| 良妻賢母は二度ベッドインする 保留守人 作 |
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| ６． 母親を伴った三者面談が終わって、明日から長い夏休みが始まる。 中学３年生の少年にとっては明るい開放感を味わえる最高のひと時でもある。 通っている私立中学は中高一貫のエスカレーター式。 特進クラスに進むか外部入学生と同じ一般クラスに振り分けられるかの違いはあっても、公立中学に通う受験生ほど深刻な状況ではない。 その日、少年が母親と一緒に電車に乗るのも久しぶりの事だった。 級友たちからも羨ましがられる自慢の母だが、肩を並べて一緒にいるのが気恥ずかしいと感じたのはこの日が初めてだ。 これも少年が徐々に大人へと成長している証なのだろう。 周囲の見知らぬ大人たちは老若男女問わず、必ず母親と息子である自分を見比べるような視線を送ってきたのが奇妙で可笑しかった。 一体何が言いたいのだろう。 そんな車内、隣に座る無表情のママの横顔をじっと盗み見る。 そこへ、《アン…アン…アッ…ヤン…ア〜ン…イヤ〜ン！》……と、悩ましい声がエコー効果を伴って脳裏に蘇えった。 声の主は他ならぬ少年の母。 ツンとすましたその横顔からは想像もできない“アノときの声”が頭から離れない。 まるで泣いているかのような、自分を生んだ母親の声に心底動揺してしまったのだ。 少年は昨日の深夜、トイレに起きたとき、偶然にも両親の寝室から漏れるベッドのきしみ音と、その声を聞いてしまっていた。 中の様子までは分からなかったが、寝室のドアがしっかりと閉まっていなかったのだ。 そんな事とはつゆとも知らぬママ。 息子が横目で凝視していることに気づいて振り向き、低く冷めた口調で言った。 「……なによ」 「いや……なにも？」 母子のやりとりは何事もなかったように、それだけで終わる。 官能小説やＡＶのように、息子が実の母に性的興奮を覚えることはなかった。 その代わり、自分のママがＡＶ女優のような声をあげていたことは、トラウマになりかねないほど、ショッキングな出来事だった。 言葉で言い表すのは難しいが、自分の母親は快楽のためにセックスなどしないと、勝手な固定観念を持っていたのだと思う。 自宅最寄り駅で降車すると、ママは買い物をするから、先に帰ってもいいと言った。 翔太は、一度家に帰って着替えてから友人宅へ遊びに行くと母に伝える。 夜８時には帰るとも付け加えた。 父が帰宅しているはずの９時には、テレビ局が来ることも既に連絡を受けて知っていた。 それを聞きつけた叔父の聡兄さんも嬉しがって来るらしいが……。 母親と別れると一目散に自宅へと急ぐ。 辿り着くと急いで玄関扉を開錠し、荒々しくドアノブを引いた。 中に入り玄関土間で革靴を脱ぎ捨て、ドタバタとリビングルームを走り抜ける。 そして一階の一番奥にある両親の寝室へ飛び込んだ。 肩で息をしながら、整頓されてシ〜ンと静まり返った室内を見回す。 カーテンは閉まっているので薄暗い。 そして焦ったような慌てた動きで、手あたり次第に洋服ダンスや小物入れの引き出しを次々と引き出しては閉じてを繰り返す。 「あぁぁぁ〜っ、も〜っ！」 探し物は見つからず、思わず苛立ちの声を上げる少年、翔太。 が、ハタと思いつき、倒れ込むように床に伏せてダブルベッドと床のわずかな隙間を覗き込んだ。 （あった！！） 手を伸ばし、筒状の“獲物”を引きずり出す。 “ゲンブツ”を目の前にして「うっ！」と、小さな声を発してしまう。 その肌色の物体は、グロテスクなまでにリアルな代物、勃起したペニスと睾丸を模しているのは一目瞭然だった。 昨夜、ママのあえぎ声を聞いたときのショックは言葉で言い表せないほどだったが、それでもガクガクと脚を震わせながら、半ドア状態の扉に忍び足で近づき、両親の営みを盗み聞きしていた。 その、聞き取れた会話の断片から、このオモチャの存在を認識していたのだ。 改めて物体の真ん中あたりを、まるで汚いものを触るかのように――事実汚い？――二本の指先でつまんでみた。 指先にネバネバとした感触が伝わり、 「ギャーッ！」