撮影会 露稟 作
≪新学期≫ 　春休みも終わり新学期が始まった。 　彼女も２年生になった。 　クラス替えがあったものの、息子と彼女はまた同じクラスになった。 　しかも担任は、再び、野田有紀先生だ。 　今年は修学旅行がある。楽しみだ。 　たぶん、私が同行することになるのは間違いない。 　毎年同行している。 　これまではそれほど楽しいと思ったことはなかった。 　ただ、淡々と子供達の写真を撮っていただけだった。 　しかし、今年は違う。彼女がいる。 　あの、社会見学の一夜を思い出す。 　しかも、今度は２泊である。野田先生もいる。 　修学旅行が待ち遠しい。 　どこの学校も新一年生が入学してきている。 　仲間達は、次のターゲットを物色し始めている。 　私も、そろそろ次のモデルを探さなくていはいけないのだが、どうも実が入らない。 　美香に執着しすぎているせいだろう。 　それに、店の前を女子生徒が通り過ぎていくのだが、これといって、モデルにしたいような生徒がいない。 　最近の中学生は、大柄な子が多い。 　よほどの美形でない限り、「少女」の面影が感じられないのである。 　しかし、そんなことも言ってられない。 　信用を無くさないためにも、次のモデルを探さなければ。 　待ち伏せていても仕方がない。 　よその学校を含めて、探しに行かなければと思う。 　最近の子供達はどこで遊んでいるのだろうか？ 　ショッピングセンターなど回ってみるが、中学生らしき子供がいないのである。 　都会であれば、探すのに手間はないのであろうが、こんな田舎では一苦労である。 「こんにちは」 　ドキ！ 　そこには、野田先生が立っていた。 「お買い物ですか？」 「えっ、えぇ〜。先生もですか？」 　まさか、「少女モデル」を探しに来たとは言えなかった。 　薄手の青いセーターに白いカーディガン。 　そして短めのフレアスカート。 　いつになく若々しく、そして、なまめかしい太もも。 　どうかすると生娘さえ感じる。 　生徒たちと一緒にいる時の先生とは別人のようだ。 　これが、普段の彼女なのか。 「暖かくなりましたねぇ。」 「そうですねぇ。」 「今年もよろしくお願いしますね。」 「こちらこそ、今年も息子のこと、よろしくお願いします。」 「カズ君は、しっかりしてるので大丈夫ですよ。」 「いゃぁ、まだまだ子供ですので、何かあったら叱ってやってください。」 　ありきたりの会話をした後、去っていく彼女の後ろ姿を見送る。 （なかなかいい尻をしてるようだ。） 　久し振りに、「息子」がうずく思いを感じた。 　やはり、友人に声を掛けさせよう。 　数日後、友人から連絡があった。 　野田有紀先生のインタビューに成功したようだ。 　意外と簡単にインタビューに応じたそうだ。 　良くあるファッションインタビューとして接触したようだ。 「野田有紀　27歳　独身　国語教師　彼氏なし」 　ありきたりのファッションインタビューから始まって、徐々にモデルの仕事をしないかと誘ったところ、興味を示したらしく、その場での返事はもらえなかったようだが、連絡先を聞いたところ、あっさり携帯の番号を教えたそうだ。 　意外と脈があるかもしれないと友人が言っていた。 　一歩前進といったところか。
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2016年8月17日掲載
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