布切れのような物に手が触れた。 引き抜いてみると、なんとそれは見覚えのある花柄のショーツ。 ドクンと心臓の鼓動がうねりを上げ、激しく動揺した。 妻の下着であることに疑いの余地はなかったのだ。 その上それは、その日の前々夜、絵美子が身に着けていたもので、“営み”の前戯で健一が徹底的にショーツの上から愛撫を施していたので覚えがあった。 したがって裏生地のクロッチ部には絵美子の性器からあふれ出た大量の愛液が付着していたのだ。 布切れを裏返すまでもなく、すぐに黄ばんだ大きな楕円形の汚れたシミが目に入る。 鼻先に近づけると魚が腐ったような強烈な刺激臭に嗅覚を襲われ、思わず夫の自分が羞恥で顔が熱くなるのを感じた。 きっと孝太郎もニオイを嗅いだに違いない。 男ならわかる。 高校生になって間もない、恐らくまだ童貞の少年は、たとえ自分の母親と年齢が近くても“可愛い奥さん”の使用済み下着には気絶しそうなくらい興奮したに違いなかった。 健一は妻のパンツを握りしめ呆然と立ち尽くす。 高校生の少年に、愛する妻の恥ずかしい性臭を嗅ぎとられてしまった夫がここにいる。 それはまるで自慢の妻を、少年に寝取られたような感覚……。 孝太郎に、何か裏切られたような気持ちになったのと同時に、妻に対する腹立たしさも覚えた。 絵美子も孝太郎が少年だからと油断していたに違いない。 食事と入浴は母屋を使わせているのだから、気を使うのが大人としての嗜みのはず。 しかしここで健一にジレンマが生じた。 もし、妻にこの事実を伝えれば、せっかく良好な人間関係を築きはじめた生活環境にヒビが入ってしまう。 いや、それだけではすまない。 絵美子がこの先、孝太郎を養う事を拒んでしまうのは明々白々だった。 健一が直接指導から退いたにもかかわらず、自宅に孝太郎を住まわせてまで水泳の名門高校に通わせているのは、クラブに籍を置いた形を維持するためであることに他ならない。 つまり孝太郎は大切な“我らが無名クラブの広告塔”なのだ。 近い将来、大輪の花を咲かせることが間違いないつぼみをみすみす手放すのは愚行である。 健一自身も運営者の一人であるクラブの知名度を上げてくれる絶好の逸材なのだ。 どうすればいいのか思い悩んだ末、 結局、孝太郎少年にも動揺を与えないよう、 健一は妻の恥臭が浸み込んだ“布切れ”を元の位置に戻していた―――― ……つづく |
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| 2015年11月14日掲載 |
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