と叫んで思わず床に放り投げてしまう。 《ガチャン！ プキュッ》 音をたてて落下した物体は偶然にもフローリング上で垂直に立った状態となった。 “睾丸”がある根元側に吸盤が付いていて、元々そうなるように設計されていると悟った。 フローリングの床にそそり立つペニスの勃起。 滑稽な情景でありながら、改めて翔太はショックを受ける。 自分の勃起よりはるかに大きなその模型。 とても自分の母親の体内に、こんな物が入るとは想像できなかった。 ネバネバと感じたのは、母の膣内で分泌された体液が付着したものと認知する。 少年は床に腹ばいになり、天井に向けてそそり立ったその模型に鼻先を近づけた。 ゴムっぽい匂いにスルメイカのようなニオイが混じっている。 なぜかママの顔が思い浮かんでしまい、気まずくなる。 同時に小学５年生のとき、自分のベッドの下にあったママの花柄パンツのことを思い出した。 なぜそこにあったかは記憶が曖昧で、わからない。 でも、汚れていた部分の匂いを嗅いで、異様に興奮したことははっきり覚えていた。 パンツはいつの間にかなくなっていたが、あの時の罪悪感と同じものを感じる。 そして翔太は今、自分が勃起していることにも気づいた。 しかし、決して自分は母親に対して欲情しているのではない。 説明は難しいが、ママが使ったこのオモチャその物に興奮しているのだと思っている。 『やっ、絶対いやよ、そんなオモチャを入れるなんて』 『絵美子、もしかしたら孝太郎のアソコも、これくらいはあるかもしれないぞ』 『どうしてそんな変なこと言うの？』 『いいから、お尻を突き出すように持ち上げてごらん』 『えっ？…え、え、え？……』 『ほら、ゆっくり、ゆっくり入っていくよ』 『アン！ ア、ヤっ、ア〜ン』 『ほら、鏡、見てごらん。突き刺さってる』 『やん、こんな恰好』 『ハハハハっ……肛門までヒクヒクしてるよ、ママ』 『やだ、お尻の穴は見ないで』 『肛門の周りの毛もかわいいよ。ちゃんときれいに洗ってるかな』 『やだ、今日のあなた、なんだか怖い、どうしたの？』 『孝太郎くんも、ママのこんなカッコウ想像して、オナニーしてるかもね』 『やん！ そんなの。アッ、アッ、ア〜っ』 昨夜聞いた両親の会話が蘇る。 友人宅で見たことのあるアダルトビデオのセリフとなんとなく似ていた。 また、なぜ父さんは孝太郎にぃちゃんのことをこんなところで引き合いに出したのか、不思議でしようがなかった。 それに孝太郎にぃちゃんが、ママのことを性の対象にするかどうかでさえ考えたこともない。 きれいにベッドメイキングされたダブルベッドを見つめていると、ここでママがどんな格好をしていたのか想像してしまう。 少年は思いを巡らせ、いったいどれだけの時間、そこに這いつくばって模型を眺めていただろうか。 突如、 《ガチャッ……》 と、遠くに玄関扉が開けられる音が聞こえた。 「まずいッ！」 翔太は慌ててママのオモチャをベッドの下へ戻し、開け放していた寝室扉から逃げ出そうとしたが、間に合いそうにない。 「翔太、まだ居るの？ 翔太？」 ２階に向かって呼びかけた後、買い物袋を置いて、母親がリビングからこちらへ向かっている気配を感じる。 親の寝室に忍び込んでいたことはどうしても知られたくない。 ＜大人のオモチャの存在に息子が気づいたのでは？＞と、ママに思わせたくなかった。 ＜昨夜の恥ずかしい行為が息子にバレていたかもしれない＞と、ママに勘ぐられたくなかった。 そんな気まずい母子関係になるのは絶対、やだ。 だが、気づかれずにここから脱出する手立ては、もはや無い。 自分自身を部屋に閉じ込めることになるだけなのに、反射的に扉を閉めていた。 逃げ場のない両親の寝室で慌てふためき行ったり来たり、文字通り右往左往する翔太。 （もう…ダメだっ！！） ママが寝室の扉を押し開いた………… ……つづく |
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| 2015年11月25日掲載 |
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